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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神道十二界編
54/76

Ep.13(53) 泣き虫



なんで……なんで倒れてるんだ俺……体は元気だし、神力(ジンリキ)の消費も抑えた。炎魔(エンマ)で回復もした。なのに……体に全く力が入らない……


摩瓈爾奠(マリシテン)を1人で討伐し、歓喜していたのも束の間、(ウツミ)の神力が消失したことを察知したグレンは、すぐに走り出した……のだが、なぜだか今こうして地面に這いつくばっていた。


ックソ、ダメだ。瞬きすらできない。まじで訳がわからない。ーーまさか、短期間で混血(コンケツ)族種(ゾクシュ)転換(テンカン)を使ったからか? 確か前にキゼルが言ってたな。体への負担が大きいから乱発はするなって。ならそれが原因? いやでも、今までそんなことなかったし……なんでだ……


 訳の分からない現象に戸惑いながらも、必死に考えるグレンであったが、突如、彼の命源細胞()が激しく乱れる。


「今度はなんだ!?  痛ぇ!! ズキズキする、痛ぇ、痛ぇ!!!」


 今にも意識が飛びそうになるほどの痛みが彼を襲う。


まじかよ……炎魔を使いすぎるとこうなるのか。ックソ、キゼルの忠告通りじゃねぇか。


 手で胸を抑えることもできず、同じ体勢のまま彼は痛みに耐えた。


ーーダメだ、意識が……


 時間が経つにつれ鼓動は高まり、グレンに限界が迫った……そんな時、


「お、おったおった……って、マジか。ほんまに1人で摩瓈爾奠(マリシテン)倒してるやんけ」


 聞いたことのない男の声。だが、男の声が耳に入るたびに、グレンの鼓動は酷く高まった。


顔……見れない。つうかこいつの声聞いたら胸が…… そういう神通力なのか?


「お……おま……お前!! はぁ、、だ……誰だ?」


「誰って……つうか死にかけやん。大丈夫? 手貸そか?」


 そういうと、信じられないほどに目の前にいる男の殺気が上昇した。


博士と同じ訛りだから仲間なんじゃね?ってちょっと期待したのに!! 手貸すって、トドメさすってことかよ!!


「お……おい、いま俺は動けない。そ、そんなや、奴に!! 攻撃して、楽しいか?」


「はぁ? 自分おもろいなぁ。殺すのに卑怯もクソもないやろ(笑)。だぁい丈夫。こう見えてボク、殺す時も優しいで?」


 顔も見れないまま、自分に近づく足音と殺意。


どうするどうするどうする。こいつ、完全に殺そうとしてる。やばいやばいやばい。


「ほな、摩瓈爾奠(マリシテン)討伐お疲れさん。あとはゆっくりあの世でーーって、え〜〜、嘘やろ。あの子なんで『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』解いたん? ほんまアホやわ〜〜」


 突然、男の足音・殺意・声は止まる。と同時に、男の発言通り、周辺に展開されていた『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』が解かれた。


「はぁはぁはぁ。これやから頭の悪い"エセ"どもは好かんねん。あぁ、めんどい。ちょ自分、そのまま這いつくばって待っとってくれる?」


 すると、男は放っていた殺意を解き、歩いてきた方向へと戻っていった。


何が起きた? いやそんなことより、これはチャンスだ。どうにかしてこの場を……


 絶対絶命から一変、考える時間と、逃げるチャンスが舞い降りた。


よし、まだ痛むけど段々慣れてきた。……頭なら動か……せる。


 かなりゆっくりではあるが、グレンは顔を上げた。


「ーー誰だ……あいつ?」


数メートル先に、自分に話しかけていた男の背中が見える。

男は全身真っ黒の服を着ており、背中だけではこれといった特徴がわからないかった。


まぁグレンが知らないのも無理はない。彼は地球で誕生した新種の神通力者だから。 

 名は"ギムレット"。いまは刻導(コクドウ)の一員として各国を飛び回っている。


誰だか知らないが、今なら逃げれるかも。まず、従操(ジュウソウ)は……使えないか。だったらまずは起き上がる。あとは時間を稼いで……


 グレンは指先から徐々に力を入れ、ゆっくりと動き出した。

 しかし、その動きは、あるものを目にしてすぐに止まる。


「そ……嘘だろ…… 慈……」


 遠くにいるギムレットのもとに、別の男が合流する。そしてその男は、下半身のない慈の体を引きずっていた。


「よぉギムレット、こっちは終わったぞ。ほら、御目当ての神通力者だ」


 息のない慈を雑に投げ捨て、


「いやぁ、だいぶ強かった。危うく飛ぶとこだった。冷や冷やしたね」


「冷や冷やしたね! ちゃうわ。自分なんで『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』解いたん?」


