Ep.04(44) 悲報・朗報
少し、時を遡る。
〜〜〜〜
〈ニューカレドニア首都ヌメア 同場所〉
「ーーふぅ〜〜。尊、終わっただだよ!」
「本当にありがとうございます!」
「だだ! 気にするなだ!」
神座の開催を決めた尊は、山神マウナ・バルハールにコンタクトを取り、同国に招待。
その後、神道に山声を飛ばす。
※ 山声
マウナの神戯。
マーキングした者にのみ聞こえる、山の声。
⇒近くに山が有れば聞こえる。
「じゃあ、ぼくは諸々の準備に入ります。マウナさんはどうしますか? 開催地はここですし、このまま残りますか?」
「だだ! 一旦、山に戻るだだ!」
「了解しました! ではまた後ほど」
そう言い残し、マウナはニューカレドニアを去る。
「ーーさてと、準備しますか。皆さん、揃ってくれるといいけど……」
「大丈夫大丈夫! あいつら意外といい奴らだから、ちゃんと来てくれるって!」
「そうだといいんですけ……ど!?!?
ちちち千年さん?!」
「よっ! 久しぶり、迦玄!」
マウナと別れた直後、どこから、いやいつからそこにいたのか。彼の前に現れたのは千年であった。
「お、お久しぶりです!!」
「よっ! 元気してたかぁ〜〜?」
突然現れた驚きよりも、ひさびさに会えた嬉しさが勝り、尊は年相応にはしゃいだ。
「いやぁ〜〜しかしあれだな。迦玄はいい国に再誕したな。羨ましいよ」
「確かに(笑)。交戦せずに済んで助かりました。千年さんの国は酷いんですか?」
「まぁ酷くはねぇけど、、色々だ!」
「心中お察しします」
お互いの現在を話し合い、少し時間が経ったころ、ようやく尊は我に帰る。
「あれ? うん? あれ!? 待ってください! 千年さん何でここにいるんですか?!」
「いや今かよ(笑)」
「笑い事じゃなくて! 何でここにいるんですか? というか、何で僕がここにいるってわかったんですか?!」
「え? 何でって、神座やるんだろ? 主催がお前なわけだから、ここにお前がいるのは当然だろ?」
あたかも当たり前かのように語る千年に、尊は混乱した。
「いや、え、ちょ、は!? 何で神座があるって…… あぁ、そういうことか。千年さん、意思伝達盗聴しましたね?」
「ピンッポ〜〜ン! 正解!!」
やられた……
「はぁ、、これは僕のミスなので責めたりはしませんけど、どのタイミングで盗聴したかは教えてください」
「ふふっ、いいだろう」
何でドヤ顔? 盗聴したんだから少しは反省してくださいよ……。
「まず、神座の宣告はマウナの山声で行うのが定石。意思伝達だと盗聴する輩がいるからな」
輩……それを千年さんが言いますか。
「だから普通は、神座の開催場所や主催が誰かは把握できない。流石の俺でも山声を盗聴することできないからな。
そこで、天明様のいないこの世界で、神座を主催するとしたら誰かな?って俺は考えた。
通常、神座は天明様か第三級以上のものが主催をする。だが、この世界に天明様はいないし、第三級以上のあいつらが主催をするとも思えない。
つまり! 主催をする可能性が1番あったのは、若く勇敢な迦玄しかいない!! と、俺は思ったわけよ」
「いやいや、二級の波憂愁さんなら以前に1度、神座を開催してますよ?」
