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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神々再誕編
33/76

Ep.32 総力戦



 ーー摩瓈爾奠(マリシテン)。それは、魔戎(マジュウ)にのみ命源(ミョウゲン)から与えられる『権能(ケンノウ)』=一型の権能"命の複製"、二型の権能"身体強化+命源の纏化(マトイカ)"、その両方を所持する魔戎の覚醒種。


 第三等害種(ガイシュ)から第二等害種に繰り上がり、上位の神と同等またはそれ以上と格付けされるほどの生物である。


「いいな、力が(ミナギ)る……モォ」


 覚醒から暫く、自分の変化した体をじっくりと観察する。


「……おいおい、流石にやばくねぇか? どうするキゼル?」


 云大(ユウダイ)・グレン・キゼルの3人は、摩瓈爾奠(マリシテン)誕生とともに、すぐに移動し、亀石の影に身を潜めていた。


 今のところ襲ってくる気配がないとはいえ、3人の心拍数は徐々に高まる。


《おい、云大、グレン。聞こえるか? 念のため意思伝達(ヴェルシオン)で話すぞ》


《聞こえてます!》 《俺も!》


《よし。まずは現状の確認からしよう。今あそこにいるあれは、間違いなく魔戎の覚醒種『摩瓈爾奠(マリシテン)』だ。つまり、第二等害種ということになる。ここまではいいな?》


《はい!!》


《おう、それはわかってるんだけどよ、何であいつ生きてんだ? ちゃんと残り3つの命は削っただろ?》


《そこなんだが、俺たちは勘違いをしていた。あいつは途中で馬面の神通力者を捕食しただろ? 恐らくあれで1個増えてる》


《待て待て! 10個命を食らったら1つ命が増えるんだろ? 1人食っただけじゃん!》


んな……まじか……グレンがちゃんと覚えてるなんて……


《おい、いまバカにしただろ?》


《してない。 確かに、1人食べたからといって1つの命が増えるわけじゃない。だがよく思い出せ、牛が今日まで食べた数は119だ》


《119……あ!! そうか、あの馬面を食べたことで120になったから、1つ命が増えたってことですね先輩!!》


《そういうことだ。つまり、あいつの残り命は3ではなく4だったってわけだ》


キゼルの読み通り、牛若は覚醒のために中位(チュウイ)の神通力者、七福陰道の飛射馼(ビシャモン)を捕食したことで命が1つ増えていた。よって、牛若は覚醒を完了できたということだ。


 そんな中、キゼルは虎影(トラカゲ)との会話を思い出す。



〜〜〜〜



《ーーそうか、そういうことですね! つまり、3分以内に残り"3つある命"を全て削れば良いってことですよね?》


《そ、その通りじゃ、、》



〜〜〜〜



あの時の虎影(ジジイ)の反応が少しおかしかったのはそういうことか。残り4つに増えたことがわかってたのに言わなかったなあのクソジジイ!!


《え……何でお前キレてんの?》


《別にキレてない。まぁとにかくだ、あぁなった以上は俺たちじゃどうにもできない。師匠に連絡して撤退するぞ》


 いくら3人とはいえ、第二等害種が相手では勝ち目がない。

 それはキゼルだけではなく、2人も同じ考え。全員同意のもと、虎影(トラカゲ)意思伝達(ヴェルシオン)を飛ばした。


《師匠、すみません。覚醒を止めれませんでした。お叱りなら後で受けますので、我々はとりあえず撤退します。申し訳ないのですが、あとは任せてもいいですか?》


・ ・ ・


《師匠!!》


《おぉすまんすまん。なんじゃ?》


《いやですから、摩瓈爾奠(マリシテン)が完全に覚醒を終えたので、自分達ではもう無理です。後処理をお願いします》


《ほぉ、覚醒を終えたか? それはそれは。

しかし困ったのぉ。此方(コチ)はもうモンゴルにはおらんからのぉ》


《……は? いない?! どういうことですか!?》


《だいぶ前に別の要件で離れておる。だから向かうことはできん。う〜〜ん、よし。(オノレ)らで何とかせい。摩瓈爾奠(マリシテン)になったとはゆえ、捕食せんことには命は増えない。つまり、敵の残り命は1つじゃ。それなら己らで何とかなるじゃろ》


《は? え、いや無理です! 俺たち神力がもうほとんど、、》


《大丈夫じゃ。3人おればなんとかなる。ほいじゃ、頑張るんじゃぞ〜〜》


《って待、おい!! ジジイ! クソジジイ!!!!》


ま、、まじか。ジジイがそういう奴だってのは知ってたけど、まさかだ……。でも、遠くに行ったってのは嘘だな。意思伝達(ヴェルシオン)が届くってことは霄壌断絶(ショウジョウダンゼツ)の中にはいる。だが、あのジジイのことだ。助けには来ない……な。


