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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神々再誕編
38/76

Ep.37 因縁



         〈イギリス〉



 首都ロンドン壊滅からすぐのこと、その主犯である人外アムス・ソレアは、完膚なきまでにこの国の全ての制圧を始めた。

 国の中心人物の処刑と公開。軍基地の破壊に、国外への移動と情報の遮断。

 次々に起こる前例のなさすぎる事態を前に、国は大きく揺れ、

 

"もう、誰も頼りにならない"

"この国は終わった"

"自分の身は自分で……"


 全ての決定権は国民1人1人に委ねられた。

 だが、アムス・ソレアはそれすら許さなかった。



〈同国マンチェスター:エティハド・スタジアム入口〉



 無造作に並べられた大量の車。それはまるでバリケード。

 何のために作ったのか、なぜそうする必要があったのか。

 その答えは、スタジアム内に避難した大勢の地元民の怯えた表情と、彼女の登場が全てを物語った。


「ーー考えることを辞めなさい。脳を止めなさい。自分はただの餌だと自覚しなさい。

それが出来ると約束し、ソレアに従うのであれば、"今は"殺さない」


 アムス・ソレアは、次なる標的としてこの国の一般市民を狙い始めていた。

 それを察知した(というより、アムス・ソレア自身が、狙うと声明を発表した)各都市の市民は、こうして彼女から身を守ろうと、武器を取り、必死に争った。


「黙れ人外!! お前と対話はしない。こちらの望みはただ1つ! この国から出て行け!!」


 拡声器ごしにアムス・ソレアに檄を飛ばす市長と、それを囲い、彼女を睨みつける警察と、両手に武器を持つ屈強な一般市民。


「さぁ、後ろにいる"売国奴"とともに、今すぐこの国から出て行け!!」


 その言葉を合図に、彼らは発砲した。


「おおおおおい!! 私に当たったらどうする気だ?! 国王だぞ!?」


 ソレアから少し離れた場所で戦況を見守っていた現(元)国王オリバー・フレッグに襲いかかる銃の雨。

 気づかれていないとばかり思っていた矢先の出来事に、彼は萎縮し、その場にうずくまった。ーーが、何たる幸運の持ち主。避けることなく奇跡的に一発も被弾しなかった。


「お……おぉ。奇跡……だ。はは」


「おい下手くそ!! ちゃんと狙えよ!!」


「狙いましたが、車が邪魔で……」


「クソッ!! ならもう1回だ! 次は外すなよ!?」


 再びオリバーに向けられた銃口。しかし、弾は放たれることなく、銃を構えた者たちが次々に倒れ始めた。


「な……何してる……」


 驚きのあまり一瞬頭が真っ白に。だが、目の前には強大な敵。悠長にしている暇はない。

 市長は近くで倒れた1人に手を伸ばし、「起きれるか?」と声をかけながらその者に触れた。

 そして気がつき、腰を抜かす。


「し、死んでる!!!!」


 そう、彼らはただ倒れたのではなく、心臓が止まり、死んだから倒れたのだ。


「ば……馬鹿げてる……こんなっ、、こんな……」


 初めて体験する"異常"を前に、彼から表情が消えた。


「ーーアッハハハハッ!!!! いまの数秒で面白いことが沢山起きたわね(笑) まず、オリバー君。キミは本当に運がいい。あれだけの弾が1発も当たらないとは……本当にキミは面白いよ」


「御言葉ですが、当たり前です!! 貴方様の行く末を見ずに死ねませんから」


オリバー・フレッグ……ふっ、こいつは本当に面白い人間だ。少し、興味が湧いた。大事にしてやろう。


「そうか。生きててよかったよ。

次にそこの市長。キミはいい表情をするね。魔戎が悦ぶ滑稽な面だ。そんなキミに、知りたいことの答えをくれてやろう」


・ ・ ・


あらあら、気絶しちゃってるね。


 市長は恐怖のあまり意識が飛んだ。


「じゃあもういいや。あとは奴隷の確保をしますか。はい残りの皆さ〜〜ん、抵抗も、思考も、生きることも辞めて、こっちに来てくださ〜〜い。拒めば、いますぐに確実な死が、逆に拒まず従えば、運にもよるけど生きれるかも? しれないよ? どうする?」


