Ep.33 天明流拳武
〜〜〜〜(回想)
「千年先輩! 早く最高峰の武術、習いたいです!!」
「ったく、しょうがないやつだなお前は。
分かった分かった。なら教えよう、デウスに伝わる武を」
……ゴクリ。
「いいか云大。まず、今からお前に教える武術とは、命源そのものの力を駆使し、発動するものだ」
「命源そのもの??」
「そうだ。命源とは、吸収・命令を行い、神力または神通力に変換して使用するもの。だがこの武術は違う。神力や神通力に変換するのではなく、命源そのもので力を生み出すもの。そこでまず必要なことは、集中力と命源・神力の操作力だ」
「集中力と命源操作能力…… はいっ!」
うん。わかってないな。
「まぁ口で言っても分からんだろうから、とりあえず俺の拳を見ててくれ。いいか? まず、空気中の命源に、この右拳に集まるよう命令する。そしたらあとは集中。ーーいくぞ」
千年の右拳を直視すること数秒。
「ーー?!」
「わかったかな?」
「はい! なんか凄い圧を感じます!!」
「うん。当然だが、命源は目で見えない。
だから俺の拳にこれといった見た目の変化はない。だが、お前が感じ取った通り、いま俺の拳には凝縮された大量の命源が集まってる。前にも言ったが、命源とは力の根源。つまり、普通に殴るよりも、こうして集めることで殴る方が数倍威力は増す。これが天明様の生み出した武術だ」
「拳に集めて殴る……って、めちゃめちゃ簡単じゃないですか!!」
「バッカたれ! 俺がいま拳に集めた命源は、ただの命源だ。神通力にも、神力にも変えてない、ただの命源だ」
「はい。それは理解してますよ? でも、命令して集めるだけですよね??」
「まぁそうだが……あぁ、分かった。ならやってみろ。命源に命令して、集めた拳で俺を殴ってみ」
「え? あ、はい」
まずこうやって集めて、次に構えて……
「じゃあ行きます」
千年が突き出す手のひらに、云大は拳をぶつけたーーが、
「……あれ?? 集めた命源が消えた……」
「当然だ。俺は神通力者だぞ? 神力にも、神通力にも変換されていないただの命源なんか、余裕で奪える」
「奪える……あ、吸い込んだってことか!」
「そゆこと。じゃあ次は俺がやるから、云大、手を前へ」
今度は、云大が千年に手のひらを向け、千年は指にのみ命源を集め、それを手のひらへとぶつけた。
その瞬間、云大の突き出した腕は弾き飛ばされ、その勢いのまま、地面に尻もちをついた。
「うっそ……。指一本で……ど、どうやったんですか!?」
「ふっふっふ。いいか? まずは命源を集める。これは出来ているな。だが、ただ集めただけじゃ、さっきみたいに奪われる」
「そうですね。命源は空気中にあるわけですから、息を吸われたら集めても意味ないですね……」
「その通り。ならどうするか、答えは簡単。
集めた命源を、神力で覆う」
神力で覆う??
「まず、命源を拳に集める。そしたら、自分の神力でそれを覆う。すると、空気中の命源と、拳に集めた命源との間に"壁"ができるな?」
「そうか、壁を作ることで、相手に奪われない、自分だけの命源を確立できるというわけですね」
「その通り! 因みに、神力で覆う際、覆う神力が薄ければ薄いほど、命源そのものをぶつけることが出来るため威力は増す。
つまり、基礎的な武術・集中力・高度な神力操作力、これらが相まってこの武術は真価を発揮する。そして、その武術の名は……」
〜〜〜〜
特訓じゃ、ほとんど成功しなかったけど、千年先輩!今ならやれる気がします!!
