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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神道十二界編
56/76

Ep.15(55)希少な血統正統継承者



     〈ガラパゴス諸島 獣神根城〉



 "獣神(ジュウシン)宏憐(コウレン)からの依頼は、彼の従者4名の捜索。

 しかも、その4名が裏切り者であると聞かされたキゼルと云大(ユウダイ)

 その話に、彼らの存在すら知らない云大ですら驚きを見せた。


「おい、捜索対象は把握した。だが、なぜ裏切ってる思う? 自分の従者だろ? そんな簡単にだな、」


「わかってる。自分の従者だから神座(カミザ)で報告せず、こうやって王直(オウチョク)に依頼してるんだ。察しろ」


 宏憐が神道(シンドウ)十二界の集まり"神座"で報告をせずに、王直に依頼した理由は2つ。


1.神座で裏切り者を報告した場合、理由の有無関係なく、対象(中位獣連)と遭遇したら即時死罪との通達が出るため。

2.裏切り者のランクが中位以上の場合、その者の(アルジ)(この場合、宏憐)の更迭、住国追放のどちらか、またはその両方が科せられるため。


 だが、王直に依頼した場合は、王直の管轄となり、神道は手出しできない。

 また、王直は頭領である千年(チトセ)に全権がある。従って、彼に直接依頼すれば、意図を汲んでくれたりするため、宏憐は王直に依頼したというわけだ。


「ーーつまり、お前は保身のために、追放を避けるために俺らを利用したということだな? 呆れたバカだな」


「違う、そっちはどうでもいい。吾輩は天明(テンメイ)様から頼まれたから神道に属しているだけで、地位や権力に興味はない。吾輩が危惧しているのは、"アイツ"が殺されてしまうということだ。それだけは避けたい。だから、オンシらに頼んでる」


「ちょ、ちょっと待ってください!! 自分だけ置いてけぼりなんですけど!? 1から教えて欲しいです!!」


「黙れ。後で教えてやるから、お前はまだ反省してろ」


「はい……」


ちょっと待てよ。色々とごちゃついてるな。えっと『中位(チュウイ)獣連(ジュウレン)』……あ、そうか。思い出した、あいつだ。


「ーーお前は、神王法(シンオウホウ)7条の第4項〜第7項を危惧してるんだな?」


 神王法(シンオウホウ)7条 [正統継承者]の第4項〜第7項

④自身の正統継承者となったものを、自らの手で殺めた場合、その者を死罪とする。

⑤自身の正統継承者となったものを、自らの手で殺めた場合、今後一切の後継に対する指南・接触の禁止。また、血統者を産むことも禁止とする。

⑥自身の正統継承者となったものを、自らの手で殺めた場合、神王の治める領土全域への出入りの禁止。並びに、神王とその勢力との接触を禁止する。

⑦正統継承者が、自身の血統者で、その者が罪を犯し、死罪が言い渡された場合、神王の治める領土全域への出入りの禁止、並びに神王とその勢力との接触を禁止する。


「その通りだ。オンシも知ってると思うが、中位(チュウイ)獣連(ジュウレン)の中には、獣神の正統継承者がいる。しかも、血統者、吾輩の息子だ」


 『中位(チュウイ)獣連(ジュウレン)』。

獣神の従者4名で、ランクは全員中位。

裂切(レッセツ)の神通力者 名は"野良(ノラ)"。

予知(ヨチ)の神通力者 名は"猛仔(モウコ)"。(守護) 

(キリ)の神通力者 名は"大蛇(ダイジャ)"。

変貌(ヘンボウ)の神通力者 名は"堺若(カイジャク)"( 中位獣連筆頭)

以上4名で構成されている。


堺若(カイジャク)か……。よりによって、血統正統継承者が謀反とは……笑えないな」


キゼルのその問いに、宏憐は起き上がり、深々と頭を下げた。


「そうだ。あのバカは、正統継承者でありながら……。100歩譲って吾輩はいいが、天明様の意向に背くなど、息子であっても許せん!! 本来であれば、この手で殺してやりたいーーと、威勢よく言いたいところだが、息子故、ケジメだとしてもこの手で殺めることはできない……。だから頼む! 奴を見つけ出して、殺す以外の選択肢でどうにかして欲しい。この通りだ!!」


