Ep.31 摩瓈爾奠
〈テレルジ国立公園内亀石周辺〉
「ーーッ、おい!! ま、まだかバカグレン!! さ、さっさと、、し、しろっ!」
神通力+捕食生成、その力を手にした榮多云大の猛攻を受けるキゼル。
まだ1分程度しか経っていないというのに、想像を遥かに超えるその化け物っぷりに、キゼルは防戦一方を強いられ、焦りが増す。
ヤバすぎる!!!! 最早、上位クラス、1人じゃ無理だ!!!!
「グレン!! 作戦失敗だ! こっちに戻れ!!」
・・・
「おいっ!! もうやめていいから、早くこっちにこい!!」
極限の集中状態、故にグレンはキゼルに見向きもせず、ただただ目を瞑って洗脳の神通力者を探していた。
どこだどこだどこだ? 絶対に見つけてやる。
それは今から数分前、
〜〜〜〜
グレンに「任せた」と言ったのち、キゼルは痙攣する云大に攻撃を仕掛けた。
一方で、「任された」グレンは、空中に浮きながら座り、目を閉じ、力を発動した。
「ふぅーー神戯 ※『捜火』」
※捜火
野球ボールくらいの炎を、移動距離の制限なく、自由自在に操れる力で、捜火を通して、視・聴に加えて、神力の検知も可能となるもの。何かに当たったりすると壊れる。
敵は、虎影でも見つけることのできないほどの消隠姿使い。普通なら俺なんかに見つけることはできない。でも、そいつはいま云大に「洗脳」をかけてる。ってことは、消隠姿を使いながら、神通力を発動してるってことだ。つまり、発動者周辺の命源に必ず何らかしらの反応がある。捜火なら、それに気づける!!!!
〜〜〜〜
そして現在。あれから更に数分が経ったころ、キゼルの罵声でグレンの集中が切れる。
「あぁもぉぉ!! ヤバいヤバい!!」
「ーーッお、おい!! 何してる! 早くしろ!!」
「お前のせいで集中切れたんだけど!! そもそも俺がそんなに集中力ないの知ってるだろ?! 話しかけるなよ!」
「お、、俺の、せいにする、っな!!」
覚醒まで残り4分。完全に諦めモードに突入しそうになったが、
「あぁぁぁぁ!! クソッ! 負けたみたいでなんか嫌だ! もっかいやるから、もう絶対に話しかけるなよ!!」
グレンは再度息を整え、目を閉じ、「捜火」を発動した。
いま捜火が映し出しているのは、現在地から南西に5キロ進んだ木々が密集する場所。
捜火が木に触れぬよう慎重に進める中、
「……!! いる……絶対にいる!!」
突如立ち上がり、キョロキョロし出すグレンに気づいたキゼルは、うっすら笑みを浮かべ、
「おい云大、そろそろお遊びは終わりらしい。何とか耐え切ったが、結構食らった。俺もやられっぱなしは癪だからよ、これくらいは我慢しろよ」
キゼルはグレンが見つけ出すのを信じ、先を見越した上で、ある力を解放した。
「2つの力を使えるのが、お前だけだと思うなよ?
ーー※"混血族種転換" 『雷獣』 」
※混血族種転換
混血(複数の族種=種族の血が混ざった者)のみが使用できる特殊能力。
普段は使うことの出来ない、混ざった族種の遺伝が少ない方を、時間制限有りで解放できるようになる。
例えば、キゼル・ラーシュの場合、獣族と人族の混血者で、遺伝の割合は3(獣):7(人)。
つまり、人族の遺伝の方が多いため、通常は獣族としての力を使用することができない。(見た目も人族寄りになる)
だが、混血族種転換を行うことで、5分間だけ獣族の力を使えるようになる。
獣族の『族種特質』(族種ごとに生まれつき備わってる力)は、あらゆる速度の向上(判断、処理、移動etc)。名を"速異"。
それに伴い、彼の見た目は大幅に変化する。
髪の毛は腰辺りまで伸び、お尻からは白い尻尾。加えて、全身の筋肉が膨張し、かなりガタイが良くなった。
「ーーじゃあ、行くぞ」
彼がそう発した瞬間、云大の目の前にいたはずのキゼルは、云大の背後に移動していた。
それに云大は気づく間も無く、同時に彼の全身に電撃が走った。
