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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神々再誕編
9/76

Ep.08 ハイズヴェルム



 中国北京にて、キゼルが謎の馬面『飛射馼(ビシャモン)』を捕獲した一方、



       〈エジプト首都カイロ〉



グレンは、キゼルと同じく千年(チトセ)の指示で、ここエジプトの地に到着していた。


キゼルの訪れた中国とは一変、通常通り?人で溢れる首都カイロ。

そんな賑わう人混みに紛れて、グレンは調査を行なっていた。


ーーお? あいついい人そう。話しかけよ〜〜っと。


「よっ! 俺の名はグレン・ハイズヴェルム!! ここは首都カイロだよな? ってことはあんた住人だろ? 前情報よりも人が多いし、なんかキラキラしてるが、今日はなんかあるのか?」


「あ? なんだクソガキ? 迷子か?」


「迷子じゃねぇよ! 俺はグレン・ハイズヴェルムだ! てか人の話聞いてのか? 答えろよ!」


「はぁ? ったく、(シツケ)のなってねぇガキだな。まぁいいや。今日はエジプトにとって最幸(サイコウ)な日だからな。見逃してやるからどっかいけ。ほら、しっしっ」


「おい待っ、、あぁくそぉぉ!! ムカつくなぁ。千年に喧嘩するなって言われたから我慢したけどよぉ。あぁムカムカする!!」


にしても、まじで人が多いな。うっ、何か吐きそう……あ、そういえば、"最幸の日"って言ってたな。

どういう意味だ? う〜〜ん、わかんねぇ…… 俺、心読むの下手だから聞く以外に選択肢がねぇ、、

おや? なんかよく見たら、全員が同じ方向に進んでいる気が…… さてはあっちに何かあるのか? ふふっ、やはり俺は天才だな。


 不自然なほどに、国民が同じ方向へと進むのと、街中がお祭りのように騒がしい。このことに珍しく疑問を抱いた彼は、皆と同じ方向へ歩き出した。


 進むにつれて、人が多くなるのを感じる。


あぁ多すぎて進まない。イライラすんなぁ。目立つ行動は避けろって言われてるから、こんな所じゃ飛べないしなぁ。てかこの先に何があんだよ!! あぁ気になる。って、バカだから考えも無駄か! ヤケクソだ、ヤケクソ!


「おいお前!! 俺はグレン・ハイズヴェルム! 今からなんかあんのか?! なぁ!」


「え?(グレン? 誰? 何この子) な、何って、君知らないの? 今からムハンマド大統領と炎神(エンジン)様が協約を結ばれるんだ。それを皆で見届けに行くんだよ」


 ようやく答えてくれた男の言葉に、グレンは足を止めた。


「炎神……だと? その侠客はどこで行われる?!」


「侠客じゃなくて協約だよ。どこって、そんなの大統領の宮殿に決まってるじゃないか。いやぁ、それにしても一時はどうなるかと思ったけど、炎神様がこの国を救ってくださって、あの時は本当に感動したよね。君も勿論行くんだろ? この歴史的1日を見逃すわけがない……ってあれ? いない。 はぁ、なんだったんだ今の」



************************



〈宮殿内〉



 とても一般人では立ち入ることのできない、鮮やかで豪勢な部屋に彼はいた。


 見た目はグレンやキゼルと変わらぬ子供。

しかし、どこか彼らとは違う風格のようなものがあった。


「ーー炎神様。準備が整い次第会場へお願いします。こちらはいつでも大丈夫ですので」


「うむ、そうか。(ワシ)のためにすまんなぁ」


「滅相もございません。あの化け物からこの国を救ってくださった貴方様には、感謝してもしきれません。これくらいは当たり前のことです」


「そうか。もう暫くしたら行く」


「はい、お待ちしております。それでは、失礼致します」


 今から数日前、エジプトに※蛸蟲(タコムシ)と呼ばれる訃ヶ蟲(フケムシ)と同じくらい巨大な害蟲(ガイチュウ)が出現した。


※蛸蟲

体長8.7m、体から23本の足の生えた巨大な蛸。

 

 軍がなんとか交戦するも、日本同様手も足も出なかった。そんな窮地を救ったのが、彼である。


 苦しむエジプト国民を前に、颯爽と現れ、一撃で蛸蟲を倒した彼はこう言った。


『皆のもの、この国は今をもって救われた。炎神である儂がいる限り、2度と不幸は訪れん。さぁ手を取れ。儂がこの、"国"となろう』


 それから数日、反発するものもチラホラいたが、彼が全て制圧。


 逆らうもののいなくなったことを確認すると、政府は彼を守り神として、国に迎え入れる決断をした。


 そして今日、その協約が現実としてエジプトの歴史に刻まれようとしていた。


「素晴らしい国に素晴らしい民……。ふ、かつてを思い出す」


 外を眺め、物思いにふける彼の背後。どこからどのようにして現れたのか。街にいたはずのグレンがそこにいた。


 普通であれば、気がついたタイミングで驚く筈だが、


「……誰の背後に立っているか分かっているのか? せっかくいい気分になっていたというのに。で、なんの用だ? 王直(オウチョク)眷属(ケンゾク)後衛(コウエイ) グレン・ハイズヴェルム」