 そういいながら、彼女は片手で車を持ち上げ、退かし、自ら道を作る。

 そして、入り口で待ち構えていた彼らへと徐々に近づく。


「どうするの? そんなに長くは待たないわ。今すぐ決めて、今すぐ行動しなさい。

じゃなきゃ、問答無用で殺します」


 迫る恐怖に体が震え、彼女の言葉の意味すら理解できない。これは最早、死人も同然。

 だが、彼らの内にある、人としての本能はまだ死んでいなかった。


 手に持った拳銃を自然と彼女に向け、"ドンッ"、"ドンッ"と1人が発砲。

 それに呼応するかのように、銃を持つ全員が彼女に弾を撃ち込んだ。ーーがしかし、


「はぁ、残念無念。興味ないんですよね、そういう"無意味"」


 弾は彼女に直撃した、何発、何十発と。

だが、貫通はせず、ただ体に当たっただけ。丸めた消しゴムのカスが当たったかのように、彼女は弾が触れた箇所をそっと叩いた。


「時間も選択を与えた。なのにその結果がこれ。非常に残念です。ってことで、死んでください」


 そう発した瞬間、入口前にいた約200名もの人間が、一気に倒れ、絶命した。


「じゃあオリバー君。次は中の掃除に行こうか。

ほら、早くこっちに来なさい」


「は、はい!!」


 ソレアの作った道を辿り、死体を避けながら彼女の横へ。


「ーー『(ハザマ)』」


 オリバーが近くに来たのを確認後、彼女は従操(ジュウソウ)(ハザマ)』をスタジアム全域に展開した。


「今のはなんです??」


(ハザマ)だよ。これはね、対神通力者にはそこまでの効果はないけど、対それ以外なら効果は抜群。これを使うことで、このスタジアムを囲うことができ、中の人間は外へ出られない。=逃げれない」


「なるほど! 1匹足りとも逃がさないということですね!」


「そゆこと。じゃ行こうか」


 改めて(ハザマ)とは、人の目でも視認可能な結界。内側から発生する神力(ジンリキ)を、外に逃がさないよう抑え込む力。(限度あり)

 また、結界外から内側に侵入することは出来ない。(発動者の許可が有れば侵入可能+外からの破壊も可能)となる。

 これは、あくまでも対神通力者の話で、それ以外の生物は例外。

 人間が、従操によって作られたものを、破壊したり、避けたりは当然できない。よって、囲われた時点で、逃亡不可というわけだ。


かなり徹底されてるな。そんなに奴隷が欲しいのか?? ソレア様はそんな方には見えないが……。というより、さっきの市民たち。なぜ死んだ?? 何かしたようには見えなかったが……。


「キミキミ、学習したまえよ。思考、全部聞こえてるよ??」


「あ!! 大変失礼しました!! 煩わしかったですよね?」


「うん、とてもね(笑)。でも、ごく普通のことだから責めたりはしないよ。ただね、聞きたいことがあるのなら聞きなさない。我慢することはストレスになるからね」


なな、なんとお優しい……。


「ありがとうございます!!!!」


「大袈裟ね(笑)。 えっとそれで、何だったかしら??」


「はい、僭越ながら。先程は、どのようにして市民(あれら)を始末なさったのですか??」


市民(あれら)の始末?? そんなの普通に……あ、そうか。確か、省いて説明したか。


命源(ミョウゲン)の話をしたのは覚えてる??」


「はい、当然です! 力の根源ってやつですよね?」


「そうよ。その時に、命源は"普者には影響を与えない"って言ったのも覚えるかしら?」


「ちょ、ちょっとお待ちください!」


 オリバーは立ち止まり、胸元からノートを取り出し、読み漁る。


「ーーあ、はい、思い出しました!! 命源は、空気中に大量に存在する気体で、我々人間には見えず、影響せず。です!」


「その通り。そこら中に命源という気体は存在している。だが害はない。つまり、普通にしていれば何の問題もなく生きていられる。

普通にしていればね」


「……そうか、そういうことですね!!

ソレア様は、市民(あれら)の周辺にある命源を力に変えて、ぶつけたのですね!?」


「フッフッフ。惜しい、ほぼ正解ね。

市民(あれら)の周辺にある命源を力に変えた。そこは合ってる。でも、"ぶつけた"ってところは間違い。ソレアは、命源を力に変えて、それを動かし、体内にある心臓に流し込んだのよ」


「な、なんですって!?」


 あの時ソレアは、彼らに合間見えた瞬間に、周辺の命源を自身の神力に変換していた。

 そして、タイミングを見てそれを彼らの体内に移動し、心臓に流し込んだ。

 するとどうなるか。答えは簡単、神力という力が心臓内で暴発し、心臓は破裂。それによって、彼らは絶命に至ったのだ。


「何たる力……それを駆使すれば、他の神々も!」


「いや、それは無理だね。神力に変えた時点で気づかれるし、なんなら体に入る前に防がれるね。(入ったとしても、体内で分解されるから、100%殺せない)だから、対神通力者向きではない」


