表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神道十二界編
66/76

Ep.25(65) ベウベク



       〈モンゴルアルタイ山脈〉



 獣神(ジュウシン)宏憐(コウレン)"の死亡より少し前。


 中位獣連筆頭"堺若(カイジャク)"を倒したキゼルのもとに、歓喜しながら近寄るグレン。


「凄ぇなお前!! 1人で倒すとか、マジで凄ぇわ!!」


「アホか。お前がいたから倒せたんだ。1人ではまだ無理だ」


おぉ……こいつが素直に褒めるとは……。なんかむず痒い。


「俺がいたのもそうだけどさ、千年(チトセ)の教え、めちゃめちゃ実践してたな!」


「当たり前だ。千年様の言いつけを守るのは何よりも大事なこと。お前も俺を見習うんだな」


「へへっ、分かってるよ!!」


 はしゃぐグレンを横目に、キゼルは冷静だった。

喋りながらポケットを弄り、1つの小箱を取り出す。


「んん?? おいキゼル、なんだよそれ?」


「これか?」


 キゼルは小箱をグレンに見せながら、慎重に開けた。


「ーーおぉ、綺麗な石だな。御守りか?」


「・・・それ本気で言ってるのか?」


「んん?? どゆ意味?」


こいつ……


「前に説明したからもう教えない」


 箱の中に入っていたのは、神力封石(フウセキ)消隠(ショウイン)(リョク)。『消隠姿(ショウインシ)』の力が込められた石で、それが肌に触れた神通力者は強制的に『消隠姿(ショウインシ)』状態となる。(=神通力が使えなくなる)


「前に……あ!! あれだ、神通力使えなくなるやつ!! あれ……でもそれってさ、上位以上しか作れないよな?? なんでお前持ってるんだ??」


こいつ……


「千年様から1人1箱、王直(オウチョク)全員に支給されている」


「え……俺持ってない……」


「だろうな、ポンコツが」


まぁ、今持ってるこれは俺の自作。千年様から貰ったやつは使わずに取ってあるから、あまり強くは言えないが……。


「上位以上しか作れないというのは、あくまでも目安だ。従操(ジュウソウ)並びに神力操作がそれなりに上手ければ、別に俺でも作れる」


「ふ〜〜ん、よくわかねぇ〜〜や〜〜」


「理解してもらおうとは思ってないから大丈夫だ」


 キゼルはグレンに背を向け、倒れる堺若に向かって歩き出す。


とりあえずこれを堺若(あいつ)の腹に巻き付けて、そのあと、俺かグレンの力で更に拘束して……よし、完璧。


 歩み寄るキゼルを前に、未だ意識の戻らない堺若は、ある夢を見ていた。



◆◆◆◆



 ーー俺は、王を、父を尊敬していた。

民を、国を、世界を守り、堂々と誇りを持って働く。そんな彼らを心から尊敬していた。


 だが、1つだけ。たった1つだけ、どうしても納得出来ないことがあった。

 しかもそれは、俺にとって災厄であり、最悪だった。

 あの法さえなければ……俺の嫌弱(ケンジャク)がこれじゃなければ……俺が、神通力者じゃなければ……。

 必死に考えた、死ぬほど悩んだ。だが答えは見つかるどころか、考える度に現実を突きつけられる。

 "俺はいつか、俺自身に殺される"と。


 そんな時だ、仏陀(あいつ)が俺に接触してきたのは。

 最初は話す機会を得て、殺すつもりだった。それが神王の、父の願いだったから。

 だが仏陀(あいつ)は、俺の全てを肯定し、俺を"救う"と言ってくれた。

 それを聞いて、俺は揺らいだ。いや、揺らいだ時点で既に答えは出ていたのかもしれない。

 ーー父よ、俺は今でもあなたを尊敬している。だから、あなたが死んだこと、本当に悲しく思う。でも、俺はこれ以上、俺自身に嘘をつけない。俺は、どんな事をしてでも、弱さを消し去り、強くなりたい。もう我慢したくないんだ……。

 この言葉が死んだ貴方に送るものとして正しいかは分からないけど、心から、心の底から……



◆◆◆◆



「ーー死んでくれてありがとうございます」


 その瞬間、堺若の周辺が異常なまでに光り輝き、至る所にある傷口にそれが流れ込む。


「おいおい、キゼル!! ありゃあなんだよ!? やばくねぇか!?」


これは……まさか?!?!