「は? 終わったから解かないと『空間移動(ゲート)』だせないだろうが、飛ばすぞバカが」


 呆れて横に首を振るギムレットの姿を見て、男はキョロキョロと辺りを見渡し、


「ーーうん? あそこに人いねぇか? ……あ、神通力者だ。……え!? ま、まさか、摩瓈爾奠(マリシテン)が飛んだのか?!!?」


「そうや、あそこのチビ助に摩瓈爾奠(マリシテン)はやられた。だから、早く『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』展開しなおしてや」


「うわ〜〜、まじか。摩瓈爾奠(マリシテン)が飛んだのか。驚いた。なら、あれも生贄にするってことだな?」


「せやから早く『霄壌断絶』を、」


 ギムレットの要望通り、辺り一帯に再び『霄壌断絶』が展開される。


「はぁ……戦闘にだけ夢中になっとるからそこのチビ助の気配に気づかへんねん。自分の悪いとこやで?」


「うるせぇ、俺に命令するな飛ばすぞ? てか、自分で『霄壌断絶』できるなら最初からやれよ! いちいち俺にやらせるなタコが」


「は? 前にも言ったができへんで『霄壌断絶』」


「おいおい、この状況でその嘘はクソだぞ。じゃあ、いま展開されてる『霄壌断絶』は誰がやったんだ? お前だろ? ったく、飛ばすぞほんと」


・ ・ ・は?


「ちょ待ちぃや。これ、自分が展開したんとちゃうんか!?」


「は? 俺じゃねぇよ」


 いま展開されている『霄壌断絶』は、男のものでも、ギムレットのものでもない。当然、グレンでもない。


なんや、あのチビか? いや、中位レベルの『霄壌断絶』ちゃう。ーーまさか、


 ギムレットは何かに気が付き、慌てながら辺りをキョロキョロと見渡した。ーーだが、時すでに遅かった。



「ーー"(ハヤテ)ノ矢" 『迅尽(ジン)』」



「しもた!!!」


 急に声を荒げるギムレットに、ビクッと驚く男の左腕に何かが突き刺さり、直後、一瞬にして男の左腕を吹き飛ばした。


 吹き飛び、無くなった左腕。肩から溢れる血。それを蹲りながら必死に押さえ、周辺に響き渡る声量で叫び散らかした。


「グ、グア゛ぁア゛ぁァァア゛!!!

う、腕が……腕が飛びやがった!! っクソ、痛ぇ、痛ぇ!! 誰……誰だこのクソが!!!!」


 痛みの余り正気を失った男とは裏腹に、ギムレットは冷静だった。

 吹き飛んだ男の腕をジ〜〜っと見つめ、「あぁ、ここまでやな」とそう呟いた。


「お……い、おい!! 助けろギムレット!! 痛ぇって」


「無理無理。ボク女神(メガミ)ちゃうから治癒とかできへんって。あ〜〜ぁ肝冷えた、ひさびさに大声出たでホンマ。それより、早よ『空間移動(ゲート)』出しぃや。"神道(シンドウ)"との戦闘はまだ許可下りとらんで?」


