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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神道十二界編
47/76

Ep.06(46) 全統 "零王"


         〈ジブチ共和国〉



 ニューカレドニアでの神座が終了して間も無く、ここジブチ共和国首都ジブチ市の地に、グレン・ハイズヴェルムとキゼル・ラーシュは降り立った。


「ジジジ、ジブチ共和国は、アア、アフリカ北東部に位置していて、じじ、人口は約98万人で、"最も暑い国"とも呼呼呼ばれている」


「どうしたキゼル? 寒そうだな?」


「みみみ見たらわわわかるだろ。サブイ。はは早く火、火つけろ」


 ここジブチは、国自体小さいが、かなりの猛暑地帯。最大気温71.5度を記録したこともあるのだが……。


「どうだ? 温かくなったか?」


「おう、お陰様で」


「貸し1な! で、ここってめちゃ猛暑地帯なんだろ? 何でこんなに"極寒"なんだよ?」


 グレンの言う通り、彼らのいるジブチ市は、どこを見渡しても雪。地面は凍結しており、猛暑どころか極寒地帯と化していた。


「見たらわかるだろ。いるんだよここに」


「え、誰? ……あっ! 摩瓈爾奠(マリシテン)か!?」


「ちげぇよ。摩瓈爾奠(マリシテン)が可愛く見えるほど、厄介な奴だよ」


ったく、気候まで変えるって、どんだけバケモンなんだよ。千年(チトセ)様からの命令だから承諾したが、俺らであれを手なづけられるのか?



〜〜〜〜



   〈虎影(トラカゲ) (ハザマ)内〉



「ほいじゃぁ、今後の話をしようかのぉ。

まず云大()は、此方(コチ)神域(シンイキ)で特訓じゃ。色々と力の制御ができとらんからのぉ、しこたま鍛えてやるわい」


「はい!! ありがとうございます!!」


うわ、こいつ死ぬな。虎影(ジジイ)の"しこたま"は想像を絶する。ドンマイ、舎弟。


「ほいでグレン《己》とキゼル()じゃが、本当は此方が死ぬまで追い込むつもりじゃったが、千年から"これ"を預かっておる。じゃから、こっちの任務に向かってくれ」


 残念がる虎影は、ポケットから取り出した1枚の封書をキゼルに渡した。


「これは…… は!? 千年様!! 千年様からの恋文ですね?!」


「違うわ。必須任務書じゃ」


 ※必須任務書

王直(オウチョク)眷属(ケンゾク)頭領(トウリョウ)、または神王(シンオウ)のみ作成が許される書状。

受け取ったものは、いかなる事情があってもこれを優先しなければならない。

ただ、神道十二界に、千年から発行する場合は王の承認が必要となる。

(承認なしでも発行できるが、王の承認がないものは基本的に無視される)


