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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第三章 若葉
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55.気ままに走る

今回は少し短めです。

 ――青く染まる瞳。


「それじゃあしっかり逃げるんじゃぞ」


 その言葉を聞いて――振り返った僕達が見たものだ。


 ――頬を撫でる風。


 空術お姉さんの使った()より強く。激しく――渦を巻く。


 その強さに思わず顔を背けた時。

 僕はようやく――視界に入った()()に気付いた。


『ユニィ行くよ!』

「わっ!?」


 ユニィに声を掛けると同時に、僕は走り出す。

 前を向くと、鬚じいちゃん達は既に走り出していた。


『待ってー!』



 ――――――


 私は後ろを振り返る。


 ――まだ()()()きている。


 リーフェの走る速さに比べたら大した速さではない。

 だけど、私の――人族の走る速さよりは圧倒的に速い。

 そして何より――いつまでも追ってくる。


 振り切ったと思って立ち止まっていたら、すぐに現れる。

 ――目も鼻も耳も無いのに、どうやって追いかけてるの?



 この魔物は水スライムっていうみたい。

 私の村の近くにはいなかった魔物だけど、この辺りでは良く出る魔物――らしい。

 「こんなに大きいのは珍しいんじゃがのぅ」って、シードルさんが言っていた。


 因みに、シードルさん達とは途中で二手に別れている。


 逃げ切れた方が、助けを呼びに町に戻る算段だと思ったけど――

 これだけ逃げてたら、私達がどこに逃げたのか分からないと思う。


 少し不安を感じた私は、ポーチから顔を出す()()に目を落とす。

 別れ際、少しだけ速度を緩めた時にシードルさんから手渡されたものだ。

 首を傾げる私に「追い付かれたら栓を開けて振り掛けるんじゃぞ」って言ってたけれど――中身は何かな?


「ねぇ。リーフェ」


 私はリーフェに声を掛ける。


「まだ走れる?」


『一日中でも走れるよ!』


 リーフェの軽口に――不安な気持ちを忘れて、思わず頬が緩みかける。

 まだまだ――リーフェも私も余裕はあるみたい。


 もう一度。私は後ろを振り返る。



 ――――――


「――あれ?」


 背中から聞こえたユニィの声。

 どうしたんだろう。

 背中のユニィをちらっと見る。


「あのスライム――()()()なってない?」


 ――えっ?


 確認のため、スライムの全身が見えるように弧を描いて走った。


 ――確かに小さくなっている。


 何故かは分からない。

 分からないけど――初めは30mぐらいあった全長が、今では半分ぐらいしかない。

 ここまで違えば、僕の目測能力(おやつメジャー)を使わなくても明らかだ。


 ――あ。


 僕は思い出す。そして――空を見上げる。


『――溶けたのかも』


 思い出したのは、休憩中に食べたシャーベット。

 見上げた先には――降り注ぐ陽光。その源。


『――ユニィ! もう少し走るよ!』


「え? え? どうしたのリーフェ?」


 どうせだし、このまま気ままに走り回ろうかな!








『――ここどこ?』


 当然迷った。



 ――――――


「ただいま……」

『もう駄目……』


 夕刻に差し掛かる頃。

 僕達は運送ギルドの入口に佇んでいた。


「どうしたんですか!?」


 受付にいた猫お姉さんが駆けてくる。


「――帰れた」

『お腹が――空いたんだ』


 それだけ言って――僕達はその場に座り込んだ。




『生き返ったよ!』


 僕は膨れたお腹を前脚でさする。


『おう! 良かったな』

『肉ならまだあるぞ!』

『あら。食べっぷりも良いじゃない』


 昨日仲良くなった先輩達が食べ物をおごってくれたのだ。

 ――その代わりにバシバシされてるけど。


 ――一方、ユニィは。


「そりゃすまんかったのぅ。じゃがの――」


 先程帰ってきた鬚じいちゃんと何かを話している。

 ――一体、何を話してるんだろう?


『そら! ツノうさぎの丸焼きだ!』


 ――僕の疑問はツノうさに負けた。

 おいしかった。


本エピソードは次話までです。

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