表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第三章 若葉
86/308

83.帰省

第6エピソード本編の前に2話挟みます。

「あっ! おねぇちゃんだ! それにキュロちゃんも!」


 家の前で遊んでいたユニィの妹――ソニアが元気な声で出迎えてくれた。



 僕達は今日――ユニィの家に来ていた。


 それというのも、昨日の夜に鬚じいちゃんが「休みにするぞ」と突然言い始めて、仕事が1週間お休みになったからだ。

 あまりに突然なので、お休みの理由を鬚じいちゃんに聞いたんだけど――「ちとばかし用事ができてのぅ」と言うだけで、理由は教えてくれなかった。


 ――まぁ、理由は良く分からないけど、お休みはお休み。

 折角の長期休暇なので久しぶりに帰省することにしたのだ。



 ソニアは駆け寄ってくると、首を横に傾けて目を大きくさせた。


「あれ? キュロちゃんがもうひとりいる!? うーんと――」


 そう。今日はサギリも一緒に来ているのだ。

 契約もしたんだし、一度は家族とも顔を合わせておかないとねって事らし――


「そっかぁ。キュロちゃんのお嫁さんだね!」

『何言ってるのソニア! そんなわけないでしょ!』


 ソニアがとんでもないことを言い始めたので、反射的に否定した。

 だけど――


「キュロロッロ――って、合ってるよ――かな? やった!」

『そうじゃないよ! ユニィも笑ってないでちゃんと訂正してよ!』


 言葉が通じないって大変だ。



「――そこで私の――ケージの術を――」


 ――向こうでユニィがソニアに説明(熱弁)している間、サギリが話しかけてきた。


『なんだか面白そうな妹さんね。あんな妹がいたら毎日楽しいでしょうね』


 ――うーん。そうかなぁ。どっちかというと大変そうだけどなぁ。


 僕がそんなことを考えている間に、サギリがソニアを見ながら続けた。


『――ところで、キュロちゃんて何かしら?』


 その問い掛けは、あまりに自然だった。

 だから考え事をしていた僕は――何の警戒もなく自然に答えてしまっていた。


『もちろん僕のことだよ――痛っ!』


 答えたと同時に、尻尾でバシバシ叩かれた。

 ――何で僕が叩かれなければならないんだろう?

 やっぱりサギリは理不尽だ。



 そうやって騒いでいると、家の中からユニィの母親――アリアさんが現れた。


「あら。リーフェ君いらっしゃい」


『こんにちはー』


 僕は挨拶を返す。

 例え僕達の言葉が理解できなくても、挨拶は基本だ。

 それに言葉が通じなくても、何を言っているかは大体(ソニア以外は)わかるものなのだ。


「あら。こちらはどなた?」


 だから――アリアさんの問いに、サギリが前に出て頭を下げた。


『初めまして。サギリです。よろしくお願いします』


「あらご丁寧にどうも。――ユニィ。こっちに来て!」


 アリアさんに呼ばれてユニィがこっちにやって来る。

 そして、アリアさんはユニィと二言三言――小声でやりとりした後に続けた。


「そう。サギリさんって言うのね。こちらこそよろしくお願いします。そそっかしい子なんですけど――悪い子じゃないので、よろしくお願いしますね」


 アリアさんが頭を下げた。

 サギリがまた頭を下げた。


 僕もついでに頭を下げてみた。ただ――何となく。

 気付くとソニアも頭を下げていた。多分――僕と同じ。



 ――――――


『それじゃ行ってきます!』


 翌朝

 今日の目的地は脚竜族の村(レスタ)

 僕も一度自分の家に寄るつもりだけど――メインはサギリの家に行くことだ。


 なんでも、ユニィがサギリの家族に挨拶したいらしい。

「今度こそ」って意気込んでいたけど、前に何かあったっけ?



 ――走ること40分。

 丈の高い草むらの向こう、三ツ山の方角に――早くも村が見えてきた。


 以前と比べると、随分早く着くようになったと思う。

 まぁ僕も成長して速くなったし、今日のユニィはサギリに乗ってるからね。

 当たり前と言えば当たり前――かな?


 そんなことを考えながら、村の門を抜ける。


『それじゃ、ふたりともまた後でねー』


 僕はそのまま、何食わぬ顔でふたりから距離をとった。


 ――頑張ってね。ふたりとも

 だって僕、サギリの父竜(おとうさん)はちょっと――いや、かなり苦手なんだ。



 ――――――


 ――どうだった?


 僕はその言葉をすんでのところで飲み込んだ。

 僕の家に来たユニィの、疲れ果てて俯く顔。その顔だけで全てを悟ったのだ。

 ――いや。()()()()()だったんだろうけど。


 何だか、ユニィの横でサギリが申し訳なさそうな顔をしている。

 ――やっぱりそうだ。


『あの(ひと)も悪い(ひと)じゃないんだよ』


 だから――僕はフォローをいれておくことにした。


『ちょっとだけ。ほんのちょーっとだけ無口で強面。ただそれだけなんだ』


 10分ぐらい喋ってて一言二言しか返事がないこともあるけど、特に悪気はないんだよ。

 頬に傷はあるけど、魔物と戦った勲章なんだよ

 目つきが鋭いけど、それは生まれつきなんだよ。

 ――多分。


 僕はそれを一言で表現した。


『だから――気にしちゃ駄目だよ』


 ユニィが顔を上げた。


「そう――なの? そうだよ――ね。15分はお互い無言だったから、てっきり嫌われたのかと思ったけど――ただ無口なだけだったんだよね!」


 ――うん。

 いくらなんでも、15分無言は長すぎだと思う。


 サギリに視線を送ってみたけど、返ってきたのは首を横に振る動作だけだった。



 うーん。

 本当、何の挨拶に行ったらそうなるんだろう?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