「中を確認したら、それに従い行動せい。任務の統括は、言うまでもないが、キゼル()がせい」


「当然です」


「おい、ちょっと俺が先に確認するから借りるぞ」


キゼルから封書を奪い取ったグレンは、雑に封を破り、中を確認した。


「てめぇ! 千年様からのものを雑にすんなボケッ!!」


 取り返そうとするキゼルを避けながら、じ〜〜っと紙に書かれた文字を見つめるも、


「ーーっ、ああ゛!! そうだった、俺文字読めねぇんだった!! おいキゼル、読んでくれ!」


「一級品のバカだなてめぇわ!! 貸せ!」


 再び紙がキゼルの元に戻り、今度は彼がじ〜〜っと文字を見つめた。


・ ・ ・


「……うわ、、これ…… 千年様……無茶がすぎます」


 顔から血の気が引き、空を見上げるキゼル。


「おい! 何て書いてんだよ! 教えろ! おい、おい、おいっ!」


「ホッホ、此方も中身は知らんが、キゼル()の様子からして、相当な任務なようじゃな。まぁなんじゃ、頑張ってこい」


そして2人は、ジブチ共和国を訪れる。



〜〜〜〜



「で、何なんだよ、俺たちの任務って! そろそろ教えろよ!」


「あぁ、そうだったな。寒すぎて言うの忘れてた」


そういうと、彼はポケットから封書を取り出し、グレンにわかるように読み上げた。


「まず、千年様からの必須任務事項の期限は3日。内容は、この地にいる神道十二界最上位(サイジョウイ)真白(マシロ) (ミオ)"を見つけ出して、報告しろ。だ」


「真白……澪?? ……え、、え〜!?!? まま真白って、あの真白か?!」


「そうだ。あの真白だ」


「いやいやいや、無理無理無理。ぜ〜〜たい、無理!!  だって、前にもこの任務して失敗したじゃん!! 無理だって!」


なんだよ、前にやったの覚えてるのかよ。だったら、状況で何となく察すること出来ただろ、ほんとバカだな!!


「そうだ。俺たちは過去に3回、同じ任務をしている。1・2回目は見つけることすらできず失敗、3回目は会うことはできたが、機嫌が悪すぎて、即返り討ち。顔すら拝めずに死にかけた」


「うぅ。思い出しただけで何か寒くなってきた」


「とりあえず、まずは見つけ出す。見つけ出したら……いやそっからのことは後から考えよう。とにかく、手当たり次第聞き込みするぞ」


「聞き込み……って、誰に?」


この極寒ゆえ、辺りには人どころか生き物すら見当たらない。


「……はぁ。まぁ動くしかないだろ。

あ、お前!! 絶対に消隠姿(ショウインシ)解くなよ。

あと騒ぐな。それと、俺から離れるな、寒い。いいな?」


「注文多すぎて覚えれな〜〜い」


 それから、2人は重い足取りで、周辺をくまなく散策した。



**************************



 真白澪捜索から1日と10時間が経過。チャイムを鳴らして聞き込みをしたり、空から探したりと、色々したが結果振るわず。


ある程度見つからないと予想はしていたものの……風の当たらない物陰で、愕然とする2人。


「ダメだ…… もう辞めようぜキゼル」


「アホか。任務放棄して帰還したらどうなるかお前も知ってるだろ」


「うん……。虎影(ジジイ)にボコボコにされる」


「そうだ。それに、"任務失敗"は今回で3回目だ。どんなに優しい千年様も許してはくれない。千年様からの信頼はなくなり、災厄王直解任だ」


「か、解任?! 嘘だろ、俺たちどうなるんだよ」


「さぁな。そうならないためにも、何日、いや何十年経とうが任務は遂行させないといけない」


「いや、猶予3日だろ? お前ってたまにバカだよな」


残り1日とちょっと。見つけ出せなければ、マジでどうなるかわからん。1つ言えるのは、間違いなく降格。中位から初位(ウイ)に落ちる。そうなれば、ジジイはブチギレ、千年様から見捨てられ……


