Ep.40 更なる高みへ
激闘を終えたグレン、キゼル、そして遠くからそれを見ていた榮多云大の魂は神域を抜け、現実にある肉体へと戻っていた。
だが、未だグレンとキゼルの意識は戻らず、2人は仰向けのまま目を閉じていた。
一方で、云大は千年と虎影の話し声で徐々に意識が戻り始める。
あいたたた……頭ぐわんぐわんする。えっと、……あ、そうだ。現実に戻ったのか。にしてもやっぱ慣れないな。魂抜かれて起きると気怠さが凄いーーうん? 誰か話してる……あ、千年先輩と虎影師匠先輩か。
「千年様、やりすぎですぞ? 此方にまで被害が!」
「あはは! ごめんごめん(笑) あんな終わらせ方するつもりなかったけど、急にタイマーが目に入ってさ! んで見たらもう5分よ5分!! 流石に長引きすぎ〜〜って思っちゃって」
「にしてもです!! もっとやりようはあったでしょうに」
「いやさ、記憶に残る終わらせ方したらどうなるかわからないじゃん? 恐怖心植え付けたくないし。だったら、もう覚えてられないくらい、「え!? 何が起こったの?!」って思わせる方が後々いい気がしてさ!(言い訳) それとまぁ、あれを経験しけとば、多分だが他が雑魚にみえるはず。それっていいことだと思うけどなぁ〜〜」
「一理ないです!!」
2人とも、目覚めて早々元気だな〜〜。……あれ?いま虎影師匠先輩、千年先輩のこと千年"様"って呼んでた? いや……聞き間違いか。
2人の会話をぼぉ〜〜と聞きながら、云大はゆっくりと体を起こした。
「おはようございます。榮多云大、今起きました」
「おぉ、おはよう! どうだ? 気分は」
「はい……まだちょっと慣れないです」
魂の出入りなんて普通に生きてたら体験できるもんじゃないからな。神域直後はどうやっても頭がぐわんぐわんする。こればっかしは慣れしかない。
「まぁあと数回くらいで慣れるっしょ! がんばがんば!」
「はいーーあの、千年様先輩。1ついいでしょうか?」
様先輩? なにそれ(笑)
「なんだそんなに畏まって」
「俺もいつか必ずグレン先輩やキゼル先輩みたいに強くなります。必ずです。だからその時は、、」
うわ……ものすごく嫌な予感がする。いや予感じゃない!!
「スト〜〜〜〜ップ!!!! それ以上言うな! 頼む、それ以上は!!」
「え……あはい」
《言うていいぞ。此方が許可する》
「え?! はい、ありがとうございます!! 千年様先輩、いつか俺とも手合わせお願いします!!!!」
深々と頭を下げる云大と、薄らニヤつく虎影。
「虎影さ〜〜ん、なんか言いましたね〜〜??」
「ホッホ、男が一度決めたことを曲げるのは良くないからのぉ。受けるか受けんかは千年次第じゃよ」
「もぉ〜〜、わかったわかった! いつかな。い・つ・か!! 確定じゃねぇからな!!」
「はい!! ありがとうございます!!!!」
そんな3人の楽しげな会話が耳に入ったのか、目を閉じていたグレンとキゼルが目を覚ます。
「ふぁ〜〜、よく寝た。あれ、俺なにしてたっけ? えっと……う〜〜ん、あ!! そうだそうだ、千年にぶっ殺されたんだ!! あの野郎、力隠してやがった! どこだ? ……いた! おい千年、もっかいだもっかい!!」
安定のお祭り騒ぎ……やかましい意外の言葉が出てこない。
「お前なぁ、あんだけ言ったろ? 2回はねぇって! 拒否拒否! ぜ〜〜たい拒否!」
「いいじゃねぇかよ! つうか俺全然本気出してねぇし!」
「はいはい」
「本当だよ!! 俺にも奥の手くらいある!」
奥の手? 気にはなるけど、まぁどうせ混血族種転換だろうな。あれ? そういえば、グレンって混血だっけ? あれ? うん、まぁいいや。
「で、キゼルはいつまでモジモジしてるわけ?? つうか何でちょっと頬赤らめてるの?」
「え? いや、その……千年様とやりあえたことが……その……嬉しくて!」
あらやだ、かわい。
「ホッホ、まぁ何はともあれ、あれだけの戦いをしたんじゃ。ゆっくり休みながら、千年に総括でもしてもらおうかのぉ(ニヤリ)」
「えぇ〜〜、俺そういうの苦手なんすよ〜〜」
「つべこべ言わずやれ。此方の神域をグチャグチャにした罰じゃ」
あらま、結構怒ってらっしゃる。まぁ確かにやりすぎはしたけども……
「わかったよ。しゃあない。じゃあお前らそこに座れ」
「「「はい!!!」」」
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「じゃあ、1人1人アドバイス? じゃないけど、率直に思ったことを言っていくから、大事だなぁ〜〜と思ったら心にしまっとくように。ではまずキゼル!」
「はい!! お願いします!!(やった。1番)」
「お前は王直の脳だ。俺より頭もいいし、冷静だ。
だが、考えるために一旦距離を取ろうとするクセがある。悪いことじゃないが、ただただ次の攻撃のことを考えるのではなく、味方のアシスト、自分自身も攻撃をしながら考える。それが出来るようになればお前はもっともっと強くなれる」
動きながら、次の一手を思考……確かに、俺はいつも止まってから何かを考える。言われてみれば効率が悪い。動きながら、アシストしつつ……そうか!!
