act.16 自覚無娘(ジカクナシコ)の実態
「なんで私たちはこんなところで時間を潰してるんだ?」
ブランコに腰掛けた私は首をかたりと傾げた。
教室から出て行った宮嶋を追いかけて、それからいつも通りに帰路を辿るものだと思っていたら道が違っていて、でも由慧に追いかけられないためか、と尋ねる前に自己解決して、近道かと思ってついて行った公園内で、座れよと促されてブランコに座る。宮嶋はブランコの周りにある低い柵に軽く腰掛けた。
暫くそうしていたらハテナが浮かんだ、という次第だ。
すると宮嶋は心底呆れたような顔をした。
「……お前って、お菓子貰ったら知らない奴についてきそうだよな。警戒心なさすぎだろ、そのうち誘拐されるぞ」
「質問しただけなのに、私、馬鹿にされていないか?」
「なんにも聞かずについて来るからわかってんのかと思ったら、なんにも理解してねぇんだから馬鹿にしたくもなるだろ」
「理解って」
「ほら」
答えの代わりに投げられたのは飴玉だった。怪訝な表情を向ければ、
「駄賃」
馬鹿にしたような返答が返る。ちょっといらっとしたのでお礼も言わずに封を切り、ガリガリ噛み砕いてやった。
いちご味が口に広がるにつれ、心に穏やかさが帰ってくる。もし、これが狙いなら宮嶋は結構な強者だな、なんて感心とする。
「なに、飴喰いながら百面相してんだ。ほんとにお前、ガキかよ」
「な、宮嶋だって由慧に意地悪しようとしてるあたりでガキだろ!」
むっとして言い返してから、そういえばと思い当たる。本当にこれこそ今更な質問だ。
「宮嶋はなんで由慧のこと嫌いなんだ?」
「は?」
「あんなに可愛い天使なのに、どこが気に食わないんだろ? 性格? あ、でも、本性を知ってるのは溝内くんぐらいか?」
ぶつぶつ呟いてみるも、答えは見つからない。由慧の本性を知る前ならあんな美少女、いや美少年を嫌うなんて宇宙人か! っと嘆いたかもしれないが、ブラックな面を知ってしまった今はちょっと言い難い。
いや、本当に溝内くんはすごいよ。
「あ、でも由慧のやることなすことに全部に対抗心を燃やすぐらいなんだから何か大きな理由が」
あれから佐雨に聞かされた話では、宮嶋は由慧が学級委員をやれば学級委員をやろうとしたらしいし、フリースローを10連続で入れたと聞けば出来るまでやり続け、誰かが嘘で由慧が食堂のカレーを大盛り5杯食べたと言えば同じだけ食べたらしい。
だから、時々騙されて見事に雑用を押し付けられたりしているらしい、哀れ宮嶋。
「なんだよ、その生暖かい目は」
「まあ、それは置いといて。宮嶋、なんでだ?」
口の中は甘ったるい、いちご味。浮かぶ疑問は考えるほど巡る不思議。
あれ? でも嫌いならどうして宮嶋は。
宮嶋はついと、拗ねたように視線をずらした。
「あれは入学式の時のことだ」
……入学式まで遡らなきゃいけない感じですか。
どれだけ年季は入ってるのさ。
深葉はガード固そうで、実は豆腐な子です。