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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神道十二界編
46/76

Ep.05(45) 裏の裏はなんとやら



〈ニューカレドニア首都ヌメア 神座(カミザ)会場〉



 神道(シンドウ)十二界10名(2名欠席)による神座を終えた主催の(ミコト) 迦玄(カゲン)は、神座に潜入していた(アマネ) 千年(チトセ)より、衝撃の事実を知らされる。


「ま、摩瓈爾奠(マリシテン)が全滅……。流石に驚きました。本当に、真白さんがやったんですか?」


 神座で決まったことの1つ。それは、各地に出没した20体以上の摩瓈爾奠(マリシテン)の討伐。


 だが、それは既に完了しており、それを実行したの

は、神座に出席していなかった、神道十二界唯一の最上位(サイジョウイ) 真白(マシロ) (ミオ)であった。


「これが事実なら……凄すぎる。たった数日で全滅なんて」


「事実だよ。ほれ、これ見てみ」


 千年が彼に渡したのは、朱奈(シュナ)から貰った携帯。(博士(ハカセ)から回収したやつ)


 携帯の画面には、朱奈から送られてきたメールに、添付されていた複数枚の写真。


 そして、その写真に映る全ての建物や木々は、余すことなく全て凍結されていた。


 それを見て、尊も摩瓈爾奠(マリシテン)を討伐したのが真白であると確信する。


「ーーこの1枚目の写真に映る建物は、摩瓈爾奠(マリシテン)に襲撃された、ツイスタを運営している会社ですね。ものの見事に氷づけだ。でこっちは、フェイスインを運営している会社。でこれは森、これは山。なるほど、氷寒(ヒョウガ)の神通力者にしか出来ない芸当です」


 ※フェイスイン

フェイス○ッ○


「その通り。そして、それを目撃した人族(ヒトゾク)たちはこう言ってる。"30半ばのおっさんと、化け物が争ってる"ってな」


「……なるほど。要らぬ心配でしたね。

神座に来ないで摩瓈爾奠(マリシテン)を討伐してたとは。さすが真白さんです。

でも、1つ疑問です。何で真白さんが摩瓈爾奠(マリシテン)を? 僕はあんまりあの人に会ったことないからわからないんですけど、聞いた話では、千年さん以上にかなりの面倒くさがりやだとか」


ストレートに失礼なことを!! まぁ確かに俺も面倒くさがりだけども!


「そうか、尊はあんまり会ったことないのか。確かに、澪の口癖は「めんどくせぇ」だからな。あいつが自発的に動くことなんてほぼない。でも、そんな澪がごく稀に動く時がある。それは……」