「わかりました!! 今のお言葉と今回の経験、一生の宝とします。ありがとうございます!!」
「う、うん。(そこまでは……) じゃあ次グレン!」
「おう、こい!!」
「お前は自分の力を過信しすぎなのと、冷静さがまるでない。もっと周りを見渡す努力をしなさい。必ずしも、隣にキゼルがいるとは限らないんだからさ」
「やっぱそうだよな〜〜。確かに冷静さは足りないかも…… でも、自分の力は過信してるつもりはないぞ?!」
「いやいや、してるよ。特に炎鎧発動時」
炎鎧発動時?? ーーあ……
「思い当たる節があるみたいだな。確かに炎鎧はいい技だと思う。でも、相手が賢ければ(まぁバカじゃなければ)、炎鎧に触れずに対処するか、お前を無視するはずだ。そうなればお前はただの置物になる。違うか?」
「ぐ……そ、その通りです……」
「使うタイミングと、使い方、あとは"分散"、これさえできればもっと高みへ行けると思うぞ!」
「高み……いやつうか、分散ってなんだよ?」
「それは自分で考えなさい」
炎鎧は、あの硬い摩瓈爾奠の皮膚ですらドロドロに溶かしてた。千年様の言う"分散"、つまり炎鎧にほぼ近い状態で攻撃を繰り出せたら……
2人の会話を聞きながら、キゼルはグレンよりも先にグレンの更なる可能性に気がついた。
「グレン、時間があるとき俺に付き合え。まだまだ強くなれるぞ」
「お、まじ? おけおけ! やるやるぅ〜〜」
うん、流石はキゼル。いや、ほぼ答え言ってたのに気づかないグレンがアホすぎるのか? まぁどちらにせよ、次会う時が楽しみだ。
「あとは2人のコンビネーション。連携はまぁまぁ取れてるけど、雑な部分も多い。知ってる顔同士だし、歴も長いんだから、もっと綺麗にまとめろ」
「そうですね。確かにそこらへんの詰めも甘いです」
「わかってるならいい。あぁそうそう、お前らってさ"重"できねぇの? それともやらねぇの?」
「"重"? んじゃそりゃ?」
「多分、今ならできると思うんですが……(前やったときグレンがクソすぎて) まぁやってみないと分からないです」
ふ〜〜ん、まぁ虎影の怒りの表情から察するに、一度は教えたっぽいな。(グレンは案の定忘れてるけど)
「はいはい!! "重"って何ですか?? 自分習ってません!!」
「確かに。云大"には"教えてなかったな。
"重"ってのは、重ねるの意味を持つ。簡単にいうと、合わせ技みたいなものだよ」
「合わせ技…… つまり、グレン先輩の炎と、キゼル先輩の雷を合わせて、威力を倍増させるってことですか?」
「そゆこと!」
「まぁ今の俺とキゼルなら、その……"重"? くらい秒でできるけどな!」
ガザネ……知ったかすら出来てない……
「バカが。"重"はお互いの呼吸、神力量、その他諸々、色々相まって完成する。お前の下手な神力操作のせいで失敗してきたから、師匠が中断したんだ」
「だから、今の俺ならって言ってんじゃん! なんならやるか? 絶対できるから」
「はいはい、後にしてください」
さて、いま伝えられることは伝えたから、そろそろ行くか。
「ーーじゃあ虎影さん! こいつらのことよろしくお願いします!」
「え!? 自分にはないんですか!?」
欲しがりかよ……。
「はいはい。えっとね、云大は……うん、そのあれだ。
えっと……頑張れ!」
薄すぎる……。
「嘘嘘(笑) 見た感じ、神力量も増えてるし、なんていうか、自信がついてる。あとは、虎影さんの言うことをちゃんと聞いて、経験を積めば、絶対に強くなる。だから、お前はそのままでいいぞ」
「はい!! もっと頑張ります! ありがとうございます!」
嘘偽りはない。こいつもちゃんと強くなってる。よしっ、俺も頑張るか。
「じゃあ改めて虎影さん、こいつらのこと、宜しくお願いします!」
「ホッホ。千年も、気をつけていくのじゃぞ」
別れを告げ、この場を去ろうとする千年を、3人は悲しげに止める。
そんな中、虎影から千年へ意思伝達が飛ぶ。
《千年様、余計なお世話かと存じますが、改めて。 "神座"の盗聴は300年の投獄、または死罪です。いくら貴方とはいえ、神道十二界は曲者揃い、見つかれば命はありませぬ。くれぐれも気をつけて》
《わぁってるよ。ヘマはしない。あとは任せた》
《御意》
《あ、そうだった。さっきお前のポケットにグレンとキゼル宛の任務書入れたから、修行がある程度片付いたら、指定日にあいつらにはそれやらせてて〜〜。じゃっ!》
任務書? ……はっ、いつの間に?!ーーホッホ、さすがは千年様じゃなあ。1本取られましたわい。
「じゃあお前ら! 虎影さんの言う事をちゃぁ〜〜んと聞いて、もっともっと強くなれ! ゆくゆくは俺が前線に出なくてもいいくらい、めちゃめちゃに強くなれ! いいな?!」
「はぁ? それって、千年が戦うの面倒臭いから俺に強くなれってことかぁ? 本当とクソだな!」
「あはは! 千年先輩らしいです!」
「ホッホ、そうじゃなぁ」
「わかりました!! 千年様が一歩も動かず、ずっっとダラダラできる環境づくりのために、死ぬ気で、死ぬ気で頑張ります!!!!」
えぇ……1人だけ間に受けてる……俺そういうタイプじゃないぞ?(笑)
「ま、まぁ何はともあれ! みんな、またな!!」
そうして、千年はこの場を去り、"神道十二界"の集う神座の開催国 フランス領ニューカレドニア首都ヌメアへと向かった。
神々再誕編 "完"