「うん、普通の憂愁ならな」
普通の? あぁ、癇癪か。
「なるほど。じゃあ僕が主催をすると思ったのは千年さん自慢の勘ですか?」
「ふふっ、実力だよ。(勘である)
で、迦玄が主催なら、間違いなく三級以上には直接伝えると考えた。迦玄は律儀だし、三級以上はお前の呼びかけに耳を貸さないだろうからな。マウナの力発動前に、直接お願いするのが手っ取り早い」
まったく、相変わらず凄いなこの人は。もちろん悪い意味で。
「なるほど。じゃあ、千年さんは第三級以上の誰かと一緒にいた際に盗聴し、神座があることを知った。ということですね?」
「またまたピンっポ〜〜ン!」
はぁ……完全に失態だな。
「……災厄な気分です」
「ごめんって(笑)」
にしてもだ、普通、意思伝達は飛ばした相手以外には聞こえないから、そもそも意思伝達があったかどうかすらもわからないはず。いや、普通はわからないもの……なんだけど。ははっ、何て洞察力と勘してるんですか。相変わらず千年さんは底が見えないや。
※意思伝達盗聴方法
1.意思伝達で会話してるかどうかを判断する(普通はそんなことできない。) 千年の場合は、優れた洞察力と勘で判断してる。
2.意思伝達中の者に、自身も意思伝達を飛ばす。それにより、干渉できるようになる。
(対象の近くにいないとできないのと、優れた命源操作能力がないと出来ない)
「ここに来た経緯等は色々わかりました。
それで? 千年さんともあろう方が、僕の顔だけ見にくるなんて有り得ませんよね? 目的は何ですか?」
「ふふっ、さすがは迦玄。話が早くて助かるよ。でもあれだぜ? 神座とタイミングが被らなければ、お前には会いに行きた〜〜い!って思ってたんだぜ?」
「それはどうも。って、神座とタイミングが被った?
……まさか、まさか。まさかですか?!」
「そうだ、そのまさかだ!! 俺は、神座を盗み聞きしにきたのだ!!」
前にも言ったが、招待されてないものが、神座の情報を得た場合、100年の投獄、または死罪と決まっている。(話した者、聞いた者)
それは千年自身もわかっているはず。なのに、それを主催に言うとは……。尊は目を見開き、口が開いたまま硬直した。
「お〜〜い、迦玄く〜〜ん。生きてますか〜〜?」
「ち、千年さん。もしかして、僕のことナメてますか? 僕が主催だからこんな真似を……」
「バカバカ、ちげぇよ! ナメてるんじゃなくて、俺は迦玄を信頼してるんだ。お前は絶対に天明様を裏切らないって意味でな」
「裏切らない? それはどういう意味ですか?」
「そうだな、こっからは順を追って話そう。
まず俺の目的は、さっきも言ったが神座の盗聴だ。別に、神座での内容が気になるとか、情報を得たいとかではない。だって、俺の方が情報収集力は高いからな」
「じゃあ何で盗聴するんですか?」
「盗聴……は、ちょっと言い間違いだったかな。俺の狙いは、神座の中で神道の中にいる裏切り者を探すことだ」
その発言を聞き、尊は当然驚いた。
「裏切りものがいるんですか!? そんな……。正直、信じられませんけど、千年さんが言うからには根拠があるんですよね?」
「当然だ。迦玄はさ、デウスでの最後覚えてるか?」
デウスでの最後?
