お風呂
サイクロプスステーキを食べ終えた後、僕と師匠はギルドで報告し、家に戻ることにした。
「すっかり夜になったら…… アンジュが心配してるに違いないな」
アンジュは子供の頃からお姉様っ子で、いつも僕のことを心配してくれた。
そこが可愛いが、個人的にその熱意を僕じゃなく、男とかに向いてほしい気持ちもある、いつか姉離れしないといけないからな。
そう考えながら屋敷のゲートまで到着した、そこには……
「お姉様!!!!」
「アンジュ!?どうしてここに!?」
大好きなアンジュが待ち伏せていた。
「こんな夜に出回って、危ないじゃないかアンジュ!?」
「それは私のセリフです!どうしてお姉様はこんなに遅くまで帰らなかったですか!」
アンジュはそのまま僕に抱きつき、僕は倒れそうになった。
「私心配したんですよ!もしお姉様がクエストの中でなにかが起きたら…… 私……!」
「アンジュ」
アンジュの声は、少し曇っていた、きっと今でも泣きそうだろ。
「ごめんね、こんなお姉ちゃんで、でも僕は見ての通り大丈夫だから」
「知りません!私はお姉様を許しません!気が済むまで離れません!」
「困ったら…… 僕、アンジュのお願いをなんでも聞くから、これで許してもらえないかな?」
「なんでも!?」
僕の話を聞いて、アンジュは慌てて抱きつくのを辞め、キラキラした目で僕を見つめる。
「ほんとに!なんでも!ですか!」
「え…… ひとつだけだが……」
アンジュのあんまりの熱意に、僕は思わず戸惑ってしまった。
ひとつなら大丈夫…… だよね?
「お姉様! 一緒に来てきださい!」
アンジュはそのまま僕を引張で、屋敷の中まで引き込んだ。
「これだけでいいの?」
「これだけなんかじゃありません!お姉様と一緒にお風呂に入ることは至福そのもです!」
屋敷に戻って、アンジュからのお願いは、まさか僕とお風呂に入ることだった。
みんな女の子同士だし、一緒に風呂に入るなんて普通なことなんだけどな。
「ここまで言われると、こっちがデレるなぁ…… ハハハ……」
「何もたもたしているですの! 早くこっちに来てください!」
「うわアンジュ引張らないで!」
ごめん!僕は嘘をつきました!
アンジュと一緒に風呂に入ることは普通なんかじゃなかった!
前世で大好きなエロゲなヒロインと裸の付き合いをするなんて、僕には滅相もできません!
だから今まで、アンジュと一緒に風呂に入った回数は指で数える。
それももっと子供の頃の話。
今だって、アンジュからなんメートル離れることで正気を保ってる!
「ちゃんと私を見てください!」
「うわ!?近い!近い!」
至近距離でアンジュを見るだけで、僕の頭が爆発そうになる。
だって!あのエロゲヒロインらしく!女なら誰でも羨ましがる、引き締まってるボディと!デカイ果実が目の前で動いでるんだぞ!
童貞の僕には!刺激が強すぎる!
僕もエロゲヒロイン?自分の体なんで知るか!
「ぎゅー」
嘘!?抱きついた!?裸のままで!?
柔らかい!? これが、男なら誰でも夢見る、乳合い!?
「お姉様の体……」
僕の体触らないで!? 今の僕、ドキドキすぎて敏感だから!?
「やはり……」
僕の体を触る手、突然止まった。
「アンジュ……?」
アンジュから離れると、僕は彼女が止まる理由をわかってしまった。
「ここも、あそこも、傷だらけ……」
彼女は、僕の傷跡を見ている。
だからアンジュとお風呂に入るのが避げたがった。
彼女ならきっと、僕の傷跡で悲しむと思った。
「ごめん……」
「ここの傷、先で出来たものですよね」
彼女の視線の先は、さっきサイクロプスに殴られた腕だ。
「誰に付けれれた?お姉様の大事なお体を傷つくなんて、許せない……!」
「落ち着いて!これは魔物と戦ってる時の傷で、その魔物もう死んでるから……!」
僕は必死にアンジュをなだめる、もうこれ以上大事な人が悲しむ姿を見たくない。
僕の弁解を聞いたアンジュの顔は何処か切なそうで、見てるこっちも辛く感じる。
そして、アンジュはそのままもう一度僕を抱きつき、そう言った。
「どうしてお姉様はここまで頑張るんですか?」
「アンジュ……」
「どうして辛いことを我慢して、それでも鍛えるんですか?」
辛そうなアンジュからの質問を聞いて、僕は我慢出来なくなりそうだ。
話したい、前世のこと、エロゲのこと、未来のこと、全てを。
でも駄目だ、もし今ここで急に話したら、アンジュにとっては理解出来ないこと、それ所が逆に心配されるかもしれない。
だから僕は……
「僕は、アンジュを守りたいんだ」
これは嘘じゃない。
敵からアンジュを守りたいんこと自体は嘘じゃない。
「僕たちは王族だから、きっと嫌でも危ない目に遭うんだろ」
例えば、外敵に攻められる、国を乗っ取ろとする。
エロゲの中のように。
「僕はそんな時に、自分の力でアンジュを守りたい」
自分勝手な思いかもしれない、僕なんかがアンジュを守れるなんて思い上がりかもしれない、でも僕はそれをやり通せたい。
なぜなら……
「アンジュは、僕の大事な妹だから」
「お姉様……」
その後、沈黙が続いた。
きっとお互い思う所たくさんあるだろ、言葉にできないほどたくさん。
そんな中で、沈黙を破ったのはアンジュだった。
彼女は僕の目を見つめ、こう言う。
「約束してください……」
「はい?」
「私はもう二度とお姉様を止めません!でもその代わりに、どんなことがあっても、お姉様は必ず私たちの元に帰ってください!」
彼女の目は、真剣そのものだった。
だから僕も……
「わかった、僕も約束する。どんなことがあっても、絶対アンジュから離れない」
「ほんと!ほんとにほんと!?」
「うん、約束する」
気付けば、アンジュの目はいつもな楽しそうな目に戻った。
「『絶対アンジュから離れない』…… うわ、お姉様かっこよすぎます〜」
いつもの調子に戻ると、アンジュは独り言を始めた。
「あのー、アンジュ?」
「お姉様大好き!!!!!!」
「うわ!? ちょっと!? 僕の体触るな!? あそこ、敏感だから!? うわ、あああああ!!」
重い話から離れ、僕はいつもの関係戻った。
絶対にアンジュを手放せない、僕は改めて心の中で誓った。




