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2「吟遊詩人あらため、ハーメルンの笛吹き男」

 *


「お前のような、冒険者をそそのかす極悪人はハーメルン以来だ」


 取り調べの男は呆れたのかそう言って、目を伏せた。

 手錠をかけられたが、いつでも外せる。

 しかし、聞き馴染みのあるその名前に俺は、


「ハーメルンってあの笛吹き男の?!」


 少し、男の話を聞いてみる事にした。


――時は、さかのぼり二時間前。

 そのまま眠ってしまったベンチにて。

 

「……い。起きろ! おいっ!」

「……ん。おはよ〜、クエストの誘いなら銀貨五枚でいいよぉ〜。ふぁ〜」


 俺を起こしたのは、古びたローブを纏い、腰にロングソードを携えた中年冒険者の男。

 見るからに金は持ってなさそうだが、カモにするには良さそうな、クソ真面目そうな顔をしている。


「たったそれだけで良いのか? その前に、冒険者カードを確認させてくれ」

「はいはい、どうぞ〜〜」


 偽造した冒険者カードのランクは『S』、職業(ジョブ)は吟遊詩人。ランク以外はまんまの俺だからバレる可能性は皆無だ。


「Sランクの吟遊詩人……。お前、弦楽器はどうした?」

「弦楽器ってギターやバイオリンの? 俺はこれさ! パラエル製ヴィンテージハンドメイドモデル『アリア』。俺の相棒さ!!」


 俺は自慢の横笛を天に掲げ上げた。

 白銀の横笛には太陽すらも霞む。

 と、次の瞬間――。


「容疑者はこいつだ――――ッ!!!」


 男は声を上げ、俺の腕に手錠型の魔法具を掛けた。

 男の合図で駆け寄ってきた奴らは、ロングソードを俺に目掛けて構える。


「ちょっと待て! 何かの誤解だ、俺は何も悪い事はしていない!」

「嘘をつけっ! お前は既に職業偽装の罪を犯している! 吟遊詩人が横笛ってふざけてるのかお前っ! 笛なんか吹いてたら支援魔法の詩を(うた)えないだろ!」

「詩?! おっさんこそ、何言ってやがる! 詠唱なんて――」

「併せて、未達ランククエストへの冒険者勧誘及び偽称の容疑がかかっている……」

 

 被せるように話した男の容疑には覚えがある。しかし、取り繕う暇もなく。

 後ろから催眠魔法でもかけられたのか……急な眠気に襲われた。


――時は、戻り。


「ハーメルンの笛吹き男は、俺のじいちゃんなんだ! もっと話を聞かせてくれッ!」

「お前……冗談で言ってるわけじゃ無いよな?」

「あったり前だろー」


 外した手錠をクルクル回して応える。

 取り調べの男は豆鉄砲でもくらった顔をした。

 そうか、やっぱりじいちゃんは二つ名が付くほどの英雄だった訳か! 

 胸が昂ぶるのを感じた。

 思い返せば、笛の稽古以外にも人心掌握や拘束魔法具の解除にギルドカードの偽造……あらゆる『生き抜く為の(すべ)』をじいちゃんは教えてくれた。


じいちゃんの英雄譚は、俺が必ず――。


「看守ッ! コイツは重要参考人だ! ボスが街に到着するまで、地下牢にぶち込んどけ! 監視員を倍にして、絶対に逃すな――ッ」

 

 捕まったこともそうだが、なんか違う。


「…………あのぉ、ひとつお聞きしても?」

「なんだ?!」

「うちのじいちゃんって……」

「聞かないと分からないほど、お前は馬鹿なのか?」


 俺が憧れたじいちゃんは、英雄じゃなかった。

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