「どうした? 俺はこっちだぞ? まさか、"速すぎて見えなかったか?" おいおい、冗談だろ? まだ全然本気じゃないぞ?」
痺れ上がる云大の背を前に、
「まぁ安心しろ、最速は出さない。だからちゃんと耐えてくれよ? ーー神刀 雷霆」
※神刀 雷霆
キゼルの右腕、ちょうど肘あたりから幅約6cm、長さ約70cmほどの4枚の刃が、肘を中心に四隅に並ぶ。(彼の腕から微弱の電気を流すことで、刃は皮膚に触れず、少し浮いた状態となる)
「先に言っておくが、久しぶりに使うから加減はできない。だから頑張って耐えろ」
忠告後、彼は右腕を上空に向けた。直後、刃先からバチバチという雷の音。
「神刀戯 『叢雷』」
バチバチと音を立てる4枚の刃先には小さな雷の球体。それは能力解放と同時に、空に向かって放たれる。
ゆっくりと浮上し、地上から約10メートル、云大の真上に到達し静止。それから暫くすると、小さかった球体は巨大な球体へと変化し、云大を中へと閉じ込めた。
その変化が異常な速さだったため回避できなかった彼は、球体の中でとりあえず暴れ回った。
しかし、壊れるどころか傷ひとつ入らない。それでも暴れることをやめなかった。
「ーー時間だ」
キゼルがそう呟くと、バチバチと鳴っていた音が止む。それに気がついた云大は何となく動きを止めた。
静寂が続く。
そして、一発の「バチンッ」という音が鳴った瞬間、能力は完全に解放される。
球体の至るところから大量の雷。しかもそれは、絶戯『落雷』よりも遥かに強力。
逃げる隙間が全くない状態の無差別放電は、云大の動きを完全に制圧した。
それからたったの数秒。キゼルは冷や汗と、「ゲッ」とした表情を浮かべながら能力を解除した。
やりすぎた……。最後に神刀使ってから結構経ったせいか、思いの外かなり溜まってたなぁ。すげぇ威力。最初から使っとけば良かった。
やりすぎたと、少し反省? いやどちらかというと自分の力に感動? まぁどちらにせよ、その場に倒れる云大のもとに駆け寄り、
「お〜〜い、も、もしも〜〜し。生きてますか〜〜? てか生きててくださ〜〜い」
願望丸出しで声をかけた。その声に反応したのか、「ピクッ」 「ピクッ」と体が小さく動いた。
「よし、生きてるな! まぁ途中で攻撃やめたし、全力じゃない+云大の硬さなら大丈夫大丈夫!」
《ーーいた。 キゼル!! いたぞ!!》
云大の安否を確認できホッとしていたのも束の間、グレンからの意思伝達に体が反応する。
《どこだ?! 云大の意識は奪ったから洗脳は解けるはずだが、横槍入れるクソ野郎にはしっかり制裁を与える。場所は!?》
すると、彼の向いている方向より遥か前方、空に向かって煙が立ち昇っているのを確認。
グレンからの返答を待たずして、キゼルは飛び出した。
「そこにいるんだなゴミカスが」
一方その頃、煙が立ち昇る約15秒前。
「あらら、気づかれちゃったかな? 正直、彼は欲しかったけど……まぁいいや。牛若を回収すれば問題なし。それに、あの子たちじゃ摩瓈爾奠には勝てない。とりあえず今は撤退、」
この場を去ろうとする洗脳の神通力者"歩停損"の背後に、全く身に覚えのない空間移動が出現する。
うん? 空間移動? 私はまだ出してな、
一瞬戸惑い、動きを止めた彼女とキゼルの距離、約3メートル。
「ーー捕えた」
キゼルは超速で移動したまま、神刀を彼女に向けた。
「神刀戯 『瞬迅咆哮』」
刃先から、対象目掛けて巨大な雷の渦が放たれる。
クソッ、云大に少し使ったのと、超速での移動のせいで思ったより威力が出てない。だが、その分スピードは出た。逃げれるわけがない!!!
雷の渦は、対象周辺を包み込み、触れたもの全てを薙ぎ払った。
スピード、威力、共に殺傷性は大。だが、相手はかなりのやり手。いつどこから姿を見せるかわからない。
放たれた雷の渦を見ながら立ち止まったキゼルは周辺を警戒する。ーーが、
!?!?!?!?!?
