48.悩めるふたり
『竜生って、どうしていつもこう――ままならないんだろ』
リーフェが前脚を見ながら、何か呟いている。
先週のあの日以来、リーフェはずっとこんな調子だ。
どうやら、進化したクラスが思ってたのと違ったみたい。
リーフェは『なんか付いてる』としか言わなかったから、どんなクラスなのか良く分からなかったんだけど――
見た目が一回り大きくなったぐらいで、模様とかも前と同じだったのが――ショックだったのかな?
でも、結果的には新しいクラスに進化したみたいだし――サギリさんも『流石リーフェね』って誉めてたじゃない。
そう言って励ましてみたけど――まだ元気が出ないみたい。
ちょっと重症なのかも。
でも今日は――
重要な相談があるから、そろそろ気を取り直してほしいな。
なんて思うのだけど。
『きっと何かあるはずなんだ。きっと――』
やっぱり、もう少し時間が掛かりそう。
今日はもう諦めた方が良いのかな。
――――――
――はぁ。
それを見て、思わず溜め息が溢れてしまう。
今僕が眺めているのは進化樹。
そう、先日僕が進化したあのクラスだ。
『どうしてこんな事になったんだろ』
思い返しても何の心当たりもない。
いや――本当にそうだろうか?
僕は自問自答する。
記憶の隅から隅まで。
それこそ、わずかに残る前世の記憶まで。
記憶という名の箱という箱を全てひっくり返して。
だけど――
やっぱり何の心当たりもない。
僕は悩む。
ただ――悩む。
ああ。
――『エルダーラプトル’』の『’』って、どうやって読むの?
悩みに悩んで――紙に書いてユニィに聞いてみた。
「――『ぴょん』で良いんじゃない?」
目を細めながらこう答えてくれた。
何の感情も伝わってこなかった。
――――――
『ありがとうユニィ。何だかスッキリしたよ』
今まで悩んでいたのが嘘みたいだ。
――ユニィに相談して良かった。
僕は心からの感謝の気持ちを伝えた。
――自分の好きなように読めば良い。
そのシンプルな答えに気づかせてくれたから。
そして――
『ユニィも何か悩んでるんじゃないの? 僕で良ければ何でも聞くよ?』
そう。先程から悩みと決意の気持ちが交互に伝わってきていたのだ。
――『ぴょん』の時以外。
「――うん。――あのね」
ユニィがポツリポツリと話し始める。
『うんうん。それで?』
今日の晩御飯でも明日のおやつでも、何でもどんと来いだよ!
「私ね。リーフェに相談があるの」
――ん? 僕に?
まぁ――草団子以外ならありがたく頂くよ?
僕は目線で先を促す。
「私ももうすぐ誕生日が来て大人になるでしょ?」
――あれ? もしかして真面目な話?
僕は思わず首を傾けてユニィを見る。
『それっておいしいの?』のポーズだ。
「それで――大人になったら村を出ようかなって」
僕は黙ってユニィの言葉を聞く。
「だからね――リーフェにも一緒に付いてきて貰いたいの」
『もちろんだよ!』
僕は迷わず即答した。
だって、まだまだユニィと冒険したいし、何より僕達はパートナーだからね!
「――うん。うん。ありがと――」
僕の答えを聞いて――何故かユニィが泣きそうになっていた。そんなに悩んでたのかな?
そして――
「それでね。――私、ライリーさんとラズウェルさんみたいに――私とリーフェが一緒にできる仕事が何かって考えたの」
ユニィの声が、少しずつ熱を帯びた声に変わる。
「そしたらね。これしかないって」
まぁ、お仕事と言ったら――半分経験者みたいなものだし、それしかないよね。
――3分後。
『却下だね』
うん。
ソニアみたいな上目遣いをしても駄目だから。
「いっぱい練習したのにー」とか言われても駄目だから。
だって――凄く不吉だから。
因みに作者は『’』を『ダッシュ』と読んで(呼んで)ました。
――この話を書く前までは。
今では『’』は『ぴょん』にしか見えません。ユニィさん凄いっす。
※読者の皆様はご自由にお読み下さい
次回第2章の最終話です。




