Ep9 映画館で
ということで映画館に着きました。
「南ちゃん、どの映画見る?」
「内田君は何か見たいものはないの?」
「南ちゃんが見たい映画でいいよ。」
正直に言うと、見たいものが特にない!
「私は・・・これがいいかも。」
そういって選んだのはラブストーリーだった。やっぱり女の子はこういうのが好きなのかな。
「時間は・・・丁度いい感じみたい。じゃあ早く売り場に行こう。いい席取らないと。」
「うん。」
南は何だか嬉しそうだ。この笑顔が見れただけで今日来た価値はあったな。
・・・ってそんなデートしに来たわけでもないのにそんな風に考えちゃ駄目だな。俺は女の子なんだから・・・。
無事に席もとれ、飲み物とポップコーンを買う。
「私はメロンソーダにしようかな。」
「ならオレも・・・」
「やっぱアイスティーにしようかな。」
「あっ、うん。ならオレはメロンソーダにしようかな。で、ポップコーンは塩とキャラメルどっちがいいかな?」
「どっちでもいいよ。」
「ならキャラメルでいい?」
「うん。」
やっぱ映画館ではキャラメル味だと思うんだよね!
そして劇場に行って席につく。真ん中はとれなかったけどなかなかいい席だ。そしてメロンソーダを飲む。
映画館では何故か炭酸飲料が飲みたくなるんだけどなんでだろう?
ポップコーンは・・・間に置けないけどどうしようか。
「南ちゃん、ポップコーン持つ?」
「・・・、内田君が持ったままでいいよ。」
「そう?まあ遠慮せず取ってね。」
そうしてもらわないとついつい沢山食べてしまいそうだからな・・・。
「ねぇ・・・。」
南がそう口に出した。何かを言おうとして、でも言いだそうか迷っている感じだ。
「何かな?」
「あの・・・メロンソーダ飲んでもいいかな?」
あっ、あの時注文変えたのはそういうことだったのか。なるほどね。
「うん、いいよ。」
そういって手渡す。そういえばこれって間接キスになるんだよな・・・。まあ南が気にしていないんだったら俺も気にすることは無いか。女の子同士だから問題ないよな。
「ありがとう。」
そう言って返されたメロンソーダはほとんど減っていない気がした。
まだ途中だが、映画は予想以上に面白い。なんというか、物語の深いところまでキチンと作られている。
でも恋って何なんだろうな・・・。好きな男と・・・、ってまずその時点でイメージできないんだよなぁ。好きな女と、とはイメージできるんだけど、女の子同士なんて普通じゃないもんな・・・。
いや、別に偏見とかじゃなくて、純粋に友達って思ってくれている人をそんな目で見たくないというかなんというかで・・・。
俺が男のままで、こうして女の子と出かけることが出来ていたらなぁ、と思わなくもない。こうやって映画観たり、手を繋いだり・・・。えっ?
見ると、いつの間にか手が繋がれていた。これは南の手だ。本人は映画に見入っているのか気付いていなさそうだが・・・。
というわけで俺は手を握り返してみた。南は気が付いてこっちを見てきた。俺が笑って返すと、うつむいてしまった。照れているのかな?可愛いなぁ。