act.3 天使面詐欺にご注意ください
「深葉、怒ってるの?」
「とりあえず由慧は宇宙人に乗っ取られたという現状を私は慎ましく受け入れようと思うアディオス」
ぴっと二本指をたてて立ち去ろうとすれば、くるりと正面に回り込まれた。
「深葉は前の僕がいい?」
「当然」
即答すれば、由慧はんーと少し悩むそぶりをみせる。それから数秒経過してにっこり笑う。
「却下」
「今悩んだ時間は何だったんだ!?」
「どっちのほうが僕の利益かなーって単純計算」
「はいそうですかさようなら」
「と言うよりもう飽きちゃったんだよね」
「あっ」
急に腕を取られてたたらを踏めば、呆気なく由慧の腕の中。
いまさらに由慧が男の子なんだと当たり前に知る。可愛くても華奢でも由慧は私とは違ったんだと思い知る。
なんだか敗北感のようなものが沸き上がって、ふて腐れて呟く。
「……じゃあ、私が可愛いねって言うと頬を膨らませてそんなことないよって拗ねる由慧は?」
「演技だね」
「なら、男子から熱い視線を送られて恥ずかしがって私の後ろに隠れてた由慧は?」
「んー、構ってちゃん?」
「それなら、私が抱きしめると顔を真っ赤にしてた由慧は」
「あれは下心を隠すのに苦労したね」
声にならないため息。可愛い外面に騙されまくっていた自分と、由慧に対して呆れやらならないにやらでどっと疲れる。
「……本当の由慧は」
「どっちかというと俺様?」
ぎゅっと抱きすくめられて顔に血が上る。それを見て由慧がふふと鼻で笑う。
「可愛い、深葉」
「からかうな、下剋上とか何様」
「僕様」
「馬鹿か」
腕をふりほどこうとすれば案外あっさりと解放される。意外だと顔にでも出ていたのか、尋ねずとも由慧は答えをくれた。
「じわじわアタックしたほうが深葉には効くみたいだからそうする」
そうやってにっこりと笑う由慧に私は内心で叫んだ。
こんなの私の可愛い由慧じゃない!
君こそ名役者。