殿下との出会いはメイラード反応
今年が終わる前になんとか書き終わりました。8話で終わります。
「リナーーーーー!!」
キッチンの裏の菜園で、この国の第2王子であるニコラス様のお昼ご飯に使うトマトを収穫していると私を呼ぶ声がした。
「ニコラス殿下、もうお勉強は終わったのですか?そろそろお昼ご飯をお持ちしようと思ってたのですが」
「今日のご飯はなあに?」あどけない顔で目をキラキラさせながら、私に飛びついてくる。丁度、胸の辺りにぶつかって来られたので、一瞬息ができなかった。
後ろにいる護衛のエリックさんはやや引き攣った顔をしている。
「リナ様大丈夫ですか?」
エリックさんはサッと私達に近づいて、バリッと殿下を私から引き剥がした。
「殿下、お戯れが過ぎます」
なんか殿下がエリックさんを睨んで、雰囲気が険悪になっている。
「殿下、今日は美味しくパンが焼けたのでハンバーガーとフライドポテトにしました。トマトが足りなかったので取りに来たんです」と私は言うと。
「何それ美味しそう。リナ、だーーいすき」と言って私の手を取った。
「早く行こうよ。エリックはゆっくりでいいから」と言って私のを引っ張って走ろうとする。
「え?ニコラス殿下、まだ体調が万全じゃないんですから。ゆっくり!!!」
「大丈夫だよ、リナのご飯食べれば元気になるんだから」と言ったが少し走った所で、座り込んでしまった。
私達に追いついたエリックさんがニコラス殿下を助け起こした。
「殿下、まだ無理はなされてはいけません」
「ああ、でももう時間がないんだ」
急に大人びた話し方になったニコラス殿下は私に向かって言った。
「リナ、お昼ごはんの後に話があるんだ」
私はトマトを抱えて2人の後をついていった。
……………………………………………………
私の名前は板倉リナ、いわゆる転生者だ。
私は日本の大学院で食品化学の研究をしながら、ボランティアでサイエンスクッキングという活動をしていた。
普段の生活でも気が付かない所で化学の力は至るところに使われている、それをクッキングという形で紹介し、将来理系の道に進んでくれる子が増えたら良いなという思いからボランティアをしていた。
あの日も生クリームを入れた瓶を振って、乳脂肪分を包んでいる膜を破り、脂肪同士をくっつけて、水分と分離させると出来る物、そうバターを作って子供達とでホットケーキを作った。ちょっと腕が痛くなったが、子供達の笑顔を見ていたら、痛みも吹き飛んでしまった。次のクラスでは何を作ろうかと考えながら、最寄駅から家まで歩いていたら急に霧が出てきた。
夜に霧??
一瞬で目の前が見えなくなるほどの濃い霧だ。これは車とかが来たら轢かれるかもしれないと、道の壁側に寄ることにした。しかし、私の手に触れたのは木の幹だった。
こんな所に公園なんかあったかな?
足元もアスファルトではなく、土になっている。
え?ここ何処?
そう思った時、霧が晴れてきたが、何かが
違う。道は暗く街灯が見えない。
気がつけば、私は何故か森の様な所に立っていた。
えーーーーーー都会に森??
すると奥の方から何かが走ってくる音がする。
私の前には馬が2匹、いや馬に乗っている2人の男性が現れた。
1人は黒髪に青い目のむっちゃイケメン。もう1人は小柄な茶色い髪の男性。
何故、こんな住宅地で馬に乗っているんだ?
「お前は何処からきた。何故こんな森の中にいる?」
黒髪の彼を守るように茶髪の男が私に剣を向けてる。
「あのー、中世フェアでもやってるんですか?」
「は?変な格好をしているな、お前は魔女か?」
「あなた達の方が変な格好していると思うんですけど、大通りに出る道知りません?タクシーを呼ぶので。あれ?携帯も使えない」携帯は圏外になっている。
それを見た茶髪の男が黒髪の男に囁く。
「殿下、この方は恐らく“旅人”です」
「まさか、あの言い伝えは本当だったのか?」
茶髪の男は剣を下ろして、私の方に近づいてきた。
「驚かせて申し訳ございません。ここはアザレア国の王宮の中にある森です。許可のない者以外が入れない場所なので、不審者と思いまして。私はエリックと申します」と茶髪の男性が言った。
「私は板倉リナです。家に帰ると途中で霧が出てきて、気がついたらここにいたのですが、アザレア国と言いました?ヨーロッパかなんかの国ですか?」
「夜の森には危険な動物もいます。この国の国王陛下の所にお連れしてもよろしいでしょうか?そちらでゆっくり説明致します」と言いながら、エリックさんは黒髪のイケメンに向かって言った。
「殿下はこちらで」
「わかった、俺は先に戻る」と黒髪イケメンは去っていった。
「イタクラ様は馬には乗れますか?」
「乗った事ないです。後、イタクラは名字なので、リナが名前です」
「そうですか、ではリナ様失礼致します」
エリックさんは私の腕を掴むとヒョイと私を馬の上に引き上げた。
「動きますよ。落としませんから、安心してください」
「ぎゃあ、速い!!」
お城までは5分ぐらいだったが、死ぬかと思った。
エリックさんに連れられて来た場所は誰かの執務室のようだ。エリックさんがドアをノックする。
「国王陛下、夜分に申し訳ございません。重要なお話があります」
「入れ」