「それは……?」


 神王(シンオウ)が選んだ第一級の最上位。

真白澪の行動理由は、地球の生物の脅威となる摩瓈爾奠(マリシテン)の排除。即ち、"他を守るため"!! と、尊は考えていたが……


「睡眠を邪魔されたorr気まぐれだ!!!!」


 大外れであった。


「う、、嘘だと言ってほしい……」


「いやいや、ホントだよ。あいつの口癖ベスト3は、"めんどくせぇ""寒い" "眠い"だからな!」


「信じられない…… そんな人だったとは……天明様の序列の審査基準がわからなくなってきた……」


「まぁでも大丈夫! どっか抜けたやつだけど、強さは保証する。間違いなく、神道最強の男だよ」


「ならいいんです……かね?」


「大丈夫大丈夫!!」


この人の大丈夫は信用でき……いや、いまはそんなことどうでもいいか。


「分かりました。なら摩瓈爾奠(マリシテン)のことは皆んなに伝えるとして、千年さんはこれから何を?」


「それはもちろん神和(カンナギ)を見つけ出すさ! 俺だって天明様に会いてぇからな! って事で、こう見えても俺忙しいから、またな尊!」


 そういうと、彼は空間移動(ゲート)の中へと姿を消した。


「よし、僕も頑張…… あれ、いま千年さんなんて言った? 神和を探すって言った?! それは神道の仕事で、え……え〜〜!!??」




************************



神座終了から間も無く、



〈エジプト首都カイロ〉



神座を終えた神道(シンドウ)十二界第三級上位 炎神(エンジン) シャーマ・ハイズヴェルムは、友好を結んでいる同国の政府が用意した自宅へと帰り着く。


「おかえりなさいませ、シャーマ・ハイズヴェルム様。夕飯のご準備できておりますが、如何なさいますか?」


部屋で待っていたのは、シャーマのお世話役を任されている政府関係者の女性。彼の帰りを、部屋でずっと待っていた。


「前にも言ったが、(ワシ)は飯を食わん。だから、準備はせんでいい。困ってるものに与えてくれ」


「失礼しました。では、お風呂と極上のマッサージはどうでしょうか? 疲れが取れますよ!」


「それも……いや、それは気になるから頼む」


「はい! ではこちらへ」


 エジプト首相は彼を崇めていた。それは首相だけでなく、大勢の民が彼を崇め、讃えていた。


うん、この国のもてなしは凄いな。友好を結んでから毎日これだ。なんか申し訳ない……


 政府関係者の彼女を先頭に、シャーマはお風呂へと向かおうとする。ーーしかし、彼は突如足を止め、


「暫く外へ出てくれ。何か来る」


 突然の出来事に彼女は戸惑ったが、シャーマの警戒する姿勢を見て、すぐに指示に従う。


「は、はいぃ!!」


 そういい、彼女が部屋を去ると、シャーマは従操(ジュウソウ) 『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』を室内に展開した。


敵意は……ないな。薄らとしかわからんが、これはかなりの使い手。ったく、神座終わりで疲れてるというのに。


「よっ!! 久しぶり!!」


 第三級の上位が、全神経を研ぎ澄まし待ち構えていた。

 だが、そのシャーマが一歩も動くどころか、気づくことすらできなかった。


 そんな男は、シャーマの背後に立ち、ヘラヘラとしていた。


っな……あり得ん。儂が背後を取られただと?!


「な、何しに来た……(アマネ) 千年(チトセ)


