68.胸を張って
今回はユニィ視点&マーロウ視点です。
短めです。
一つ。ため息を吐く。
今日、リーフェの所に研究者を名乗る人物――ノルディスさんが訪ねてきた。
随分変な人だったけれど――脚竜族の研究者としては有名な人みたい。
リーフェのクラスの珍しさとか、リーフェの『進化樹』のスキルとかに感動して帰っていった。
とっても嬉しかった。とっても誇らしかった。
そして――とても寂しかった。
何だかリーフェだけが先に行ってしまいそうで。
何だか私だけが取り残されそうで。
だからかな?
思わず「駄目」なんて言っちゃった。
それに――
ううん。
こんなこと考えてちゃ駄目だよね。
今は足手まといかもしれないけれど――
私もリーフェに負けないように。
いつかきっと――胸を張って契約者と言えるように。
次の安息日は――そう。
ロゼさんに王国北西部の道路や地形を教えて貰おうと思う。
できれば『測位』のスキルも教わりたいけれど――
そういえば、普通にスキルを習得しようとすると、どのぐらい掛かるんだろう?
今度、ジョディさんに聞いてみようかな?
――――――
脚竜族が居るのは村だけとは限らない。
当然だが、人族の多く住む町にも脚竜族は住んでいる。
彼らの大半は若者だが、中には老年の脚竜族もいる。
彼らは村の長老達と比べて歴史には疎いが、その代わり情報網が広く他では得られない情報を持っているのだ。
――俺は今。
王国北部に位置する人族の町――名前はシュ何とかだ――を訪れている。
だがしかし――この人混みは何だろうか?
冒険者ギルドや運送ギルドといった、脚竜族の集まりそうな場所を目指しているのだが――通りに人々が溢れていて、なかなかギルドにたどり着くことができない。
しばらく戸惑っていた俺だが、疑問はあっさりと解けた。
街行く人々の幾人かが「ぎんかんさい」という言葉を発していたのだ。
祭。
つまりは――何らかの祭りが開かれているということなのだろう。
俺は人混みに流されるように道を進み、やがて――広場へとたどり着いた。
その広場も多くの人で賑わっていたのだが――俺の目を引いたのは広場の中央辺りに聳え立つ石像だった。
10m程の高さの――人族の女性の石像。
その右手には杖が握られ、左手には書物が握られている。
その佇まいに。その視線に。何故か興味を持たされたのだ。
――やれやれ。
気になったことは調べずにはいられない。己がことながら困った性分だ。
俺はその石像の詳細を確認するため、広場の中央部分へと近付いていった。
石像へと近付くに従い、人の壁は薄くなる。
そして――視界から隠れていたそれが姿を現した。
『――これはリーフェにも伝えないとな』
そこに続くのは女性に向け跪く男の石像。その眼前の台座には冠が乗っている。
――いや。問題はその男の服装だろう。
これから式典にでも出るかのような正装。
左目に掛かる片眼鏡。
傍らに置かれた杖と円筒形の鍔付き帽子。
ああ恐らく――この石像が示すであろうこの場面においては、何の違和感もないその服装。
そして――町でも村でも荒野でも。
かの童話の中の主人公が纏い続けた、奇異なるその服装。
俺は運送ギルドを目指し歩きだす。
運送ギルドならば――仮宿にもできることだろう。
――この町にはしばらく滞在することになりそうだ。
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