act.15 別に抜けがけ禁止令は出てねぇだろ
「憂鬱すぎる……」
帰りの身支度をしながら本音が溢れ出す。
この頃の学校からの帰路は三人だ。もう一回言う、三人だ。なにが楽しいのか、私と由慧と宮嶋。
もちろん私が真ん中だ。ちなみに両脇の二人は会話をしない。するとしたらシカト仕込みの皮肉ばかりだ。
「深葉、クラスで頭の弱い子の面倒見てるんだって? 無理しなくていいんだよ。馬鹿は感染病なんだから」
「お前、保育園の頃からストーカーみたいにベタベタされてんだろ? 気をつけろよ、やばい奴はエスカレートするらしいからな」
両側から同じようなことを聞かされる。相手を空気扱いで、私に延々と相手の悪口を刷り込む。いたたまれない感が半端ない。
え、なに私、まさかの針のむしろですか。
これが美少女の取り合いとかなら私のために争わないで、になるのだが生憎のところヒロインキャストが残念なのでならない。しかも、宮嶋は私が好きなのではなく、由慧が嫌いだからという参戦理由である。
これを私にどう収集をつけろと?
佐雨に話せば楽しがるだけで解決策のひとつもよこさない。友達甲斐のない奴め! でも、嫌いになれないよ! この状況を愉しがる佐雨は悪巧みする美人みたいで綺麗だからね! これだから美人って卑怯だね!
「どうした? なんか目、潤んでんぞ」
「出たな! 私の平和破壊機2号!」
ひょいと現れた宮嶋を威嚇する。帰り支度を済ませたらしい宮嶋は眉をひそめた。
「平和破壊機2号ってなんだよ? 戦隊ものか?」
「私が知るか! 宮嶋が私の平和を壊すのが悪い。なんで帰り道であんなにぐったりしなきゃいけないんだ」
自分で言っていて空しくなってきた。本当になんだよ、平和破壊機2号って。すごいそのまんまネーミングだよ。というか、絶対に戦隊ものよりその敵の名前だよ、これ。すごい嫌な響きだよ、平和破壊とか。
「あぁ、そうだな。お前は帰り道、楽しくないよな」
気づいたの、今更かよ! 叫び疲れたので内心で突っ込む。宮嶋は恨めしげにしている私の顔を見ると、支度の終わっていた私の鞄を机から取り上げた。
「ほら、行くぞ」
「え、由慧は?」
「三人で帰りたいのかよ」
「う、それは」
あの帰宅するとぐったりしている帰路を思い出すと、反論が出てこなかった。
そうしている間にも宮嶋は私の鞄を持ったままで教室から出て行ってしまう。考える暇がなく慌てて私は宮嶋を追う羽目になった。
その後、教室。
「あれ? 佐雨さん、深葉は?」
「遅かったねぇ、旦那。今しがたお姫サマは攫われてしまったみたい…………って、ちょっと旦那、その目はさすがにヤバイから落ち着きなって」
はい、サブタイトルは宮嶋発言です。