「嫌だ!!!! ランク落ちは甘んじて受け入れるが、千年様から見捨てられるのは絶対に嫌だ!!!!」


「おい何だよ急に…… 騒ぐなって言ったお前が騒ぐなよ」


「おいアホグレン、いいか? 俺は千年様で出来ている」


「・ ・ ・ は? 何それ、どゆこと?」


「そんな俺が、千年様からの見捨てられたらどうなる? 答えは"()"だ。そう、何も残らない。だから、必ずやり遂げる。必ずだ! いいな?!」


「いやいや、お前はお前じゃん。切羽詰まって頭イカれたか?」


「さぁ休憩している暇は無い。行くぞ!!」


 キゼルのテンションがおかしくなりつつも、2人は再び捜索を始めた。


ーー12時間後


「あ〜〜ぁ、ダメだ。千年様に、見捨てられる……」


「そうだな、このままじゃマジでやばいなーーあっ!! 言いこと思いついっぴ! あのさ、神力解放して「ここだぞ〜〜!」ってアピールすんのはどうだ??」


「ダメだ。前にそれをやって殺されかけただろうが」


「あ、そだった」


 完全に手詰まった2人は、もはや動くことすら辞め、ぼぉ〜〜っと空を眺めていた……そんな時だった。


「ーーうん? なぁキゼル、聞こえるか?」


「あん? 何も聞こえねぇよ。俺はいま千年様と最後のお出かけ中だ。話しかけるな」


「ふざけてないで、耳すませ! ーーほら、船の音だ」


 地獄耳のグレンだから聞こえたのか。いや、そうじゃない。確かに、何隻もの船の汽笛が聞こえた。


「船……よし、グレン! とにかく行くぞ!!」


「っしゃぁ!!」


 藁にもすがる思いで、2人は音のする方へと駆け出した。



**************************



〈アデン湾付近〉



 2人は、首都から近いアデン湾の船場に移動した。


「なぁキゼル。俺の勘違いだったかもしれん。 船……ねぇな」


船場に着いた2人は、すぐに海上を見つめた。

だが、そこには船などなく、波が綺麗に揺れているだけだった。


「いや、お前にしてはかなりナイスなことをした。間違いなく、真白は"あそこ"にいる」


キゼルは真っ直ぐ海を指差していたが、前途の通り、そこには何もない。グレンの頭の中が(ハテナ)で溢れる中、キゼルの指差す方角の西側、そこに一隻の船が姿を見せた。


「あ!! 船船! なぁ、船!!」


「わかってる。おい、いいか? あの船、よく見とけ」


そういい、2人はその船をガン見する。そして、その船がキゼルの指差す位置に入った瞬間、


「!?!? き、消えた!!?? おいキゼル、消えたぞあの船!!」


グレンが驚くように、その一隻の船は、進む方向に向かって、船首から徐々に姿を消し、最終的には跡形もなく消えた。まるで、何かの中に入り込んだかのように。


※船首

船の先端。


「どどどどういうことだよ! 何が起きたんだ?」


「まず、いま消えたあの船は海賊船だ。ここに来る前、国のことを少し調べたが、どうやら海賊による悪行が頻発してるらしい」


「ほぉ。……海賊って何?」


「悪い奴らだ」


・ ・ ・


「あ、そう。なら消えてよかった!」


「違う。あれは消えたんじゃない。"見えなくなったんだ"」


「・ ・ ・うん? どゆこと?」


「はぁ……(ここまで言ったらわかるだろ)

いいか? まず、俺らがこんなに探しても真白が見つからない理由は何だと思う?」


「えぇ〜〜。何だろ…… もしかして、気合と根性が足りないから!?」


はぁ……


「違う。

1.真白が、神域(シンイキ)内にいる。これだと100%見つけられない。だが、それはあり得ない。千年様から以前聞いたが、真白は滅多に神域に入らないらしい。なぜなら、あいつは"寒がり"だから。

神域は、自らの力で生み出す異空間。つまり、自身の神通力が神域を作り出すってことだ」


「ほぉほぉ。あ、なるほど! あいつ氷寒(ヒョウガ)の神通力者だから、自分が作った神域内は寒くなるってことか? じゃあ、俺が作る神域は暑いってことだな!」


何だよ、氷寒(ヒョウガ)の神通力者ってことは覚えてんだな。つうか、今テメェの話はどうでもいい!


「まぁそういうことだ。だから、寒がりのあいつが神域に入ることはない」


「じゃあ何で見つからないんだよ〜〜。やっぱり気合と根性が、」


「2. 霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)を展開している」


霄壌断……(ショウジョウダン) あ!!


「視認不可! 見えも聞こえも感じることもできない!!」


「そうだ。霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)は、霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)の内側の全ての情報を外部と遮断する力。その中に真白がいるとしたら、中に入らない限り見つけることはできない」


「なるほどなぁ〜〜。うん? で、それが何だ?」


う……嘘だろ。 ここまで説明したの……に。


「つ、つまり、さっき船が消えたろ? あれは、あの船が海上で展開されている霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)の中に入ったってことだ。だから、見えなくなった」