あまりにも急で、驚きが強すぎたのか、彼は
混血族種転換を解き、神刀をしまった。
《おいおいキゼル!! 敵は?! つうか何で力解いた!? まだ死んでねぇだろ多分! おいって!!》
キゼルの膨大な力がおさまったことを不安がるグレンのその声に、彼は反応すらしない。
キゼルは立ち止まったまま、あらゆる方向に顔を向け何かを探しだす。
《おいキゼル、いい加減にしろよ!! 何してんだよ! 早く力を、》
《千年様だ》
《・ ・ ・は? 千年? 千年がなんだよ》
《いま千年様がいた》
《は? 何言ってんだお前。いるわけねぇだろ》
《いや、いた。絶対にいた》
《バカかお前は。俺もそっちを見てたんだぞ? 千年がいたら俺でも気づくわ!》
そうこうしているうちに、キゼルの放った雷の渦は消え、眼前には焼け焦げた木々だけが残されていた。
《ーーおい、敵は? こっちからはいないように見えるけど?》
《……いない。見失った》
はぁぁまじかよ〜〜。災厄じゃん、こんな時にでやがったよ、キゼルの※千年病。まじで勘弁してくれよぉ。
※千年病
そんな病気はないが、千年への"愛"が爆発し、周りが見えなくなってしまうキゼルの状態をグレンはそう呼ぶ。今回のように、居るはずがないのに居るように感じたのはまさに千年病ということだ。
頭をかきながら呆れるグレンは、
《まぁいいや、いなくなったもんはしゃあない。どっちみちお前が云大気絶させたから洗脳は解けてる……はず。とりあえず云大叩き起こして、牛を討伐するから戻って来い》
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牛若覚醒まで残り2分。あれから2人は合流し、未だピクピクと痙攣する云大を揺すったり、殴ったり、蹴ったり……とりあえず起こすことに躍起になっていた。
「おいおいまじでやばいって。全然起きねぇよ! もう俺とお前の2人でやっちまおうぜ」
「無理だ。俺もお前もほぼ限界に近い。3人じゃないと絶対に無理だ。(師匠もそう言ってたしな)」
「つうか、元はと言えばお前がやりすぎるから云大気絶してんだろ?! 作戦勝手に変えんなよな! 俺が探し出した意味!!」
「は? 終わったことをグチグチ言うな、みっともない」
牛若、覚醒まで残り1分半。
もう時間がないというのに、くだらないことで言い争う2人。だが逆にそれが功を奏してか、そんな"日常"を感じてか、彼はゆっくりと起き上がった
「ーーお、おは……おはよう、ございます……っ、頭痛ぇし体痺れる」
「云大!!」 「舎弟!!」
云大が目を覚まし、2人は大盛り上がり……といきたいところだったが、事態が事態故、いつもならはしゃぐグレンですら冷静になった。
「おい云大、動けるか? 状況はとりあえず後で説明するから、まずはあそこにいる化物を3人で、」
「大丈夫っす。洗脳されてる間、少しだけですけど意識があったので。ある程度のことは把握してます」
「え?!?! 意識あったの?! それどういう意、」
「おいアホ。そういう系の話はあとだあと。
理解してるならいい、もうすぐ時間だ。やつが覚醒を終えてから1分。俺の合図で飛び出す。いいな?」
「おう!」 「了解です!!」
そして、
「ーーヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛」
脳みそを直接掴まれ、揺らされてるのではないかと思ってしまうほどの頭痛が3人を襲う。
「や、、やべ、やべぇってこれ!! キゼル、こんな、こんなんじゃ動けねぇよ!!」
「先輩方、だ、大丈夫ですか?!」
「クッソ虎影、こんなのあるなんて聞いてねぇよ!」
頭痛、そして3人が会話できないほどの叫び声が果てしなく響き渡るも、それは数秒でおさまる。
「ーーだぁぁ。た、耐えたぁ〜〜。云大、大丈夫か?」
「は、はぁ……はい。それにしてもやばかったすね」
叫び声だけでこの破壊力。だがとりあえず一難去り、安堵しながら地面に腰をつく2人を置き去りに、彼だけが猛烈に焦りを見せ、1人牛若に向かって飛び出した。
こいつはかなりやばい。思ってた以上だ。叫び声だけで、周りが半壊してる。これは、今の俺たちじゃ確実に殺される。植物状態が治るまで残り2分21秒、必ず……"殺す"。
飛び出したキゼルは、全身に雷を纏う『霳鳴霅 』を発動し、叫び終えて完全に動きを止めた牛若の胸に触れ、
「これが俺のいま出せる最高の神通力だ。ーー※終極 『終告鳴止』」
それは、触れた人やものに、彼の出せる最大の電撃を与える力。
それが発動したその瞬間、公園内に溢れていたあらゆる"音"の全てが、たった一撃の雷の音にかき消された。
※終極
最大出力の神通力。命源吸収量・生成力・命源細胞の強度など、神通力者としての『才』や『力』を極めた者のみが発動できる。=奥義。
『終告鳴止』が直撃した牛若の全身から煙と異臭。また、彼が触れた牛若の胸部は跡形もなく消え去り、大きな穴が開いた。
それにより、確実に命を1つ削ったと確信を持ったキゼルは、次の攻撃に入ろうとするも、力を使い切ったせいでその場に倒れる。
「キゼル!!」 「先輩!!」
グレンと云大は慌てながら彼の元に駆け寄ったが、キゼルの表情を見てグレンは云大の服を掴み、
「云大、キゼルは後だ!! まずはあの牛をやるぞ!」
「え?! いやでも、」
「でもじゃねえ!! あいつの一撃を無駄にすんな!! 行くぞ!!」
グレンは云大から手を離し、 炎を纏う『火楼羅炎』を発動しながら、牛若に向かって走り出した。
あぁクソッ、俺は終極使えねぇし、ぶっちゃけ神力も残り僅かだ。体も痛ぇぇ。でも、それはキゼルも同じ。あいつの根性、無駄にしねぇ!!
