Ep.08(48) 次の任
〈ジブチ共和国近海アデン湾付近〉
真白澪と合流するも、蛙の摩瓈爾奠の襲撃を受けるグレンとキゼル。
だが、流石は最上位。たったの一撃で摩瓈爾奠を葬り去る。それに伴い、辺り一帯が極寒と化す。
「ーーあ〜〜、生き返るぅ。 まじでお前の神通力最高だな。便利すぎ」
「だろ? 俺の炎は最高なんだよ!!」
いや、便利扱いされてるだけだろ……
3人は小さくまとまり、グレンの焚いた炎の前で暫くじっと身を寄せた。
「ーーにしてもオッサン、やっぱり強いな。
あの摩瓈爾奠を瞬殺とは……流石にビビったぜ!」
「当たり前だ。全統ナメんな。あとオッサンって言うな」
「だが真白、霄壌断絶外であれだけの神力を放って良かったのか? 厄介な連中に居場所がバレるぞ?」
「うん? あぁ、別にいいよ。来てもどうせ刻導とかだろ? めんどくせぇけど、問題はない。だって俺、強いし」
うわ、うざ。確かに強いが、自分で言うな。
「そうか、ならいい。じゃあ俺らはそろそろ帰るとするよ」
「え? まじで? 本当に必須任務書ない感じ?」
「お前宛のは、今回はない。ただ今後はあるかもしれないから、今度は攻撃してくるなよ?」
「あ〜〜、うん。お前らの面、覚えてたらな」
2人は千年からの依頼を無事終え、虎影の待つモンゴルへと帰還した。
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〈モンゴル国〉
「たっだいま〜!!」
虎影の待つ場所へと帰還した2人は、着いてすぐにあることに気がつく。
「あれ? じじ、師匠! 云大どこ行ったの? あ、ですか?」
「ホッホ、己らが戻る少し前に千年が来てのぉ。云大を連れて、任務に向かったぞ」
「な、なに!? 千年が云大と2人で?!」
「あ……りえない。千年様と2人きり……。あの舎弟、絶対に殺す」
「いやいや、殺すのはダメだろ」
「黙れ。元はと言えば、お前の動きが悪いせいだ。お前がノロマじゃなければ、今頃千年様とお話し出来ていた。反省しろ、このカスが」
キゼル……それは流石に無理があるぞ。真白にビビり散らかして、行動が遅れたのはお前のせいだろ……
「ホッホ、まぁよい。一先ず、任務の報告をしてもらおうかのぉ」
キゼルの機嫌がかなり悪くなったものの、2人は虎影の前に座り、任務の報告を行った。
「ーーということです。なので、任務はちゃんと遂行できたと思います」
「ホッホ、己らも随分と強くなったからのぉ、失敗などはあり得ないと思っておったが、万が一、終えずに戻っておったら……ホッホ、間違いなくあの世行きじゃったな」
2人の顔から一瞬にして笑みが消えた。
「しかしあれじゃな、任務内容は此方も知らんかったが……なるほど、零王か。うん、2人ともよぉやった。ご苦労じゃったのぉ」
2人はその言葉に目を見開いて驚いた。なぜなら、虎影が誉めることなんて滅多に滅多にない。滅多に。
それ故の驚き。グレンとキゼルは顔を見合わせ、再び笑顔になった。
「ーーよし、ほいじゃあ次の必須任務書を預かっておるから、ちょっと休憩してから準備せい」
「えぇ〜〜、まだあんのかよぉ〜〜」
「当たり前じゃ。世界が変わったことで仕事量は倍以上、ゆっくりしている暇はないぞ」
「つうかジジイも働けよなぁ〜〜。俺たちばっかり。 あ、ごめんなさい。師匠」
「ホッホ、嬉しいことに、此方にも必須任務書が渡されたわい。久方ぶりの任務じゃ、大分と気分がよい。じゃから、今の"ジジイ"は許す。次はないぞ?」
グレンは、「バッ」と下を向き、目線を逸らし、何度も何度も頭を下げた。
「師匠はもう行かれますか?」
「いや、まだじゃが?」
「では、少しお伺いしたいことがあります。
真白澪が、自分のことを"全統"と呼んでいましたが、全統とはなんですか?」
ほぉ、権力を嫌う真白が全統を口にしたか。
それを行使しなければならないほどの何かがあったということじゃ……な? いや、真白のことじゃ、どうせ些細なことじゃな。
「師匠?」
「おぉ、すまん。よいぞ、教える。ではまずその前に1つ質問をしよう。我々、神王勢力と呼ばれる者たちの中でも最も地位が高く、全決定権を保持しておるのは誰じゃ?」
「はいはい!!」
勝手に入ってくんな、このグレンが!!