「……先輩??」


「お、、おい。まさか、ジジイ……」


「あぁ、そのまさかだ。ックソ、やるしかねぇよ。

いいかお前ら! 俺たち3人であれの討伐をする。もう後には引けねぇ。気合い入れろ!!」


一方その頃、云大に洗脳をかけていた"七福陰道"歩停損(ホテイソン)がいた場所。ここに虎影はいた。


ホッホ、いい感じに育ってきたのぉ。

"己よりも力量のある強者には決して挑むな"ちゃんと肝に銘じておるようじゃのぉ。じゃが、ちと弱気になりすぎじゃな。今の己らなら、"あの程度"の摩瓈爾奠(マリシテン)くらいちゃんと倒せる。

此方は何も心配おらぬぞ。ホッホ。


虎影はモンゴルを去ってなどいなかった。自分がこの地にいると言えば、必ず縋ると思っていたから。

3人の成長のために、嘘をつき、遠くから眺める選択をした。

それと同時に、消えた歩停損の現場の確認を行なっていた。


ーーしかし、歩停損(あれ)はいったいどこに行った? 恐らくキゼルの攻撃は当たっておらん。じゃがこの場にはいない。逃げた? いやそれも違う……。

なんなんじゃ、ここに残るこの得体の知れない憎悪と怒りは……



************************



「とりあえず俺と云大が突っ込むから、キゼルは後方支援頼む!」


「わかった」


「え?! いやいや、キゼル先輩はゆっくりしててください!」


「は? 舎弟の分際で人の心配してんじゃねぇよ。骨くらい数分有れば元に戻る。神通力者なめんな」


 そういうと、グレンは『火楼羅炎(カルラエン)』を発動し、未だ動かない摩瓈爾奠(マリシテン)に向かって走り出した。


「ーー先手必勝!! 誕生したばっかで悪りぃな牛!! 絶戯(ゼツギ) 『忌火炎渦焼尽インビエンカショウジン』」


 絶戯を解放したと同時に、牛若はグレンの目の前に瞬時に移動する。


「あぁあぁ、遅い遅い。ナメクジかと思ったモォ」


 グレンの技は発動されることなく、亀石の上部まで吹き飛ばされ、衝突による激しい破壊音が、辺りに響き渡った。


 何が起きたのか、キゼルと云大は亀石上部をただ見つめながら、呆気に取られていた。


「ウッシッシ、弱いなぁ。こんな連中に防戦一方だったのか? 情けない、恥ずかしいモォ。

う〜〜ん、どうしようかなぁ……よし決めた! 今からお前らを、死ぬ寸前までボコボコにするモォ。その後、生きたまま足からゆっくり食べてやるモォ」


 その瞬間、2人はようやく気がつく。自分達が、一体何と向き合っていたのかに。


「せ、先輩!!」


云大の怯えた声と同時に、キゼルは『霳鳴霅 ( リュウメイトウ)』を発動し、彼を掴んでその場から消えた。


「ウッシッシ、ウッシッシ。今度はブンブン飛び回るハエかよ。あぁ゛ぁ゛、喰ぃてぇぇぇぇ!!!!」


 亀石の裏側に逃げ込んだ2人は、


「云大! お前、あの黒くなるやつできるか?!」


「え!? 黒くなるやつって、えっと……捕食なんちゃらですか?」


「そうだ! 二型の権能、あれできるか?!」


「……わからないです」


クソまじか。多分グレンは死んでない。だが、グレンが避けれないほどのスピードと、あの破壊力。

二型の権能が使えないんじゃ、今の云大では対抗できない。どうする。考えろ、考えろ。


 彼が必死に思考を巡らせる中、突如頭に落ちてきた細かい瓦礫で「はっ」となる。


「ーーイッテェなぁぁクソ牛がっ!! あったまに来たぁぁぁ!!! 仕返しだ、燃え失せろ!!