 彼の背後に立っていたのは千年。彼もまた、ニューカレドニアを去ったのち、ここエジプトを訪れていた。

千年であることを確認した彼は、『霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)』 を解く。


「何しにって、話だよ話。って、何この高そうな椅子。座るね〜〜」


 構えたまま静止するシャーマを横目に、千年は彼の目の前にある豪勢な椅子に腰掛けた。


「っおい! 座るな、それは儂のだ!! つうか帰れ! っておい、座るな!」


 シャーマの言うことを無視して、偉そうに腰掛けた千年は、辺りを見渡し、


「いいないいなぁ。俺もこんな待遇が良かったなぁ。つうかお前、無愛想なくせにどうやったらこんなにもてなされるわけ? 意味不〜〜」


1人で淡々と話す千年を見て、何かを諦めた彼は、力づくで千年を退け、用意されていたコーヒーを片手に、


「で? 用件はなんだ? こんな夜中に来るんだ。急用ってことだよな?」


 焦りを隠すかのように、急に堂々としだしたシャーマを見て、薄らニヤつく千年は、部屋の隅に置かれた大きなベットに腰掛け、


「時差、計算してからくれば良かったな、ごめんごめん。つうかさ、時差まじうざくね? あり得ないんだけど」


「いいから要件を言え。貴様と話すと疲れる」


「それは悲しいぞ普通に? じゃあ早速、と言いたいところだけど、もうちょっと待てる?」


「は? なぜ?」


「いいから」


 千年は目を閉じ、何かを待った。それからおよそ1分。


 ちょうど、向かい合う2人の間に黒い(モヤ)、即ち『空間移動(ゲート)』が出現し、そこから第四級上位雷神(ライジン) グロム・ラーシュが姿を見せた。


「グ、グロム・ラーシュ。貴様まで何しに来た? 邪魔だ、消えろ」


「え?! そりゃあないっすよ〜〜。シャーマさんが呼んだんじゃないっすか〜〜。ってあれ? 千年っち!? うわ、ビックリ! お久っす!」


「グロムお久!!」


「……そうか。やりよったな天千年。声帯模写で(ワシ)のフリをして、グロムを呼び出したな?」


「えへへ、ばれた?」


 勢いよく立ち上がり、炎を纏ったシャーマが千年に襲い掛かろうとしたが、状況を理解していないグロムがそれを止める。


「ちょっちょっと!! 何してんすかシャーマさん! 落ち着くっす」


「どけ。一発殴らないと気が済まない」


 1秒と経つ毎に怒りは増幅し、炎の勢いも増す中、


「じゃあ、グロムも座って話しようか。君たちの追ってる邪虚神(ジャキョシン)について」


 その言葉を聞いた瞬間、2人は同時に動きを止めた。

そして、シャーマは力を解き席に戻り、グロムも椅子に腰掛けた。


え〜〜チョロ〜〜。いま笑ったら流石に2人ともキレるかな? よし、我慢が〜〜まん。


「ゴッホン。 まずは2人ともありがとう。ついでにごめんね」


「貴様の謝罪と礼は、嘘と同義。時間の無駄だ、いいから早く話せ」


えぇ。そんな風に思われてたのぉ。。ショック。


「え、えっとだな、まずその前に2人に頼みというか、なんというか」


「頼み? なんすか?」


「うん、グレン・ハイズヴェルム並びにキゼル・ラーシュの両名が神域(シンイキ)にて死を経験した。つまり、炎神『ゼストス』、雷神『レイジス』の正統継承者となった」


 グロムは目を見開き驚いたが、シャーマの態度は変わらなかった。


「それで? 儂に何が言いたい?」


神王法(シンオウホウ)7条1項、"正統継承者が誕生した場合、現神格(シンカク)保有者のもとで指南を受けるべし"

つまり、グレンとキゼルをお前たちに預ける。いいね?」


神王法7条 [正統継承者]

正統継承者についての法である。


「あぁ、そういうことっすね。なら、俺っちはキゼル君で、シャーマさんはグレン君を預かればいいってことっす、」


「断る」


グロムはまんざらでもなかったのだが、シャーマは完全拒否に出た。


「それはデウスでの法であり、ここは地球だ。第一、この星についてやその他諸々、まだ完全に理解していないこの状況下でそんなことをしている暇はない」


出たよ屁理屈。 まぁ一理あるっちゃあるけど……でもまぁやっぱそうくるよな〜〜、あぁめんどくせぇ。


「ということは、お前は神王様の意向に背くというわけだな?」


「儂が王に背く? そんな面白くない冗談を聞くのは今日で2回目だ。変わらずくだらん」


「誰も冗談言ってねぇよ。てか俺の冗談面白いし」


険悪なムードが流れ、文字通り一触即発。慌ててグロムが止めに入る。


「す、ストップっす!! とりあえず冷静に話しましょ? ね?」


「俺は冷静だよ。このガキが捻くれてるだけだ」


「儂をガキ呼ばわりするな(ワッパ)


「はぁ? お前より年上だし!! つうかその見た目で一人称"儂"って。不自然すぎるだろ!」


千年っち、それ今関係ねぇっす。


「まぁまぁ。正直、俺はどっちでもいいんすけど、言ってることはシャーマさんが正しいと思うっす」


「おいっ、何でだよ! 屁理屈だろ!」


「いやあの、えっとっすね。千年っちは知らないと思うんすけど、ここだけの話、実は7条撤廃案っていうのがあがってまして……」


 グロムの言う撤廃案とは、千年たちがまだデウスにいた頃、神座(カミザ)で話し合われていたことである。


7条撤廃? あぁ、そういえば前に(ミコト)が何か言ってたなぁ。


「うん、知ってるよ。 でもそれはさ、お前らの身勝手な考えだろ? 王の承認はおりてない訳だし」


「え? 何で知ってるんすか? 神道以外は知らないはずっすけど」


あ……やべ。 


「あ、間違えた。知らない知らない。何それ〜〜」


「猿芝居だな。まぁいい、知ってるなら話が早い。お前もわかっているとは思うが、あの当時の神道は過去最強の布陣。従って後継を育てる必要もないし、仮に儂らが死んだとしても、そのあとの未来に不穏なことは起きない。なぜかわかるか? それは儂らが死ぬと同時に必ず敵も殺すからだ。だから後継を育てる必要がない」


うわ〜〜引くわ〜〜。何その自信。つうか神道が強いのは(ミオ)のおかげだろ。何自分が強いみたいな。腹立つわ〜〜。


「全然理由になってねぇじゃん。つうか、撤廃案は出ただけだろ? 受理されてねぇじゃん」


「いやそれは仕方ないんすよ。ほら、撤廃案は必ず神道全員の同意がないとダメっすから。第一級が顔を出さないのは千年っちも知ってるでしょ? 正直、あの人が出席してたらこの案は通ってるんすよ」


「なにその根拠のない話」


「根拠はある。神王様は第一級の同意が有れば受理すると仰った」


え!? 天明(テンメイ)様が?!