 キゼルは勢いよく後退し、グレンを抱える。


「お、おい!! 何すんだよ!!」


「ダメだ……離れるぞ!!」


「は? ふざけんな! あいつはどうす……」


 さっきまで完全に意識を失ってたはず。キゼルの攻撃は確実に効いていたはず。もう既に決着はついていたはず……。


 だが、その考えはいま全て破壊された。

2人の目の前に無傷で立ち上がり、笑みを浮かべる堺若の姿を見て。


「ーー俺の選択はこれで良かったのか? 間違いはなかったのか? いや、そんなことは幾ら考えても分からない。ただ、1つだけ確定していることは……俺はもう誰にも負けない。ーー父と、ついでにお前ら2人に、深い深い感謝を」


 堺若に流れ込んでいた光がなくなる。そしてーー



         「『神格(シンカク)』」



 その言葉と同時に、堺若から放たれるとてつもない神力。

 それは、辺り一帯を無差別に破壊していった。


 グレンを抱えたキゼルはすぐに背を向けて走り出したが、彼の速さをもってしてもそれには抗えず、瞬く間にその神力に吹き飛ばされる。


 時間にして約15秒。堺若から放たれる神力が収まったところで、破壊も止まる。


「ーーッソ、痛ぇ……。怪我は……ないな。

にしても、めちゃくちゃ飛ばされたな。いやその前にグレンは……」


 自分の無事を確認後、キゼルは辺りを見渡し、地面に倒れ込むグレンを見つける。


「おい、大丈夫か?? 起きれるか?」


 彼に近寄り、肩を揺らしながら声をかけると、


「ーーッソ、痛ぇ……。あんにゃろう、何しやがった? あぁムカつく、ムカつく!!」


 彼にも怪我はなかった。というより、寧ろ異常事態を前に、集中力が増し、ピンピンとしていた。


「よかった、お前も怪我はなさそうだな」


「うん、何とかな。つうか、あいつは? 俺らに何した?」


「……落ち着いて聞けよ。多分、、いや多分じゃない。あいつが、『神格』化した」


神格化?? えっと……神格……?!?!


「ぶぇ!? いやいや、、え!? う、嘘……だよな?」


「嘘じゃない。云大(ユウダイ)が神格した時と似た光景だった」


「マジかよ……いや待て、神格は同じ神通力者がいる場合、1人しか出来ないはずだろ?

獣のオッサンがいるんだから、それは有り得ないだろ?」


「あぁその通りだ」


「いや、じゃあ堺若は神格できないんじゃ……嘘……まさか、、」


 いまのキゼルの表情を見れば、獣神"宏憐(コウレン)"が死に、神格が正統継承者である堺若に引き継がれたことは、流石のグレンでも理解できた。


「マジかよ……なんちゅう災厄なタイミング」


「あぁ」


俺のミスだ。早く取り押さえておけば、もっと早く動いていれば……。


「おいキゼル、どうする? 策がねぇならとりあえず逃げようぜ」


「いや、俺らが逃げれば堺若は追ってくる。つまり、『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』の外に"あれ"を出すことになる。そうなった場合の被害は……考えたくもないな」


 2人は同時に視線を前方上へと向ける。

そこには、異常な変化を遂げた堺若、改め、『獣神(ベウベク)』の姿があった。


 ※ 獣神(ベウベク)

変貌(ヘンボウ)の神通力者が神格した姿。(神通力本来の力)

 |身長約90メートル、体重約87,000トン。手足は合わせて12本で、頭部からは腰辺りまで伸びる50本以上の太い髪(ドレッドのような太い毛で、1本辺り1000万本で出来ている)が垂れる。

 それに反してか、大量に生えていた体毛は綺麗になくなり、茶色い岩のようにゴツゴツとした皮膚が際立つ。


 神通力に関しては、体毛の生成が自在に可能となった。つまり、体毛を減らす事なく、無制限に強力な獣徒(ジュウト)を作り出すことができる。

 また、獣徒生成時に放たれる高エネルギーによる爆発もなくなる(これにより、体に毛を付着したまま獣徒を出せる+自動と手動に切り替える手間も省ける)

 

 神格前と比べて、異常にデカくなったのは一目瞭然なんだが、それ以外はなんというか……the獣、生きるために、他を殺すためにあらゆる無駄を省いた本来の姿というのだろうか。まさしく怪獣である。


