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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第一章 《異の国の生活》
13/66

俺、喧嘩の仲裁に入りました。


「……という訳なんだが」


 3年4組の教室。

 何処かに走り去って行ったグロリアムを無視した俺は今、教室で小笠原と話している最中。

 当然、他の奴等は隅っこの方に避難。

 俺はどんな危険物なんだよっ。


「……話は分かった。そういう事なら協力しない訳にはいかないが……」


 小笠原は了承してくれた。

 ほっと胸を撫で下ろす俺。


「1組の蓮見姉妹とお前のクラスの井上には俺から声を掛けておこう。それに俺の部の奴等も数名と井上の部の奴等、それに野球部やサッカー部、バスケ部からも何人か声を掛けておこう」


「……悪いな、恩に着る」


 やっぱり小笠原に頼んでみて正解だった。

 今まであまり面識は無かったが、正義感の強い奴だとは聞いていたし。


「……で?全校集会で喋っていた『グロリアム』とかいう女は、信頼出来る人物なのか?」


「?……ああ。……多分」


「多分?……日高はあいつの選んだ『協力者』なんだろう?何故信頼出来るかどうかすら、分からないんだ?」


 う……。

 鋭い所を突くな……。


「えーと…うーん…何と言ったらいいか……」


 説明しづらい。


 なのでとりあえず『緊急事態だから』という事で済ませておく事にした。


「それで、日高とあの女は食料調達には行かない、という事で良いんだな?」


「ああ。これから敵の使者様らがここに来るらしい」


 なんでそんな事までグロリアムは分かるのか。

 今になって少し不思議に感じはするが……。


「俺もその会談?とやらに同席するらしい」


「はは…日高、お前それじゃあまるで『王様』みたいだよな」


「王様?」


 裸の王様、という皮肉だろうか。

 いまいち小笠原の笑顔からは心理が読みづらい。

 まあ、いい奴、なんだろうけど。


「……まあいい。『食料調達』の方は俺達に任せろ。先生?良いですよね?」


 他の生徒に混じって端っこのほうで怯えながらも頭を縦に振る担任教師。

 ……少しは空手部主将を見習ってくらさい。



 そして俺は教室を後にする。





◆◇◆◇





「ったく……。どこ行ったよ…グロリアムの奴……」


 さっきは少々苛め過ぎたかも知れないが……。

 何も泣きながら走って行く事は無いだろうに。

 廊下は走っちゃ駄目なんだお。


「……あ!いたいたぁ~!日高くぅ~ん!」


 ……この甘ったるい声は……。


「探したよぅ~!もう~!先生~、足がぁパンパン~!」


 大きな胸を揺らしながらも小走りで走ってくる女性。

 ていうか保健の御坂先生だ。


「どうしたんですか?そんなに慌てて……」


「それがねぇ~?グロちゃんがぁ~!」


 ……グロちゃん?


 おいおい。まさか……。


「グロちゃんて……『グロちゃん』?」


「そうよぅ~。そのグロちゃんがぁ~、男子生徒の胸ぐらを掴んでぇ~……」


「はあっ!?」


 何をやってるんだあいつは!?


「ど、どこですか!場所は!」


「えっとぉ~…。うーんとぉ……」


 おい。


「あぁ~!確か校舎裏のぉ~……」


「校舎裏ですね!分かりました!知らせてくれて有難う御座います!」


 俺はダッシュで校舎裏へと向かう。


「あ、ちょっとぉ~!日高くぅ~ん?」


 おいおいおい。

 問題起こすんじゃねえぞ、グロリアム。

 ここはお前の世界みたいな無法地帯とは違うんだから。

 勘弁してくれよ、全く……。




◆◇◆◇





「貴様……。もう一度言って見ろ」


 グロちゃん発見。

 そして中山の襟首を掴んで持ち上げてます。

 おい。


「何やってんだよ!こんなところで!」


「ひっ…!!」


 あ。

 大木も居やがんじゃん。


「ぐ…は、離せ…化物が……!」


 顔が真っ赤になりながら簡単に持ち上げられている中山。

 おいおい。

 それじゃあ窒息しちまうじゃねえか。


「おい!グロリアム!」


「ほむらは黙っていろ」


「おいっ!」


 一体何があったんだよ!


「おい!大木!」


「ひっ…!」


 びびられた。

 もうやだ。


「中山はグロリアムに何をしたんだ?」


「な、何もしてねえよ…!ただ……」


「ただ?」


「う…、ただ……日高を……」


 俺?

 俺が、何?


「………お前が悪いんだよ!全部!!」


「………はあ?」


 なんで、俺?

 訳分からん。


「お前が生き返ったりするから……!だから俺達、こんな訳の分からない世界に飛ばされて来たんだろ!?」


 ……あ。

 なるほど。

 そう言う事か。


「ぐ…この…化物…たちが……!!!」


「懲りんな。お前も」


 溜息を吐きながら中山を放り投げ開放するグロリアム。


「く…、お、覚えてろよ!日高あああ!!」


「お、おい!中山!」


「行くぞ、大木!」


「お、おう……」


 捨て台詞を吐いて立ち去る二人。


「おい。そこの野次馬ども」


「「ひいい!!」」


 草陰に隠れて一部始終を見守っていたらしい数名が慌てて逃げ出す。

 おいおい……。

 誰も助けてやんなかったのかよおまえら……。


「……カスだな。こいつ等みんな……」


「おい。グロちゃん」


「ぐ、グロちゃんは…止めてくれ……」


「ありがとうな」


「う……」


「俺の為にしてくれた事なんだろう?」


 大方想像はつく。

 たぶんこの校舎裏でサボリングしていたであろう中山と大木の。

 たぶん話していたであろう俺への悪口、恨みつらみその他。

 それらをたまたま通りかかったグロリアムが聞いてしまい。

 そして今さっきの状態にまで発展。そんなとこか。


「べ、別に……ほむらの為では……!」


「違うの?」


「あ…いや…その……」


 何だかさっき少し苛めてからツンデレキャラみたいになったなグロリアム……。

 おまえがどんな属性だろうが、俺には関係無いが。


「さっきは悪かったな」


「うぐ……」


「もういいだろ?俺が悪かった」


「そ、そうか…。ほ、ほむらがそこまで言うのであれば…。ブツブツブツ……」


 なんだか最後の方は聞き取れなかったが。

 とりあえず『食料調達』のメンバーの目処は立った。

 次の課題は……。


「《力の調整法》の取得と『会談』の準備、ねぇ……」


 はあ…と大きく溜息を吐き空を見上げる。

 気が付けば大分日が傾いていた。


 そうか。この世界にも『夜』はあるのか。


 そう言えばこの『異世界』に転移してきた時は、この世界で言う『何時頃』だったのだろう。

 あとでグロリアムに聞いてみよう。

 そう。まだまだ俺にとって、この世界は知らない事ばかり。

 これから少しずつ、覚えていかなければならない。



 俺は日が傾いていく空を眺めながら―――。



 

 ―――そっと、そんな事を考えていた。



















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