「えっと……あ、はい。僕が国長をしていた教ノ国が、帝一族の2名に襲撃されてました」
国長
→国王。
「うん、そうだな。実は、俺もあのとき教ノ国にいた。そして、帝一族の炎帝と交戦していた」
「え?! そうなんですか!?」
「その時、俺は少しだけ炎帝と話したんだ。
そしたらあいつはこう言った。
"天明様の命令で、貴族が皇帝を殺した"とな」
次から次に知る新情報に、尊は言葉を失った。
「驚いてるところ悪いが、この話を聞いてどう思った? 因みに嘘ではない。貴族が皇帝を殺した」
「どう……って言われても。貴族は、神王側の最大勢力ですから……ね。それが裏切ったってのは、僕たちにとって災厄じゃないですかね? こっちの世界での敵が増えるわけですから」
「あぁ、ごめん。話が抜けてた。地球に貴族はいない。あいつらは、天明様に封印されたから。信用できる筋から聞いた話だから間違いない」
「え?! ちょ、ちょっと。何が何やら……。
待ってくださいね。だとして、その話が本当なら…… 何か問題ありますかね?」
「ばっかちん! 大有りだよ。思い出してみろ、あの日は帝一族と天明様が手を組むと約束していた日だ。天明様にとっての悲願とも言える日だった」
確かにあの日は、長らく神王勢力と敵対していた帝との協定が結ばれる日だったーーうん? あれ、待て……
「わかったか? そう、帝との協定が可決されたのは、あの日より一月前の神座。その時出席していたのは、天明様、俺、そして神道十二界だ」
これは流石に嘘じゃないな。色々と合点がいく。
「……では、神道のうちの誰かが帝との協定日を貴族に漏らし、その日に合わせて彼らが争いを起こしたってことですね」
「いや、少し違うな。神道であっても貴族に会うことはできない。それはお前も知ってるだろ?」
「そうでしたね。貴族は、如何なる理由があっても身分を晒してはならないって法で決まってましたからね。では、どういう…… あっ、あ!! 仏陀ですね?!」
「その通り。恐らく、裏切り者が繋がっていた先にいるのは仏陀だろう。で、仏陀から貴族に伝えられたってとこだろうな。恐らく、どっかしらで仏陀と貴族には接点があったんだろうな」
なるほど。色々とややこしくなってきたな。
「千年さんが神座を盗聴する理由はわかりました。ですが、神座の中で裏切りものを特定するのは難しくないですかね?」
「そうだな。確かに難しい。でも、考えはある。これで確実に炙り出せるかはわからないが、やってみる価値はあるかなって」
なるほど、ちゃんと策があるってことか。
「……分かりました。僕も加担します。ここまで聞いて後には引けませんからね」
「さっすが〜〜!! んじゃあ早速、」
「その前に、加担するってことは僕も同罪になります。千年さんがどうやって神座を盗聴するのか教えてください。少しでもバレる危険性があるなら、悪いですけど手は引きます。
それと、ご存知かとは思いますが、神座が行われる会場には、一級から五級が霄壌断絶が5重に展開します。それを踏まえて、まず侵入は絶対不可能です。すぐにバレます。それと、霄壌断絶外からの神通力による盗聴も不可能です。霄壌断絶は全ての神通力に反応するので異変があれば、発動者がすぐに察知します。ってことで、これ以外で何か策があるってことでいいんですね?」
尊の言う通り、霄壌断絶は全ての神通力に反応し、何か異変が有れば即発動者並びに、中にいるものに伝わるようになっている。
つまり、常識的に考えれば、神座を盗聴することは絶対に不可能なのである。
しかし、この男はそれを聞いても、いやそれを聞いたからか、勝ち誇ったかのように笑みを浮かべていた。
「ふっふっ、心配ご無用。それくらいのことは俺も把握している」
「ですよね。なら、どうやって、」
「迦玄くん、もう答えを言っているようなものじゃないかね? いま言ったネックは全て、霄壌断絶が展開されたあとの話だろ?」
・ ・ ・ はい?