 何はともあれ、そんな姿を目の当たりにした2人が動けなくなるのは自然なことであった。


冷静さを欠くな、落ち着け……落ち着け。まず何をするか、どう動くか。一瞬の判断、1回の行動が生死を分ける。


 激しく波打つ鼓動を必死に抑えながら、立ち止まりながらもキゼルは考えた。


 そんな中、グレンのとある行動が、この極限状態のキゼルを一発で正気に戻した。


《キゼル、どうする? 流石に動いたらやばいよな!? でも、あれかな、デカすぎて俺らのこと見えてない……とかないかな? いや、デカいってことは遅いよな? 絶対そう、遅い! じゃあ、普通に走ればいけるくね!? なぁなぁ!》


《そ、そうだな》


この土壇場、この状況で、焦ることなく自ら『意思伝達(ヴェルシオン)』での会話を選ぶとは……ふっ、無意識か意識的か。どちらにせよ、俺もうかうかしてられないな。


《おい! なにニヤニヤしてんだよ! あ、もしかして……頭いかれたか??》


《黙れ。とりあえず逃げの選択は無しだ》


おぉ……前までのキゼルだったら逃げ一択だったのに……こいつ、まだ強くなるのかよ。ったく、俺も負けてられねぇ!!


《おい、なにニヤニヤしてる?》


《別に!》


 こんな状況だというのに、互いが互いを認め合い、鼓舞しあう。これこそが、千年の望んでいたことなのかもしれない。


 だが、敵は神格者。つまり、上位クラス。

士気が上がったところで、実力差というものは簡単には埋まらない。


「あぁ、いい。物凄くいい。なんだ、この"何でもできる"と思えるような感じは。ーーそうか、これが神か。神にのみ許される愉悦か」


 神格直後、自身の変わり果てた姿を観察していた堺若は、浮かべたことのないほどの笑みを浮かべ、大声で笑い出した。


《キゼル!!》


《わかってる!!》


 その瞬間、2人は堺若と逆方向に、勢いよく飛び出した。


グレンの言う通り、あのデカさでスピードは出ない。なら、神格の唯一の弱点である"リミット"を上手く活用させてもらう。


 神格唯一の弱点"リミット"とは、時間制限を意味する。つまり、神格は時間制限があるということ。

 キゼルとグレンは、これを利用し、堺若の神格が解けるまで逃げ回る策にでた。


ーーしかし、


「ぶ、、ぶははははっっ!!!! 浅い、浅い、浅い!! 実に浅いぞその考え!!!!

まさか、お前ら如きが俺を倒せるとでも!? 笑わせるなよ、三下が!!」


 2人の動きを見て、ついに動き出す獣神(ベウベク)

 彼らの予想通り、動きはかなり遅く、ゆっくりと、右腕を真上に向ける。


やはりな、あれじゃ遅すぎる。千年様と修行したおかげか、正直相手が上位クラスだというのに意外と怖くない。これならーーやれる。


 キゼルだけではなく、それはグレンも同じ考え。

2人の心には余裕があり、一層動きは速くなる。……だが、


「大したもんだ。今の俺を前にして勢いがなくなるどころか、増してやがる。殺すには惜しい存在だが……もう後には引けねぇ」


 その瞬間、彼の持ち上げた右腕の手のひらから、無数の超長い毛が"ぶわっ"と空に向かって伸び始める。


《な、、キモッ!! 手から毛が生えたぞ!! 何あれ、なになに!?》


《集中!! とにかく足を止めるな!! 動き回れ!!》


「おぉ、また速くなったな? まぁあんま関係ねぇけど」


 空に向かう大量の毛は、高く高く伸び進み、


「"神遂(ガル)" 『猛蛇(モウジャ)』」


 ※ 『猛蛇(モウジャ)

