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亡国戦記  作者: 芦屋玲
第一章 砂漠の二人
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1-4



フリーメモに軽い人物紹介があります。


執筆の際の補助的なもので自分用なのでいい加減な書き方ですし、一応ネタバレを含むので非公開にしてますが、公開したほうが読みやすいのかもしれないと迷っています。


もし読みたい方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。


よろしくお願いいたします。



 


 状況が読めずに聞きたいことが多いランジェン、初対面にもかかわらず敵意のようなものを剥き出しにしてくるゼイン、無言のままじっとランジェンを観察するアキル。


 そんな三人の微妙な空気を察してか、アナが『まずはお茶でも。せっかくジェワが連れてきたお客様ですものね』と温かい紅茶を出してくれた。勧められるがままに椅子に座り、カップを口に運ぶ。



「美味しいです…」



 久しぶりの温かい飲み物にささくれだっていた心がほんわりと落ち着いてくるのを感じた。



「よかった。あまり贅沢は出来ないけれど、この紅茶は私のお気に入りなの」


「ありがとうございます」



 ランジェンはぺこりと頭を下げた。


 続いてジェワとアキルも彼女が淹れてくれた紅茶を味わい、最後にゼインが行儀悪くずずーっと音を立てて啜った。



(フン、育ちの悪いやつ……)



 心の中でケッと毒吐く。



「あ゛ん?」


「別に」



 ランジェンの心が伝わったかのようにガンを飛ばしてくるゼインから視線を外し、ランジェンはいよいよジェワの顔を真正面から見つめて口を開いた。



「で?俺をここに連れてきた理由は?」


(目をつけられてるとかなんとか言ってたけど、俺はここに来るのは今日が初めてだぞ…?)



 暫し沈黙が漂った。

 テーブルの上の蝋燭の灯りが揺れるのに合わせて、壁に映ったランジェンたちの影も揺らめく。


 全員の視線を一身に受けたジェワは、一度咳払いをするとようやく話す気になったようだった。





 ***





 ユキナという街は、この広大なジェーナ砂漠の東寄りに位置するオアシスである。


 ジェーナ砂漠に国は存在しておらず、大陸中のどの国の支配下にも置かれていない。しかし、砂漠に点在するオアシスの街は、その場所により最寄りの国や民族の権力が強く根付いていることも多く、ユキナもそんなオアシスの一つである。


 砂漠には様々な民族が暮らしている。定住する土地を持たない遊牧民や、一つのオアシスを住処とする各部族だけでも数え切れない。それ以外にも流れ者や旅人も多く、また、各国から追放された罪人、事情を抱えた日陰者、各国を巡る商人。


 そして、砂漠を根城にする犯罪組織。


 砂漠での生活は厳しい。オアシス以外での水の調達は不可能に近く、必然的にオアシスには兎にも角にもそういった種々の人々が集まるのだ。


 故に、国家権力は介在しないとはいえ、なにかしらの支配力が存在するのも無理からぬ話であった。


 そんなオアシスの中でも、ユキナは更に難しい問題を抱えている。


 砂漠の東側は昔から大小の戦が絶えない紛争地帯である。

 少し前に国がひとつ消えたものの、まだ二つの国が領土争いを繰り広げており、その煽りは砂漠の東部にも及んでいた。そのため、元々治安の良くない砂漠といえども東部は殊更危険が立ち込めており、ユキナには大きな問題が根を下ろしている。





 ***





「人さらい?」



 首を傾げたランジェンに、ジェワは『そうだ』と頷いた。



「外から来たやつを東部からの仲介屋に売っ払ってる。あっちはいつもどんぱちやってるし、死んでもいい人材に飢えてるんだ。そういうの相手に商売してる砂漠の奴らが、この辺りのオアシスにやって来て子供だろうが老人だろうが容赦なく連れて行っちまう。だから、ユキナでは街の人を取られないように。外から来たやつを生贄にしてるんだ」



 にわかには信じがたい話だった。


 ランジェンが逃げてきた盗賊団の奴らも砂漠を拠点にしていたし、ここに来るまでの道中でラグシャとアヤトから聞かされた話からも、砂漠が危険地帯だというのは知っているものの、街の雰囲気は明るかったし、荒んでいる空気は微塵も感じられなかった。


 職探しは上手く行かなかったが、それだって余所者が信用ならないから、と言われれば納得できる。


 それに、だ。



「東部って……テザ公国とかウォーダ連邦のこと?でもあそこは最近休戦協定を結んだだろ?」



 有名な話である。

 昨年即位したテザ公国の公主が、長年に渡る争いを厭うて和平に乗り出したという。


 そう言ったランジェンにゼインがチッと舌打ちをした。



「これだからカモにされんだよ」


「ゼイン」



 ジェワがセインを嗜める。



「なんだよ、事実だろ」


「そんなこと言ったら俺達もそうだろ」


「それはっ」


「話を進めるぞ」



 不満顔のゼインを無視してジェワは話を続けた。



「協定の話は俺らには関係がない……というか、意味がない。公国も連邦も人集めをやめてないんだからな」


「でも、お前たちが売ってる相手は仲介屋とかいう奴らなんだろ?別にそれが東側の国って決まったわけじゃないし。奴隷商人とかに売ってるかもしれないだろ」


「いや」



 ジェワが真剣な顔で首を振った。



「間違いない」



 ちらっとアナに目を向ける。


 アナが言った。



「祖父が死んだの」



 話の繋がりが見えないランジェンがなんと言ったものかと口を開閉させていると、これまで一言も発さず無言に徹していたアキルが初めて言葉を紡いだ。



「アナとお祖父ちゃんはずっとこの街で暮らしていたけど、僕とゼインとジェワは違う。僕は他のオアシスから家族で引っ越してきて、ゼインとジェワはバヤルっていう遊牧民なんだ。僕はウォーダ人と砂漠のベタ族の間にできた子供で、前にいたオアシスでは混血児は嫌われていたからここにきたんだけど、お父さんもお母さんもある日突然いなくなっちゃって、それからはアナとお祖父ちゃんに面倒見てもらってた。でも、お祖父ちゃんも……」



 間の子という話は本当らしい、とランジェンは思った。


 この街の人々やジェワたちと異なり、アキルの目は緑色をしている。


 その宝石のようなエメラルドグリーンの瞳に涙を薄っすらと浮かべて、アキルはぼつぼつと話し続ける。



「街に“ヴェストラ様”って人が来るとおもてなしのお祭りが開かれて、そして次の日にはヴェストラ様たちは街の人たちが用意した荷車ごといなくなる。いつもはそれで終わりなのに、それなのに…っ」


「旅人とかがいれば私たちは安全なんだけど、その時は街に滞在する人が少なくて……たぶんヴェストラ様に人数が足りないって怒られたのかもしれないわ。お祖父ちゃんが呼ばれて…………そのまま連れて行かれてしまったの」



 ひっくひっくと泣き始めてしまったアキルの続きをアナが語った。



「でも、祖父は頭のいい人だったの。前々からヴェストラ様のことはよく思ってなかったし、私たちだけでもユキナから出て行かせたがってたわ。だからいなくなって少しして、私と祖父しか知らない名前を使って手紙が送られてきた時に決めたのよ。私たちは絶対にユキナを出て行くって」



『そこで提案なんだけど』とジェワが言った。



「お前()()と一緒に俺達も連れて行ってほしい」







お読みいただきありがとうございます。


誤字報告、感想等があればよろしくお願いいたします。


評価ポイント、ブクマ等もしていただけるととても嬉しいです。


今後ともどうぞ最後までお付き合いください。



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