「え……と、、え。え〜〜!? ま、まさか」
「そうっ!! 俺は、霄壌断絶が展開される前に、神座の会場内に潜伏する!!」
千年の発言で、絵に描いたように驚く尊。
「ま、待ってください! 無理ですって! いくら千年さんでもそれは流石に、、」
「ノ〜〜プロブレムッ! 心配無用だぜ迦玄君。俺は不可能を可能にする男だからな」
不可能を可能って……。最初から霄壌断絶の中に居る状態で消隠姿を使えば、存在は消せる……けど、、
「ち、千年さん。さっきも言いましけど、神座の会場となってる建物には、霄壌断絶は5重に展開されます。
1〜4は建物の外壁から内側に、間隔を空けて展開。残り1つは、僕らの集まる一部屋に展開するんです。
つまり、僕らと同じ部屋の中にいないと話声は聞こえない。ということは……同じ部屋の中にいるってことですか?!」
霄壌断絶は、外と内を断絶する力。
つまり、外から中の様子が見えることもなければ、話声を聞くことすらできない。
従って、話を盗み聞きするには、神道と同じ空間(室内)にいる必要がある。
「そんなの、どう考えった無理ですって。消隠姿で消せるのは神力であって、人そのものが消えるわけじゃありません。仮に、人そのものを消させたとしても、僕らなら気配で察知できます」
尊の説明から分かる通り、千年の策は破綻している。
どんなに消隠姿が上手かろうが関係ない。見えてしまってるのだから。
12人集まるところに、神力を抑えただけの13人目がいるということは、神じゃなくても普通に気がつく。ということだ。
分かりやすく頭を抱える尊に対し、未だニコニコしている千年。
それを見て尊は、「はぁ」とため息をこぼし、一瞬下を向いた。
「ーー分かりました。とりあえず時間はまだあるので、もうちょっとまともな、、あれ……」
顔を上げて気がつく。目の前にいたはずの千年が、どこを見渡してもいないことに。
「え、え?! 何これ。ど、どういうこと?
ち、千年さ〜〜ん!!」
「ふっふ、見えないだろ? 見えないだろ?! あっはは!!」
完全に見えないし、気配も感じない。だが、声はさっきまでいた千年の場所からハッキリと聞こえる。
「な…… なんなんですかこれ……」
訳の分からない現象を前に、さらに驚く尊。それが嬉しかったのか、千年は大笑いしながら姿を見せた。
「反応良すぎ(笑)。 やば、い。腹痛い(笑)」
「ちょ、ちょっと!! ふざけてないで教えてくださいよ!」
「ごめんごめん。あ〜〜腹痛い。えっとだな……ぶっ(笑)ダメだ、おもろすぎる(笑)」
「盗聴のこと、チクリますよ?」
「いやウソウソ!! ごめんって! これはだな、まだ名前決めてねぇけど、存在そのものを消す力だ。色々と神通力をごちゃ混ぜにして生み出したから、これといった説明はないんだけど、とにかく!! 見てもらった通り、これなら問題ないと俺は考えてる!」
……なるほど。確かに、今のは相当凄い技だ。
千年さんがその場にいたことを知っている僕ですら、彼が見えなくなったことを認識できなかったーーおもしろい、これなら……
「わかりました。直感と千年さんを信じます」
「おっ、ありがとよ!!」
「すみません、話がだいぶ逸れましたね。
じゃあ、裏切りものを見つけ出す策を教えてください」
「あ、そうだったな!!それはだなーー」
〜〜〜〜
尊に対して怒りを露わにし、彼の元に歩み寄る水神憂愁であったが、雷神グロムの指差すモニターに映る文字を見て足が止まる。
よし、千年さん。いきますよ。裏切りものを、炙り出します!!