 彼はグレンに見向きもせず、変わらず外を眺めていた。


「なんの用だと? バカにしてんのか?」


「ふっ、バカをバカにするほど暇じゃない」


 コーヒーを片手に、完全に相手にしていない様子の彼に対し、


「そのバカな俺でもわかったんだ。お前だってわかってるはずだ、ここがデウスじゃないことくらい。なのに、なぜお前は平然としている?! この国で何をしようとしてる!!」


 怒りを露わにするグレンに、ようやくその気になったのか。ゆっくりと彼の方へと体を向けた。


「何を言うかと思えば…… ここがデウスじゃないから何だ? 天明(テンメイ)様は我々神道(シンドウ)に、国を持ち、統率しろと始めの頃に仰った。世界が変わろうがその言葉に変わりはない。だから儂はあの方の思いのままに行動しただけのことだ。まぁガキのお前には到底理解出来ないだろうが」


「ガキって、大して歳変わんねぇだろうが! 俺が聞いてるのはそういうことじゃない! この世界は俺たちにとって未知の世界だ。干渉すればどうなるかわからないんだぞ?! なのになぜお前は平然としている? それに天明様はもう……」


 下を向き、言葉が詰まるグレンに対し、突如立ち上がった男は、彼近づき、彼の顔を思いっきり殴った。


「天明様が何だ!? まさか、死んだとでも言うつもりか?! 貴様、それでも神王(シンオウ)直下(チョッカ)六眷属(ロクケンゾク)か!! 同じ王に仕える者として情けない発言だ!! 恥を知れ!!」


殴られた勢いで後方に飛ばされたグレンに、止まることなく激を飛ばした。


「なぜ平然としているかだと? それは儂が神であり、神道十二界(シンドウジュウニカイ)、天明様の従者だからだ。我々はあの方の矛であり盾だ。その儂が世界が変わった程度でのことで慌てるとでも思ったか? 混乱して良からぬ行動を取るとでも思ったか? ふざけるな!! 貴様のボスに伝えておけ。次、使者を送るような真似をしてみろ。邪虚神(ジャキョシン)の前に貴様を燃えカスにするとな!!」


 再びグレンに背を向け、座っていた椅子に向かって歩き出す。


「もう言うことはない。いつまでそうしてる? さっさと失せろ。あとお前、消隠姿(ショウインシ)をもっと鍛錬しろ。国に入った瞬間、破攻(ハコウ)の儂でも気がついたぞ。天明様に同じく忠誠を誓う者なら、もっと強くあれ」


 完全に手玉に取られたグレンは、壁にもたれ尻を着いたまま下を向いていた。


ふっ、少しやり過ぎたか。まぁ関係ない。全て事実だ。それにしても王直頭領(オウチョクトウリョウ) (アマネ) 千年(チトセ)。ッチ、相変わらず生意気なガキだ。


 椅子に腰掛け、出されていたコーヒーを片手にまた外を眺め始めた。


あぁ、みっともねぇ。殴られた挙句、言い返せずにだんまりかよ。でも、あいつの言う通りだな。天明のおっさんは必ず生きてる。なに俺が諦めてんだよ。


「……悪かった。天明のおっさんは生きてる。俺も信じるよ。もう疑わねぇ」


「ふっ、当たり前だ。誰だと思ってる。神王(シンオウ)がそんな簡単に死ぬわけなかろう」


「あぁ。で、それはさておき。俺もやられたまま帰るのはかなり(シャク)だ」


「うん? なんか言ったか? それより、このコーヒーとやらは旨いな。せっかく来たんだお前も飲む……」


 振り返ってグレンの姿を見た彼は驚く。


「おい、、何してる?」


「お前言ったよな? 強くあれって。強者がやられっぱなしじゃダメだよな? ーー炎纏(エンマトイ) 火楼羅炎(カルラエン)


 炎を体に纏い、目をギラつかせるグレン。


「おい、何してる? 待て待て。おい、聞いてんのか?  落ち着け、早まるな!!」


絶戯(ゼツギ) 『忌火(インビ)炎渦(エンカ)焼尽(ショウジン)』」


 グレンの全身から、彼目掛けて巨大な炎の渦が放たれた。


おいこいつ正気か?! 絶戯って、、殺す気か!!