混血(コンケツ)族種ゾクシュ転換(テンカン)炎魔(エンマ)』」


 キゼルの見上げた頭上には、吹き飛ばされたグレン。


「絶戯 『焔流(エンリュウ)噴炎(ハクエン)』」


 彼は、殴られたことで苛立ってたはいたが、冷静さは欠いておらず、相手の尋常じゃない速さを考慮した上で、炎魔の中でも最も攻撃範囲の広い『焔流(エンリュウ)噴炎(ハクエン)』を発動した。


 ※『焔流(エンリュウ)噴炎(ハクエン)

混血族種転換時のみ使用できる青黒い炎。

高熱の粒子を大量に発生させ、その高熱の粒子が攻撃対象に触れると、その箇所に付着し、発火する。

また、焔流噴炎は焚誑(タタラ)同様、高い殺傷性に加えて、攻撃対象に直撃すると同時に、相手から削った分だけ自身の体力や気力などを回復できる。


「おい!! てめぇ強くなったんだろ? ならその分、俺によこしやがれ!!」


 高熱の粒子は牛若の前後左右、上下に展開され、完全に逃げ場を奪った。

 そして、グレンの合図とともに粒子は牛若目掛けて動き出し、数秒もしないうちに牛若の全身に粒子が付着し、その箇所から激しい発火が始まった。


「ッモォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛」


 覚醒したとはいえ、これには流石に悶絶。

それに反して、グレンはみるみるうちに回復を遂げた。


「まぁまぁだな。でもこれで死なないのは大したもんだ、褒めてやる。なら、次行くぞ」


 亀石上部から、悶え苦しむ牛若の目の前へと移動したグレンは、混血族種転換を解き、


「絶戯 『大炎柱(ダイエンチュウ)』」


 すでに火だるま状態の牛若を中心に、地面から空目掛けて立ち昇る炎の柱。

 体力を回復したのもあって、覚醒前に放った時よりも数段威力は増していた。


「ま、これでも死なないのはわかってるけどね。さてさて、どのくらい削れたかなぁ」


 炎の中で奇声をあげ続ける牛若。しかし、その声は突如止まった。


「……え? おいおい、嘘だろ? まさか死んだのか?」


 炎から薄ら見えていた牛若の影が消えていた。


「まじかよ……。ちょっと、俺強すぎね?!」


 摩瓈爾奠(マリシテン)を1人で倒したことに興奮し、能力を全て解き、灰になったであろう牛若を確認しに走った矢先、


「ばぁ!!」


地面からほぼ無傷の牛若が姿を現し、グレンの首を掴み、持ち上げた。


「ウッシッシ〜〜 愉快愉快!! バカすぎて笑いを堪えるのに必死だったモォ。あれで死んだ? あれで灰になった? そう思ったのか?! ウッシッシ〜〜

間抜け間抜けぇぇぇぇ!!」


グレンはすぐに炎を纏い、必死に抵抗したが、摩瓈爾奠(マリシテン)の腕力に勝てるはずもなく、ジタバタともがくので精一杯だった。


「ほらどうした? 炎を出せよ。燃やしてみろモォ。無理か? 無理だよな!? いいんだぜ? このまま首をへし折ってやってモォ〜〜」


次第に掴む力は高まり、徐々に意識が遠のき始めた。


やべぇ、完全にやらかした。最後の最後で持ち前のアホがでやがった。ックソ、、怖ぇよ…… ックソ。


グレンは震えていた。絶戯を2回放っても倒れず、傷すらほとんどつかない目の前の化け物に……


「あ〜〜ぁ、またやったなお前。これで2回目。前は確か、大好きなおもちゃ全破壊の刑だったけ? 次はなにかなぁ?」


声のする上空へと顔を向けた牛若だったが、数秒遅く、


「絶戯 落雷(ルカ)


放たれた落雷は脳天に直撃。同時に、体の硬直・痙攣により、グレンを掴んでいた手が緩んだ。


モォ〜〜、ウザイなこの神通力!!!! 早くて避けれないし、喰らうと動けなくなる。アァ゛イライラするモォ!!


手が緩んだことで、グレンは手元を離れ後方に退避。

すると、顔から血の気のひいた表情=絶望を露わに、ひざまづきながらキゼルを見つめる。


「た、、頼むキゼル。いやキゼル様……お願いだから虎影(ジジイ)に告げ口は、、」


「ははっ(笑)。バカかお前は。言うに決まってるだろ? お前は千年(チトセ)様の従者だ。あの御方に仕える以上、あんな体たらくは許されない。しかも2回目だ。しっかり師匠に報告する。楽しみだなぁぁ」


グレンは決して牛若に恐れていたのではない。

"油断大敵"それは 虎影がもっとも忌み嫌い、許さない行動の1つ。

以前も同じように相手を倒したと油断し、力を解いたことのある彼はこっ酷く叱られたのち、大切にしていたおもちゃ数10個を破壊された。以降、2度としないと誓ったのだが、


「間抜けもいいところだ。前は俺との戦いだっからまだ良かったが、今回のはやばいな。まぁでも安心しろ。やっぱ俺からは報告しない。というより、報告する必要はないみたいだからな」


