Ep6 日常
新しい生活に慣れた今日この頃、しかも食後となると睡魔が襲ってきて眠くなって寝てしまうわけでございますよ。
そんなこんなで只今夢の中。しかしその邪魔をする者がいる。何だか頭が重い・・・。
眼を開けてみるとそこには頭を触ってきている俊がいた。
「がるる・・・。」
「どうした、犬になった夢でも見ていたか?よーし、お手!」
思いっきり叩いてやった。
「イヌ耳つけたら似合いそうだな。」
どうしてそんな話になる?
「で、何か用?」
「いや、寝てるの見てたら頭撫でたくなっただけ。」
「何でオレにはそういうことするのかなぁ。」
「だって他の女子にするのはまずいだろ。」
「オレも女子なんだけど。」
「それはお前が特別だからさ。」
「どうせオレが元男だから何してもいいとでも思ってるんでしょ。」
「少し違うけどそうだともウッチー!」
「抱き着こうとするな変態!」
俺は抱き着いてこようとする俊を必死に防ぐ。
「そのつれない態度にまたそそられるんだよ!」
「そんなこと聞いてないから!」
「また痴話喧嘩やってるの?飽きないわねぇ。」
この声の主は山田咲だ。隣には福井南さんもいる。女の子になってからよく話すようになった二人だ。
「違うから!」
俺は全力で否定する。
「別にデレてもいいんだよ。」
この変態野郎は・・・。
「二人ともそこで見てないでこの変態を何とかするの手伝ってくれない?」
「代わりに抱き着かせてくれるならいいわよ。」
そう咲は答えた。
「冗談言ってないで助けて!」
「内田君がそう言ってることだしそろそろ止めてあげたら?」
そう言ったのは南ちゃんだ。この中で心優しい一番の常識人だと思う。
君付けなのは一年の時同じクラスで男時代を知っているからだろう。別に好きに呼んでいいって言ったんだけど君付けのままなんだよね。まあ本人がそう呼びたいならそれでいいんだけど。
「仕方ないな。」
そう言ってやっと俊が離れる。
「抱き着きたいのは南も同じなのにねぇ。」
「ちょっと咲ちゃん!」
南ちゃんが照れている。
やっぱりここは日本なんだからその反応が普通だよなぁ。
「そうなんだよ、抱き着くなんて普通は・・・。」
「何ぶつぶつ言ってんのよ。」
そう言って咲に後ろから抱き着かれた。
「ちょっと咲・・・。」
「ウッチーは可愛いなぁ。そこの二人の反応も面白いし。」
咲は完全に遊んでる。俺はおもちゃか・・・。
「早くウッチーから離れろよ。」
少し怒り気味に俊が言う。
「別に本人が嫌がっているわけじゃないしいいじゃない。」
「別に嫌がってないわけじゃないけど。」
俺は言い返す。
「でも本当に嫌ならさっきみたいにもっと嫌がるでしょ。」
俺は言い返せない。だって心の大部分は男なんだもん。
「南も抱き着いてみる?」
南は激しく首を横に振る。
「咲も南ちゃんみたいにもう少し恥じらいを持ってもいいんじゃない。」
「良いではないか良いではないか。」
そう言って色んな所を触ってこようとするのはさすがに阻止する。
「ケチ。」
「そうだそうだ、減るもんじゃねぇんだから。」
そう同意したのは俊だ。
「俊はどういう立ち位置なんだよ・・・。」
「百合も問題なく頂くぞ。」
適応能力が高い奴である。
「ほらほら、もうすぐ授業始まるから。」
そう言って離れるよう仕向ける。
「そうそうウッチー、今日放課後開いてる?」
そう咲が聞いてきた。
「放課後?まあ予定はないけど。」
「なら放課後この教室でね。」
そう言って二人は戻っていった。