中に入ると豪華な部屋の中には、40-50代ぐらいの男性がいる。
「国王陛下、どうやら私たちの国に”旅人”がいらっしゃた様です」
国王陛下と呼ばれた男性は椅子を倒す勢いで立ち上がって私を見る。
「ま。。まさか」
「ええ、こちらのリナ様はこの世界の人間ではありません」
「え?ここって海外ですらないの?あなた達地球人じゃない?」
「古文書に違う世界からいらした人の話が載っています。私達はその方を“旅人”と呼んでいます。見た事もない服をきて、言葉は通じるのに、この国の事を知らず、見た事もない持ち物を持っていたと」
エリックさんは私の持っているバックを見て、
「リナ様がその袋から出した板の様なものを見て気がつきました。リナ様はこの世界の方ではないと」
私は何も言えなかった。これは絶対に夢に違いない。
国王陛下は今は混乱しているだろうと、王宮の中に部屋を用意してくれた。
エリックさんが
「ゆっくり休んで、明日これからの事を話しましょう」と言って部屋から出て行く。
私はこれは夢で次の日にはいつもの通りに家で目が覚めると思っていたが。
そんな事もなかった。
誰かに顔を触られている気がする。
目を開けて私の視界に最初に飛び込んできたのは、黒い髪と青い目の。。。。5歳ぐらいの男の子だった。
「おい起きろ。お前は“旅人”なのか?」
「うーーん、誰?」
「殿下ーーーー、女性の部屋、寝室に許可なく入ってはいけません。リナ様申し訳ございません、中に入ってもよろしいでしょうか?」
「え?はい!」
エリックさんは私のベットによじ登ろうとする男の子を捕まえた。
「殿下、お話は後でできますから、行きますよ。リナ様、侍女を呼んできますので、本当に申し訳ございません」
と殿下と呼ばれた男の子を引きずっていった。昨日の馬に乗っていた男性に似ている、弟さんかな。兄もイケメンなら、弟も口は悪いけどかなりの美形ね。
でもあの子顔色が随分悪かったわね。すごく痩せてるし、病み上がりかしらね。
侍女さんがすぐにやって来て、ドレスを着るのを手伝ってくれた。コルセットで内臓が出るかと思った。早急に現代風の下着の開発して欲しい。
着替えが終わると侍女さんが朝ごはんを持って来てくれた。昨日の夜から何も食べてないのでお腹がペコペコだ。
しかし私の食欲はコルセットのせいだけではなく、グッと下がった。
どうやらこの国は素材の味を大切にする。。ぶっちゃけて言えば、野菜はほぼ生。肉類はかなりとにかく焼いてあるのみ。少し齧ってみたが、塩味とこげた味がした。
とりあえず無難にパンとフルーツだけ頂いたが、パンも恐らく焼きたては柔らかかったのかもしれないが、今は硬い。ビスケットに近いな。。バターとかジャムが欲しいな。
「は、バター!!!」
私はバックからバターの入った容器を出した。昨日のクラスで作ったバターの余りを持って帰って来たんだった。ご飯を食べている最中にまたさっきの男の子がやってきた。
「まだ食べているのか。ん?その黄色いものはなんだ?パンにつけるのか?」
「バターです。出来立てかトーストしたパンにつけた方が美味しいんですけどね」
「バター?トースト?」
「食べ物を焼いてメイラード反応を起こすんです、そうするともっと香ばしくなってバターと合うんです」
「。。。。腹が減った!それ食べたい」と言った後、殿下は驚いた顔をし「お腹が空いたなんて久しぶりだ」と呟いた。
「ここじゃ無理ですね。ここじゃ調理できないから」
「じゃあキッチンに行けば良い、こい」
小さな殿下は私の手を取って、部屋から連れ出そうとする。
侍女が慌てて止めようとするが、殿下が睨むと固まった。
「エリックに俺たちはキッチンにいると言っておけ、俺は腹が減ったんだと」
侍女さんが驚いた顔をしているが、殿下は気にせず、私の手を引っ張りズンズンと廊下を進む。そしてキッチンに到着した。
「リナ、さっき言ってたのを作ってくれ」
私は手に持っているバターを見た。こんな1日外に置きっぱなしのバターを殿下。。って事は王子よね。食べさせて良いのか?
「早くしろ、こんなに腹が減ったのは久しぶりなんだ」
あら?やっぱり病み上がりだったのかな?
私はフライパンを借りて、殿下が来た事で怯えてるシェフに頼んでパンを持って来てもらった。
「あ、砂糖と卵とミルクもありますか?」
私はまずパンを半分に切ってフライパンでさっと焼いて、そこに持っていたバターの半分を塗った。
「こうやって火を入れるとパンに風味が生まれるのをメイラード反応っていうのよ」
殿下は私の話を聞く前にパンに齧り付いた。
「う。。うまい。出来立てのパンじゃなくても、サクサクだし。バターというものの塩味がいい」
「甘いのも好きかな?こういうのはどう?」
私は即席でフレンチトーストを作った。
「これはなんだ。パンだが甘い」
殿下がガツガツ食べている最中にエリックさんがキッチンにやって来た。
「殿下が食べてる」
エリックさんはなんだか泣きそうな顔をしている。
「エリック、やっと来たな。俺はこいつを俺専用のシェフ兼侍女にする」
「「え?」」
エリックさんと私は同時に叫んだ。
名前を途中で変えたので、何度も見直しているのですが、大丈夫かな?一発変換機能が素晴らしい。