「ーー行くぜ牛!! まだ完璧じゃねぇけど、俺のありったけをくらいやがれ!!」
グレンは牛若の真上に飛び出し、
「"混血族種転換" 『炎魔』」
力を発動すると同時に、纏っていた真っ赤な火楼羅炎は、色を変え、青黒く燃え盛った。
「青? いや、黒? 青黒? 黒青?
そんなことより、さっきよりも遥かに熱く、異常なまでに強い……。これが、グレン先輩の本気か」
空中で静止し、徐々に火力を上げるグレン。
それを察した云大は、倒れるキゼルを抱えて少し距離を取った。
「ーーれろ…… は、、れ」
云大の背中で目を覚ましたキゼルは、何かをモゴモゴと呟く。
「おはようございます! 大丈夫ですか先輩?」
「ーーは、、れろ」
「え??」
「ーーはな、、れろ……」
「はな、れろ? あ、離れろ! いやいや、ダメっすよ! 俺がおぶっときます!」
すると、キゼルは口を大きく開け、思いっきり深呼吸をした。
《おい云大、聞こえるか?》
「はい! 聞こえてます! てか喋れるじゃないっすか!」
《違う。意思伝達だ》
意思伝達?? あ、なるほど!
《聞こえてます! でも何で意思伝達で話すんですか?》
《久々に本気を出したせいか、力の反動で胸周辺の骨が何本か折れてる。だから命源が吸収しにくいし、喋ると痛い》
あ、なるほど。だから呼吸をしたのか。
《それで、離れろとは?》
《とりあえずもっとスピード出して、走りながら聞け。いいか? 離れろは、俺を降ろせって意味じゃなくて、グレンからもっと離れろって意味だ。あの状態のあいつは加減ができない。こんな距離じゃ巻き添え食らうぞ。それと、、》
自身からだいぶ距離を取った2人を確認したグレンは、さらに火力を上げた。
「最初に言っとくが、この炎は"お前を奪う"。
ーー絶戯 『焚誑』
全身を覆っていた炎は、彼の両拳へと一気に集約する。
そして、その炎が全て両拳に集まると、牛若に対して右拳を勢いよく突き出した。
すると、右拳に集まった炎が消え、直後牛若の全身を炎が包む。
「ーー次」
そのまま、今度は左拳を突き出すと、炎が勢いを増し、さらに燃え広がる。
「ーーまだまだ」
拳から消えた炎は暫くすると再燃し、右、左と何度も何度も繰り返し拳を突き出した。
その度に、牛若を包む炎は勢いを増し、最初とは比べ物にならないほど広範囲に及んだ。
「ーーうん、やっぱりお前強いな。でもおかげで"だいぶ回復できた"」
絶戯『焚誑』は、高い殺傷性に加えて、相手から削った分だけ自身の体力や気力などを回復できる力。(神力は回復しない)
覚醒した今の牛若から得られたそれらはかなり多く、グレンはモンゴル到着時よりも遥かに元気になった。
「ッチ、まだまだ炎魔は未完成だな全然力出てねぇわ。まぁそんなことは置いといて、これで残る命は……うん、あと1つかな。おいしいところはくれてやるから、しっかり決めろよーー云大!!」
彼の後方には、凄まじい勢いで神力を発動しようとする云大の姿。
彼が戦闘態勢に入ったのは、ほんの数秒前。
〜〜〜〜
《ーーあの状態のあいつは加減ができない。こんな距離じゃ巻き添え食らうぞ。それと、トドメはお前がさせ。正直、俺もグレンも神力がもうほぼ限界だ。これ以上は細胞に影響が出る》
《俺ですか?! いや、俺は、、》
《やれるさ。だってお前は俺の舎弟であり、、その、あれだ。仲間だ。だからやれる》
《せ、、先輩!!!!》
《まぁお前は俺たちが頑張ってる間、洗脳されてほとんど神力消費してないわけだし、できなきゃ困る。だからやれアホ》
〜〜〜〜
この戦いでドジ踏んで洗脳された。ほとんど役に立ってない。そんな俺を仲間と言ってくれた。託してくれた。ーー榮多云大! ここでやらなきゃ男じゃねぇ!!
