VSサイクロプス
「僕たちは何するんですか?」
師匠の後ろに付いて、僕はそう問いかける。
決闘した後、大騒ぎになったギルドから慌ててクエストを受け逃げ出し、僕たちは王都の隣にいる森へ辿り着いた。
多分クエストの目標はここにいるだろう思い、僕は師匠に付いてきたが、そもそもクエストの内容はまだ知らない。
「私言っていませんの?サイクロプスの討伐ですよ」
「サイクロプス!?」
サイクロプス!?とあるカードゲームの初期最強カードのあのサイクロプス!?
「僕なんかが倒せるの!?そんな化け物!?」
「私もまだ知らない、多分倒せると思いますよ」
「そんな適当な!?」
「心配しないでください、それために私がいますから」
「それもそうか……」
確かに、師匠がいれば、何があってもなんとかなりそうだ。
「そんなことより、前を注意しなさい」
「何……うお!?」
目の前で、でかいイノシシが現れた!
ものすごい殺気が溢れてて、今でも僕にぶつかる勢いだ。
「この森に住んでる魔豚ですね、倒しなさい」
「え!?僕が!?」
「そう、そんなのも倒せないと、サイクロプスなんてまだ夢の話ですよ」
「わ、わかりました!」
僕は気を引き締まり、構えをする。
おす!
僕は構えたと同時に、イノシシが僕の方へ突っ込んでくる。
イノシシの向かう先は見え見え、方向を変える前振りもなく。
普通のイノシシよりは早いが、獣は所詮獣、理性などない。
これなら簡単に躱せる。
『神速』で逃げるか?いな!
師匠の言葉から見るに、魔豚はただの雑魚。
神速を使って回り込めば、獣など確実に倒せる。
でもそんな勝ち方じゃ、僕は強くなれない。
獣を倒すため、使うべきなのは……
「おおおおおおおおおおお!『ストレング』!」
腕と足の筋肉に電気を浴びせて、刺激する。
獣を倒すには、力で張り合うんだ!
「おおおおおおおおお!」
僕たちは激突する。
「!」
「当たられえなあああああああ!!」
僕は両手でイノシシの頭を掴み、体と衝突する前に動きを止めた。
イノシシは慌てて逃げだしたいが、頭が掴まれたせいで身動きができない。
「僕の勝ちだああああ!」
そのままイノシシの体を持ち上げ、後ろまで倒す。
イノシシの体重を全部かけたジャーマンスープレックス!
倒されたイノシシの上の馬乗りし、喉を狙って貫手。
気管が手刀に潰され、そのまま意識を失う。
「よくやりましたアリスちゃん」
「なんとかなりました……」
僕がイノシシを倒したとこを見て、師匠は拍手した。
「でも、まだまだありますよ」
「え?」
森の奥を見ると、そこから何匹の魔豚が出てきた。
「頑張りましょう」
「はい……」
そのあと、僕は神速とストレングを駆使して魔豚たちを倒した。
「覇!これで最後か……」
最後の魔豚の喉を潰し、僕はヘトヘトしながら地面に座り込む。
「なんでこんなに凶暴な化け物ばっかが湧いてくるのよ?」
そもそもここは王都の隣にいる出し、そんな化け物が湧いたら、人は出入りできないじゃないか。
「それはそうね、魔豚は普段森の奥に住んでいますが……」
師匠が奥の方に指さすと。
「そこを見てください」
「ひい!?」
そこには大量の魔豚の死体があった。
それも食い千切った残り滓。
「多分魔豚たちはサイクロプスに食べられないために、外まで逃げ出したのでしょうね」
「あれがアリスちゃんの向かってる相手です、どう、倒せると思います?」
あの光景を見て、僕は思わず息を止めた。
倒せるのか、あんな相手。
「頑張ってくださいお姉様」
すると、頭の中に湧いてくる仲間たちとの思い出。
そうっか、僕が頑張らないと、彼らを守るためには。
「……倒せ……ます」
「どう?」
「倒せます……いや、倒してみせますよ!」
僕は全身全霊で誓った。
「その勢いです、頑張ってください」
「休む暇がありません、行きますよ」
僕たちは、森の奥へ向かう。
「うおおおおおおおおおおおおおお」
ようやく見えた。
今回のクエストの目標、サイクロプス。
200センチを軽々しく超える身長、四つの手。
そして、顔にある一つの巨大な目玉。
「ガガガガガガ」
こっちのことを気ついたサイクロプスは、威嚇の声を出す。
「いけますか?」
「いってきます!『神速』」
最大スピードでサイクロプスの足元へ向かう。
僕のスピードに反応できてないのか、サイクロプスは僕の居所を探している。
今がチャンスだ!
「『ストレング』!覇!」
僕はストレングを使い、サイクロプスに向かって思い切りの正拳突き。
カンッ!
硬っ!
