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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第二章 おつかい騎竜
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9.固有能力

 うーん。


 この2週間。

 自宅で謹慎していた僕は、能力(スキル)の検証をしていたんだけど――


 うーん。


 結論から言うと、能力(スキル)が発現する兆しが全くない。

 謹慎明けの今日は朝から他の人に色々聞いてみたんだけど。


『私はエルダーラプトルだから、固有の能力は無いわ。父竜(お父さん)に聞いてみたら?』


『はっはっは。リーフェスト。考えるんじゃ無い。そうだ、感じるんだ。耳を澄ませばお前にも聞こえてくるだろう? この内なる声(マッスルボイス)が。世界に溢れるその魂のさけ――おい!どこに行くんだリーフェスト――』


『ワシも若い頃は雷帝の再来と呼ばれた身。雷術だけでなく、水術や光術も使えるぞ? ん? ゼノ? 何じゃそれは。ワシには若者言葉は分からん。若者言葉と言えば、ワシの若い頃は――』


『水術と空術なら――』


『畑で寝そべって――』


 うーん。


 やっぱり参考にならないね。一部論外の人もいたし。


 こんな時は、やっぱり年の功かな?

 僕は村の長老を訪ねることにした。


『ちょぉーっ! ろぉーっ!』


 長老の住処の前で大声で呼び掛ける。

 長老はノルアじいちゃんよりも遥かに年上。

 耳もものすごーく遠いのだ。多分ユニィの村より遠いんじゃない?


『なんじゃ? ――ん? リーフェストか? どうした? ――おやつか? さてはおやつ狙いじゃな? ――ん? なんじゃ違うのか?』


 いや。おやつ狙いなわけないでしょ。何言ってるの長老。


『違うよ! 能力の使い方を聞きにきたの! の・う・りょ・く!』


『ようかん? ほう。渋いのう』


『そうじゃないよ! の・う・りょ・く! だってば。あと、お茶も一緒にお願いね!』


『おーっ。わかったわかった。まぁそんなところに立ったままというのもなんじゃ。早う上がれい』


 僕は長老の住処に入る。長老の住処は崖の下の洞穴だ。夏は涼しく、冬は暖かい。ついつい入り浸りたくなる場所だ。決しておやつ狙いではないのだ。


『トメさーん。緑茶じゃ。緑茶が欲しいんじゃと。あと、ついでにようかんも頼む』


『何度言ったら分かるんですか。私はターナですよ。ターナ。トメさんは20年前に亡くなりましたよ。――あら、リーフェストちゃんいらっしゃい』


 ターナさんはこの村では数少ない人族――犬型の獣人族で、長老のところのお手伝いさんだ。毎度のことながら苦労してるみたい。因みにだけど、長老ではなく、他の(ひと)と友誼を結んでいる。

 トメさん? そっちはよくわからない。

 何はともあれ、ようかんとお茶は美味しくいただこう。



 ようかんを頬張る僕を見ながら笑顔を浮かべていた長老の顔が、不意に真剣になる。

 なんだろう。僕のようかんの方が、2mmぐらい厚かったのに気付いたんだろうか?

 これは僕のだよ。


『ところでな、リーフェスト。先程の問い掛けじゃがな』


 長老は僕から目を逸らすと、申し訳なさそうな口調で告げる。


『許せリーフェスト。ワシも緑茶には詳しくないんじゃ』


 やっぱり聞こえてなかったんだね。知ってたけど。



 ――――――


『クラス固有の能力の発動の仕方か。なるほどのぅ』


 何度も繰り返し説明した甲斐があり、ようやく伝わったようだ。

 僕は長老の言葉に耳を傾ける。


『ふむ。まずは我々の特徴でもある、進化。これら進化種(クラス)毎の固有の能力は特性スキルと呼ばれる。これは知っておるな?』


 僕は頷く。ユニークスキルが個人の能力。特性スキルがクラス固有の能力。

 この事は父竜や母竜から聞いているし、何なら長老も良く言っている事である。


『特性スキルはの。『キーワード』を念じることで能力に応じた技や術が発動するのじゃよ。例えばほれ。特性スキル「火術」なら「炎熱牙」とか「ファイア」とかの。一般的には、一つの特性スキルに、複数の『キーワード』が存在しておるの』


 そうだ。そこまでは僕にも理解できている。ユニークスキルも同じだからだ。例えば、いつも見ている進化樹の表示は「ツリー」が『キーワード』となっている。だけど――


『その『キーワード』はどうやって調べるの?』


 例えば、「進化樹」のユニークスキルはもの凄くレアではあるけど、唯一無二というわけではない。だから――


『ふむ。それらは普通であれば、先達より学んだり書物や口伝にて伝えられるものじゃ。半ば伝説となっているものもあるのぅ。まぁ、普通であればの』


 そうなのだ。今の悩みはリトルゼノラプトルの能力――特性スキルがわからない事なのだ。

 誰も進化したことのないクラス。当然その技や術どころか、それが司る能力すらも不明なのである。


『あるいは――』


 でも、長老は僕の顔を見た後、僕の頭の後ろを見るように目線を動かした。

 ――あるいは?


『自ら感覚的に『キーワード』を掴むものもおるのぅ。まぁ、一種の天才かもしれんがのぅ』


 それは無理です。長老。僕にはあんなの(筋肉交信)は無理です。

 僕は視線で訴える。ツノうさぎに睨まれた野ネズミの目だ。

 そんな僕の目に答えるように長老は頷き、続ける。


『そうじゃな。こういう場合はな。ちょっと待っておれよ』


 そう言った長老の瞳が鈍い銀色に輝く。長老の特性スキル――『積層知識』だ。僕ら子竜達は知恵袋って呼んでるけどね。

 瞳の輝きが消えたと同時。その言葉が長老の口から漏れた。


『鑑定――スキルの『鑑定』を持つものであれば、お主の特性スキルの『キーワード』もわかるじゃろう』


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