「良い返事じゃ。では、グレン、答えてみぃ」
「ふふっ、ようは1番偉いやつだろ? う〜〜んそうだなぁ」
すっと答えろ、すっと! 神王に決まってるだろうが!!
「……あ、ごめんなさい。わかりません」
バーカ、バーカ! 2度と喋んな!!
「神王、天明様です」
「う、うむ。そうじゃな(グレンはここまでアホじゃったか?)
ででは、その神王の次に決定権を保持しておるのは誰かわかるか? あ、グレンはちと黙っとけ」
「え? 何で……」
「神王様の次は……、貴族? うん、天照貴族です」
「よろしい」
天照貴族ーーそれは、九人で構成された、神王勢力最強の神通力者集団。
また、次期神王を継承するものたちでもあり、神王に何かあった場合は全決定権を保持し、行使することができる。
「キゼルの言う通り、神王様の次に地位があると言われておるのが貴族じゃ。じゃが、貴族というのは元々存在していなかった。天明様が王に就かれてから数年以上経った頃に出来た組織じゃ。つまり、」
「貴族という組織ができる前に、次期神王候補だった者、それが全統。 ということですね?」
「ホッホ、正解じゃ」
そういうことか。だからあんな自信満々に……うん? いやいや待て待て、じゃあ、真白澪は元々神王候補だったということか?! 信じられない。あんなアホなのに……。
「意味がわからん! 俺も仲間に入れろ!!」
「ホッホ、まぁ簡単に言うとじゃ、
神王→貴族→全統→神道⇔王直となる」
・ ・ ・
「は!! 神道と俺らって、同等!? まじか!!」
「バカか。組織として同等なだけで、個人としてはまた別だ。俺らは中位で、神道は上位。どう考えても千年様以外、神道の方が上だ」
「なるほど〜〜。まぁ多分忘れるだろうけど、とりあえずわかった!」
だからお前には何も教えたくないんだよボケ。
ーーにしても、何で真白は貴族に選ばれなかった? 強さで言えば間違いなく神道ではなく貴族の方に選ばれる…… いや、もしかしたら貴族の選定基準が力だけではないのかもしれない。あの性格だ、きっと落選したんだろうな。うん、きっとそうだ。聞く必要はないな。
「なるほど、理解しました。では、真白の言っていた"零王"とは、全統の別名? みたいなものってことですかね?」
「その通りじゃ。次期王候補だった者たちには王の称号が与えられ、真白澪は零王と呼ばれておった。
神王以外に王の称号を持つ者、それらを全統と呼ぶ」
なるほどな。つまり、零王以外にも全統がいるということか。
「ホッホ、じゃあそろそろ行くかのぉ。此方は己らと別行動じゃから…… おっと、大事なことを伝え忘れとった。ほれ、これが新しい必須任務書じゃ」
虎影は、2人にそれぞれ1枚ずつ、必須任務書を渡した。
「え!? 俺にもくれんの?!」
「師匠、まさかとは思いますが……いやあり得ない。これは何かの間違いでは?」
「ホッホ、間違いではない。今回は、己らそれぞれに任務が出ておる」
グレンとキゼルは基本的にセット。
理由は、言うまでもないが、一応説明すると、グレン1人では出来ないことが多すぎるから。(シンプルに目的地まで行けない)
だが、今回は違う。虎影の渡し間違いでも、千年の発行間違いでもない。
従って、キゼルとグレンに1枚ずつということは、それぞれに別の任務が言い渡されたということになる。
「うっひょぉ〜〜! ついに単独デブーってやつだな! テンション上がるぅぅ!!」
デビューだ。でもなんで千年様は……あぁ、そうか。グレンのやつ、この前空間移動が使えてたな。それでか。こいつは今まで空間移動が使えなかったから、常に俺がお守りしていたが……にしても本当に大丈夫か?? まぁ、俺には関係ないが。
テンションそのままに、グレンは封書を雑に破き、中身を確認した。
「ーーな…… まじか…… あ、そうだった。
キゼル、俺、字読めない。訳してくれ!」
何に前半驚いてた?! 自分のバカさ加減にか?
