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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神々再誕編
16/76

Ep.15 芽生えた感情、消える命




〈場所:神域(シンイキ)



 全身に雷を纏い、力を解放したキゼルを前に、云大(ユウダイ)は何故だか笑っていた。


「す……凄ぇなぁ……。『上には上がいる』、爺ちゃんが俺にずっと言ってきた言葉だ。でも正直俺はその言葉信じてなかった。俺より強い奴がいなかったから。でも……いたな」


「なにを笑ってる? 死ぬのが嫌すぎておかしくなったか?」


「違ぇよ、嬉しいんだ。なんかこう……高揚してる。ありがとな、この戦い、引き受けてくれて。俺は、これからもっと強くなれる気がする」


「勘違いも甚だしい。お前に『これから』はない!!」


 やっとの思いで立ち上がり、再び構えようとする云大だったが、キゼルがそれを待つはずもなく、瞬く間に云大の目の前から消え、1秒と満たない時間の間に、50発近く、雷を纏った拳が彼の顔面や腹部を捉える。


 殴られた箇所には電撃が走り、硬直しながら震えた。

 堪らず、再び両膝から崩れ落ちるかと思われたが、彼は片膝で踏みとどまった。


これには、さすがの千年たちも驚きを見せた。


「何やあいつ。意外とやるやんけ」


「タフだなあいつ!! いいないいなぁ、やっぱり俺がやりたかった!!」


 楽しんで観戦している彼らとは違い、キゼルは今にも怒りでおかしくなりそうだった。


「痛ぇ……ボコスカボコスカ殴りやがって畜生。つうか何発殴った? 速すぎて見えねぇーーでも……耐えれるな」


 顔を上げ、挑発する云大に、キゼルの怒りが限界を超えた。


「ーー神戯(ジンギ) 『雷怒(ガラドボルグ)』」


 ※『雷怒(ガラドボルグ)

広範囲に及ぶ、地面を這う電撃。


 云大は慌てながら後退したが、雷の速さになど勝てるわけもなく、瞬く間に彼の全身に雷が走る。


「ガアァァア゛ア゛ア゛!!!!」


全身が痙攣を起こし、肌は焼け、辺り一帯に人間の焦げた異臭が漂った。


 そして、白目を剥き、口から泡を吹き、彼は背中から地面に倒れた。


 しかし、それを見ても彼の怒りが収まることはなく、云大の真上上空に移動し、


「ーー神戯(ジンギ)雷纏鑓(ドルジェヴァジューラ)』」


 当然、それを彼が避けることはできず、雷の(ヤリ)は腹を貫き、それと同時に、三度全身に電撃が走る。


 最早生きているのかもわからない状態の云大に対し、彼は地上に降りると、さらに力を増幅させ、


「前言撤回、お前は今すぐ殺すーー"絶戯(ゼツギ)"」


 彼がそう唱えただけで、気絶しているはずの云大の体がブルブルと震えだした。

 それ程までに、今までとは比にならない力を彼は解放したのだ。


 そして、そのまま完全に息の根を止めにかかろうと更に力を増幅され、倒れる彼の首元に手を触れようとしたその時、何故か、キゼルは全ての力を解いた。


 そのまま、動きを止め、暫くすると云大から離れる。そして、下を向き何かを考え始めた。


ーー待て、このまま殺していいのか? グレンにあって俺にないものは結局何だ?? 殺したらわかることなのか?


 この戦いが始まる前に、千年から言われたことを思い出した彼は、1度冷静になり、そのまま動くことなく、思考を続けた。


これは絶対に見つけないといけない最重要案件なのに、俺は怒りで我を忘れてた。危ない。でも、何だ一体。俺にないもの……クソ、わからない。多分だが、このままこいつを殺したら恐らく絶対に分からないままだ。千年様も教えてくれない。そうなれば、グレンとの差も埋まらず、俺は取り残される……嫌だ、それだけは何があっても嫌だ!! ならどうする? 何をすればいい。


 しかめっ面で長考しているキゼルを見て、博士が何かに気がつく。


「千年、お前キゼルに何か言うたんか?」


「なんかって?」


「惚けるな。あいつに何言うた?」


「何って……グレンにあってお前にないものを探せとしか言ってないよ?」


それを聞いた博士は、呆れた表情を浮かべ、千年を睨みつけ、怒号を飛ばす。


「お前、バカか?! キゼルが人や魔戎(マジュウ)にどんな扱いされて育ったか知ってるやろ?! それが分かってて、本気でお前の望む決断をあいつができると思ってんのか?! あんまりやでそれは!!」


空間内に博士の怒号が響き渡るも、集中し思考するキゼルは何の反応も見せなかった。


「うわ、何急に!? どうしたの博士? 何で千年に怒ってるの?」


「お前は黙っとけ!! おい千年、なんとか言えや!! そもそも、グレンとキゼルは生い立ちが全然ちゃうんや! あいつには無理や!」


「無理? じゃあ何でキゼルは今止まってるの?  殺そうと思えばもうとっくに殺してるよね? でもしてない。あいつは考えてるんだ。そして必ず答えに辿り着く。大丈夫、キゼルは優しいし、出来る子だから」


