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KAN NAGI〜〜神様実在、地球に襲来?!  作者: ヤチ ヒトニカ
神々再誕編
15/76

Ep.14 殺しという名の教育



 キゼルと千年(チトセ)は、彼らの拠点である人気(ヒトケ)のない山奥にて、元人外(ジンガイ)対策チーム室長 綾瀬(アヤセ)朱奈(シュナ)から、スウェーデンとイギリスで起きた悲惨な出来事の全貌を聞かされた。


「……千年様、この話を聞く限り、我々が思ってるよりも事態は急を要するのかもしれません」


「そうだな。まだこっちに来て日も浅いし、分からないことが多すぎる。それは奴らも同じだと思っていたが……まさかここまで派手に動くとはな」


 2人の周辺に重くどんよりとした空気が流れた。


刻導(コクドウ)……何かを焦っているのか? こんなにも早く、しかもあからさまな行動を…… うん、奴等らしくない。これは、間違いなく裏に誰かいるな。


「ーーうん、よし! とりあえず博士(ハカセ)、グレンと合流しよう。榮多(エイタ)のこともあるし。色々話さないといけないな」


「そうですね、余り悠長にもしてられないみたいですし」


「じゃあ、朱奈ちゃん! とりあえず今日はここまでで。日も暮れてきたし、送るよ」


「え!? いや、まだ大丈夫です!!」


「ダメダメ!! ほら行くよ」


「千年様、お待ち下さい!! その女と2人きりになるのですか?!」


「え……ダメなの?」


 朱奈を家まで送ろうとした千年に対し、あからさまに「有り得ない」という表情を浮かべたキゼルは、一応気をつかい、朱奈に聞こえないよう、意思伝達(ヴェルシオン)で彼に話しかけた。


《千年様、あなたは王直(オウチョク)頭領(トウリョウ)です。あんなまだ会ったばっかの脳ミ、、人族(ヒトゾク)と2人きりはダメです。絶対に》


《じゃあどうすんの? ずっと一緒に行動するのか? そっちの方が色々とダメだろ?》


《それは……まぁ)


《ならどうする? お前が送ってくれるのか? それはもっと嫌だろ?》


《い……嫌です》


《ほら〜〜俺が送らないとしゃあないじゃん》


《わ、わかりました!! 俺が送ります》


《え……まじ?》


会話を終えると、キゼルは朱奈を物凄い剣幕で睨みつけ、自身の目の前に空間移動(ゲート)を出した。


「おい、脳ミ、、女!! 早く入れ。殺すぞ」


「え……嫌です」


「は!? な、何だと?」


「怖いので嫌です。何されるかわからないです」


「な、え、は? な、」


朱奈に拒否され、あたふたするキゼルを見て、千年は腹を抱えて笑った。


「しゅ、朱奈ちゃん!! いいね君、面白いよ(笑笑)

そうだよね? あんな怖い顔してるやつと帰りたくないよね。あぁおもしろ」


「ちょ、千年様!!」


「キゼル、そんなに怒ってばっかいると、眉間にシワの山ができるぞ! ほら、優しい顔して! お前は男前なんだから、もったいない! ほらほら、早く早く〜〜」


うぅ……こういうときの千年様は意地悪だ。なんで俺が脳ミソに優しくしないといけないん……いや待てよ、そうか、これは試練だ。そうだ、これは千年からの試練だ!! 


先ほどとは一変、キゼルは大きく息を吸い、最高にキメた表情で、


「さぁ、こっちにおいで。帰るよ?」


手を差し伸べ、優しく朱奈に語りかけた。この変わりようには朱奈も、直感的に気持ちが悪いと思ったが、ここで否定的な言葉を発すれば何かヤバイと感じ、キゼルの手を取った。


