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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第二章 《疑と欺の狭間》
17/66

俺、今度から資源大事にします。


 《剣の国》との会談を無事に終え、一息つく俺達。


 ていうか明らかに良くない事を考えているような顔で、そそくさと帰って行った使者達。


「はあぁぁぁ…。超疲れたぁぁぁぁ…」


 理事長室のソファでぐったりと倒れ込む俺。


「だらしないわね…。そんな事で他の国との『会談』は大丈夫なのかしら……」


「そんな事言われたってぇー…。はあぁぁぁ……」


 ポットから珈琲を入れてくれる緒方理事長。


「ふうむ……」


「おーい、グロちゃーん……」


「……グロちゃんは止めてくれと言っている……」


 さっきから思案顔で唸っているグロリアムを弄る俺。


「もう考えたって仕方ねえんじゃね?ばれちゃったんだし」



 友好の品として用意した、燃えないゴミ置き場から回収した乾電池。

 どうせ捨てるものだったから、上手く異世界の住人を騙せると高を括り用意していた物。

 しかしまさか、外装で使われていた『鉄』がこの世界では非常に貴重な『金属』であったなんて……。


「まずいな……。非常にまずい事になったぞ……」


 まだ唸ってるよグロちゃん……。


「……要するに、『友好関係を築く』つもりで渡した乾電池が…余計『戦争』を誘発するものとして切り替わっちゃった訳ね」


 緒方理事長は3人分の珈琲をカップに淹れ、ソファに座る。



 この世界で『鉄』が貴重な物だと分かった俺達は、会談後すぐに理事長室へと集まった。

 もちろん今後の話し合いをする為だ。

 一番やばいのはこの俺の『黒炎剣の力』である事は変わらないのだが。

 二番目にヤバイのが、この『学園要塞そのもの』だという事が新たに追加されてしまった。


「……ああ。私も今までに『鉄』の現物を見たことが無かったからな…。まさか、この『学園要塞』の至る所に『鉄』が使用されて居たとは……」


 グロリアムが頭を悩ましているのはまさにその部分。

 この学校の至る所に『鉄』は転がっている。


 例えば校門。

 完全に『鉄』の塊。

 校庭にある鉄棒、ブランコ、フェンス。

 校内設備も至るところで『鉄』が使用されている。

 それこそ挙げていったらきりが無いほどに。


「……要するに、この世界の住人から見たら、ここはさしずめ『黄金郷』と言った所なんかな……」


 だとしたらヤバイよな、確実に。

 だってあの《剣の国》の使者達。

 明らかに悪い顔して帰って行ったし。

 あれお城に到着して王様に報告されたら、すぐにでもまた『戦争』の準備とか始めるんじゃね?


「……むぅ……。使者達を捕縛しておくべきだったか……。だがしかし……」


 無理だろ。

 俺達にあの20名近くいた《剣の国》の使者達を捕らえる事なんて出来やしない。

 だって普通の一般人だよ?俺ら?

 まともに戦えるのなんてグロリアムしかいないし。


「でもまあ、いきなり『戦争』を仕掛けてくる事は無いんじゃないかしら?わざわざまた『返り討ち』に会うような物だし」


 緒方理事長が言っているのは俺の『黒炎剣』の事だろう。


「……ならば尚更、各国にばれる訳にはいかんな…。ほむらがまだ《力の調整法》を身に着けていないという事を……」


「それならそんなに心配する事は無いんじゃないかしら?」


「へ?どうしてですか?」


 俺は緒方理事長に質問する。


「だって前にもグロリアムが言ってたけど《力の調整法》ってそもそも誰かに教わるような物ではないのでしょう?この世界の住人にとっては生まれ持って身に付いているものなのよね?」


「……まあな。赤子が生まれながらにして泣き声を上げる事と同じくくらい、誰もが当たり前に出来る事であるからな」


 俺は生まれたての赤子以下って事かい……。

 それ凹むな……。


「なら、私達のうちの誰かが他国にその事実を漏らさない限り、日高君の『弱点』がバレる危険性は低いと思うけど」


「……確かに。美鈴の言う通りかも知れんな…。我は少し考えすぎていたのやも知れん……」


 ようやく緒方理事長の淹れてくれた珈琲に手を伸ばすグロリアム。


 ホント、この二人はそれぞれお互いの意見を言い合って、お互いに『補佐』し合ってるよなあ……。

 正直言うと、ちょっと羨ましい。


「取りあえずは、当面は残りの国…《魔法の国》と《暗黒の国》との会談を乗り切る事が第一目標かしら?」


「……だな。友好の品も『カンデンチ』以外のものを用意して欲しいのだが……頼めるか?美鈴?」


「ええ。それらしい、この世界には珍しい物を見繕っておくわ」


「すまん。助かる」



 そして俺達は残りの国との会談の準備に取り掛かった。



















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