「めんどくさい。いい加減、文字覚えろよ」
「手が空いたら!」
「はぁ……疲れる。えっと……まずお前が向かう先はアメリカという国だ」
「うんうん。 うん? アメニカ?」
「アメリカ! いちいち反応するな、めんどくさい。で、お前の任務内容は2つ。
1.アメリカに行き別働隊と合流すること。
2.日本の内閣総理大臣の安否確認、並びに敵対勢力の調査、だそうだ」
・ ・ ・
「待て、全然意味がわからん。どゆこと?」
「ホッホ、これはまた、相変わらず千年はお人好しじゃのぉ」
「そうですね。別にこっちの世界の人族など救う必要ないと思うんですが……ほんと、千年様の優しさには困ったものです(でもそこもまた素敵です!!)」
「そういえば、アメリカは確か……そうじゃ、ミカドノメが占領しよったはずじゃな」
ミカドノメ……四等〜三等の害種か。
「なるほど、ならグレンでも十分にやれそうですね」
「なぁ〜〜、さっきから何の話なんだよ〜〜、俺さっぱりわからねぇよ〜〜」
「とりあえず黙ってアメリカに行け。あっちで別働隊が待機してるらしいから、そっから考えろ! 」
「ちぇ〜〜。つうか、千年の野郎、まじで適当だなあいつ! もっと細かく指示出せよ! 俺がバカだって知ってるくせに!」
ふっ、千年様が適当? 本当にバカだなこいつ。お前がアホだから理解できないだけだ。まぁいい、これ以上付き合う必要もないし、あとは勝手にしてくれ。で、俺の任務は……
グレンの任務書を読み上げたキゼルは、自分に渡された任務書の封を綺麗に開き、中身を確認する。
「ーーなるほど」
確認を終えると、紙をしまい、すぐに空間移動を出した。
「では、そこまで疲れてないのでもう行きます」
「いや待てよ! 共有しろって!」
「は? なぜ?」
「いやいや、俺のは見たのにお前は見せないのか? それはあんまりだろ〜〜」
何言ってんだこいつ。
「遊びじゃないんだ。いい加減、そのピクニック感覚やめろ」
「誰だピコリックだ!! 侮辱がすぎるぞお前!!」
いや、ピクニック……つうかピコリックって何? 怖……。
「で? 内容は? あのなお前、こういうのは、ちゃんと共有しとかないと、何かあったときに大変だぞ〜〜?」
「いや、別にお前に言う必要はない」
「ジジイは、あ、師匠はどう思う〜〜? ますか?」
「うん、そうじゃのぉ。確かにグレンの言う通りじゃな。互いに居場所の把握をしておくのは大事なことじゃ」
「いや、師匠!」
「それに、此方もキゼルの任務知りたい〜〜」
うわ……キ……キモすぎる。 年老いたジジイのかわい子ぶりは見るに耐えん。やばい……ゲロ吐きそう。
「おい、何か失礼なこと考えておらんか?」
「い、いえ。 わかりました、共有します」
キゼルは一度、空間移動を閉じ、2人に任務内容の書かれた紙を見せた。
「ほぉ、云大と合流か。キゼル、仲良ぉできるか?」
「心配いりません。あいつは仲間です。それくらいわかってます」
おぉ。感動……いかんいかん、涙腺が弱体化しておる。
「云大と合流するのか? あいつ今どこいんだよ?」
「エクアドルだ」
「な……ネクマドル!?」
あぁめんどい。
「そういうことだ。もういいな?」
「う〜〜ん、わかんねぇけど頑張!」
ほら見ろ、共有する必要ねぇじゃねえか。
「ホッホ、まぁ何にせよ、期間指定のない任務じゃ。相当酷なものになるとは思うが、己ら心してかかるんじゃぞ。 では、」
3人はそれぞれに空間移動を出し、任務遂行のために動き出した。