牛若の背を前に、云大の神力が跳ね上がり、拳に命源が集まる。そして、
「ーー天明流拳武 "一式" 『死突掌底』」
※『死突掌底』
手のひらに命源を集め、練る。そして、それを手のひらごとぶつける力。通常の打撃よりも、数倍威力は増す。
背骨の折れる鈍い音が響くと同時に、牛若は勢いよく周辺を破壊しながら前方に吹き飛ばされた。
「やはり天明流拳武か! これは流石に驚いた…… 俺とグレンは教えてもらってすらないというのに」
いや、そうか。云大は確か、こっちの世界で武を嗜んでいたと言っていたな。
武術×命源=天明流拳武だ。千年様はそれを見越して教えていたのか。にしても凄まじい破壊力……さすがは千年様だ!!
真っ直ぐ吹き飛ばされた牛若は、亀石に激突。その衝撃で亀石が傾く。
「はぁ……はぁ……できた……出来たぞ!!
ただ、これ相当キツイな。体への負荷が半端ない」
彼の言う通り、天明流拳武は通常の命源の扱い方とは違うため、ある程度"武"に関しての基礎がないと使用できない。
⇒集中力・武術に対しての耐性が少しでも足りなかったり、神力の覆い方・覆う神力量が、集めた命源に負けると、ぶつけた瞬間、自身にも大きな負荷が発生する。
つまり、榮多云大だからこそ、短時間で習得ができたというわけだ。
「あぁぁぁぁクッソ!! いかんいかん! 洗脳で足引っ張ったんだ。この程度でへばってたまるかよ! キゼル先輩! 次どうしたらいいですか?!」
出来たとはいえ、初の天明流拳武。強がってはいるが、かなりの消耗。
そんな彼と、吹き飛ばされた牛若の方をじっくりと観察したキゼルは気がつく。
「ーーそうか。そういうことか!!」
《おいグレン、云大! わかったことがある。1回しか言わないからちゃんと聞けよ。特にグレン! いいな?》
《なんで俺なんだよ!! つうか云大! お前すげぇな!》
《え、まじすか!! あざす!!》
《そういうのいいから。いいか? 多分だが、摩瓈爾奠は神通力による攻撃よりも、物理攻撃=殴る蹴るとかの神通力じゃない攻撃の方が効果があると思う》
《え?! そうなの??》
《多分な。理由としては、まずグレン。
お前、八つ当たりでボコボコに殴ったろ? あの時、牛は相当ダメージを負った。俺らが放った絶戯よりもだ。そして云大のさっきの攻撃。あれを食らって、未だ起き上がってこない。ってことはだ、》
《物理攻撃の方がいいってことだな!!》
《なるほど!!》
いいとこだけもってくなアホが!!
《なぜそうなのかとかは分からんが、とにかく兆しは見えた。ってことで、こっからは云大!
お前が鍵になる。俺とグレンよりかはお前の方が物理攻撃得意だからな。だから、お前に任す。いけるな?》
《もちろんです!!》
《っしゃぁぁ!! あとちょっとだ! 云大、キゼル! 頑張ろうぜぃ!!》
こいつ、後で師匠にシバかれるの完全に忘れてるな。
《まぁわかったなら良い。じゃあそろそろ、、》
3人が動き出そうとしたその時だった、
「アァァ゛痛い、痛い、痛い、痛い!!
クソクソクソクソ、死ね死ね死ね死ね!!」
これまで以上の、いや恐らく3人は感じたことすらない殺意を感じ取る。
「さっきので腹に穴が開いた。内臓グチャグチャ、背骨も折れた。あぁ……モォいい、遊びはやめだ。お前ら全員、骨だけにしてやる」
半壊した亀石から、血まみれで座り込む牛若が姿を現す。
その姿を見て、やはり神通力よりも打撃の方が効果がある、とキゼルは確信する。
「グレン、云大! 読み通りだ! 牛はもう虫の息。今ならやれ、、」
確かに彼の"読み"は正しかった。だがそれはあくまで正しかっただけ。勝てるかどうかは別の話である。
「おいおい、嘘だろ…… それは流石にチートだろ」
背骨が砕かれ、腹に大きな穴が開いていた。血まみれで、もう立つことすら出来ないと思っていた。
しかし、牛若は立ち上がった。開いていた穴が塞がり、背筋の伸びた状態で。
「ーーさて、殺るか」
驚きのあまり、全員が動きを止める中、殺意をむき出しにした牛が動き出す。
「まずはお前!!!!」
たった1回のまばたき。今の牛若が数十メートル離れる云大の目の前に到達するには、充分な時間だった。
「云大!!!!」
だがその声は間に合わず、殺意の込められた右拳が、云大の腹部を直撃する。
そのたったの一撃で、口から大量の血を吐き、今いる場所より、かなり遠くにある山まで吹き飛ばされた。
「あ〜〜ぁやっちまったモォ。怒りのあまりぶん殴ってしまった。ツノで刺せば一撃だったのになぁ〜〜。反省反省。まぁでもいいか。あいつは後で食いに行こう。じゃあ次はーー」
今度はキゼルの目の前に移動し、ツノを勢いよく突き出した。
「お?? やるね〜。 やっぱりお前は早いな雷飯」
自分に来ることを察知したキゼルは寸前のところで回避。しかし、避けることに全神経を注いだことで反撃はできなかった。
マジかよ。俺で避けるのギリギリって、どんだけ速いんだよこいつ。いや、感心してる場合じゃない!!
