表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第三章 若葉
68/308

65.用途

『ありがとうユニィ』


 無事ナイフを手に入れた僕は、ユニィと一緒に運送ギルドへの道を歩いている。


 値札を見た時にはどうしようかと真剣に悩んだんだけど――無事に手に入ってよかったよかった。

 僕は革紐付きの鞘に入ったナイフを見ながら、思わず笑みを浮かべる。


 交渉の結果、お小遣いの前借りという形でユニィに出してもらえた。

 これでお小遣いなしの期間が延びてしまったけど――()()関係ない。


「ところでリーフェ。そのナイフ何に使うの?」


 ユニィが尋ねてくる。まぁ当然の疑問だよね。


『もちろん。採集に使うんだよ』


「何の?」


 ――うん。

 誤魔化そうとしてみたけど、やっぱり無理だったね。

 こんなところでは話したくないんだけど――

 僕は周囲を見回すと、小声で囁いた。


深山芋(みやまいも)だよ』


「深山芋!?」


『シッ。声が大きいよ』


 ユニィが驚いたのも無理はない。

 深山芋と言えば人里離れた山の奥にしか自生しない植物で、芋は食用になり葉は薬の原料にもなる、とーっても貴重な植物なのだ。

 当然めったに流通しないので、ものすごく高値で取引されている――らしい。


 つまりは、首尾良く深山芋を採取できれば――葉っぱを薬師ギルドに持っていくことで、十分な小遣い稼ぎができるという算段なのだ。

 ――お芋? それ(おやつ)を売るなんてとんでもない。


「そっか。『サーチ』の術があれば簡単に――あれ? でも」


 ユニィが疑問の声を上げる。

 一ヵ月前に検証した結果。その一つを思い出したからだろう。


 ・一つ、知らないものは探せない


 そう。どうやらこの術。使用者の認識によって結果が変わるようなのだ。


 例えば『ユニィ』を探すときは、僕にとっての『ユニィ』は一人だけなので、目の前のユニィだけが光で示される。

 だけど、この前の『銅貨』みたいに同じものがいっぱいあると、全てに反応してしまう。

 逆に『大金貨』みたいに僕達が見たことがないものは、『サーチ』することはできないのだ。


 ――だけど。


『これがあるから大丈夫だよ』


 僕は首に下げた皮袋の中から、ある物を取り出した。


「――茎? そっか、芋じゃなくても良いんだもんね」


『――蔓だけど、そうだよ。ラズ兄ちゃんに分けて貰ったんだ。』


 そうなのだ。芋や葉は高値で取引されるけど、その他の部分に用途(価値)はない。

 この前ラズ兄ちゃんのところに行った時――ラズ兄ちゃんとお花屋巨人さんが、この蔓から芽を出せないかって試していた。

 その時に『これだ!』と閃いて、少しだけ蔓を貰ってきたのだ。



『ねぇ。ユニィも採りに行く?』


「うーん。私は遠慮しておくね。――役に立ちそうにないし」


 ユニィが少し考えてから答える。残念だけど仕方ない――かな?


 ・二つ、位置を示す光は人族には良く見えない


 僕が紫色だと思っていたこの光。

 ユニィにはほとんど見えなくて――光が濃い時だけ何とか見えるぐらいだったし、鬚じいちゃんに至っては全く見えなかった。

 他の人達にも見てもらったけど、多少の個人差はあっても、光が見えるかどうかは種族によって決まるようだった。


 ユニィは、自分で術を使った時にも良く見えなかったから――すごくがっかりしてた。



 でも――


『貴重な芋だから、ユニィにも光が見えるかもしれないよ?』


「うーん。だけど、範囲が広くなるとそれなりの数は生えてるでしょ?」


 ――確かにユニィの言う通りかもしれない。


 ・三つ、光の濃さは探すものの個数に反比例する

 ・四つ、探す範囲は半径1kmが基本で集中することにより広がる


 そう。この術を使った時に現れる光の濃さは、探すものの個数に反比例する。

 1個なら濃い光も、2個なら半分、4個ならさらに半分の濃さとなる。


 深山芋がいくら貴重といっても、そこには見つけるのが大変だという意味も含まれている。

 半径1kmの中には、いくつか生えているはずだし、そうなると光が薄れてユニィには見えなくなってしまうだろう。



 うーん。残念だけど――仕方ないね。

 僕は妥協案を提示した。


『それじゃ――取れたお芋は一緒に食べようね』


「――うん。よろしくね!」


 ユニィの返事は元気だったけど――少しだけ寂しいという感情が伝わってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