「あ、そうか! じゃあ、あそこらへんに真白がいるってことだな!」


「そういうことだ」


ひとしきり説明を聞き、ようやく居場所が判明した喜びからか、グレンは炎を纏い、真っ直ぐ飛び出そうとした。


「っしゃあ! じゃあ行ってくーー」


それを間一髪で止めるキゼル。


「お、おま、お前!! バカか!!」


「え? 何で?」


「聞いてたか、人の話!! 海賊は悪い奴らだ。それが霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)内に入った。つまり、あの中ではいま、真白と海賊の戦闘が行われている。(一方的な虐殺だろうけど) そんな状況で俺らが突入でもしたら、一瞬で巻き添え、災厄あの世行きだ」


「あ…… そだった」


はぁ、こいつと話すと頭が痛い……。まぁそんなことはどうでもいい。どうする? このままここで待機していても、何も始まらない。ならアホグレンみたいに飛び出すか? いやいやいや、死ぬな。うん、死ぬ。


「じゃあ、ど〜〜すんだよ。キ〜〜ゼ〜〜ル〜〜」


やばい、殴ろうかな。


「まぁ何にせよ、こっちからは動けんな。予想だが、真白のいまの機嫌は最悪だろう。そんな状況じゃ、どう動こうが結果は見えてる。霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)が解かれるまで待とう」


それから2人は数時間、その場でじっと待つ。


ーー残り、2時間。


「っおい!! どうすんだよ! あと2時間だぞ?」


「わかってる!!」


ックソ、どうする。こうなったらもう突撃するしか……


「なぁキゼル! "真白〜〜俺たち千年から頼まれてきたぁ"って叫べば何となるんじゃねぇか? もう行こうぜ!」


「バカか! 千年様の名前を出せるわけがないだろ、 ……いや、待てよ。 そうか、そうだそうだ。確かにそうだな。あははっ!」


以前、めちゃくちゃにされた恐怖のせいで、彼は当たり前で簡単なことを除外して考えていてしまった。


「盲点だった。前に接触したとき、いきなり攻撃されて、それ以降正直トラウマだったんだが……そうだな、千年様と真白は仲がいい。最初から千年様の名前を出せばよかったんだ。自分達でなんとかしようとすること自体が間違いだったんだ!」


どこかスッキリとした様子のキゼルは、リラックスしながら体をほぐし、


「っよし。行くぞ、アホグレン」


そういうと、グレンの首元を掴みながら、真っ直ぐ海上に向かって飛び出した。


しかし、飛び出して数秒後、キゼルは空中で勢いよく静止する。その反動で、グレンは海に落ちる。


「ーーっぶぁ!! おい! 何すんだよ!!」


「静かに。ーーこの感じ、、やばい、退くぞ!!!!」


慌ててグレンの頭を掴み、引き返そうとしたその瞬間、「パリンッ」という音が彼らの鼓膜を刺激する。


「何だ何だ!??!」


慌てて音のする方へと体を向けた2人の顔が一気に強張る。


「……ま、、マジかよ」


静かに揺れる美しい波しかなかった眼前に、突如として映し出されたのは、広範囲に及ぶ氷の造形。


船数十隻に加えて、逃げようとする人、武器となったであろう刀や銃。

それらが、綺麗に氷づけにされ、海上の上に並べられていた。


「ききききキゼル。ななな何だこれ」


 炎の神通力者であるグレンですら、凍りついた空気に体を揺らしていた。


「と、とりあえず、ひひ火を、もももっと火力上げろ。 ししし死ぬ」


2人は震えながらも、物陰に移動する。そして、グレンはすぐに消隠姿(ショウインシ)を保ったまま、体を発火させる。


「……だ、死ぬかと思った」


「流石に俺もやばかった」


「で、何だよあれ! 急に出てきたぞ!」


「恐らく、真白が霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)を解いた。俺らのあの距離で、あんだけ寒かったんだ。真白当人はもっと……やばい!! 霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)を解いたってことは、あいつ多分移動するぞ!!」