「では千年様。すぐ戻ります」


いやいや、なにこの変わりよう。おかしいだろ!! どんな解釈したらそんなに変われるんだよ。


「わ、わかった。き、気をつけてな」


 2人は(モヤ)の中へと姿を消した。


 残った千年は、地べたに寝転がり、天を眺めながら、3人が戻るのを待った。



************************



       〈5日後 榮多(エイタ)云大(ユウダイ)宅〉



 まだ朝の4時。だと言うのに、目が覚めてしまった榮多は、徐にテレビのリモコンを手にした。

 そして気がつく。自分の手がブルブルと震えていることに。

 それが、妙に面白かったのか、持ったリモコンをテーブルに置き、テレビをつけることなく、彼は笑みを浮かべながら、1人とは思えない声で話しだした。


「寝たのに寝た気がしない。何かふわふわする。疲れてんのか? 手も震えてる。あぁそうか違うな、俺はビビってるんだ。今日……死ぬからな」


顔から笑みが消えた彼は立ち上がり、ゆっくりとトイレに向かって歩き出した。


トイレに着くと、便座にではなく、何故か床に膝をつき、


「オェ゛ェ゛ェ゛」


森で、千年たちと会って以降、彼は毎朝のように、前日に口にした物を全て出す程に吐いていた。


起きて、ぼぉっとする度に、自分の死ぬ姿を想像してしまう。

こんなにも自分に死が迫ることが怖いことなのか、そして恐怖とは、こんなにも気持ち悪いことなのか。


 彼は弱冠(ジャッカン)21歳にして、命の大切さと、死に対する、これとない恐怖を悟った。


 彼はトイレから戻ると、体を震わせながら布団に潜り、現実逃避するかの如く目を閉じた。



ーー5時間後



 テレビから流れる賑やかな声で彼は目を覚ました。

ゆっくりと体を起こし、テレビを注視する。


「あれ……俺テレビ点けたっけ」


 目を擦りながら、自然と体を伸ばした彼の鼓膜を、テレビから流れる声とは違う、背後から聞こえる男の笑い声が刺激した。

 その瞬間、脱力し伸ばしていたはずの体が一気に強張る。


 恐れながらも、彼はゆっくりと後ろを振り返った。

そこには、ソファーで寝転がりながら、チップスを頬張る千年の姿があった。


「面白いなぁ。『クセがすごい!!』。どういう意味なんだろう。ウケる。てかてかこれウマ!! チップスだっけ? やばい、ハマるーーお? 起きた? おはよう。気分はどう?」


 自分の家かのようにくつろぎ、友達のように話しかける彼に、何故か少しだけ気が楽になった。


「あんたのせいで災厄だ」


「そう、それは何より」


 千年は起き上がり、チップスを食べた指を舐め、ティシュで手と口を拭く。


「そろそろ行こうか。準備はいいかな?」


 榮多は勢いよく立ち上がった。拳を強く握り、歯を食いしばり、覚悟を決めた。


「うん、いい面構えだ」


 千年は榮多の前に立ち、


「じゃあ行くよ。君の今後を左右する場所へ」


 千年は彼のおでこを優しくこづきながら、何かを口ずさむ。すると、彼の意識は飛び、そのまま背中から倒れた。


「さぁてと、精々頑張ってくれよ"元"人間」


 千年は、倒れる彼から少し距離を置き、


「"現世(ゲンセイ)殻置(カラオキ) 常世(トコヨ)命宿(メイシュク) 拒み与えず身を明け渡せ" 従操(ジュウソウ)ーー『神域(シンイキ)』」



************************



〈場所:??〉



 気絶してから約1分。彼の目蓋はゆっくりと開いた。


「ーーあれ、何してんだ俺。あ、そうか。あの男に頭を触られて……ダメだ、そっからの記憶がない」


 仰向けの状態で、意識がふわふわとしていた彼は、とりあえず起き上がり、辺りを見渡した。


「な、、なんだここ……。なんもねぇ」


 起きてすぐ、彼は部屋の異変に気がつく。


 そこは、上下・前後左右、どこを見渡しても、物ひとつない真っ白な空間。さらに不思議なことに、壁や天井といった仕切りがなく、あるのは自分が今尻をついている床ただそれのみ。(床すらも目で見えない)

 どこまでも果てしなく続いているこの未知の空間、それを目の当たりにした彼の全身に、感じたことのない悪寒が走った。


だがこれが逆に、榮多云大という男の気を楽にさせた。


「あぁバカらしい。そうだよ、わかってたことじゃねぇか、連中は化け物だって。遥か格上、死ぬ前提。恐れる必要はねぇ。俺は俺でいい。さぁきやがれ! ジャイアントキリングだ!!」