「ーーここに書いてあることは、千年さん、つまり王直の頭領が自ら調べ、ぼくに教えてくれたことです。因みに、ぼくが依頼したわけではないないですっ!!」
そこに書いてあったのは、刻導並びに七福陰道といった反神王勢力の再誕場所の一覧。
そして、数名を除き、彼らが驚き、怒りを見せたのは、一覧の左端に記載されていた、 "邪虚神の刻導加入"という文字を見てだった。
※邪虚神
継譲の神通力者で、別名 "神狩り"。神通力者を殺しては、力を奪う、第一等害種に認定されている最上位の神である。
「み、尊。これは本当か? 本当に、あの邪虚神が刻導に入ったというのか?」
「その通りです憂愁さん。さっきも言いましたが、この情報の提供者は王直頭領です。皆さんもご存知の通り、彼は適当で、頭おかしくて、変な人ではありますが、信頼でき、仕事はちゃんとする男です。嘘をつくとは思えません」
この事実に、彼らは混乱する。邪虚神は神出鬼没で、今まで他人と組むことなどなかった。
ゆえに、第一等害種ではあるが、そこまで警戒の視野には入れていなかった。
だが、これからはそうもいかない。彼らよりもランクの高い最上位が敵に回ったということは、反神王勢力の脅威が圧倒的に増したということだ。
「・ ・ ・ッ、災厄だなこれは。刻導や七福だけならまだしも、邪虚神を相手しないといけないとなると ・ ・ ・
ッ、俺らじゃ無理だな」
ご存知の通り、第一等害種の討伐可能階級は、同じ最上位のもののみ。
数を率いて挑むという策もあるが、そうなれば他に戦力が回らなくなる。
つまり、第一等には最上位をぶつけるのが理想なんだが……。
「"行方!!" そうなると、邪虚神は真白殿に任せるしかないが、尊よ、彼の所在を把握しているのか?」
「いえ…… 真白さんの所在だけ不明です。恐らく、神域内にいるのかと」
「"納得!!" 最上位のみ使用できる神域か。なるほど、それなら行方がわからぬのも無理はないな」
邪虚神に対しての議論が続く中、ずっと下を向き沈黙していたシャーマが突如立ち上がり、ゆっくりと扉に向かって歩き出した。
「おいコラ、待てだだ!! 遅刻の次は早退だだか? 調子に乗りすぎだだ!」
「どこ? 決まっておるだろ。邪虚神を殺しに行く」
「ば、、バカかおみゃあわ!! 相手は最上位だだ?! 勝てるわけねぇだだ!!」
「勝つ? バカかはお前だ。勝ち負けなんかどうでもいい。儂の役目は、刺し違えてでも父の仇である邪虚神を殺すことだ。お前ら雑魚どもには、邪虚神の刻導加入が悲報に聞こえたかもしれんが、足取りの掴みにくかったやつが、個で動くことをやめたのは儂にとってはこれ以上とない朗報。犠牲が出る前に殺してくる」
全く聞く耳を持たないシャーマを、腕づくで止める尊とマルア。
「待ってください! まだ話はーー」
「退けッ!! 貴様らから先に殺すぞ!!」
2人の腕を振り払い、扉に手をかける。そんなシャーマを見て、静観していたグロムが立ち上がり、激昂するシャーマに近づく。
「ーーはぁ。 待つっすよシャーマさん」
「なんだ? 貴様も殺、」
「俺っちも行くっす」
止めてくれるかと思いきや、まさかの……
「ふ、2人とも待ってください!! 2人の親がを邪虚神に殺されたことは僕らも知ってます。ですが、感情的にならないでください!!」
「尊っち、悪いっす。どうも、俺っちもシャーマさんも邪虚神の名前聞くと黙ってられなくて。
大丈夫っす。みんなには迷惑かけねぇっすから」
ダメだ。最下位の僕じゃ、彼らを止めることはできない。
尊が諦めかけていたその時、
「いい加減にせんかお前ら!!!! この神座の主催は天使神だ。その者がまだ終わっておらんと言うておるだろうが! はよぉ席に着けッ!!!!」
最年長者 武蔵寿の檄が響き渡る。
「主催? 知るか。勝手にそいつが、」