 背中で窓を突き破り、後方へ飛び出した彼は、炎の渦の中へと消えた。


「うわ!! なんだありゃ!!」

「上みろ上!!」

「きっと炎神様からの祝福よ!!!」

「みんな! 天を崇めろ!!」


 強烈で美しいその炎に、外で彼を待っていた民衆たちは、炎神の加護と勝手に勘違いして、天を仰ぎ祝福していた。


 暫くすると炎は消え、煙が立ち昇った。室内にいたグレンは、外に飛び出し、一点を凝視する。


「……。 おいクソガキ、何考えてんだてめぇ」


 煙の中から、少し傷を負った彼が現れた。

そんな姿を見るや否や、グレンは少しニヤついた。


「ッチ、さすがに死なないか。まぁ本気じゃなかったし、死なれても困るけど。まぁとにかく、これでおあいこだ」


「あいこだと? どこをどう見て言ってる。儂は喝を入れてやるために殴ったんだぞ? わかってんのか?」


「はいはい。やり方がどうであれ、あいこはあいこだ。つうか、1個だけ反論させてもらうけどよ、俺らだって天明のおっさんから与えられたことをやってるだけだし! 王直の務めには国とその長の監視と援護も入ってる! 偉そうに俺らが何もしてないみたいな言い方してんじゃねぇ! あと、お前如きじゃ千年は殺せない。だから、来るなと言われてもまた来る。

わかったか?! "シャーマ・ハイズヴェルム"!!」


 その言葉を残し、グレンは自分で出した黒い(モヤ)の中へと姿を消した。


「王直の務め……ね。 ふっ、クソガキが」



************************




  〈千年たちの新拠点 東京都内:とある山〉




 特殊急襲変異部隊『γ(ガンマ)』を退けた千年は、場所を変え、山奥に潜伏していた。


「ーーただいま戻りました」


 そんな彼の元に、キゼルが何かを抱えて現れた。


「おかえり! さすがキゼルは速いね!」


「当たり前です。博士(ハカセ)はともかく、グレンのバカには負けません」


うんうん。博士の方が早く戻ったことは黙っておこう。


「では成果報告を!と言いたいところだけど、ツッコまないわけにはいかないか。キゼル君! 君が抱えているその神通力者(ジンツウリキシャ)はいったい何だね?!」


「はい、こいつは中国という国で、いきなり俺に攻撃を仕掛けてきたアホです」


「ほぉほぉ。敵かな?」


「はい、恐らく」


 この時、キゼルはとてつもなく緊張していた。それは彼と話しているからというわけではなく、抱えている神通力者の正体を明かすことで、千年の逆鱗に触れてしまうのではないかという緊張。


 千年と会話をする度に、額からジリジリと汗が流れる。


う〜〜ん、なんかキゼルの様子がおかしいなぁ。あ、下痢か? お腹下したのかな?


「どうした? 汗凄いぞ。疲れたのか?」


「い、いえ」


うん、やっぱりおかしい


「何を隠してる? 怒らないから言いなさい」


 先に言っておくが、千年の「怒らないから言いなさい」は、キスマークついてるのに浮気してないっ!って言ってるのと同じ意味である。


「そ、その、あのですね。あぁもういいや! 千年様に隠し事なんて俺はクソか!! はい言います。千年様、この者は芽吹(メブキ)です! しかも後遺症が出ていて、会話ができません!! 放置してこようか迷いましたが、俺如きが選択するのはおこがましいと思い、連れて帰りました!!」


 恐れながらも、嘘偽りなく報告したキゼルは、すぐに千年から目線を逸らした。

 それから数秒、見なくてもわかるくらい千年から怒りを感じたキゼルは、とにかく目を逸らし、ジッと黙った。


「……そうか。それは災難だったな。で、1つ聞くが、発芽者(ハツガシャ)は誰かわかるか?」


「い、いえ。痕跡はなく、付近にもそれと言った神力(ジンリキ)は感じませんでした」


「そうか。そいつは生きてるか?」


「はい、今は気絶させてます」


 そういうと千年は立ち上がり、ゆっくりとキゼルに近づくと、彼の頭に手を置き、


「キゼルが無事でよかったよ。正直、ここら一帯を跡形もなく消してやりたいほど頭にきてるけど、今はキレててもしょうがない。そいつは博士に任せよう」


 キゼルの頭に置かれた手は、怒りの余り小刻みに震えていた。本当は、すぐにでも爆発しそうな感情を抑え、自分の無事を案じてくれた千年の優しさと、彼の耐える強さに、キゼルは改めて惹かれた。


「千年様、神王様に仇なす全てを排除し、必ずデウスに戻りましょう。あなたならそれが必ず出来ます。一生ついていきます」


「ーーふっ、そうだな」


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