Ep10 午後の部
「感動したー!」
見る前はそんなに興味なかったのに完全に物語にのめり込んでいた自分がいた。
でもまだ昼飯時だ。ポップコーン食べたせいかお腹はあんまり空いてないが・・・。
「どこか寄っていく?」
「内田君、お腹空いてない?」
「うーん、言われてみれば空いてきたかも・・・。」
正直に言うとポップコーン食べたせいでお腹は空いてない。けど、ね。
「あのね、お弁当作ってきたんだけど、食べる?」
「食べる!食べます!食べさせて頂きます!」
女の子のお弁当なんて男のロマンの一つじゃないか!
・・・・・・
そういえば俺、女の子でしたね・・・。
俺が俊にお弁当作っていったら死ぬほど喜びそうだな、絶対に作らないけど。
てか南がうつむいてしまっている。引かれたか?
「あーっと・・・、この近くに広場あった気がするからそこに行く?」
南は何も言わず激しく首を縦に振った。
広場には結構な人がいた。まあ休みなんだから当然か。
「ここらへんがいいかな。」
そう言ってベンチに座る。
しかし南の荷物が多かったのはお弁当用意してくれていたからだったんだな。
南は鞄からランチボックスを出して、おしぼりを手渡してくれた。
「ありがとうね、こんなお弁当まで用意してくれて。」
「お口に合えばいいんですけど・・・。」
そう言いながら開けた箱の中身はサンドイッチだった。
「これなら簡単に食べられると思って。」
一つ取り出してみる。
「それじゃあいただきます。」
一口食べてみる。
「おいしい・・・。これならいくらでも食べれちゃうよ!」
「良かった・・・。3人分あるからいっぱい食べてね!」
そう言う南の顔はとても嬉しそうだった。
結局のところ俺自身の余計な一言と、南の笑顔を見て調子に乗った自分のせいでそんなにお腹が空いていないのに二人分食べることになったわけで、おいしくてもやっぱキツイ・・・。
まあ自業自得なので、ここは苦しいということを絶対に悟らせてはいけないというプライドが発動する。
「この後どこか行きたい所とかある?」
「私はどこでもいいよ。」
南ならそう言うと思ったけど・・・。ならどうしようか?折角女の子になって女の子どうしで出かけたんだから女の子がやっていて男がやらないようなことをやりたいな。そんなもの何かあったかな・・・?その時、映画のワンシーンを思い出した。
「あっ、プリクラとらない?いいかな?」
「うん!」
よし、悪くない反応だ。近くでありそうな所を探す。
そう時間は掛からず見つかった。
「知ってはいたけどいろんな種類があるんだね。どれがいいとかある?」
「私もあまり使ったことないからわからない・・・。前来た時は咲ちゃんに任せっきりだったし。」
「あー、何となく頭に浮かぶわ。まあでもこういうのはその場のノリでやるものかな。」
わかんないから我武者羅にやってやる!
まあ結局のところ、この二人だと無難なものになってしまうんだけど。
そして他にやることと言えば、UFOキャッチャー・・・も映画であったけどデートだよなぁ。
「次は・・・。」
そう言いながら南の方を見てみると、彼女もUFOキャッチャーの方を見ていた。
「何か欲しいものでもあった?」
「えっ、うーんと、あのハムスターかな。でも私、こういうの下手だから・・・。」
こんなこと言われたら男子としては取らざるをえない。女子だけど。
「ならやってみるよ。」
「じゃあお金は私が・・・。」
「いや、いいよ。他人のお金でやるのは何だか気が引けるし、この前UFOキャッチャーのテクニックを紹介してた番組で見たのを試したいし。」
ということでいっちょ頑張るよー!
意外にも一回で取れてしまった。かっこ悪い姿を見せなくて済んでよかった・・・。
「すごいね、内田君!」
「ただのまぐれだよ。ということでどうぞ。」
「本当にいいの?」
「全然いいよ。最初からそのつもりだったし。」
「ありがとね、内田君!」
そういって南は取ったハムスターの人形を抱きしめる。喜んでもらえて何よりだ。
そしてゲーセンを離れる。
少し歩いたところで南が上を指して
「あれって観覧車じゃない?」
と聞いてきた。
そこには本当に観覧車があった。こんなところにもあるもんだなぁ。
「ねぇ内田君、観覧車に行ってみない?」