「ほざくな!! 神座は天明様考案の儀。
それを蔑ろにすると申すか!? それ即ち、王への冒涜。弁えろ童がッ!!」
「……何だと? 王への冒涜? 儂が? おい、もう1回言ってみろ老いぼれ!!」
「何度でも言うちゃる。この反逆者が!! さっさっと席に着けッ!!」
一触即発。抑えていた神力を解放し、睨み合う両者。
「貴様、何様のつもりだ武蔵。五級風情が儂に命令するな!!」
「黙れ!! 赤子じゃあるまい、駄々を捏ねるな!!」
「ちょ、ちょっと! 2人とも落ち着いてください!!」
「もういい、我慢の限界だ」
シャーマが全身を炎で纏い、武蔵に対し、尋常じゃない殺意と神力を飛ばす。
「ったく……思春期め、この分からずやが。来るなら来いッ!!」
やばい、このままじゃほんとにヤバい!! こうなれば、僕が意地でも……
「はぁ……。おいシャーマ、いい加減にせい」
「何だ波。貴様も燃えカスに、」
「其方の父は決して仲間に牙を剥くような男ではなかった。それどころか、我がよりも他を第一に考える素晴らしい男じゃったはず。そんな偉大な父に、その息子は泥を塗るというのか? そして、その偉大な父すら崇めた神王に背くというのか?」
「だから誰も背いてなど、」
「背いておる。それが分からんうちは、いつまで経ってもガキじゃぞ。恥を知れ」
実際、憂愁とシャーマで力量の差はそれほどない。いや、下手したらシャーマの方が強い。つまり、シャーマが二級の位置にいてもおかしくはない。
だが、憂愁が二級でシャーマが三級というのは、こういったことが起きた時に冷静なのが憂愁だからである。
「……ッチ、わかった。天明様と父に免じて。だが、武蔵! 次はないからな」
「抜かせガキが」
一件落着……だよね?? はぁ〜〜よかったぁぁ。まじで憂愁さんいなかったらヤバかった。つうかそもそも、真白さんが来てればこんなことに…… いや、天明様はそれを見越して、憂愁さんを二級の位置に……っじゃない! 早く話進めないと。
「え〜〜、えっと、何だっけ…… あ、そうです! はい。ということです!」
「"正気!!" 落ち着け尊! 男なら、こういう時こそ取り乱すでない!!」
「ご、ごめんなさい。(そういうのなら、さっき助けてくださいよ〜〜)
えっとですね、とりあえず今見てもらった敵勢力の情報をもとに、我々は今後動き出します。ただ、問題点が2つあります」
「・ ・ ・ッ、問題?」
「はい。まず1つ目の問題が摩瓈爾奠です」
その名を聞き、再度緊張感が増す。
「僕の知ってる限りでも、摩瓈爾奠の出現情報は20以上あります」
「どこ情報じゃ? 妾、初耳ぞ」
「この世界で流通しているSNS"ツイスタ"というもので情報収集しました」
「あっ! 俺っちそれ知ってるっすよ! こっちのネェちゃんと遊んでる時に見せてもらったっす!」
相変わらずのチャラチャラですね。
「でもあれっすよね? 確か、ツイスタっていま閉鎖されてませんでしたっけ?」
「そうなんです。ツイスタを運営している会社や、それ以外のSNSを運営している会社が襲撃を受けたらしく、現状サーバーが落ちてるらしいです。なので、今後は情報の収集に手間がかかるかと」
「"報告!!" 拙者、ここへ来る前、一体の摩瓈爾奠と遭遇し、駆逐した」
「っ本当ですか!? さすがです!!」
「"当然!!" 覚醒直後で雑魚だった故、あまり楽しめなかったがな」
「だだ! じゃあ、あたい達の今後の動きとしては、摩瓈爾奠を討伐しながら神和の手がかりを探すってことでいいだだな?」
「その通り……なんですが。ここで2つ目の問題点です」
尊はリモコンでモニターを切り替える。そこに映し出されたのは世界地図。
「皆さんもお気づきだと思いますが、この地球という星の生物量はデウスの比じゃないです。即ち、生き物の存在していない場所が少ないということです」
