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最悪な始まり 前編
ラブとキャリアの両立
朝8時30分。
如月遥は、渋谷の本社ビルを見上げて深く息を吐いた。
「今日から、例の大型プロモーション案件か……」
社内でも注目の案件。成功すれば部長昇進も夢ではない。
しかし唯一の問題は——クライアント側の担当者。
会議室の扉を開けた瞬間、遥は固まった。
「広告代理店のクリエイティブプランナーさん? よろしく。時間には厳しいので」
柔らかい笑みの奥に、温度の低い声音。
遥は一瞬で理解した。
(……なるほど。噂通り、面倒くさいタイプだ)
男は名刺を差し出す。
「三嶋玲央。うちの案件は妥協しない。御社も同じ前提で進めてください」
遥は名刺を受け取りながら、眉をひそめた。
「妥協しないのは結構ですが、現実的なラインもご理解いただきたいですね」
その瞬間、わずかに三嶋の笑みが深まった。
「面白い。じゃあ、証明してもらおうか」
会議室の空気が、わずかにきしんだ。
遥は深呼吸し、資料を広げる。
(証明、ね。いいわ。その挑発、買ってあげる)
こうして、プロジェクトと恋の火種は、同時に火をつけられた。




