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女王様とお呼びっ!  作者: 庭野はな
淑女教育編
11/88

[11] 押してばかりはただの能無し

「姫は殿下をどんな風に可愛がられてるんですか、僕達も知りたいですよ」


なるほどね、青少年よ大人の女を舐めるなよ。


「あら、あなた方が私の相手をしたいとおっしゃるの?」


「満足はさせますよ。あなたのここからここまでね」


ハリーは私の足元から胸元まで舐め上げるように視線をはわせた。


「うふふ、ご冗談が過ぎますわ。私より手練手管に優れたマダム達とお楽しみになればよろしいじゃありませんか、ほら、あちらにたくさん」


窓の中を指しても、私から目を離そうともしない。


「僕達は美しいあなたにお願いしたいんですよ」


「申し訳ないけど、私は王子の花嫁になるのですからそのようなことはねえ」


「未だ花嫁ではない。だから今の内に僕達と甘く遊びましょう」


さっきから僕たち僕たちって、3人でするつもりかしら。

生真面目なユリウスをみていてお固い世界かと思いこんでいたけど、こればっかりは万国共通というか異世界共通?

好きな人は好きよね、ホント。

粘る青年達に一生懸命猫をかぶってるのが面倒になった。


「あら私ったら、そろそろ戻らなければ。お話楽しかったですわ、失礼」


「おっと、まだ付き合ってください」


「そうそう、話し足りないんですよ」


ちっ、切り上げ作戦失敗か。

私が二人の横をすり抜けようとしたが、リックに腕をがっちり掴まれてしまって状況が悪化してしまった。


「お離しくださらない?私は戻りたいんですの、王子のもとに」


「はっ、あの青くさい童貞野郎といてもつまらないでしょうに。僕達が愉しませてあげますよ」


自分のことをどう言われても面倒だなとしか思えないのに、ユリウスへの悪口になると私は妙にムカムカしてきた。

これから自分達の主になろうとする王子を見下し、公に将来の伴侶候補と認められた私に向かってそれを口にする馬鹿、ユリウスに必要かしら。

身体の中を黒いものがわき出し血が騒ぐのを、まだ早いとなだめる。

私は張り付けていた微笑みをひっこめ、代わりに婉然とした笑みを浮かべた。


「ボウヤ達、あまりだだこねるんじゃないわ。女をくどくのに押してばかりはただの能無しよ」


急に調子の変わった私に青年達は躊躇する。

私はきつく腕を掴む男の手を空いた手でやさしく握った。

そして、そっとそれを離させると自由になった手でリックの頬をひと撫でした。

いきなり態度が豹変した私に彼らはとまどっていたが、やがて勘違いし期待した顔でにやつく。


「私に対して言ったことは見逃してあげる。だけど王子への暴言は聞き捨てならないわ。あなた方が王子以上に何か優れていると?」


「知りたいですか?だから今から教えて差し上げますと」


私はドレスと揃いの白い絹の手袋を嵌めた指先でそっとリックの唇に触れた。

彼の髪と同じ茶色の瞳をじっと見据え、静かに言う。


「誰が今その口をきいていいといいました」


彼が目に動揺を浮かべ口を閉じると、私は満足そうな笑みを浮かべた。

そして一歩彼に近づくと愛を囁くような小声で警告した。


「今なら全て見逃してあげると言ってるの。リック、侯爵の息子として分別があるならこのまま中へ戻りなさい」


「おいリック、何を呑まれているんだよ。ただの女一人だぞ」


数歩後ろに下がったリックの腕をハリーが掴み小さい声で怒鳴る。


「もうあきらめようぜ、戻ろう」


「何言ってんだよ、次期王妃をものにする機会はもうないって」


「やめとけ、俺達には無理だ」


「じゃあお前は戻れよ、僕一人で遊ばせてもらうぜ」


「おい!」


私はリックに目で中へ戻るよう合図を送った。


彼が心配そうに振り返りながら室内に入ったことを確認すると、ハリーに向き合う。

ここまで察しが悪いとは、救いようのない馬鹿息子決定だ。


「この夜会は私の大事な方のものだから騒ぎは起こしたくないの。私はあなたに応える気はないわ。あきらめなさい」


「女が!僕に命令するなよ」


「懇願しろとでも?」


「ああ、ひざまづいてな。だが、僕の要求を否定するなんて許さないさ」


私のはっきりとした拒否に頭に血が上ったのか、すでに周囲のことを忘れてしまったようだ。

狂気の熱に浮かされた顔は上気し、喋るごとに大きくなる声はもう私にはフォローのしようがない。

黙ってしまった私に勝利を確信したのか、高らかに笑い、せいいっぱいふんぞりかえって罵詈雑言をぶつける。


「あんな公の場で宣言するぐらいだ、恥じらいなんて持ってないだろ。どうせどんな男とにも身体を許す売女だから、あんなぐず王子のモノだけでお前が満足できるわけないじゃないか。それをもったいぶるなよな。さあ、大人しくこっちで足を開けよ」


私の肩につかみかかった所で、ハリーの身体が止まった。

彼の首筋から頬に向けて白刃が伸びていたのだ。


「これ以上、俺の花嫁を愚弄するか」

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