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2.ヒトはどこからきた?-ヒトの進化

 ヒトは地球で進化してきた生物の一種です。生物は進化の過程で、地球環境に適応するように変化してきました。地球上に生息する生物として、ヒトがどのように環境に適応し進化してきたのか?から考えてみたいと思います。

2−1.生物の起源

2−1−1.生命は自己複製可能な分子(自己複製子)

 生命の誕生に関しては、ある程度の確率で起こりうる一般的な物理的な現象なのか、全宇宙で奇跡的に起こった稀な現象なのかを含め、さまざまな説があります。しかし、以下のような物理的な条件から、生命は水溶液中で炭素骨格を主体とした分子として誕生する確率が高いと考えられます。その物理的条件とは、①水分子中の水素が酸素を中心に104.5度の角度で配置されていて水分子が極性を持つこと、②液体状態よりも固体状態の水の比重が軽いこと(液体の水に対する固体の水である氷の相対的比重が0.92)、③原子中の電子の配置から炭素原子を主体とする分子の結合・乖離が物理的エネルギーの観点から水溶液中では有利であること(水が液体で存在する環境では結合や乖離を起こしやすい) です。このような特性から考えて、地球以外の宇宙の他の場所で誕生するとしても、水溶液中で炭素原子と周期表上その近くにある酸素・窒素を主な構成因子とする分子により形成された自己複製可能な分子(自己複製子)として、生命が誕生する確率が物理的に高いと推測されます(「生命進化の物理法則」 チャールズ・コケル)。一般には、地球上では、生命は、約40億年前に誕生した、あるいは宇宙から地球に飛来したと推測されています。

2−1−2.最初の生命

 現在までに地球上で発見された全て生物は、デオキシリボ核酸(DNA)で形成される二重鎖(DNA二重ラセン)に遺伝情報を蓄積し、その遺伝情報をリボ核酸(RNA)の鎖に転写し(メッセンジャーRNA)、メッセンジャーRNAの情報に基づきアミノ酸から構成されるタンパク質を生成するセントラルドクマに従っています(RNAを遺伝情報蓄積に使うウイルスもいますが、ウイルスを生物と捉えるかは見解により相違があります)。DNA、RNA、アミノ酸ともに、炭素骨格を持つ分子であり、水溶液中に発生した生命の構成因子として、物理的エネルギー条件に合致しています。しかし、このような複雑な分子構造を形成するには複数の過程が必要で、最初の生命(原初生命)の構成因子であったとは考え難いです。地球上で発生したのであれ、宇宙の他の場所で発生したのであれ、原初生命はもっと単純な分子構造であったと推測されます。

 DNA鎖、RNA鎖、タンパク鎖の中で、自己複製子はDNA鎖ですので、DNA鎖が原初生命の候補としてあげられます。しかし、DNA鎖が自己複製子として機能するためには、DNAを複製する酵素(DNAポリメラーゼ)が必要です。現生生物では、DNAポリメラーゼはタンパク質で、酵素活性をもつDNA鎖は存在しません。原初生命では①ポリメラーゼ活性をもつDNA鎖が存在した、または②タンパク質が自己複製子であったという可能性も考えられますが、何れにしても、原初生命は、ポリメラーゼ活性をもつ自己複製子であった可能性が高いと推測されます。酵素活性をもつRNA鎖が発見されたことから、RNA鎖が原初生命であった可能性が高いと考えられています。

 生命誕生の条件③で述べたように、原子中の電子の配置から、周期表上で炭素の周辺に位置する原子で構成される分子は結合・乖離が物理的エネルギーの観点から有利であると考えられています。このような周期表上で炭素の近くにある原子である炭素・酸素・窒素を元にして作成され、原始地球の海中に存在した可能性が高い分子(メタン、アンモニア等)を含む水溶液(原始の海)にエネルギーとして熱(火山の噴火口)や電撃(雷)を加えることで、RNAの構成成分を形成したユーリーとミラーの実験があります(以下に述べるようにアンモニアは自然には合成されにくく、アンモニアの代わりに窒素を用いた場合は、ユーリーとミラーが用いた以上の高エネルギーが必要と考えられています)。この実験結果は、原始の海でRNAが自然発生した可能性を示唆し、原初生命がRNAポリメラーゼ活性をもつRNA鎖であった可能性を示唆します。

 原始の海でRNA鎖が複製される方向が促進した物理的な要因は明らかではありませんが、自己の複製数を増やすという観点からは、このようなRNA鎖の中からRNAポリメラーゼ活性をもつRNA鎖が生成され、このようなRNA鎖で構成された自己複製子は、自己複製能をもたないRNA鎖よりも、その数を増やす上では有利であり、その数が増えたと考えられます。原始海の局所で、このような自己複製子の数が増えていったのが、生命の始まりであったと考えられます。


 遺伝情報を蓄積するDNAが二重ラセンを形成していることを報告したのが、ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックです(「DNAに魂はあるか」 フランシス・クリック)。この報告は、生命科学の重大発表の一つと考えられていますが、この発表の背景に複雑な人間関係があったことは有名です。彼らが二重ラセン構造を思いついたのは、彼らとライバル関係にあったロザリンド・フランクリンが撮影した遺伝子のX線回折画像を見たからです(画像を見ただけではなく、画像に関するフランクリンのコメントも見たとも言われています)。ライバル関係にある彼らにフランクリンのX線回折画像を見せたのは、フランクリンと仲が悪かった彼女の同僚のモーリス・ウィルキンスで、ウィルキンスはワトソンとクリックと一緒にノーベル賞を受賞しています。ウィルキンスは、フランクリンの許可を得ていたと言っていますが、彼が情報を漏洩した疑惑が問題となっているのです。


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