「だだ? それがどうしただだか?」
「つまり、敵がいたからと言って僕らが無闇に戦闘を行えば、必ず犠牲が出るということです」
神王より神道に与えられた任は3つ。
1.自国の平和維持
2.悪しき心を持たぬ者の安寧を保つこと
3.世界の脅威を取り除くこと
従って、敵と遭遇したからといって、周りの影響を考えずに行動してはならないということ。
「……なるほどな。デウスのように妾たちが国を持ち、その国の生態全てを統率しているわけではないからな。いざという時に、地球の生物が足枷になるということか」
「その通りです。地球の生物は、僕たちのルールを知りませんし、恐らく僕らの指示は聞きません。
なので、皆さんは大変かと思いますが、地球では犠牲を出さない場所での戦闘を意識して行わなければなりません」
これが如何に大変なことか。"皆まで言うな"とはまさにこの事である。
「しかしあれっすね。摩瓈爾奠とかなら空間移動で一緒に人気のないところに運ぶが定石っすけど、相手が神通力者となると……」
「そうなんですよね〜〜」
「ふんっ、儂には関係ない」
「まただだかおみゃあわ。摩瓈爾奠と比べて、神通力者は神力に対しての反応速度が早いし、空間移動そのものを知ってるだだ。だから、空間移動による移動はだだな、」
「それは雑魚の考えだ。儂なら問題ない」
何の自信……というか、一番不安なのはシャーマさんなんだが……
「シャーマさん、一応確認ですけど、被害はなるべくですね、」
「だからわかっておる。父と神王の意に背くようなことはせん」
あ、ちゃんと憂愁さんの忠告を。やっぱり、シャーマさんはいい人だ。
「では皆さん、大変だとは思いますが、しっかり連携して、まずは各地の摩瓈爾奠を黙らせましょう!」
そうして、地球に来ての1回目の神座は幕を閉じた。
「ふぅ〜〜疲れた。やっぱり主催なんかするもんじゃないな」
椅子にもたれ、ぼぉ〜〜っとする尊
「お疲れお疲れ。その歳でよくやるよほんと」
の横に立つ千年。
「ゔっわぁぁ!! びびび、びっくりしたぁぁ!!」
「ナイスリアクション!!」
完全に千年さんのこと忘れてた……
「ほんとにずっと部屋の中にいたんですか?」
「もっちろ〜〜ん! 全部聞いてたよ〜〜。特に俺の悪口言ってたとこ」
僕も途中から忘れていたけど、他の神道の方も、誰1人として気づいていなかった。やっぱりこの人、凄いな。
「そ、それで? 裏切り者はわかりましたか?」
「う〜〜ん、こいつ!と断言はできないが、何となくは絞れてはきたかな」
「なるほど。それなり成果はあったという事ですね?」
「うん、そゆこと〜〜」
ここで裏切り者が誰って聞くのは流石に野暮かな。
「分かりました。裏切り者の件は、千年さんにお任せしますね」
「え? 誰が裏切り者か気にならないの?」
「いや、気にはなりますけど、聞いても教えてくれないですよね? あなたは、100%と断言できない限り、そういった類の情報は共有しない。言ってしまったことで、混乱を招いたり、疑心暗鬼になりかねませんからね」
おぉ、こいつグレンよりも俺のことわかってんじゃね?(笑)
「まぁいいです。僕らも神座で話した通り、色々とやらないといけいなことが出来たので、お互いに頑張りましょう」
「頑張る? なにを?」
「はい? 何をって……そりゃあまずは各地に出没した摩瓈爾奠をですね……」
「あ〜〜ぁ、それならもう大丈夫。全滅したぞ」
・ ・ ・ は!?
「え、え? え〜!? ぜぜぜ全滅?! 千年さんが!?」
「いやいや、俺なわけないじゃ〜〜ん」
「え? じゃあ……誰が?」
「誰って……言わなくてもわかるだろ? 20体以上いた摩瓈爾奠を、数日で全て殺せる男。そんなの、1人しかいねぇだろ」
「……!! ま、まさか!?」
「そう、神道十二界最強の男。"最上位"『真白澪』だ」