……法だとか、王に背いたとか、色々と理由づけしてはいるが、本心じゃねぇな。本当は息子だから死んでほしくない、ただそれだけだろ。しかし堺若か……。正直、野良・猛仔・大蛇は、さほど脅威ではない。だが、堺若は違う。あいつは正統継承者であり、"中位最強"と言われている男だ。それを捕らえるとなると……


「おい、中位獣連が何故裏切り者だとわかる? ただの反抗期とか…… う〜〜ん、理由がわからない。なんか確証があんのか?」


「あぁ、確証はある。デウスから吾輩らが消える数日前だ。堺若の口から刻導(コクドウ)に入ると宣言された」


それは、彼らの世界デウスが消える数日前に遡る。



〜〜〜〜



      〈(ケモノ)ノ国 獣神地下宮殿〉



 地下宮殿の一室、そこで宏憐はいつものようにグッタリと寝そべっていた。


「ーーおい、何度言えばわかるか堺若よ。吾輩の背後に立つな、それと部屋に入る際はノックをしろ」


「さすがは父上。結構、消隠姿(ショウインシ)には自信があったんですが……やはり父を超えるにはまだまだですね」


 物音1つなし、気配もなしの見事な消隠姿(ショウインシ)で、宏憐の背後に立つ堺若。


「いや、お前が吾輩の"息子"だからわかっただけで、見事な消隠姿(ショウインシ)だったぞ堺若」


「なるほど、"親だから"、そういうことですね。やっぱり、父上だけは超えられそうにないですね」


「まだまだ負けんわい! それで、今日はどうした?」


「いえ、ただ父上との2人の時間が欲しかっただけですよ」


「ほぉ? なんだなんだ、まだまだ子供よのぉ。っよし! 今はそこまで眠くもないし、どうだ? 2人で茶でも?」


「えぇ、是非」


それから2人は、親子水入らず、国のことを忘れ、楽しいひと時を過ごした。


「ーーいやぁ、久々に父上とお話ができて嬉しかったです」


「はっはっはっ!! 吾輩もだ息子よ!」


「それでは、そろそろ」


そういうと、堺若は空間移動(ゲート)を出し、片足だけ中へと突っ込み、


「ーーあぁそうだった父上。野良と猛仔と大蛇の事なんですが、あいつら刻導(コクドウ)に入ったみたいです」


「おぉそうか。……!!?? おい、今なんと? あいつらが……刻導……だと?!」


「えぇ、俺の命令で刻導に。ですので、今日をもって中位獣連は神王勢力を抜け、新たに刻導への加入をします」


 さっきまでの談笑はどこへやら。急な出来事に、宏憐はパニックに陥った。


「あぁそれと、この話は内緒でお願いします。もし口外すれば、父上にも危害が及ぶ。俺はそれを望んでいない。でも安心して下さい、あくまでも俺らは裏で動きますので、まぁバレることはないかと。ですので、間違っても神座などで報告しないように。それでは、お元気で」


 そう言い残すと、彼は全身を空間移動(ゲート)の中へと……


「"貌遂(バウ)" ーー『鯨鯢(バジェイナ)』」


 空間移動(ゲート)に彼が入る寸前で、宏憐は力を解放した。


 ※『鯨鯢(バジェイナ)』」』

体毛1万本で1体、体長35メートル、体重250トンの巨大な鯨。


「ーーはぁ……最後まで尊敬できる父でいて欲しかった。俺の選択を祝福して欲しかった。残念だ、こんなことを父上(あなた)に言う日が来るなんて……」 


鯨鯢(バジェイナ)が発動すると同時に、宏憐たちのいた部屋の四方が崩れる。


「ーー実に哀れ。いま初めて、お前が父であることが恥と知った。やはり、俺のこの選択は正しく、それを否定するお前は哀れそのもの。"運命"に従えない醜い老兵よ、せめて迎える運命のその日まで、(セイ)に縋りながらも美しくあれ」


