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魔導師転生-2

途中で書き飽きた作品を載せてます

もし反響とかあれば続きを書かせていただきます

「この世界の名はムーメウティア。あなたが暮らしていた世界とは全く異なる時空軸に存在している。私はこの世界の唯一神として君臨している偉大な存在よ」


ムーメルは胸を張って誇らしげに語る。


「そんな偉い神様がなんで俺なんかを呼んだんだよ? 」


「それはね...あなたが私の好みドストライクだからよ! その全てを映しているようで何も映してないような濁った眼、痩せ型な肉体の中に隠した屈強な筋肉、幼さと大人の雰囲気を両立させたキューティクルな顔もう最高よ。今まで何人かの人間を見てきたけどあなたほどの逸材はついぞ現れなかった。何がなんでも私の側に置きたい...そしてゆくゆくは私の跡を引き継いで神としてムーメウティアに君臨してほしいの」


ムーメルは不気味に顔を歪ませ瑛羅の上から下を見る。真っ黒い瞳に一瞬だけ光が宿るがそれは妖しく光ってすぐに消えた。ニタァと笑う口の中で鋭い歯がギラギラ輝いた。言い知れぬ恐怖で背中に冷たい物が張り付いた感覚に陥り慌てて背中をさすった。その様子を見て愉快そうにくすくす笑うムーメル。


「でもね? 一番惹かれたのはここよ」


ムーメルは瑛羅の右胸に手を添えた。まるで心臓を抉り出されそうで鼓動が高まる。体も完全に凍りついてしまった。眼下ではムーメルが胸に耳を当ててうっとりした表情を浮かべている。吊目と口角を半月型に持ち上げて殊更恐怖に身が凍る。知らぬ内に歯がガチガチ鳴り響いていた。なぜこんな小さい子にこれほどまでに恐怖を覚えるのかもはや理解の範疇を越えていた。


「感じるわあなたの心の闇が。生前はさぞ生きづらかったでしょう。あなたは誰にも理解されずに孤独に生き、最期は犯罪者して命を絶たれた。ああ、なんと不幸なの。でも大丈夫よ。私はあなたを受け入れる。あなたはもう一人じゃないから安心なさい」


ムーメルは彼の背中に手を回し優しい声を耳に届かせる。一方の瑛羅は彼女の言葉の意味の理解に追われていた。

心の闇とはなんだろうか?

産まれてこのかた自分の中に闇の欠片も感じたことはない。ただ自分の正義と忠義に従い生活していた。いわば光で満たされた存在であり、誰もが自分のことを荒廃した世界に舞い降りた救世主だと敬っていたのだから。

そう思い込んでいるから彼は犯罪行為に躊躇いを持たなかった。

餓えに苦しむ人がいれば近くの食料店から堂々と万引きし、踏み切りで立ち往生をしている車を見つければ線路に石を敷き詰めて電車の往来を妨害したり、少年時代には引きこもりの友人を助けるためにクラスの全員で彼の自宅に押し寄せエールを送らせもした。そのクラスメイトの中に、いじめで少年を引きこもりに追い込んだ犯人も大勢いた。結果、少年は自殺した。

その他色々、彼は悪意なき罪を重ねていき社会からも家族からも断絶していった。


「俺は一度として罪など犯していない。誰かの笑顔を守るためにやるべきことをしてきたまでだ。ムーメル、お前の言う心の闇ってやつが俺には理解できない」


「そのために大切な人や物を失ったこともあるでしょう? その時なんにも感じなかった? 」


「何かを成し遂げるには犠牲は付き物だ。何度か、助けた人物や第三者から絶縁を迫られたが仕方ない。人生は一期一会、出会いがあれば必ず別れは訪れる。また新たな出会いを見つければいい」


「素晴らしいわ。やっぱり最高よあなた。あなたみたいな芯がテコでも動かない人間を待っていたのよ。これは運命とさえ言えるかも。瑛羅、私はあなたにどこまでも着いていくわ。離さないからね」


瑛羅は無邪気に声を弾ませるムーメルに愛着が湧いてきた。なぜか妹に幻視してしまうのだ。彼は幼い頃、まだ新生児の妹にデザートのアイスを棒ごと飲み込ませ窒息死させてしまった。彼女がアイスを物珍しそうに見ていたから分けてあげようと考えたのだ。それ以降、大好きなアイスが彼の前に現れることはなかった。


「...! 瑛羅くん危ないっ」


ムーメルは力強く瑛羅を押し倒す。頭上を一本の矢が突き抜け、背後の木に突き刺さった。矢は衝撃で振動したがやがて収まった。


「ちっ外したか」


茂みから出てきたのはゴブリンであった。しかも一体ではない三体四体と姿を現してくる。小柄ながら醜悪な顔をした緑の生物は下劣に笑いながら二人を囲んで見下ろしている。


「なんだぁお前? 見たことない種族だなぁ」


ゴブリンの一体が瑛羅を睨み付ける。邪悪に歪んだ瞳の中に瑛羅が移る。彼はガチガチ震えていた。


「お前たち一体何のつもりだ? 今すぐ立ち去るがいい」


「これはこれはムーメル様。神の座から引きずり下ろされた負け犬がこんな所で何を? ここは我らゴブリン族の縄張りですから闖入者がいれば撃退するのが当たり前では? 」


ゴブリンたちは一斉に笑い出す。ムーメルは歯を軋ませ悔しげに俯く。短い付き合いだが瑛羅はこんな彼女は見たことがなかった。何か思い当たることがあるのであろうか?


「どう言うことだ? ムーメルはムーメウティアの均衡を守る神様じゃないのか? 」


瑛羅の言葉にゴブリンたちは更に大きな声で笑いまくった。その声量は木の葉を揺るがすほどに響く。

ムーメルは耳を塞いで踞っている。小さな声でやめろやめろと何度も呟きながら。だが無情にもゴブリンの一体が真実を話す。


「そこにいる女は神でもなんでもねぇ。賢者に神としての力を剥奪された上に魂を剣に封じ込められた哀れな存在だ。今の姿は剣を媒介に作り出した分身に過ぎない」


自らの恥を晒されプライドをズタズタにされた彼女の姿を見たゴブリン勢は実に愉快げに口角を吊り上げている。


「お前ら。いい加減にしろよ」


瑛羅はムーメルの前に立ちゴブリンたちを睨み付ける。そのあまりの気迫に冷や汗を垂らして一歩退く。だが瑛羅の怒りは収まらず手前にいたゴブリンの頭を鷲掴みにすると後頭部を勢いよく木に叩き付けた。ゴキゴキと骨が砕ける音が周囲の空気に伝播する。ゴブリンは白目を向いて口からブクブクと泡を吐き出して倒れた。瑛羅はその背中を幾度も踏みつけると、ゴブリンは血の泡で口元を汚して絶命した。その間わずか一分弱。


「来いよ。俺が相手してやるよ」


さっきまで怯えていた青年はいない。いるのは正義のタガが外れた狂戦士だけ。彼はローブに隠れたムーメルの頭をそっと撫でた。それから数分後、その周辺には夥しい血が飛び散るのであった。

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