その瞬間、グレンの顔から更に血の気が引く。そしてそれは、グレンだけではなく、雷で硬直する牛若も同じであった。


彼らのいる場所より遠方、禍々しいとはまさにこのこと。

怒りの感情だけで、ここまで身も心もすり減ることなんてあるのだろうか。関係のないキゼルや云大までもが少しだけ恐怖した。


《き、キゼル先輩。この神力は?》


《師匠だ》


《え? 虎影師匠先輩はモンゴルにはいないって》


《あれは嘘だ。いるっていったら俺らが頼ると思ったんだろう》


《えぇ……》


《まぁ師匠が託すってことは、俺らだけで勝てるってことだ。でもそれは、お前が二型の力を使えるってのが前提のはずだ。だから、お前はそのためだけに集中しろ。牛が逃げて、どっかで捕食でもしたら、本当に終わりだ。そうなれば俺もお前も、あの師匠の怒りの巻き添えだぞ? だから早くしろ》


《グレン先輩には悪いですけど、それだけは勘弁すね(笑) でも、グレン先輩、あんな状態で大丈夫なんですか?》


《それなら問題ない。もう怒られる確定だからな。ヤケクソになったあいつは、、》


 地面を叩きながらゆっくりと立ち上がったグレンは、未だ硬直と緊張状態の牛若に近づき、


「ーーおい、テメェのせいで俺は……俺は!!!!」


 怒りに任せ一気に炎を纏うと、勢いそのままに殴る蹴るの連打を放った。


 単調ではあったがこれが意外にも効果的面。最後の殴打が直撃すると、牛若はそのまま殴られた方向に吹き飛んだ。


「見たかオ゛ラァ゛!!」


 吹き飛んだ牛若を逃すまいと、キゼルはすぐに移動し、


神戯(ジンギ) 『雷怒(ガラドボルグ)』」


 牛若の着地地点に合わせて、雷怒(ガラドボルグ)を発動。それにより、地を這う電撃が直撃。再度硬直と痙攣が始まる。


《グレン、休むな!! そこから撃て!!》


 キゼルの合図よりも前に、彼はすでに攻撃態勢に入っていた。


「絶戯 『忌火炎渦焼尽インビエンカショウジン』」


 牛若目掛けて放たれた巨大な炎の渦は、一直線に周辺を燃やしながら激しく突き進み、そして直撃。


2人の連携によるダメージは、普通の生物であれば即死レベル。だが、相手は普通ではない。

 水浴びをした動物が、水を払うように、ブルブルと体を震わせただけで、あの激しく燃え盛っていたグレンの技を消し去った。


「ォモォ゛ォ゛、クソッタレがぁ!! 完全にブチギレたモォ゛! テメェら全員皆殺しだぁ!!!!」


二足歩行から四足歩行へ。最大スピード且つ、最大攻撃力を放つことのできる態勢を取った牛若。


「まずは、お前だ。クソガキィィ!!」


ツノを向けた先にはグレン。足で何度か地面を蹴り、荒だった息が落ち着いたと同時に、目にも止まらぬスピードで、彼目掛けて突進した。


「グレン!!!!」


 動き出しと同時に、グレンは避ける態勢に入ったが、間に合わないとすぐに気づく。


「やばっ、!」


 全く動けないまま自分の目の前に到達した牛若と目が合う。


「死ね!!!!」


 止まらず勢いそのままに、突き出したツノが彼の腹部に触れそうになったその時だった、


「邪魔するぜ!」


 2人の間、上空から大量に神力の込められた云大の左足が振り下ろされる。


「モォ゛ォォ」


 異常なスピードゆえ回避は当然出来ず、振り下ろされた足は両方のツノの中心を捉えた。グレンはその衝撃で後方に吹き飛ぶ。


 牛若は蹴られた威力そのままに、顔面が地面に直撃。

 その反動で、後ろ足が宙に浮き、グレンと牛若の間に降り立った云大に背を向けた。


俺はまだ色々と半端ものだ。出来ないことが多すぎる。それでも、今やれることを全力でやるんだ。

出来ないじゃない、やるんだ!!


 並々ならぬその覚悟と闘志は力に変わる。


「ーーやればできるじゃねぇか、云大(舎弟)


 牛若の背を前に、云大は左腕を後ろに引く。すると、その左腕のみが黒く変色。

 これは、纏化。またの名を『武闘式賦(ブトウシキブ)羽衣(ハゴロモ)"』。部分的ではあるが、彼はそれを会得した。


特訓じゃ、ほとんど成功しなかったけど、今ならやれる気がします"千年(チトセ)先輩!!"


 云大の取った構えと、そこから感じる懐かしさ。


「お前……それは、まさか!?」


「初お披露目です。ーー天明(テンメイ)(リュウ)拳武(ケンブ)


 武と力の融合が、牛若を襲う。





















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