既に体の半分が空間移動(ゲート)の中にある状態で、堺若は力を解放した。


「"貌遂(バウ)" ーー『鯨鯢(バジェイナ)』」


それは父の出したものより、ひと回り大きく、放つ神力も倍、且つ作り出すために減る体毛数も父より抑えられた精錬されし()であった。


 両者がぶつかり合うことに、時間も会話も必要なし。

 2人は動くことなく、発動した鯨鯢(バジェイナ)の衝突が起きる。

その衝撃で、宏憐の地下根城はものの見事に破壊され、辺り一帯に凄まじい神力の余波が溢れる。


「ーーあんたは神格できるだけ。中位の俺にすら勝てない神に価値はない。これが答えだよ父上」


宏憐の出した鯨鯢(バジェイナ)は、堺若の鯨鯢(バジェイナ)によって、体を真っ二つに裂かれていた。

それにより、宏憐の鯨鯢(バジェイナ)は姿を消す。


「じゃあ、別れも告げ、実力も示せたことですので、俺はここで」


「待て!! なぜだ……なぜ天明様を裏切る!?」


「裏切る? ははっ(笑)。父上、凋落(チョウラク)しすぎでは? 王はあくまでも王であって、従うか否かは強制ではない。選択権ってものは1人1人にあるんです。つまり、俺はあなたと違う選択をしただけ、裏切りも何も、はなから(アレ)に仕えてなどいない」


未だ信じられない息子の暴挙。宏憐の心中は既にボロボロであった。


「まぁ本当は、上からの指示で神格の権利を奪ってこいと言われていたので、あなたを殺す手筈でしたが……正直落ちぶれすぎててガッカリです。俺じゃなくても、誰かに殺されるのも時間の問題。ここは、手を汚さず、俺は俺の目指す楽園を創りにでもいきます」


「待て!! 今までの……今まで吾輩と過ごした月日は全て嘘だったのか!? オンシは、嘘を、」


「"身は強く、心はさらに強く、己の信念に従い生きろ"ーーあなたに教わった言葉です。別に嘘などついていない。俺は、俺の信念に従っただけ。まぁ簡単に言うと、俺の信念からあんたら神王勢力は逸脱してた。ただそれだけのことです」


完全に亀裂の入った2人。もうどうやっても修復できないこの関係を前に、宏憐は膝から崩れ落ちた。


「では父上、もう会うことはないでしょうが……お元気で」


そう言い残し、堺若は空間移動(ゲート)の中へと姿を消した。



〜〜〜〜



「ーーなるほどな、ただの反抗期ではなさそうだ」


宏憐から、ことの経緯を聞いたキゼルは、暫く目を閉じ、考えた。


刻導加入の経緯はわかった。だが、なぜ刻導に? 仏陀宗(ブツダシュウ)に入るならまだわかるが、刻導はただの浮浪集団。信念もなければ、刻導同士が手を組むこともない、ただの落ちぶれ連中だ。堺若は何がしたい? 勢力だけみてもこちら側が圧倒的に優勢だというのに、リスクしかないというのに……あいつの狙いはいったい何だ? それとも、俺らが気づいてないだけで、何か大きな、、


「ぱい……キゼル先輩!!!!」


「お……悪い、考え事してた」


「凄い怖い顔してましたよ! てかてか、質問いいですか?!」


反省はしてたみたいだが……急にそのテンションで来られるとイラッてするな。


「何だ?」


「あの、全然理解は出来てないんですけど、聞いてた感じ、その息子さん? が、どう考えてもおかしいと俺は思うんっすよ! だから、事を公にして、全員で説得するとかの方が早く解決すると思うんです! まだ、息子さんが完全に闇堕ちしたとはどうも思えなくて…… どうすっかね?!」


・ ・ ・ あぁ、そうか、こいつ神王法知らないのか。はいはい、これは説明しなかった俺が悪いな。


キゼルは呆れながらも、云大に法の説明、他の神王勢力に言えない理由などの全てを、端的且つ分かりやすく説明した。


「えぇ〜〜!!?? 息子がグレて悪いことしたら親が追放される!? なな何すかその法律は?!」


「少し違うな。"親子"だからではない。"正統継承者"だからだ」


「どういう意味ですか?」


「お前、千年様に正統継承者については習ったな??」


正統……継承……者……あ! 


「はい、習いました! 後継の中から1人が選ばれるやつですよね?」


「そうだ。正統継承者ってのは、天告(テンコク)があった後継のことで、別に実際の血の繋がりがなくても誰でもなれる。だが、選ばれるかどうかは別の話し。そんな簡単になれるものではない」


「え? そうなんですか? 後継って芽吹(メブキ)と血統者から生まれるんですよね?? 神血(シンケツ)の譲渡が禁止されてるから芽吹は誕生しにくいにしても、血統者は沢山作れるくないですか??」


何を言ってるんだこいつは? まさか……千年様が色々とはしょった説明を……いやいや、それはない。こいつがアホなだけだ!!