「そう……なんですか?」


「そうだよ。集中しないといけないし、操作をしながらになる。だから、かえって逆効果なんだ。対神通力者にはね。でも、普者は違う。防がれることはないし、その術もない。

だから我々神は、人間程度ならすぐに()れる」


 改めて彼女(神通力者)がどれだけ凄いのかを再認識したオリバー。だからこそ、いまから彼女がしようとしていることに納得がいかなかった。


「ーー大変失礼なのは承知の上です」


「なんだね?」


「私は、ソレア様に奴隷は必要ないかと思います。なぜなら、1人で何もかも出来るから。逆に奴隷を集めることで、貴方様の邪魔になる。なのに何故、こんな面倒なことを?」


「う〜〜ん、たしかにキミの言う通り、ソレアに奴隷は必要ない。全部できるし、いてもイライラする。性に合わない。でも何故集めるか。それは、金魚の糞(神道)を殺すためだよ」


金魚の糞??


「まぁあとは、仏陀(ブツダ)から刻導(コクドウ)に与えられた使命だからかな」


仏陀……前にも言っていた。多分、大物だろうな。


「その、仏陀様? という方が、奴隷を集めろと??」


「そうだよ。理由は分からないけど、あいつは頭がキレる。必ず、なんかの役に立つはずさ」


奴隷を使って出来ること……建築? 世話? 調査……いや、どれも違うな。なんなんだ一体……。


「まぁそんなこと気にしなくていいから、とりあえず質疑は終わりでいい? ちゃっちゃっと終わらせたいんだけど?」


「し、失礼しました! 残りは後で大丈夫です!」


「何よそれ。あるならいま言いなさい。まどろっこしい」


「ですが、」


「おい、ソレアを否定するなよ? せっかく好意を抱き始めたのに、頼むから壊させないでくれ」


しまった。やばい、耐えろ。耐えろ!!


「申し訳……ございません……」


「ーーま、いいよ。で、何? 他に聞きたいこと?」


耐えたぁぁぁ。


「はい、あの以前から仰られてる"刻導"とは一体?」


「あ〜〜、そういえば言ってなかったわね。

いいわ、教えてあげる。いずれ会うかもしれないしね。知ってて損はないわ」


 ソレアは椅子に腰掛け、オリバーを呼びせる。

 オリバーは一礼したのち、彼女の隣に座る。


「刻導とは、正しい"(トキ)"を"導く"もの、を意味する。メンバーは6名で、

"太陽神"上位『アムス・ソレア』

"悪魔神"上位『怤會(フカイ)(モロモロ)

"疫病神"上位『症懺(ショウザン)』 

"貧乏神"中位『悪童(アクドウ)

見習い『ギムレット』。と、もう1人、最上位の"邪虚神(ジャキョシン)"の計6名が刻導に名を連ねる。まぁ簡単に言うと、反神王勢力よ」


反神王勢力……なら神王勢力が、神道なんちゃらってやつらか。


「神道十二界ね。まぁそいつらだけじゃないけど、今のところソレアたちの標的は神道ってとこよ」


「因みに、戦力差はどのくらいあるんですか?」


「う〜〜ん、そうね。ぶっちゃけソレアたち、絶望的かな?」


「ほおほお……ってえぇ!!?? ぜ、絶望的!?」


「うん(笑)」


相変わらず面白い反応(笑)。


「ソレア様でも絶望的って……神道はそんなに……」


「いやいや、単体でいえば、一部を除いてだけど、そこまでの戦力差はない。問題なのは数よ」


「数??」


「そう、刻導が6人に対して、神道は12人以上。それ以外の勢力を合わせても、遠く及ばない。のに加えて、神道にいる"ある人物"は更にその数を増やすことができる。厄介でしょ〜〜?? あと、大きな問題ももう1つある。だから結構大変なのよね〜〜」


そうだったのか。楽勝、と思っていたが、意外と……。


「でも安心して。勝算はある。だから、こうして仏陀の言うことを聞いてるわけだし。

だから貴方も、勝ち馬に乗りたいならしっかりと手伝いなさいよ? 遅れても助けてあげないからね」


「分かりました。精一杯、援護できるよう努めます」


「ふふっ、いい心構えよ。なら、行こうか」


 そうして、数日と経たないうちに、ソレアは約2500万人の奴隷を手にする。


 これがのちに、千年の怒りを買うこととなる。







 



 


 








 

 


 

 


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