洗脳の最中生み出された彼の技。やり方や詳しいことはまだわかっていない。だが、1度使おうとしたそれを、命源細胞と体が覚えていた。
「ーー絶戯 『抗彊』」
『抗彊』
空気+神力で、彼特有の"圧"を生み出し、それを押し出す力。故に神通力自体を目で見ることはできない。また、攻撃対象が、"命源を使用しているもの"だった場合にのみ発動できる。
今回は、命源の加護を受けている摩瓈爾奠=牛若なので発動条件を満たしている。
抗彊の効果は、『相手の力を上回る』。
つまり、抗彊が触れた対象の命源が強ければ強いほど、抗彊の威力は増す。
放たれた『抗彊』は、空気中に存在する命源に触れるたびに威力を増し、辺りを吹き飛ばしながら牛若に近づく。
当然、まだ脳機能が停止している牛若がそれを避けれるはずもなく、『抗彊』の直撃箇所(右半身)は大量の血飛沫を上げながら、跡形もなく消え去った。
「はぁ……はぁ……」
ありったけをぶつけ、全身の力が抜けたことで膝をつく云大。
「はぁ……クッソ、心臓と反対の位置じゃねぇか。力入れすぎたせいで少し右にズレた。頼むからこれで、、」
《ーー云大》
《キゼル先輩。すみません、心臓部と逆に……》
《問題ない。あれだけの損傷、生きれるやつなどいない。よくやった、残り45秒……任務完了だ》
《は、はいっ!!!!》
勝鬨をあげる2人のもと、1人だけピンピンしているグレンが駆け寄る。
「お〜〜い! だいじょ〜〜ぶかぁ〜〜?」
「グレン先輩、や、やりましたね!」
「おうっ! 余裕よ余裕! なんなら1人で3つ削れたわ!」
「てかあの力なんなんですか? めちゃめちゃかっこよかったっす!」
「ふふっ、ネクストレボルってやつさ」
レボルじゃなくて、レベルな。
《おいアホグレン。いつの間に混血族種転換をマスターした? 俺の最後の記憶だとそこまで大したことなかったろ?》
「アホはお前の方だよキゼル君。俺という男は毎秒進化する。お前がそうやって倒れている間にもな。ふふっ(全然力出てなかったけども)」
《はいはい。で? ようやく千年様にお披露目するのか?》
「は? バカかお前は? するわけねぇだろ! まだ完全に会得できたわけでもないし、なんつうか中途半端なんだよ! そんな状態で千年に見せても、あいつは鼻で笑う。だから、度肝抜くレボルに行くまでは絶対に見せない!! あ、云大! この力のことは絶対に千年に言うなよ? あとジジイにもだ! いいな?!」
「え? は、、はい」
なんのプライドだよそれ。まぁ何にせよ、第二等害種を討伐できた。早く千年様に撫で撫でしてもらいたい。。
この時のことを彼らはすぐに後悔する。そしてすぐに気がつく。
ーー牛若の機能停止からちょうど3分が経過した。
『ドッド、、ドッド、、ドッド……ドドンッ』
それは周辺に響き渡る鼓動の音と、完全覚醒を終えた魔戎の合図だった。
同時に彼らは振り向く。そして目にする。
3人の与えたダメージの全てがなくなり、再生を果たし、目覚めた第二等害種『摩瓈爾奠』の姿を。
「ーー何たる褒美。最高の目覚めに、目の前には3匹の供物。さぁ悦べ、我が摩瓈爾奠腹を満たす餌となれることを……モォ」