「だからそれが、、……あぁクソ!! そんなん言われたら何も言えんやろ」


「なになに!! 2人ともどうしたの? 痴話喧嘩??」


 グレンだけが状況を理解していない中、遂にキゼルが動いた。


俺に足りないもの……そうか……そういうことか。


キゼルは云大に向かってゆっくりと歩き出し、腰から垂らしていた紐を取り、彼に投げ渡した。


「ーー俺は人が嫌いだ。魔戎も、変異者(ヘンイシャ)も嫌いだ。弱いくせに、卑劣で傲慢な脳ミソどもが大ッ嫌いだ。……でも、全員がそうではない。中にはいい奴だっている。認めていい奴だっている。お前は、今日のために努力した。認めてもらいたくて必死に向き合った。そんなお前を俺は殺そうとしたーーだから、俺の負けだ」


 キゼルに足りなかったもの。それは、見極める力。そして、思いやり信じること。別に彼の今までを否定するわけではないが、それでも必ずいつかは、信頼し信用しないといけない時が来る。千年は、彼にそれを教えたかったのだ。


 そうして、死者を出すことなく、無事戦いを終えた2人に、千年は拍手しながら歩み寄った。


「お疲れ様! キゼル、気分はどうだ?」


「……何でしょう。なんというか、負けたのに悔しくないです」


「うん! それでいい」


 キゼルの頭を数回撫でた千年は、未だ倒れたままの榮多の側でしゃがみ、


「お〜〜い、聞こえてる? 意識はあるか〜〜い?」


「……あ、、あ、、」


「なんか言ってる。ウケる」


 ギリギリ意識のある云大を見た千年は、そのまま立ち上がり、左手を前に出すと、そこから、真っ黒の霧ががった刀が出現する。


 それを見たグレンは、興奮しながら立ち上がり、


「あれ『宵闇(ヨイヤミ)』じゃん!!  久しぶりに見た! すげぇすげぇ」


その刀を見て、グレンは物凄くはしゃぎ、興奮した。しかし、それは千年の行動を見てすぐに収まった。


「もうこれは助からないレベル。所謂、死にかけってやつだなぁ〜〜。なら変に足掻くより死んだほうが楽だろ」


彼は、抜いた刀を云大の首元に突きつけた。


「まぁあんだけくらって生きているのは大したもんだよ。ナイス生命力! ーーでも、お前は死ななきゃいけない。死んでようやく俺は認める」


 千年は抜いた刀を振り上げ、倒れる云大の首を勢いよく()ねた。


 それを目の当たりにしたキゼルは驚きで動くことが出来ず、逆にグレンは怒りながら千年の下へと駆け寄った。


「おい、、何してんだよ!! あいつは勝ったんだぞ!? それはあんまりだ!!」


 千年の目の前に立ち、怒りを露わにするグレンを見て、彼は笑った。


「やっぱり、お前はいい奴だな。いや、ちょっといい奴すぎるな」


 そういうと、千年は云大同様、目にも止まらない速さでグレンの首も刎ねた。


「怒りの感情は我を忘れさせる。怒りたい気持ちはまぁ分かるけどさ、死んだら元も子もないよ? 冷静だったら避けれたでしょ、今の」


 無造作に転がる2つの死体は、千年が指を鳴らすと、跡形もなく消えた。


 そして彼は、そのまま博士の目の前に移動し、再び刀を振り上げた。


「待てや、斬首はグロいから嫌や。するなら他の殺し方にせい」


 博士の頼みを聞き、彼は刀をしまう。


「本当ワガママだなぁ〜〜。死ぬ前くらい、いい子になれよ」


 そういうと、彼女の胸に手を当て、


「ーー絶戯(ゼツギ) 『虚空(コクウ)』」


彼が触れた博士の胸に、大きな穴が開き、そのまま彼女は倒れた。そして再び指を鳴らすと、博士の死体は消えた。


「ーーさてと」


 千年は、残ったキゼルの前へと再び移動した。

 終始笑みを浮かべていた彼だったが、キゼルの顔を見て、笑顔が消える。


 キゼルは、動くことなく静かに涙を流していたのだ。


「おいおい、お前そんなに情の厚い奴だった?? "清々しました千年様!!"的なこと言うと思ってたんだけど……うん、やっぱりお前も根はいい奴だな!!」


 千年はしまった刀を再び出し、キゼルの首に突きつけた。


 すると、黙って千年を見つめていたキゼルがゆっくりと口を開く。


「……事情はわかりません。でも、意味のないことを千年様はしません。なので1つだけ聞かせてください。俺の死に、あいつらの死に意味はありますか?」


 キゼルのその問いかけに、千年は微笑んだ。


「そう……ですか。あ〜〜ぁ、まだ千年様としたいことが沢山ありました。まだまだ貴方様に仕えていたかった」


 そういうと、キゼルは自ら、突きつけられた刀を首に刺した。


「あなたに業は背負わせません。自分で死にます。

その代わり、最後に1つだけ……生まれ変わっても必ずまた千年様に仕えさせてください。側に置いてください。次は、もっといい従者になりますから」


 そして、彼は首元を貫通した刀をギュッと握りしめ、自らの首を切り裂いた。


 そのまま地面に倒れると、千年は指を鳴らした。


 自分以外いなくなった悲しき空間、彼は天を見上げ、大きなため息を()き、何とも言えない表情を浮かべた。


「はぁ……これでまた強くなれるわけだが、でもあれだな、やっぱ楽しくねぇわ」





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