 彼の準備も整ったところで、ようやく千年たちが姿を見せた。


「何か気合入ってるじゃん。いいねいいねぇ。その方が見応えがある」


「アホか。どないに気合い入れても無意味や。弱い奴ほどなんとやらや」


「でもあんだけ威勢がいいと、逆にキゼルがビビってんじゃね? なあなあ」


「黙れグレン。あいつの次はお前だ」


 榮多から少し離れたところに、グレンと博士は腰掛け、キゼルは云大の目の前に立つ。


「おい脳ミソ、死ぬ準備はできたか?」


「死ぬための準備なんかしてない。お前に勝つための準備をしてきた」


「勝つ? そうか、なら威勢だけはいいお前に良いことを教えてやる。この場所は千年様が用意してくださった俺ですら来たことのない『神域(シンイキ)』だ。つまり、俺の初めて且つ楽しみだったことを、お前如きカスと共有しているということになる。それがどういう意味かわかるか? 俺にとって、これ以上とないほど屈辱で不快ってことだ。でもまぁ、そう感じるのも今だけ。数分後にはお前のことなど誰も覚えてない。安心しろ、"ちゃんと"殺してやる」


前傾姿勢で、今にも手が出そうなキゼル。

それを止めるかのように、彼と榮多の間に千年が入る。


「こらこら、まだ始めちゃダ〜〜メ」


「すみません」


「じゃあルール説明の前に、確認事項がある。榮多が勝利した場合、俺らの元で修行する。これに異論はないかい?」


「はい!!」


「うん、いい返事だ。キゼルもそれでいい?? てか、キゼルが勝った時はどうする? 何がいい?」


「自分は特にないです。こんなのに勝っても勝ったのうちに入りませんから」


「ふぅ〜〜、言うねぇ〜〜。おっけ、両者合意ということで、じゃあルールの説明をします。

まず時間は無制限。榮多の勝利条件は、キゼルの腰にぶら下げてある"紐"を取ること。逆にキゼルの勝利条件は、相手を戦闘不能にすること。生死は問わない。以上だ、質問は?」


「ありません」


 余裕のキゼルに対して、榮多は手を上げ、


「さすがにそれは簡単すぎだろ? 」


「自惚れるな。お前如き、俺に触れることすらできない。なんなら『俺に触れたら勝ち』にルールを変えてやろうか?」


「まぁまぁ、お前がすぐに紐を取れるならそれはそれで面白いし、とりあえずルールはこのままで。いいね?」


「わ、わかりました」


なんだよ、ただのゲームかよ。紐とったら勝ち? 流石にそれは舐めすぎ。結構、イラッとしたわーーやってやるよ。いまに見とけ、吠え面かかせてやる。


 千年には挑発の意図は全くないし、ハンデを与えたつもりもない。だが云大からしてみればただの屈辱。

 ここに来て、初めて彼らに対して"怒り"が芽生えた。


「じゃああとは好きに頑張ってくれ! 健闘を祈る」


 そんな榮多の心情など気にも留めず、千年は博士たちの横に移動し、腰掛け、声高らかに


「ではーー始め!!」


 その合図と同時に、云大は後方へ飛び、キゼルからかなりの距離を取ると、大きく腕を振りかぶった。


先手必勝!! まずは意表を突いて、体勢を……


 しかし、榮多は攻撃をやめた。なぜなら、目の前のキゼルが、止まれの意思表示=手のひらをコチラに向け、


(ハヤ)るなゴミが。考え事をする、少し待て」


 別に止まってあげる必要もなかったが、なんとなく彼は攻撃をやめた。


あれは一体どういう意味だ……千年様は俺にどうしろというのだ。


 キゼルは迷っていた。それは、千年が榮多の家に行く前のこと。彼は、キゼルを呼び出し、



〜〜〜〜



「今日は、お前がやりたいようにやれ。俺は特に指示は出さない。だから殺したければ殺せ」


「はい、そのつもりです。"元からこの世界に存在してなかった"と皆が錯覚するほどに、跡形もなく消し去ります」


うわ……怖ッ……。


「わ、分かった。好きにしてくれ。だが1つだけ、課題を与える」


「課題……なんでしょうか?」


「ーー"グレンにあって、キゼルにないもの"。この戦いでそれに気づいてほしい」


「はい? 千年様、御言葉ですが、俺があのグレン(バカ)に劣ることなんか1つも、、」


「それに気づければ、キゼルは更に強くなる。期待してるよ」



〜〜〜〜


 