あ〜〜、なるほど。来るわけもない澪に全権託したな天明様(あの人)

いや、違うか。確かあの当時だったよな。博士が、"前任の神の情報・力などがそのまま引き継がれる(100%)"的な発見したの。


 博士が発明したそれは、"死後の譲渡"と呼ばれ、簡単に言うと、前の神が蓄えた力や情報、経験などが、次の神に引き継がれるというもの。

 つまり、従来は正統継承者が誕生すれば、現神格保有者が指南する必要があったのだが、その発明により、別に誰が教えてもいいのでは?という風になった。


でもこれって、100%じゃないんだよな。あれ?100だっけ? 博士の話長すぎて聞いてなかった。

まぁそれよりも、シャーマの言い分だとあの当時は貴族もいたし、神王勢力が刻導(コクドウ)などの反神王勢力よりも確かに圧倒的に上だったからなぁ、分からなくもない。でもこいつら、貴族が裏切り者って知らないもんなぁ。かと言ってここでそれを言ってもどうせ信じないだろうし。


「じゃあ今もその布陣とやらは最強か?

俺の調べでは、というより、『上空に奴らの統地(トウチ)』がない。どうやら貴族はこの世界にいないみたいだな。それは、お前らも薄々気付いてるだろ?  つうかこの際だからハッキリと正直に言うが、神王勢力の中核は貴族と第一級最上位の真白(マシロ) (ミオ)だ。澪と貴族、この二組がこの世界にいると断言できるか? もしいないとなれば勢力図は変わるんじゃないか? そうなれば後継指南は必須だと思うが?」


 この正論には流石のシャーマは暫く口を閉ざした。

が、


「タラレバだな。上空に貴族の統地(トウチ)がないとはいえ、そもそも貴族を見たことある奴は神道にもそうはいない。というかいない。真白澪に関してもそんなに姿を見せない。つまりどこかにいるはずだ。それに、そもそも貴族と真白澪がいなくても、今の反神王勢力は刻導(コクドウ)のみ。ならなんの不安もない。あれはカスの集まりだからな」


「確かにその通りだと俺も思うっす。天照(テンショウ)貴族や真白(マシロ)さんがいないとしても、今の反神王勢力には負ける気がしねえっすね。

それに、彼らがいなくても、俺っちたちにはまだ暗部(アンブ)もいる。どうひっくり返っても負けはねえっすね」


なにこいつらの自信。自分で言っといてなんだが、改めて聞くとめちゃめちゃ有利な布陣だな。くそぉ、何かムカつく。


「暗部……全世(ゼンセイ)天神(テンジン)か。確かに、奴らも再誕している可能性はあるな。なら尚更負ける気がせんな。ということで、儂たちが指南することはない。これ以上何かあるか?」


 勝ち誇った顔のシャーマに頭を掻きむしる千年。


はぁあ、頑固めぇぇ。仕方ない。切り札を出すか。1回、(ミコト)から言っちゃってるけど、ダメ押しダメ押し。


「ーー邪虚神(ジャキョシン)が刻導に入った」


千年がその発言をしたと同時に、一瞬で室内の空気が一変した。

ヒリヒリと肌を刺すような怒り、または憎しみの空気感。

シャーマとグロムの表情は暗く重いものだった。


え〜、1回聞いてるよね? 名前言っただけでこんなになる? アレルギー酷すぎやしないかい??

うわもぉ、これ完全に裏目に出たやつじゃん。この雰囲気じゃ後継がどうこうの話にはならないかなぁ。


 しかし、千年の心配とは裏腹に、シャーマはすぐに口を開き、


「その情報が定か、いやお前の情報はいつも正しいな。邪虚神が刻導に……。そうか……」


《おい、グロム・ラーシュ》


《どうしたんすか急に、意思伝達(ヴェルシオン)なんか飛ばして》


《奴は神座(カミザ)があったことを知らない。つまり、儂らが邪虚神のことを知らないと思ってるはずじゃ。だから貴様も、儂と同じように知らないふりをしろ》


《え? 何でっすか? 尊っちに情報提供したの千年っちすよ? 別によくないっすか?》


《ダメだ。いいから従え。いいな?》


「ーー邪虚神が刻導に入ったのなら、尚更後継の指南は断る」


「えぇ、なんでそうなるの? わかってる?