「……は? 神道? つうか、『空間移動(ゲート)』だせねぇよ。『霄壌断絶』内だぞ? バカかテメェ」


「あちゃあ〜〜(笑) ほな僕らここで死ぬやんか(笑)」


「は……? どういう意味だ」


「いや、だってーー」


 ギムレットは、グレンの後方、つまり自分達の前方の空を指差した。

 そこには、大きな弓を構え、神力・怒り・殺気を異常なほど飛ばす、天使(アマツカ)(ガミ) (ミコト)迦玄(カゲン)の姿があった。


「クアレオスから連絡があった。遅くなってすまないグレン・ハイズヴェルム。だが、相手が『霄壌断絶』を解くタイミングすら分からない無能どもでよかった。

おい猿ども、あの世でしっかり(ガク)をつけてから出直せ。ーー"数多ノ矢(アマタノヤ)" 『詰罪(ツミ)』」


 特殊な製法で作った弓に、自身の羽で作られた矢。それを駆使するのが尊の戦闘スタイル。

 数多ノ矢(アマタノヤ)詰罪(ツミ)』は、1つの大きく長い矢を飛ばすことで、放った瞬間に分裂し、まるで流星群のように大量で早い矢を敵に打ち込む神通力である。


手に持つ弓矢に全ての神力が込められ、怒りそのままに尊は矢を放った。

直後、矢は分裂し、ギムレットと男の周辺に降り注がれた。


地面や周辺に突き刺さる激しい音、それによって宙に舞う瓦礫や砂埃。

2人の存在は全くと言っていいほど見えなくなった。


しかし、尊の手が止まることはなく、


「ーー神刀(シントウ) 『天ノ若(アマノジャク)』」


弓をしまい、1本の刀を手に持つ。そして、2人がいるであろう場所へと走り、


「直接、切り刻まないと気が済まない。出てこいゴミども。刹那に終わらす」


・ ・ ・


「間抜けが、それで隠れてるつもりか?」


しっかりと神力は察知してる。不意打ちでもするつもりか? 悪いが、そんなことすらさせない。(ゼン)さんの仇は必ず討つ!!


 刀を空へと掲げ、思いっきり振り下ろす。


「神刀() "一閃(イッセン)"『羽落(ハネオトシ)


 真っ直ぐに飛ばされた斬撃は、辺り一帯を覆っていた砂埃すらも切り裂き、地面を抉りながら真っ直ぐ放たれた。


 だが直後、尊の表情が一変する。


「!? ……やられた。ワープ系の神通力者か」


 神刀戯で良くなった視界、しかし目の前には2人の姿もなければ、神力すらも感じ取れなかった。


「逃した…… おいグレン・ハイズヴェルム!

あの2人のうち、どちらかがワープするようの神通力者だったか?」


「い……や、わからない。俺は、摩瓈爾奠(マリシテン)で手一杯だったから」


摩瓈爾奠(マリシテン)!? まだいるのか!? 真白(マシロ)さんが全て討伐したはずなのに……ックソ、次から次へと


「とりあえず立てるか? すぐに禅さんとクアレオスの……」


尊が来た時にはいたはずの慈の姿はどこにもなかった。


「禅さん…… 連れて行かれた……おい、 グレン・ハイズヴェルム。禅さんは……慈禅は死んだのか?」


グレンは尊の涙ぐんだ瞳を見ることが出来ず、地面に顔を伏せた。


そうか……わかってはいたけど…… なんて酷い感情だ。これじゃあ泣き虫に戻ってしまう。ーーでも、いいんだよね禅さん。本当に悲しい時は泣いても……



************************



〈メキシコ 都市アカプルコ〉



陽の当たらない建物と建物の間、そこは元より影のマーキングがある場所。故に彼らは移動できた。


「ーーほら、着いたで。ほんま、ボクに感謝しいやぁ?」


 尊の猛攻から間一髪逃げることのできたギムレットと、未だ出血の止まらない男は、影の中から姿を見せた。


「クソクソクソクソ!! 尊迦玄!! 天使神!! 許さねぇ、絶対飛ばしてやる!!!!」


 着いて早々声を荒げる男に、ギムレットは壁にもたれ掛かり、冷ややかな視線を送った。


「自分、勘違いしてへんか? 本当ならあの場で死んでた。相手は神格(シンカク)出来るんやで? 間違っても挑むべきちゃう。そもそもボクらの目的は、中位クラスの神通力者の捕獲や。上位は対象外。ボクのおかげで命助かったんやから、まずは"ありがとう"やろ?」