 手のひらから生み出した大量の毛(約1000万本)を、体長が数キロ近くある蛇に変え、思いのままに操る。=1000万匹の大蛇。


「1000万対2。どっちにベットすればいいか、バカでも分かる簡単な遊びだ」


 手のひらから伸びる『猛蛇(モウジャ)』は、ウネウネと空とから2人に狙いを定め、キゼルのスピードとほぼ変わらない速度で彼らに襲いかかる。


「な、、速、速すぎる!!」


 vs堺若戦で初めて出すキゼルの全速。だというのに、それでもギリギリ避けれるレベル。

 つまり、彼より速度で劣るグレンはあっという間に『猛蛇(モウジャ)』に囲まれる。


「グレン!!!!」


 グレンの全方向を囲い、完全に逃げ場を奪った『猛蛇(モウジャ)』は、不気味に彼を睨む。

 その間も、ギゼルへの攻撃は当然止まることなく、2人は分断される。


落ち着け、ギリギリとはいえキゼルの方は問題ない。つまり、現状、足を引っ張ってるのは俺。どうする? 見た感じはこの蛇ども弱そうだけど、溢れてる神力から察するに、今まで堺若が出したどの獣徒よりも断然強い。なら簡単には燃やせない……か。


 逃げる隙など決してない蛇の渦。その中で、彼は必死に考え、僅かな時間で答えを導く。


「って、柄にもなく色々考えたけど、やっぱ性に合わねぇ。俺にできることは、ただ全力で燃やすだけだ!!」


 勢い増すグレンを前に『猛蛇(モウジャ)』の動きが止まる。


混血(コンケツ)族種(ゾクシュ)転換テンカンーー『|炎魔』!!」


 堺若にとっては、炎魔との初の対峙。その強さを知ってるキゼルは薄ら笑みを浮かべ、勝利への期待を膨らませていた。

 ーーだが、声高らかに混血族種転換と叫んだグレンの姿に一切変化はない。それを見て、堺若は腹を抱える勢いで笑った。


「薄々気付いてはいたが、脳なしとはまさにお前のこと。呆れて言葉もでないよ」


 発動のやり方に間違いはない、体力・神力の残量も申し分ない。故に、絶対に失敗するわけがない。なのに、、


「なんでだよ……なんでだよ!! 『炎魔』!! ……混血族種転換!! 『炎魔』!!!!」


 何度も何度も叫んだ。が、結果は変わらず。それを見るたびに堺若は笑った。


「おいおい、お前あれだな? 甘やかされて育った、お坊っちゃんだろ?? まぁ、(アマネ)千年(チトセ)ならあり得るか。ったく、キゼル・ラーシュよぉ、お前も可哀想だな。こんな役立たずと(ツル)むことになってよぉ。俺なら切り捨てるか、良いように利用して殺すな」


 神格したことで戦闘への意欲増加と、神格の力試しのため、グレンの変化を期待していたのは堺若も同じ。だからこそ、『猛蛇』の動きを止め、待っていたのだが、


「時間の無駄だな。お仲間が優しいから言われたことないんだろ?? なら、俺が代わりに言ってやるよ」


 再び動き出す蛇の渦。


「グレン・ハイズヴェルム、お前は王直の(ガン)だ。害種(ガイシュ)と変わらない、いない方がいい邪魔で足手まといな存在なんだよ」


 その言葉と同時に、グレンを囲っていた大量の蛇が、彼の全身に勢いよくぶつかる。

 それにより、グレンは地面に叩きつけられ、彼のいた周辺は見るも無惨に破壊される。


「グレン!!!!」


 攻撃の威力・神力量・殺傷性、それら全てを目の当たりしたキゼルがどう動くかは、堺若じゃなくとも簡単には分かる。


「あぁ、浅い浅い。期待して損したぁ」


 グレンの元に向かうということが分かってる以上、幾ら速かろうが関係ない。

 『猛蛇』でキゼルを誘導し、狙いを定めた地点で、左腕を伸ばし、大きな手のひらで彼を握った。


「ッソ!! 離せ!!!!」


 体を激しく揺するも、パワーの差は一目瞭然。顔の前に彼を掴んだ拳を運ぶ。


「どんな気分だ? 勝てると、逃げ切れると、そう思ってたか?? だとしたら、浅ましいにも程がある」


 暴れるキゼルを一瞬で黙らす圧倒的な握力。

少し力を入れただけでキゼルの動き完全に止まった。


「自惚れるなよ中位。対等だったから色々と褒めていたが、今は違う。格下が粋がるな、目障りだ」


 握る強さが徐々に上がると同時に、キゼルの叫び声が辺り一帯に広がる。


 猛蛇による突進は今も続き、グレンの生死は不明。キゼルは今にも握りつぶされる勢い。

 だが、これは獣神(ベウベク)の力の一端にすぎなかった。



 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