邪虚神はお前たちよりランクが上の最上位(サイジョウイ)だよ? 澪と同等だよ? 多分、いや確実にお前たち2人で挑んでも勝てる相手じゃない」


「そんなことは分かってる。さっきも言ったが、儂が死ぬときは敵も死ぬ時。刺し違えても必ず殺す」


「いやだから、死ぬなら力の引継ぎとか、色々あるじゃん? だから指南を……」


千年の話してる最中に、シャーマはすっと立ち上がり、窓辺まで歩き、外を眺めながら、


「グレンとキゼル。幼少期から貴様の傍にいる。時代も環境も全て変わったこの土地で、貴様から離れるのはちと可哀想じゃないか?」


「は? 何言ってんの? その理論はせこくない?」


「まぁ聞け。儂は近い将来必ず死ぬ。言いたくはないが、多分、儂とグロムでも邪虚神(あいつ)には勝てない。邪虚神とはそういう存在だ」


 シャーマは振り返り、千年に深々と頭を下げた。


「儂はな、これ以上自分が情を注いだ奴が死ぬのを見たくない。自分の認めた奴が死ぬのを見たくない。だから頼む。1人で死なせてくれ」


彼はこう見えても、家族や仲間の死にとても敏感で、1人で悩んでしまうタイプ。儂とは言ってるものの、まだ若いのだから仕方ない。


 それに、シャーマは本当に優しい男なのだ。それはキゼルやグレンも同じこと。

 もしシャーマとグロムが指南を引き受けたとしたら、恐らく彼らは2人を大事に育てるであろう。そして2人もシャーマとグロムを信頼しついていく。

 だが、そんな彼らが殺されたとなれば、確実にグレンやキゼルは邪虚神を恨むことになる。そして、恨み復讐をするという負の連鎖が続く。彼はそれを止めたかった。せっかくの正統継承者を失いたくはなかった。その思いがあるから、こうして千年に頭を下げているのだ。


「業を背負いたくないわけではない。貴様に全てを(ナス)りつけたいわけでもない。それでも、どうか頼む。邪虚神に集中させてくれ。父の仇を、どうか討たせてくれ」


 シャーマの姿を見たグロムも立ち上がり、千年に頭を下げた。


なるほどっすね。俺っちが間違えてたっす。


「千年っち、俺からも頼むっす!!」


……1度脳や心に擦り込まれた憎悪は何があっても消えることはない。例えそれが嘘であっても。はぁ、天明様は本当に罪な御方だ。


千年も立ち上がり、


「わかった。まぁどうせ断られると思ってたし。つうかそもそも俺の方がお前らより教えるのうまいし。それに、あいつらが俺から離れるわけねぇもんな。うんうん、いいぞいいぞ。俺を頼りたまえ」


2人は頭を上げるとともに彼を睨みつけたが、すぐに安堵の表情を浮かべた。


「よし、じゃあそういうことで。俺帰るわ!」


「そうすっね。俺っちも帰るっす」


「あぁ、わかった」


グロムと千年、両名が空間移動(ゲート)を出した。

そして、2人が中に入ろうとしたとき、千年は思い出したかのように、


「あ、そうだった。これは俺の予想だけど、神道十二界の中に多分裏切り者いるから。あと、天霊(テンレイ)の出現も確認されてる。つまり、お前たちの言ってた勢力図は何も当てにならない。もしかしたら、俺たちの方が劣勢かもしれない。ーーじゃ!」


そういうと、千年は靄の中へと姿を消した。


「…… うん!? おいちょっ待、はぁ……

あのクソガキ、最後の最後でとんでもないこと言いやがった!!」


最後に千年の残した言葉が気がかりになったグロムは一度空間移動(ゲート)を閉じ、


「なんすか最後の? 神道に裏切り者って。それに天霊って…… やばくないっすか?」


シャーマは深いため息をつきながら席に着くと、


「全世天神と真白の力は不要かと思っていたが、天霊のことを知った以上、そうはいかんな。それと、神道の裏切り……。あいつの予想は良く当たる。まぁ正直、儂も裏切り者がいるとは思っておったからな」


シャーマは冷えたコーヒーに指を入れ、熱を加えた。

そして、温まったコーヒーをひと啜りすると、真剣な表情でグロムに問いかけた。


「ーーあいつの話を聞いて貴様はどう思った?」


「はい? あぁ、シャーマさんと千年君がいるって言うならいるんじゃないすか? 天霊も、裏切り者も」


「違う。邪虚神のことだ」


「あ、そっちすか。まぁ改めて言われましたけど、刻導の連中じゃ俺っちたちには勝てないっすからね。邪虚神を迎えるのは当然じゃないっすか」


「そうか。貴様はやはり馬鹿だな。天 千年、あいつは何かを隠してる。それも根底からひっくり返るような重大な何かをだ」


シャーマの考えの意図が分からずグロムは首を捻った。


「まぁなにはともあれっす、あいつが刻導に入ったとなれば、見つかるのも時間の問題っす。シャーマさん、必ず親父達の仇を取るっすよ」


「あぁ」






 

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