 キゼルはこの言葉の真意をまだ理解できていなかった。


グレンにあって俺にないもの? そんなのあるはずがない……と言いたいところだが、千年様が言うのだから間違いない。何だ、俺にないもの……クソっ、全くわからない。


「おい! もういいか? さっさっとやろうぜ!! あ、もしかして怖気付いたか?」


 その呼びかけに、眉間にシワを寄せ、怒りを露わにし、


「はぁ……今のは許してやる。だが次はない、脳ミソの分際で2度と俺に命令するな」


 自分に向けられたとてつもない殺意。少し前で有ればこの時点で既に怯んでいただろう。だが、彼は覚悟を決めた身。その殺意を跳ね返すかのように、力を振るった。


「じゃあテメェも俺に命令すんな!!」


 重心を下げ、右腕を振りかぶり、キゼル目掛けて思いっきり力を放った。


 それは、拳から目に見える圧を放ち、周辺を吹き飛ばした。


 彼が以前、千年に使ったときのよりも明らかに強化され、威力の増したパワーだった。


よし、いい感じ!! 俺は弱い、だからとにかく殴るの手数勝負。それしかない!!


 手応えを感じた彼は、さらに後方へと飛び、今度は逆の腕に力を込め、先ほど同様、力の限り振りかぶった。 ……だが、なぜか彼は動きを止めた。

 いや、なぜかではない。動揺・恐怖、それらの感情が一気に昂ったからこそ、彼は動きを止めた。


「どうした? なにしてる? 打たないのか?」


 確実に距離を取ったし、数回のマバタキ以外、彼から目を離していない。

 なのに、キゼルは榮多の目の前で顔を突き出し、物凄い剣幕で彼を睨み付けていた。


「バ……化け物が」


なめていたのは自分の方だ。紐をとるだけ? 簡単なこと? 違うだろ、相手は化け物だ。そもそも土俵が違う。ナメクジが走ってもチーターには勝てない。


 "敗北"="死"が彼の脳裏をよぎる。しかし、彼の生物としての防衛反応はまだ死んでおらず、拳に溜めていた力が、キゼルとの距離を取ろうと、無意識に発動しようと動いた。


 だが、残酷にもそれが放たれることはなく、全身に"ビリビリ"と電気のような何かが走ったと同時に、意識が遠のきながら彼は膝から崩れ落ちていた。


あれ……何で……俺膝ついてんだ。つうか体動かねぇ……


 自分の今の現状が全く理解できていなかった榮多は、ただ膝をつき呆然としていた。


 そんな彼を、キゼルは真正面から見下ろし、


「なにしてる、早く立て。俺に喧嘩うったんだ。簡単には殺さない。言ったろ? 命に感謝することになると。どうだ? 生きたい、死にたくない、そう思ってきたか? ほら、早く立て」


 普通の人間であれば、幾ら彼が手加減したとはいえ、間違いなく死んでいる、もしくは戦意を失っているであろうこの状況でも、榮多は立ち上がる。


「ダメだ、あんた目の前にするどうも弱気になる。

自分が自分じゃねぇみたいに、情緒がイカれるーーそれでも、俺は死ねない。死にたくない!! 自分に可能性を感じるし、あんたらとなら、もっともっと強くなれる。だから何としてでも勝つ。そして、お前らに教えを乞う。諦めねぇ。これが俺の本心だ!!」


 榮多のその姿に感銘を受けたのか、千年は離れた場所から拍手を送った。


「素晴らしい!! 肉体と心が全く追いついていない、動揺と恐怖で正気ではない、普通なら泡吹いて意識が飛ぶか、死んでる。なのにお前の灯火は未だ消えない。それだよそれ、その気持ちこそが何より大事なんだ! お前には根底の強さというものがある!! キゼル、指示は出さないと言ったが、前言撤回。ちゃんと相手をしてやれ。いいな?」


「ーーわかりました。……よかったな脳ミソ、千年様に褒められて。……よかったな脳ミソ、俺を本気で怒らせることができて」


 今までの殺気とは明らかに違う、体を貫かれるかのような殺意。


 そして、その殺意は感じたことのない"異様な何か"に変わる。


「ーー『霳鳴霅(リュウメイトウ)』」


それは、体感でいうと、目の前に大量の落雷。キゼルの全身を覆うように、「バチバチ」「ゴロゴロ」と、凄まじい音と威力の雷が流れた。

 

「ーー俺が心の底から嫌悪する脳ミソっていう生き物はな、死んでやっと弱さと命の有り難さってやつを知る。生きてたらダメだ、死ななきゃな。じゃないと、お前ら脳ミソは、一生俺をイラつかせる。だから、今からお前にするのは、到底理解も出来ず、思考も追いつかない、死んで完成する、殺しという名の教育だ」


 本気の神通力(ジンツウリキ)が榮多を襲う。


















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