「は? ふざけんな。いまの俺なら天使神くらい飛ばせる! あそこで逃げてなかったら俺が神格できるようになったんだぞ!? メリットのデカさを考えろタコが!!」


あ〜〜ぁめんど。腕の痛みで正気ちゃうなこの子。はぁ、鬱陶しいなぁ。あ、もう殺そうかなぁ(笑)。


「おい、何ニヤついてやがる。こっちは血が止まらなくて焦ってんだ。なんとかしろ!!」


「だから女神ちゃうから、回復とかできへんて(笑)」


「それはさっき聞いた!! もういい!! とりあえず、いま頭に血が昇ってるから、一発俺の顔を殴れ! 冷静にならないと神力が乱れる」


「え? えぇの?」


「いいから早くしろ!」


 そういうと、ギムレットは、男の想像を大きく上回る程の力で顔面を殴った。その勢いで、男は壁に激突する。


「あぁ〜〜気持ちいぃ〜〜! ストレス溜まっとったからちょうどよかったわ! 堪忍な!」


「……おい、痛えよ。……やりすぎだろが!!」


「いやいや、殴ってえぇって言ったやん」


「限度があるだろうが! 飛ばすぞテメェ! あぁでももういい、顔の痛みのおかげで、なんか分散した。今なら、」


 そういうと男は、小さい範囲に『霄壌断絶』を展開し、神力を出血箇所に溜め、自身の羽を使って、擬似的な腕を作り上げた。


お〜〜、お見事。


「ーーふぅ……これで一安心だ。だがまだ不安定だから羽腕(ハネウデ)が固定されるまでここにいる。テメェはどうする?」


「う〜〜ん、せやな。とりあえず、慈とクアレオスの死体を例の場所に持っていくかな。ダラダラしとると叱られるからなぁ。てことで、ボクは行くわ」


「おうそうか。頼んだ……って、バカかテメェ? 俺を1人にする気か? 満身創痍だぞコラッ?」


「いや、どうするって聞くからやなあ」


「いまテメェがしないといけないことは、この八咫烏(ヤタガラス)様を守ることだろうが!!」


男の名は八咫烏。旧世界デウスで、神王(シンオウ)の次に権を所持していた天照(テンショウ)貴族(キゾク)使従人(シジュウビト)である。


 ※ 使従人(シジュウビト)

九人で構成される貴族それぞれに仕える神通力者を指す言葉。=付き人。


「はいはい(あぁめんどくさ)」



************************



〈ニューカレドニア 天使神拠点内〉



首都ヌメアの住人が用意した天使神専用の建物。

そこに、戦いを終え、心も体も疲弊したグレンと、尊はいた。


「ーーはい、とっても美味しい珈琲だよ。とりあえず飲みながら話そうか」


 出された珈琲に見向きもせず、グレンはずっと下を向き、暫く重苦しい沈黙が続いた。


「ーーす、すま、すまなかった」


 声を震わせ、詰まらせながら、グレンの謝罪が沈黙を破った。


「俺がバカだったからクアレオスが死んだ。俺が弱いから慈が死んだ。俺が使えないから敵に逃げられた。本当に……本当に……」


 普段のグレンからは想像も出来ないほどの動揺した姿。まぁ無理もない、俯瞰的に見れば、今回の戦い、『敗北』したも同然なのだから。

 しかも、いま目の前にいるのは、慈とクアレオスの仲間、いや家族同然といえる尊。

 歳の近い尊の心情を思うと……グレンは、謝罪以外の言葉が見つからなかった。


 しかし、


「何を謝るグレン・ハイズヴェルム。顔を上げろ」


 その言葉に、グレンはゆっくりと顔を上げる。


「"男がみっともなく泣くものではない!!"

これはね、僕の慈禅(恩師)が教えてくれた言葉だ。君も心に刻むといい」


「いやでも、」


「でもじゃない! ……いいんだ。本当は、僕だって悔しいし、悲しい。でも、慈さんもクアレオスも、僕に悲しんで欲しいとは思ってないはず。それは君に対してもだ。だから、僕らが今しないといけないことは、死んだ仲間を思いながら、必ず仇を取ること。これ以上犠牲が出ないよう、強くなること。それ以外にすることはない。いいね?」


 歳が近いのに、"神"というだけでこんなにも違うものなのか。俺は、こんな風に強くなれるのだろうか。

 グレンは、尊にかけられた言葉を胸に刻み、流れる涙を力強く拭いた。


「うん、それでいい。じゃあ疲弊してると思うけど、何があったのか、敵の狙いがなんなのか、分かる範囲で教えてくれるかい?」


「あぁ、全部話すよ」


一方その頃、



〈エクアドル ガラパゴス諸島〉



「ーーだ……だから!! 俺は、榮多(エイタ)云大(ユウダイ)!! 千年(チトセ)さんの仲間で、ここに行けって言われたの!!!」


「知らん名の、知らん神通力者。排除以外の選択肢なし」


 云大に襲いかかるは、神道十二界第六級上位 獣神(ジュウシン) 名は『宏憐(コウレン)


 彼もまた、窮地に立たされていた。


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