表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第一章 《異の国の生活》
12/66

俺、なんか、良く分かりません。


 ここでひとつ困った事が起こった。


 じゃあ誰が『食料確保』に向かうのか、という事で揉め始めてしまった。

 まあ、考えてみればそうだ。

 こんな訳の分からん世界で。

 一歩でも外に出ようものなら、いつ他国から攻撃されて命を落とすかも分からない。

 よって誰も外部への食料調達に志願する奴なんていなかった。


「くそ、本当に腰抜け共しかおらんのだな。ほむらの世界の人間は……」


 苦虫を磨り潰したような顔でそう言うグロリアム。


「んな事言ったって、戦った事があるやつなんて一人も……」


 一人も……?

 あ。いるじゃん。


「……ちょっと心当たりあるんだけど、いいかな?」


「?なんだ?」


 一向に話の進まない教師らの会議から席を外し、3年の教室棟へと向かう俺達。


「4組の小笠原って奴なんだけど……」


 確か空手の全国大会に出場が決まってるとかなんとか……。


「ほう。少しは戦えるかも知れんな。『少しは』だが」


「それに1組の蓮見姉妹。双子の女子なんだけど、確か実家が少林寺拳法の教室を開いてるんじゃなかったか……」


「しょうりんじけんぽう……ふむふむ……」


 ……絶対分かってねぇこいつ……。


「それに……」


 俺はそこで止まる。


「?どうした?ほむら?」


 それに……。


「……俺のクラスの井上絵里いのうええり。彼女も合気道をやってるんだ……」


「ほう。ほむらを『振った』という罰当たりな女か」


「ああ。俺を振った罰当たり……な……?」


「うん?」


「おい」


 なんで知っている?

 俺が井上にこくって。

 そして見事に振られた事を。

 何故、お前が、知っている?


「ほむら。今、凄く怖い顔を我に向けておるみたいだが?」


「向けておるんだよ!何で知ってんだよお前!」


「何をだ?」


「俺が振られた事だよっ!とぼけんな!」


「ああ…。そりゃあ、知っていて当然だろう」


「だから!『な ん で で す か ?』って聞いてんの!」


「?……ああ、まだ説明していなかったか……」


 おいおい。

 まだ何かあるんですか。

 俺に言っていない事とか。


「我を『黒炎剣』として一度召喚したであろう?」


「……ああ」


「その際、我はほむらと《同化》した事は覚えておろう?」


 同化?

 ……あー、確かに。

 あの後、身体が凄く軽くなって。

 屋上の貯水タンクまでひとっ飛び……で……。

 ……。

 まさか……。


「その時に《脳》も《同化》を果たしているのだ。……もう、分かるな?ほむら?」


「……つまりは、俺の『記憶』もその時に……?」


「ああ。我に筒抜け、という訳だな。おっぴろげだ」


 おい。表現。


「……じゃあ、なんでその《同化》とやらで俺はお前の『記憶』が見えなかったんだよ……」


「それは我が謎の女だからだ」


「おい」


 何故そこでふざける?


「……まあ、あれだ。これも一種の《魔法の力》とだけ言っておこうか」


「……お前は『夫』に隠し事をするのか?」


「う……」


「俺の事は全て『筒抜け』にしておいて?」


「そ、それは……」


 たまには良い。

 いじめてやるか。


「そんな事でこれから円満な夫婦生活を送れるとでも?」


「あ…ああ…あああ……」


 なんか頭を抱え込んだグロリアム。

 いいぞ。もっと悩め、苦しめ。


「こんなに若い年下の男を夫として捕まえておいて、自分は上から全てを把握して支配か?」


「言うな……それ以上言わないでくれ、ほむら……」


「これじゃあ『夫婦』では無く『飼い主とペット』だなあ、まるで」


「!!!!」


 目をカッと見開き硬直するグロリアム。

 あ、いや、だって。

 真実を告げたまでじゃん。


「う…その…あの、だな…ほむら……」


「どうした?グロリアム?何か言い訳でもあるのか?」


「言い訳…は、あ…ありません……」


「だろう?なら俺の言っている事は正しいんだろう?」


 ……まあ、これくらいにしておいてやるか。


 こいつの『過去』を聞いちゃった後ではあまりいじめるのも可哀想だろ。

 言いたい事は言った。

 俺はもうそれで満足。

 後はどうのこうの言っても始まらない。

 俺達はこの世界で生き残って行かなければならないのだから。


「……は出来るぞ」


「うん?」


 何か小さい声で言っているが聞こえない。


「……くらいは…出来ると、言っている」


「だから、聞こえねえって」


 グロリアムが顔を上げる。

 何故か顔が真っ赤だ。

 なんでや。


「だからっ!ほむらの子供を身篭みごもる事くらいならいつだって出来ると!そう言っておるのだあっ!!」


 ………はい?


「ほむらの……ほむらのっ……!」


 ………え?まじで?


「ほむらの馬鹿ああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 


 そして走り去って行ったグロリアム。








 おい。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