《云大!! おい、云大!! 聞こえるか?!》
落ち着けキゼル・ラーシュ!! 現状の把握をしろ。まず、多分だが云大は死んでない。牛が攻撃する時、あいつは反射で腹部を纏化してた。とはいえ、相当ダメージは食らってるはずというか、恐らく気絶してる。つまり、もう云大の力は借りれないってことだ。ならどうする? 避けるので精一杯の俺と、多分避けることすらできないグレンじゃ、、って無理ゲーじゃねぇかよ!!
何か打開策をと必死になって思考を張り巡らせるが、牛若がその暇など与えるわけもなく、
「雷飯は1人になってから殺るか。なら次はーー」
またしても一瞬で、今度はグレンの目の前に移動した牛若は、キゼルを仕留め損ねたツノによる攻撃ではなく、殴打による攻撃を行った。
まずは気絶させる。それから仕留める。これなら避けられないから、こっちの方が手っ取り早いモォ。ついでに楽しいし(笑)。
殺意の込められた右拳が、云大同様、グレンの腹部に直撃する。
「しまった、グレン!!!!」
だが、彼は数メートルだけ後退したが、吹き飛びはしなかった。
「モォ?! なんだと!? って……なんだその姿は」
「あっはは!! やっぱりバカだなお前!!
このグレン・ハイズヴェルム様に、2度も不意打ちが通用すると思ったか!?」
グレンは殴られる瞬間、火楼羅炎"守" 『炎鎧』を発動していた。
※ 火楼羅炎"守"『炎鎧』
通常の火楼羅炎よりも、ぶ厚い炎を纏う力。(大体、腕2本分ほどの厚み) 効果は、守りの強化。
ただ、この状態でグレンは攻撃を繰り出すことが出来ない。
「攻撃は諦めた。だがしかし!! 炎鎧なら、お前のへなちょこパンチなんか通用しない! それに、この炎鎧は当然だが炎でできる。しかも火力も高い。つまり、触れればどうなるか、バカなお前でもわかるだろ?」
グレンの言う通り、殴った牛若の拳は酷く焼け爛れていた。
「モォ、ほんと……どいつもこいつもめんどくさいなぁ。まぁこの程度、秒で治るがな」
焼け爛れた拳を自慢げにグレンに見せつけた直後、一瞬で再生を行った。
「まじか!! それはセコイだろ!!」
「モォ〜〜モォ〜〜!! バカはテメェだ! こんなの屁でもないモォ!」
「クッソ〜〜!! なら、こうしよう。我慢比べだ!! 俺とお前、どっちが先に力尽きるか勝負だ牛!!!!」
「(ふっ、バカめ。お前の神通力には限界があっても、牛若様の再生に限界があるわけないだろう)
いいだろう! そういうの嫌いじゃないからなモォ」
《ってことでキゼル! こいつは引き受ける! まぁでも正直そんなにもたないと思う。だから、お前はなんとか打開策を見出してくれ!! 頼んだぞ!!》
そして、グレンは牛若に向かって走り出した。




