77剣豪VS剣士マーガレット・受け継ぐ力
77話更新しました
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「マーガレットめ何をするつもりなのじゃ」
「さぁ俺にもサパーリ分からん」
マーガレットは敵の間合いの手前で立ち止まり
元人間であろう魔物と対峙する。
「わたくしの声が聞こえますか？」
「えぇ～ただ会話するだけか、そりゃ～無理だろう相手は既に魔物だぞ」
「いや待つのじゃ、今手元が少し動いたぞもしや意志疎通が出来るやも知れんのう」
「そんなまさかありえんだろう」
「聞こえているなら少しわたくしとお話をいたしませんか」
「・・・・」
「・・・・」
「お、お嬢さん、ま、魔物に成り果てたワシと話がしたいとな」
俺は驚いた
「コイツまだ自我があるのか信じられん、何という強靭な精神の持ち主だ」
「ウム確かにな、精神まで喰われてもおかしくない状態じゃからな」
「まぁ良かったわ、ようやくお話が出来ますわね、わたくしマーガレットと申しますあなたは？」
「名前か、ワシの記憶は失われておる、名前も何処で生まれたのかも、どうしてこの様な姿になったのかも何も思い出せぬ」
「それはお可哀想に思い出が消えて行くのは怖いですわね」
「そんな感情すらもはや湧かぬ」
「それでも僅かながらでも自我をお持ちなのはスゴい事だと思いますわ」
「化け物になって人から褒められるとは世の中満更捨てたもんじゃないな、お嬢ちゃんありがとよ」
それから時間にすると１時間ほど俺達は黙って二人のやり取りを聞いていた
「こうやって話が出来てワシは満足している、最後にお嬢ちゃんワシの頼みを聞いてはくれんかな」
「えぇわたくしが出来る事なら何でもおっしゃって下さいな」
「それは有難い、ではワシの自我が完全に無くなる前にワシと真剣勝負をしてはくれんか」
「それはわたくしの方からお願いしたいと思っておりました、是非ともお手合わせお願いします」
「では時間が無い早速始めるとしよう」
俺達はその辺りの岩に腰掛け二人の真剣勝負を暫く見守っていたがこれは何かおかしい
「なぁこれってさ～真剣勝負というより師匠が弟子に稽古をつけてる様にしか見えないんだが」
「そう見えるな、妾の予想じゃがアヤツはマーガレットを見極め様としてるかもしれんのう、それと己の死に場所を見つけたのかもな・・」
それから更に時間は経過し
お互いの動きが止まった時
「お嬢ちゃんありがとうな、楽しかったよ」
「わたくしも勉強になりましたわ」
「それでなお嬢ちゃんにあと２つ頼みが出来た叶えてはくれないか」
「えぇ～モチロン」
「ありがたい、ではワシのこの技を継承してはくれないか」
「えっ、わたくしでよろしいのですか」
「お嬢ちゃんだからこそ譲りたいのだ」
「是非ともお受けいたしますわ」
「善は急げだ、では時間が無いから早速行くぞ」
「おいおい相手が生きてるうちに継承なんて出来るのか」
「妾も初めて見るわ」
魔物が何かを唱えると光の玉がマーガレットの体の中に入っていった
「ウム成功した様だ、次にこの刀をお嬢ちゃんに渡そう、これはな己の攻撃範囲つまり間合いを作りその範囲に侵入する敵を殲滅する技を繰り出す為に使う」
「わたくし達に使ったあの技ですの」
「そうだ、この刀刀身がシナっておるだろうこの刀で円を描く様に振るとその範囲に自分だけしか見えない攻撃範囲のサークルが見える、一度やってみなさい」
「はい、分かりました」
マーガレットは刀を鞘から抜き円を描く様に一振する
「ウム、マーガレットの回りにあの時の青いエリアが見えるぞ」
「マジか」
「これもどうやら成功した様だ、刀の名は「三日月」技の名は「高速一閃」お嬢ちゃんの物だ・・・それでは最後にワシをこの間合いの中で切ってくれ」
「な、何を言うのですか、わたくしには出来ませんわ」
「頼むワシが自我を保って居られるのは後僅かしかない、ワシを切るにはこの間合いの中でしかダメなんだ」
「無理ですわ、わたくしには出来ません」
「この技を使えるのはお嬢ちゃんだけだ、最後は人として逝かせてくれ」
マーガレットは意を決したのか構えを取り技を放った。
それはまるで大根を切るかの様に上半身と下半身が真っ二つになった
切った後マーガレットは崩れ落ち涙を流す。
「お嬢ちゃんありがとよ、短い時間だったが出会えて嬉しかったワシの最初で最後の弟子よ」
「まだまだお話をしたかったですわ、そしてもっと剣術を学びたかったわ」
「お嬢ちゃん悲しむ事は無いよ、ワシの魂は消えてもお嬢ちゃんに託した技が残っておる、目に見えなくともワシは常にお嬢ちゃんと共にある」
「はいお師匠様、わたくし必ずこの技を守っていきます、そして伝えていきますのでご安心して下さい」
「あぁ任せた、その技と刀は必ずお嬢ちゃんを守ってくれるはずだ」
そして剣士の姿が薄くなっていく
「どうやら時間の様だ、最後に一つ思い出した事があるワシの名は「楠流水」だお嬢ちゃん達者でな、では御免」
マーガレットが握っていた手は魔香に変化していった
そして胸の辺りから蒼白い珠が天へと昇って行く
マーガレットは涙を拭き昇って行く珠を見上げて
「お師匠様ありがとうございましたそして長い間お疲れ様でした、今からの旅路道に迷われません様にこの地よりお祈りいたします」
俺達も静かに立ち上がり偉大な剣士楠流水に黙とうを捧げる。
78話「覚醒」をお楽しみに
