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女王様とお呼びっ!  作者: 庭野はな
王妃の公務
30/88

[30] まずは食い気

エリルのベッドで目覚めた私は、窓から見える空のかなり高い位置に太陽があることに気付いた。

あちゃあ、すっかり寝坊しちゃった。

昨夜、疲れて戻ってきて今日からの計画を見直して、それから布団に倒れ込んで……。

あわててキッチンに行くとテーブルの上に置き手紙があった。

職場に顔を出し昼には戻るので、家の中で大人しくしておくようにと几帳面な字で書いてあった。

筆圧にむらが少ないところがカイルの字と似てるな。

さすが兄弟ね。

私は窓を空けてお茶を入れキッチンの椅子に座った。

気持のよい風が抜け、おろしたままの髪を揺らす。

今日で4日目、そして残り3日。

色々有りすぎて、もう?ってかんじ。

作戦に追われ市内観光がろくに出来てない。

買い物を楽しみにしてたのに。


でも、でもね。

ふっふっふっふっふ。

今日からの作戦は昨日までのドキドキワクワクなアクション編とは違うのですよ。

地味な足を使う調査。

昨日までのが印籠を出さない水戸○門なら、次の作戦は強制捜査のないマ○サの女。

どっちも肝心の美味しい所無しってのがガッカリだけど、特に次の作戦なんてまずアクションなんて起こりえないからね。

だけど、私はこっちのほうが楽しみだったの。

なぜなら、この街ほぼ全てをまわることになるから。

買い食いもオッケー!

街の人とも触れ合っちゃうわよ。


私は昨晩色々書き加えた計画書を取り出した。

今回は城下町全域をまわることになるのよね。


城下町は正方形に広がり、外側を昨日見たような街壁で囲まれている。

そして中央に城があり、四角いドーナツ状の部分を対角線に区切ると、東部、西部、南部、北部とわけられる。

各部の中央、壁を垂直に貫くように大通りがあり、それによって分断された地区を東部一区、東部二区というように呼ぶ。

その大通りが外壁と交わる部分が昨日通った門で、道は国内の各地方へ続く街道となる。

つまりお城が4つの街道の起点となるの。


ちなみに門は、東門、西門、南門、北門と呼ばれ、警備兵が常時立つそこの門の柱の部分は部屋がつくられていて、片方は警備兵用の詰め所。もう一方は各区の警護官詰め所になっている。

要は、城下に入るには必ず交番の前を通らないといけないってこと。

必要があればすぐに出入りを制限することもできて、よく考えたものよね。

それとは別に、壁の四隅の角、各区の境目にあたる通りの突き当たりは塔のようなものが壁にめりこむように建っている。

そこは詰め所の5倍ほどの面積を持ち、建国当時は警備隊はおらず、軍が城下を警護し外敵に備えるための隊舎として使われていたんだとか。

だけど、平和な世となった今は壁の上に出る3階以上と地下は軍の管轄のまま封鎖され有事の際の武器や食糧が備蓄されているが、1階と2階は公共施設が入っている。


今回の私のターゲットは、西部一区と北部一区の間、城の北西にある貧救院。

その貧救院が運営する支部が東部、西部、北部に点在し、それをまわって様子を隠れて視察しながら、平民向けの学校や病院も併せて回る。

その中にどうして南部が入っていないのか。

実はこの城下は意図されたのかは分からないけど見事に住人が綺麗に住み分けされてるのよね。

東部は商業を中心に発展していて大通りには大店が並び、中に入った通りにも様々な店や卸問屋が並んでいる。

住んでいる人達も商人が多いのだそう。

私たちが泊まっていたあのホテルヴィラディオもこの地区にあって、売買だけでなくサービス関係もこのエリアが多いらしいわ。

そして西部は、今私のいるウィルーの家がある地区。

こっちは工房を中心にした産業エリアで職人達が住む町。

まじめで実直、素朴な人が多く全体的に落ち着いた雰囲気を持ち、西部で仕事をしながらもあえて東部に住む人も多いのだとか。

もちろん生活に必要な商店はそれなりに揃っているけど東部には叶わない。

美味しいものは料理も材料も東に集まってると聞けば、そちらに行ってみなくちゃと思のも当然。


そしてここで問題となるのが北部。

東部や西部では中流から労働者達が暮らしている。

だが、北部では労働者に加え、職のない貧困層が多く暮らしている。

なんらかの事情で地方から出てきた人達が北部のスラムに住み着くケースが多く、貧救院では毎日炊き出しが行われ支援をしているけれど、仕事も見つからず生活も向上しないため不満が募っていってるらしい。

そこが今、王子の抱えている課題で、ただでさえ状況はよくないのに、更に綿々とあの手この手で不正が行われて、救民の為のお金がどこかへ消えていってる。

そこで、私がどかんと風通しが良くなる一撃をかましてくれないかということなんだけど。


それで最初に出た南部のことだけど、南部は城の正面入り口に隣接している地区の為、お役所関係や公的施設、貴族の屋敷が立ち並んでる。

私が最初にこの世界に降り立った神殿があるのもこの南部。

平民が暮らすことは許されてないので、今回の調査には必要ない。


今日は東部をまわるので、町娘っぽい格好に。

紫の小花模様が散る淡い黄色のパフスリーブドレスに、グレーの編み目が花模様になってるよく見るとストールを羽織ってみました。

うーんロマンティック。

髪はシンプルにシニヨンにまとめて。

可愛すぎるんじゃと不安になったけど、首もとにドレスと同じ生地のリボンを巻くと落ち着いて見えるので、曲がり角過ぎの私でも大丈夫。

さすがお針子さん、いい仕事してるわ!


すっかり準備が出来た頃、ウィルーが帰宅。

職場に行くからとあったから楽しみにしてたんだけど、見事私服でした。

本当に残念。


「じゃあ、ぼちぼち行くか」


「お腹空いた」


「朝飯食べなかったの?」


「街で食べるのを楽しみにしていたから。早めのお昼御飯にしましょうよ。残り3日、平民グルメ堪能するわよ」


「ユウ、仕事しようね」


「もちろん!食べたらがんばるわ」


私たちはまず、近所のマーケットを通り抜けた奥にあるウィルーおすすめの定食屋さんで、ウキナギというにょろっとした生き物を開いて骨をとったものを蒸して唐揚げにしたものをメインに、野菜シチューとパンがついた「ウキウキときめき定食」をたいらげた。

お腹が満ち足りると心に余裕が出るよね。

これで仕事に集中できるというものだわ。

こうしてようやく、私たちは救貧院を目指して出発した。

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