「どういう意味だ? お前が理解してるなりに説明してみろ」


え……なんかスッゲェ怒ってる……


「は、はい。えっと、言葉選ばずに言いますと、神通力者と非神通力者がS○Xすれば、確定で同じ神通力を持った子が産まれる。つまり、神通力者がS○Xしまくって、子供を産みさえすれば、同じ神通力を持った子=正統継承者が絶えることはないと思うんです。

だから、この法は少しやり過ぎのような気が……」


云大の説明を聞き、眠っていたはずの宏憐ですら驚き目を覚ました。


「お、おいキゼル。このガキは何を言ってるんだ?? 正気か?」


「いや、正気じゃない」


やはり千年様……色々と、はしょって説明を……いや、違う。読み取れなかった云大(こいつ)が悪い。うん、絶対にそうだ。


「おい、いいか? まず、非神通力者と神通力者が交配するとどうなるかわかるか?」


「え? どう……って、子供が生まれる??」


「違う。それは女性が神通力者で、男性が非神通力者である場合だ。男性が神通力者で、女性が非神通力者の場合、子供が生まれる可能性は0%。というより、子供が生まれる前に母親が絶命する」


 千年からは習っていない(キゼルの読み通り、説明してない)新情報に、云大は立ち上がって驚いた。


「そ、それって、どういうことですか!?」


「当たり前の話だ。神通力者の精液が、普通の人間と同じだと思うか? 当然、命源の影響を受けている。じゃないと、子供が神通力者として生まれてくるわけがないだろ」


「だ、だとしても、母親が死ぬって言うのは? 何でなんです……そうか、非神通力はあくまでも非神通力者。つまり、耐えられないんだ」


「その通りだ。考え方としては芽吹の生み出した方とほぼ同じだ。芽吹は神血、血統者は精液を非神通力者に与える。=体内に神通力者の一部が入るということだ。芽吹と違う点は1つだけで、芽吹は、与えた側が体内で神血を操作して細胞を作り出す。だから、操作の仕方が上手ければ、確率はグッと上がる。だが、血統者の場合は干渉ができない。つまり、操作なしで自然に母親(非神通力者)が子供を腹の中で育てなければならない。それはどう考えても不可能。つまり、母親は死ぬということだ」


まとめると、女性が神通力者+男性が非神通力者の場合、身籠る女性が神通力者のため、免疫がある。

=体内管理がしやすい。産まれる可能性が上がる。


 逆に、男性が神通力者+女性が非神通力者の場合、

身籠る女性が非神通力者のため、免疫がない。=死ぬ。(子供は産まれない)


「神通力者にとって、他の神通力者の血液は毒だ。だが、それ以外は何の問題もない。だから、女性が神通力者であれば、変なことがない限り、子供は生まれる。でも、女性が非神通力者の場合は……何度もいう必要はないか。つまり、血統者にもリスクがあり、簡単に子供を作ろうなんてことは無理なんだよ」


「……じゃ、じゃあ!! 神血で後継を作って、それを正統継承者に……」


「無理だ。さっき自分で言ったろ? 神血を与えることはそもそも禁止されてる。これも死ぬ確率が高いからな。それと、芽吹は神血を与えからと言って、自分と同じ神通力者になるとは限らない。環境や元の性格などが左右されるからな」


「そ……そういうことですね。だから、正統継承者は特別なんですね……」


 ひとしきり話を聞き終えた云大は席につき、キゼルは、再び眠りについた宏憐を叩き起こす。


「じゃあ、話も済んだことだし、千年様に報告後、すぐに任務に入る。そっちも何か情報を得たら教えてくれ」


「Zzz〜!!! わかった、任務にあたって1つだけ」


そういうと、宏憐はゆっくりと立ち上がり、


「知ってると思うが、あのバカ息子は中位最強だ。言いたくはないが、神格がなければ吾輩よりも強い。だが、どうか頼む。あいつを、息子を救ってやってくれ」


深々と頭を下げる彼を背に、


「ーー当たり前だ。それが王直の仕事だからな」


 そう言い残し、2人は国を去った。一方その頃、



 〈イギリス首都某所〉



真っ黒に焼け、至る所に燃えカスが散乱し、あの美しかった首都とは思えないほどの変わり果てた姿。


その場所から少し離れた所に位置する建物内に男は姿を見せた。


目の前には大きな扉。男は、そこをノックする。


「ーー中位獣連筆頭、堺若だ」






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