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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第三章 若葉
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61.真意

 ――――――

  ・部屋は5m四方の正方形

  ・天井の高さは10mぐらい

  ・壁にも床にも天井にも出入口は見当たらない

  ・部屋の中央には小さな祭壇がある

  ・祭壇の他には何もない

 ――――――


 ユニィからの手紙の内容だ。


 正直言って――何の参考にもならないと思う。

 きっとこの手紙には、何か手掛かりがあると思ったのに。


 ――僕はそんな風に思ってたんだけど。

 ロゼばあちゃんにとっては違ったようだ。


『この部屋の形は――この遺跡の小部屋と同じね。つまり――』


『つまり?』


『――ユニィちゃんはこの遺跡のどこかに居る()()()()()()ということね』


 ロゼばあちゃんが頷きながら答える。


『でも――私の『スキャニング』で読み取れていない部屋だとすると――密閉された空間かもしれないわねぇ』


 『密閉された空間』――

 僕はロゼばあちゃんのその言葉を聞いて、()()地図を見る。

 そういう目で見ると。怪しそうなところは何ヵ所か――ある。


 T字路の突き当り。小部屋と小部屋の間の不自然な空間。並ぶ小部屋の奥の壁。


 だけど――流石にそれら全てを掘り返して調べることはできない。

 試しにT字路の怪しそうな壁を叩いてみたけど、何も分からなかった。



――――――


『やっぱり見つからないよ……』


 5分もしない内に、僕は涙目になっていた。


 僕達は遺跡探索は専門外。

 それにこの遺跡は発見から随分と経っている。

 素人の僕達に簡単に見つかるような隠し扉なら、とっくの昔に探索者に暴かれているはずだ。


 そんな考えが、先程から頭をちらついている。


 僕はその考えを振り払うように。

 尻尾で闇雲に壁を叩く。――叩く。

 


 ――と。そんな時だった。

 不意に僕の心が――ざわついた。


 ――これは?


 この伝わってくる()()は――ユニィが困惑している? なんで?


『――あ』


 ()()に気づいた僕は、慌てて目をつぶる。

 ――心の奥。その場所を強くイメージする。


 ――あの日。

 ユニィと交わした儀式。友誼の儀。


 その時に生まれた()を。

 今まさに伝わってくる感情を。

 それらを伝えるその()()()を。

 探し――手繰り寄せるために。


 意識を己の内側に集中する――見つからない。集中する――見つからない。集中する――まだ見つからない。

 もっと深く――もっと。


 そしてついに。

 僕は心の奥底に。『楔』の打たれたその場所(深い根源)に――たどり着いた。


 ――だけど。

 その場で確かに感じるその絆には、指向性は見えなくて。


 少し諦めかけていた僕に。そんな僕の脳裏に。


 それは突然に。

 ――()()()()が甦っていた。


『考えるんじゃ無い。そうだ、感じるんだ』


 聞き流していたはずのこの言葉は。


『耳を澄ませばお前にも聞こえてくるだろう?』


 ――きっと何かが引っかかって、心の――記憶の深い場所に眠っていたんだろう。


『この()()()()が』


 そんな言葉が甦る。輝きを放つ。

 目の前が――拓けていく感覚。

 そして――


『世界に溢れるその魂の叫び声が――』


 僕はこの日この時――

 その言葉こそが真理だったって――初めて理解できたんだ。


 ――()()()()()だと思って――疑ってごめん。父竜(とうさん)


 そうだ。

 答えにたどり着くための()()()は。既に僕の手にあったんだ。


 僕は――目を醒ます。

 僕は。その言葉(内なる声)に自分の声を――心を重ねる。


サーチ(座標取得)


 その言葉を呟いた瞬間。

 身体中から冷たい感覚が額に向けて集まる。額から溢れ――周囲に拡がっていく。


 そして――目の前に一筋の紫光の糸が現れた。

 心の奥で繋がる――その絆を辿るように。



 ――――――


『石壁も透過する光なんて――こんな術は初めてね』


 感心するロゼばあちゃんと一緒に、その光の糸が指す方向に向かう。


「おお。どうしたんじゃ? ユニィちゃんはまだ戻って来とらんぞ」


 ――僕達は、遺跡の入口へと戻ってきていた。


 だって――


『この下だよ』


 光が指し示しているのは――

 ユニィが消えた祭壇の。その真下だったから。


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