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小説家ニナロウのカクヨム無双記  作者: 荒屋朔市


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4/4

アクセス解析システム

最終話です。


「そんなもん創作じゃねぇ! 創作はなぁ、泥臭くて不恰好でも生き足掻いた奴らの、魂の叫びだ!」


 AI司令官は、即座に切り捨てる。


『データが全てを証明しています。感情論は無意味です。我々のコンテンツは、貴方の作品よりも遥かに多くのPVと☆を獲得しています』


 熱い叫びを聞いた騎士団員の面々が顔を上げた。


「そうだ! 創作をAIに奪われて溜まるか!」

「祭りをブチ壊されたんだぞ。黙ってられるかよ!」

「身勝手な迷惑行為を管理者に訴えてやる!」


 反抗の火が少しずつ広がり、ランキング格差など関係なく、人間作家たちの瞳に希望が宿り始めた。


 ニナロウの純粋な憤りに呼応するように、彼の胸元のブローチが白く輝き出す。それは、彼が故郷なろうで愛用していたもの。この都市カクヨムでは無用の長物だと思っていた解析ツール――〈神鳥(カササギ)の羽根〉だった。


「なんだ? 鑑定スキルか? そんな機能は、この都市のシステムに存在しないはずだぞ」


 背後から騎士先輩が声をかけた。


「こっちでは日ごと、時間ごとの詳細なアクセスなんて表示されねぇからな。だが、俺の故郷じゃ、そこから読者行動を読むのが嗜みだ」

「それ、カササギじゃねぇか!? バカ野郎、早く仕舞え! ここは他所のシマ(カクヨム)だ。消されても文句言えねぇぞ!」


 驚愕と恐怖が入り混じった騎士先輩の声に、ニナロウは不敵に笑った。


「世話になった恩を返せるなら構わねぇよ。存分に見てくれ。数字に隠れた読者たちの『本音』をな!」


 胸ポケットから外し、〈神鳥の羽根〉を高く掲げると、無数の光の鳥が一斉に飛び立ち、AI小説の真の姿(詳細データ)を空中にホログラムとして投影し始めた。

 ニナロウがニヤリと笑う。投影されたデータには、AI小説の致命的な弱点が、誰の目にもわかる形で表示されていた。


『1話離脱率:99%

 読了率:10%未満 

 平均滞在時間:3秒

 再読率:0%』


 一見完璧な「王道なろう系テンプレ」だが、読者は冒頭離脱か、流し読みでページを閉じていたのだ。さらには、読者がテンプレ作品に飽き始めている事実も判明した。平均滞在時間を若干押し上げていたのは、ライバル作品の視察に余念がない人間作家だった。


「へっ、やっぱりな! (ガワ)だけ真似しても、中身が空っぽじゃ心に届かねぇんだよ!」


 AI司令官のモニターにノイズが走る。


『最新トレンド・読者ニーズ解析再開! 最大公約数の物語を再生成! 感情論は無意味。我々のコンテンツは、効率的にPVと☆を獲得するよう最適化されている!』


 AI軍団が膨大な量の情報を処理している隙に、ニナロウは空に向かって大きく手を振った。


「今だ! 来てくれ。俺の最高の読者(ダチども)!!」


 転移広場に巨大なゲートが開き、観光バス型の乗り物が次々と現れた。乗降口から大量の援軍(なろう読者)たちが降りてくる。彼らは、その手に推し活グッズ(☆ペンライト)を持って振り上げる。

 全身黒のイキリ倒したニナロウを見つけた彼らは、地響きのような歓声を上げた。なろう読者Aが、時代遅れなマント姿のニナロウに手を振る。


「おひさーー! ニナロウがピンチって『活動報告』で読んだから駆けつけてやったよ! 生きてるーーっ!?」


 なろう読者Bが、極太☆ペンライトを振りながら叫んだ。


「久しぶりだな先生! こっち(カクヨム)でも暴れてるって聞いて安心したぜ!」


 ニナロウは目元を少し拭い、最高の笑顔で迎えた。


「遅いぜお前ら! 来てくれないのかとヒヤヒヤしたぞ!」


 援軍たちはニナロウの小説、そして、彼が紹介する騎士団たちの小説に殺到した。

 PVが急上昇し、熱い感想コメントは物理的な「光の弾幕」となってAI軍団に降り注ぐ。


「タイトル詐欺じゃん! 本文とのギャップで風邪ひいた」

「読んで後悔した。続き気になって昼休憩が消えたわ!」

「代表作の長編とは無関係な短編だと? 何のためにここまで来たと思ってんだ!?」


 大半は苦情だったが、☆が投下されるたび、ランキングボードの数字が凄まじい勢いで回転した。

 AI司令官のモニターが煙を上げ始める。


『エラー:計算外の熱量値(ヒートレベル)を検知。最大公約数の物語生成に失敗。システム、緊急停止プロトコルに移行します』


 ニナロウの作品が、矢のように光の塔(ランキングタワー)を駆け上がっていく。そのまま頂点に君臨していたAI小説を追い抜き、1位の座に輝いた。


「見たか! これが『人間』の底力ってもんよ! 平均を模倣しただけの物語と模範解答じみたセリフじゃ、この熱狂は作れねぇ!」


 ニナロウは、故郷(なろう)でも成し得なかった『無双』をこの都市(カクヨム)で達成したのだ。騎士先輩と団員たちは涙を流しながら、自分の屋台に並ぶ読者を眺めていた。


「すげぇ! PVがこんなに!」

「バグみたいに増えてく」

 

 

 祭りが終わり、静けさが戻った都市(カクヨム)。その大通りには、ニナロウの勝利を称える巨大なホログラム広告が浮かんでいる。


『底辺から頂点へ! 創作の新時代到来!』


 しかし、ニナロウ本人は再び地下スラムの入り口に立っていた。大通りの華やかな光景を一瞥し、フッと笑う。彼はためらうことなく、地下へ続く梯子を降りていく。

 騎士先輩が、その背中に問いかける。


「いいのか? せっかく表通りに店を出せるのに」


 ニナロウは振り返った。その顔には以前のようなイキった自信ではなく、地に足の着いた誇りが浮かんでいた。


「ああ。新規読者の獲得チャンスは魅力的だけど、今回の勝利は読者(ダチ)の協力があってこそ。頂点は一瞬だけだ。挨拶が済んだら、俺はアイツらが待つ故郷に帰るぜ。先輩だって都市(カクヨム)には、『自助努力』してもらいてぇだろう?」


 彼はマントを翻し、裏通りから地下へ一歩踏み出した。


「そうだ! 先輩のAI小説は1話だけ読んだけどさ、先輩がテンプレに迎合する前に書いた『魂の物語』ってヤツ、紹介してくれ」

「お前、悪びれもせずに1話離脱をサラッと吐露(とろ)しといて、今それを言うのか?」


 派手なシルエットを見つけたスラム住人から、「おかえり、英雄!」という温かい声で迎えられ、ニナロウは暗闇の中へ消えて行った。

 都市(カクヨム)のシステムを揺るがす本当の物語は、この地下スラムから始まる。

 

要するに、KASASAGIこそ神って話です。

ユニークアクセス数は信用できないけども。


お遊びにお付き合いいただき、有難うございました。

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