サイクロプスの足は全く動じていない。
そして僕の拳に、全く手答えがない。
例えるなら、ゴムに包まれた大岩を素手で殴ったようだ。
さすかは魔物サイクロプス、筋肉の強さは人間では比べ物にならない。
「気をつけなさい」
「!」
上を見ると、僕を見つけたサイクロプスは手で払ってくる。
「『神速』!」
僕は神速でサイクロプスから離れる。
「効いていないようですね、どうします?」
「あの、手助けしてくれないですか?」
「言ってなったけ、私は今回何もしません」
「え!?」
「だから頑張らないと、ボコボコにされますよ」
すると、顔に風があったてくる。
「やばい!?」
慌ててジャンプすると、地面にサイクロプスの拳がはめ込んだ。
「オラオラオラ!」
そこからくる拳の嵐。
「ようっと、うわ!?」
神速を使って拳をギリギリ避ける。
「このままじゃやられてしまう!」
先の感触から考えてみると、サイクロプスの身には強い筋肉に包まれてる、今の僕の拳じゃ彼の体の内側まで届かない。
ならば、狙うのは!
「筋肉に包まれていない頭だ!」
1、2、3、4!
殴にかかる拳を冷静に読み、そして隙を探す。
やつは7回を殴るたびに、一回呼吸を入る癖がある。
5、6、7!
呼吸!今が隙だ!
僕は全力でジャンプし、サイクロプスの目を狙って貫手。
「おおおおおおおおお!」
「まだまだ甘い!」
「!」
師匠の叫びを聞いて、僕は慌てて周りを見る。
そこには、殴にかかるサイクロプスの上の方の拳。
僕は両手を挙げ、拳をガードする。
「痛っ!?」
ガードしたとはいえ、僕は勢いのまま地面にぶつかる。
「くそ!それもそうか!」
僕は口からの血を拭きながら、サイクロプスから逃げ回る。
そもそも、このサイクロプスにとって、隙間などいない。
なぜなら、彼には四つの手がある。
どんなり殴っても、彼は必ず最低限一つの手が余ってしまう。
だから、彼はどんな時でもガードできる。
「僕にどうしろって言うだ!」
硬い筋肉、四つの手からのラッシュ、隙のないガード。
拳しか使えない僕には、どう考えても不利な対面。
諦めるしかないのか!?
いや!僕は彼を倒すことを誓った!
ここで諦める訳にはいかない!
きっと何か弱点があるはず!
誰でもあるはずだ、だとえこのサイクロプスでも!
誰でも……ある……!
『人の最大な弱点はなんだと思いますか?』
『キンタマって……直接的ですね』
『でもあなたを間違っていない、常識的には』
『そもそも男性器は男だけのものです、女には通用しません』
『それに、武術には男性器を体内に収まる技があります、だから最大な弱点とは言えません』
『皮膚です』
『皮膚は、人体最大の器官であり、言ってみれば外に漏れてる内臓です』
『他の内臓と違い、皮膚はは筋肉や脂などのものに守られていません、どんなり鍛えても、皮膚は弱いままです』
『老弱男女、誰も皮膚も同じく弱い』
『でも考えてみてください、今まで教わった技を』
『正拳突き、手刀、貫手、全ては体内にあるものを壊すための技なんです、皮膚には小さな穴を開くことしかできないでしょう』
『だから今からあなたに教えます、皮膚を破壊するためだけにある技を』
煩悩の末に、僕は昔の師匠からの言葉を思い出した。
そうだ、皮膚!サイクロプスにも皮膚があるんだ!
「狙いが定めたぞ!『神速』!」
1、2、3、4!
僕はもう一度サイクロプスの拳を読み、隙を待つ。
5、6!
もうちょっとだけだ!
7!
今だあああああああああ!
サイクロプスが呼吸する瞬間、僕は全速でダッシュする。
狙うのは顔じゃなく、ガードのない足。
そして!
『今から想像するのです、あなたの体を柔らかい』
『だんだんリラックスし、やがてあなたの筋肉は硬い石から柔らかい葉、布になり』
『そして、水になる』
「!」
全身を限界まで脱力し、振り子のように手を揺らす。
そして、加速する!
「おおおおおおお!『鞭打』!」
パンッ!
巨大な爆音が森の中で響き渡り。
「よくやりましたね、アリスちゃん〜」
「あああああああああああああああああああ!」
爆音とともに、サイクロプスの悲鳴が爆発する。
たどえサイクロプスでも、彼の皮膚は人間の赤子と同然、痛くないわけがない。
暴走するサイクロプスは、僕へ手を払ってくる。
「諦めろ!」
体をもう一度水のようにイメージし、そこから加速する!
パンッ!
第二発の鞭打がサイクロプスの残った足で炸裂。
「ああああああああああああああああああああ!」
サイクロプスはやっと抵抗をやめ、ただただ手で傷口を抑える。
そしてこのまま、地面に倒れる。
「やっと目に届いた」
僕はサイクロプスの頭に登り、彼の目に会わせる。
「これで最後だ」
このまま目に向かって下段突きし、眼球を完全に潰す。
そこで、サイクロプスの息がやっと止めた。
「やった……僕はやったぞ!」
僕は放心状態になり、地面にぶっ倒れる。
「おめてとう、アリスちゃん。あなたは確実に強くなりました」
「ありがとう……ございます……」
感想の言葉を残り、僕は疲れのあんまりに寝てしまった。
「サイクロプスを生身で倒すとは、素晴らしいです」
「だんだん私好みの方になっていますね〜」
「これからも期待してますよ、ア リ ス ちゃん 〜」
寝ているアリスを見つめ、カリンは唇を美味しいそうに舐めた。




