act.6 誰でも可愛くなれる方法
由慧の目線です。
小さい頃から自分が嫌いだった。
足を引っ掛けられ転んでは泣き、突き飛ばされて転んでは泣き、髪を引っ張られれば泣いた。
そして、泣かされるたびに僕は幼なじみの深葉に縋り付いた。
深葉は僕の代わりに虐めてきた奴らに一人で立ち向かい、全員を返り討ちにした。
正直に言おう。惚れた。即刻で惚れた。
だってかっこいいじゃないか。深葉は僕の言わばヒーローだった。
でも、そうして幾度も繰り返し虐められれば子供だって強かになる。学習する。
僕は虐めてくる奴らより賢くなり彼らに負けなくなった。でも、相変わらず深葉には縋り付いた。
どうしてか。だって深葉がそれを望んでいたから。僕を守ることが使命だなんて笑うから、僕はその位置を守ることにした。
そうしている限り深葉は僕を抱きしめてくれたから。
小学校、中学生と時は過ぎ、僕は自分の顔の利用価値を知りさらに強かになった。もちろん深葉には隠れて、だ。
深葉の前では相変わらず穏やかで優柔不断な自分と偽った。それが深葉を怖がらせないためで警戒心を抱かせない方法だと知っていたから。
しかし高校生になり、ふいに気づいた。このまま庇護される弟のような立場でいいのかと。確かに警戒心のないゆえに深葉が僕に許していることは色々とある。
でも、それは結局のところ意識されていないということ他ならない。
就学前、一度だけ聞いた。幼いゆえに聞けたことだ。
「深葉ちゃん深葉ちゃん」
「なぁに、由慧?」
「深葉ちゃん、僕を好きってよく言うよね」
「うん、由慧のこと好き」
「ねぇ、僕のどこが好き?」
あの時の一言はいまだによく覚えている。
深葉は無邪気で晴れやかな笑顔で言った。
「んーとねぇ、お顔!」
……別に傷ついてはいないさ。トラウマではあるけれど。
話がそれだけれど、結局何を言いたいか。つまりは飽きたのだ。
僕のせいで深葉はナイトを気取るようになり、女の子らしさを捨てて成長してしまった。僕は深葉のかっこよさに惚れたけれど、やっぱり好きになった子の可愛いところは見たい。すごく見たい。
それで思いついた。
色事に免疫のない深葉(悪い虫は僕が追い払っていたので)を可愛くするのなんか簡単だ。ほら、昔から言うじゃないか。恋は人を可愛くするって。
なら、僕に恋して貰えばいい。
「だから深葉、僕に恋しなよ」
笑ってそう言えば、深葉は顔を真っ赤にして僕を睨んだ。
ほら、深葉はすごく可愛い。
残念な美少女系幼なじみ(男)いりません、か?




