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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第一章 《異の国の生活》
15/66

俺、指揮官にされちゃいました。


 次の日。


 体育館。


 前日のうちに施された装飾の数々。

 豪華な椅子も壇上に用意され(これ、俺が座る椅子だよね…げぇ……)、それらしく豪勢に見える形に。

 てかほとんど全部、理事長室にあったものを移動して来ただけなのだが。


「……はあ……」


「……なんだ、ほむら。そのやる気の無い溜息は。これから会談が行われると言うのに」


「それに、目の下にくまが出来ているわね……。その様子だと昨日は熟睡出来なかったみたいね?」


 二人の女性に連れられ壇上に上がる俺。

 てかやる気も無いし、睡眠だって取れるわけが無い。


「あとどれくらいで来んのかなぁ……」


「……大体二時間くらいだな」


 だからなんで分かる?

 予知能力者かよ……。


「もう一度おさらいしておいた方が良いかしらね」


「ああ、そうだな美鈴」


 今日の《剣の国》の使者との会談での注意事項。


①基本俺は喋らない

②基本俺は椅子から立ち上がらない

③基本俺は相手を褒めない

④基本俺は『同盟の申し出』を受け取らない


 ……俺はマネキンかよ……。


 あ、でも喋んなくて良いのは助かるが。


「打ち合わせでも話した通り、日高君は『指揮官』…つまりはこの『学園要塞』の『最高指導者』という事になっているから……」


 緒方理事長がもう一度俺に説明をする。

 要は偉そうに座っているだけでいいと。


「使者との軍事交渉・事案要求の受け入れ可否は我が代わりに交渉を進める」


「私はその他『学園要塞』の各国との『中立』の交渉、生徒や先生方の身を最大限に守る事が出来る交渉を進めて行くわ」


 二人の補佐官。

 なるほど、二人は云わば『アクセル』と『ブレーキ』か。

 グロリアムが『動』の補佐官であるならば。

 緒方理事長は『静』の補佐官という事だろう。

 一人では結論を出す事が難しい案件でも、二つの頭脳を駆使して判断を下す事が出来る。

 へー、よく考えてんだな、二人とも。


「で?『黒炎剣』の事は?」


 俺は疑問を口にする。

 各国の『会談』の目的。

 それは俺が使う『黒炎剣』の力を我が国のものとするという事くらい、アホな俺でも分かる。


「……大方の『予想』はされてはいるだろうな」


 『予想』というのは『黒炎剣』が《剣》《魔法》《暗黒》の、全ての《力》を宿しているという事が各国に知られている、という事なのだろう。

 しかも『一撃』で数千の兵士を消炭に出来るほどの《力》。

 これほど強力な『軍事力』を放置しておく訳が無い。


「だからこそ、こちらにも大きな交渉のアドヴァンテージがあるという事でしょうけど、ね」


 緒方理事長がハイヒールの踵を気にしながら言う。


「その通りだ美鈴。だからこそ隠し通さなければならない」


 グロリアムがちらっと俺を見る。


 結局あの後の『地獄の扱き』でも《力の調整法》を身に付ける事は出来なかった。

 しかし俺的には『当然じゃね?そんな一日二日で会得出来るようなもんじゃねえんだろ?』と高を括っていたのだが。

 実はそんなに難しい事では無かった事が判明。


 《剣の国》も《魔法の国》も《暗黒の国》も。

 それぞれの国に属する国民は皆、生まれながらにして《力の調整法》を身に着けているらしいのだ。

 要するに、だ。

 元々『誰かに習う』とか、そういう大それたものでは無く、勝手に身に付いているものだという事。


 その時点で大分凹んだ俺なのだが。

 異世界から来た人間で、しかも《剣》と《魔法》と《暗黒》の三つの《力》を同時に宿す『黒炎剣』の《力の調整法》。

 すぐに習得出来なくでも無理はない、とグロリアムは言ってはくれたが……。


 正直に言います。


 一向に習得できる気配が致しません。


 だって、そもそもどうやったら習得出来るのか分かんないんだもの。

 みんな勝手に、自然と、当たり前のように身に着けている《力の調整法》。

 昨日だって俺がグロリアムから教えられていたのは基本的な《剣の力》の《武力強化》と。

 後は《魔法の力》の《詠唱》、《暗黒の力》の《封魔》。

 この中でイメージが沸くのは《武力強化》くらいか。

 部活の筋トレみたいな事を延々とやらされただけだったし。

 でも《詠唱》と《封魔》はさっぱり。

 イメージ沸かねえ。

 だから俺は昨日の時点でかなり凹んでしまっていた。


「どうせ…どうせ俺は、出来の悪い生徒ですよ……」


 立ち止まり、地面にのの字を書く俺。


「頭も悪いしな」


「追い討ちかっ!?」


 反射的にグロリアムに突っ込む。


「ふっ…それだけ元気ならば大丈夫みたいだな」


 振り返り緒方理事長を見ながらそう言うグロリアム。


「ふふ、そうみたいね?もっと落ち込んでいたかと思ったけど……」


 微笑みながらそう言う緒方理事長。


 あ、いや、大分メリ込むくらい凹んでますけど……。


「さあ、ほむら。残りの時間、威厳の出し方の練習と行こうか」


「ええー?いいよそんなん……」






 《剣の国》会談。


 使者21名。

 うち3名。


 ローグハイル・エリウスト。

 ゼノン・オルルスト。

 レミィ・ラインアーランド。


 7人編成の小隊のそれぞれの隊長達。


 彼らの使命は―――。



 ―――『黒炎剣』の奪取。



















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