「え!? やばいじゃん! せっかく出てきたのに」


クソクソクソッ!! どうする? 時間がない。やるしか……


目の前であんなのを見せらた挙句、寒いというだけで彼らを撤退させるほどの力。キゼルの判断と体が硬直するのも無理はない。


「少し時間をくれ。考える」


しかし、彼は待てなかった。


「もう無理! お前、ビビりすぎだ! ジジイ(虎影)が言ってたろ? お前は頭いいのに慎重すぎだって!」


そういうと、グレンは消隠姿(ショウインシ)を解き、神力を解放する。

そして、全身に炎を纏いながら、真白のいるであろう海上へと飛び出そうとした。


しかし、その判断はあまりに軽率だった。彼らが向かう先にいるのは最上位。生物としての格がまるで違う生き物。

 グレンが放った神力を察知するのと、彼らの元に姿を見せることに、数秒もかからなかった。


「ーーどっちだあんたら? 死んでもいい奴ら?」


 2人の背後から聞こえるその声と、感じる凄まじい神力。


「お〜〜い、無視か? 俺いま大分(ダイブ)と機嫌悪いんだけど? つうか寒すぎ。あぁ、やっぱいいや。殺して考える」


見なくてもわかる。背中に突き刺さる禍々しい殺意。


あ……終わった……


 寒さ+恐怖で、思考も体も止まった2人は、ただただ、眼前に広がる美しい氷の造形と、その周辺を優雅に波打つ海面を見つめることしかできなかった。


「……千年様」


真白の手が2人の背を振れようとした瞬間、キゼルの口から千年の名が溢れる。

意図してか、はたまた死ぬ前の嘆きか。どちらにせよ、その言葉で真白の動きも止まる。


「ーーおい銀髪。いまなんつった?」


・ ・ ・


「お〜〜い銀髪、お前だよお前。聞いてる? もしも〜〜し」


 放心状態のキゼルは全くそれに反応を示さない。その代わり、口調が変わった彼の様子を察し、グレンの緊張は解けた。


ただ、緊張が解けたものの、恐怖は依然感じる。振り返ることなく、視線はそのままに、


「お、おい! お前、真白澪だな?!」


強者に対しての第一声が、これで正しかったのかはさておき、グレンの声を聞いてキゼルも正気を取り戻す。


「あ? そうだけど? つうか、いま俺のことはど〜〜でもいいし、赤髪のお前には何も聞いてねぇから黙っとけ」


「な、、いまキゼルはビビって答えられねぇから俺が答えたんだよ! あと、赤髪じゃなくて、俺はグレン・ハイズヴェルムだ!!」


キゼルとグレン。その名を聞いて、再び真白の動きが止まる。


「グレン……キゼル……。っ、なんか聞いたことあんな。

あれ待てよ。ハイズヴェルムって確か、炎の国の民の性……いや、思い出せん。やっぱ知らねぇか? うん、気のせいだな。

で、銀髪のガキ、お前さっきなんつった? もっかい言ってみろ」


「だ〜〜か〜〜ら、キゼルはビビッ、」


「黙れグレン。俺が話す。静かにしてろ」


激しく波打つ心臓。乱れる呼吸。彼はゆっくり目を瞑り、深呼吸を繰り返す。


大丈夫、大丈夫、大丈夫。俺は千年様の従者だ。問題ない、やれる。


そう自分に言い聞かせたキゼルは、ゆっくりと立ち上がり、背後にいる男の方へと振り返った。


「ーー俺の名はキゼル・ラーシュ。王直(オウチョク)眷属(ケンゾク)前衛(ゼンエイ)、天千年様の従者だ!!!!」


思いの外、辺りに広がった彼の声を聞いて、「ビクッ」としながらグレンも振り返る。


そして、振り返ったと同時に、彼も声を荒げる。


「え、えぇ〜?!!? 名前からして美少年かと思ったら、めちゃくちゃオッサンじゃねぇかよぉぉ!!!!」


2人の目の前に立つ男。身なりはボロボロ、髭も髪もボォボォでボサボサ。加えて、目の下には濃ゆすぎるクマ、気だるそうな表情。名前からは想像もできない、theおっさんがそこにはいた。


「あ゛? 失礼だなテメェ。殺すぞ」


彼こそが2人の探し求めていた男。

神道十二界唯一の最上位『氷神(ヒカミ)』。 

数人しかいない、神王(シンオウ)より直々に"全統(ゼントウ)"の称号を与えられし者。

真白澪、またの名をーー"零王(レイオウ)


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