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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第二章 おつかい騎竜
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37.ギルド

「わぁ――」


 街道を道なりに走って――たどり着いたフォリアの町。

 その姿に先程までの気まずい空気が吹き飛ぶ。


 そこはこれまで行ったことのある村と違い、とても高い石壁に囲まれていた。


『人があんなにいっぱいいるよ!』


 石壁と街道の交わるところ。今から向かう先に門が見える。

 その門の前には30人ほどの人が並んでいた。


 僕達が知っている()では、こんなに人が集まっているのを見たことがない。

 それに、門のところなんてほぼ素通りだ。


「私達も並ぼ?」


 しばらく眺めていたけれど、ユニィの声で我に返る。

 ――そうだね。こんなところで見てても仕方ないもんね。



 門の前に並ぶこと10分ほど。

 僕達の順番が来る。


「君は――君の名前とこの町への訪問理由を教えて貰えるかな?」


 門番のお兄さんが一瞬周りを見回したけど何かあった?

 疑問を抱く僕に構わず、ユニィは返事を返す。


「私の名前はユニィで、こちらの騎竜の名前はリーフェです。この町を訪れた理由は――薬師ギルドにお届けものを持ってきました」


 少し固いけど無難に回答したユニィに、門番のお兄さんが続けて質問する。


「なるほど。それじゃあ身分を証明できるものを見せてもらえるかい?」


 身分を証明できるもの――町に良く来る人なら身分証みたいなものを持っているのかもしれないけど――残念ながら僕達はそんなものは持っていない。

 ――でも、大丈夫。


「これを貰ってきてます」


 ユニィがポーチから1枚の紙片を取り出す。


「――ああ。委任状か」


 門番のお兄さんは紙片をちらと見ると、印を押した後に何かを書いて返してくれた。


「行って良いよ」


「ありがとうございました」


 頭を下げるユニィ。いつも通り礼儀正しいね。

 ほら。

 それを見た門番のお兄さんの口元が微かに上がってるよ。

 これって「好印象」ってやつだよね。



 ――――――


「すいませーん」

『だれかー』


 町に入って。

 町行く人のあまりの多さに驚いたり、お菓子の匂いに釣られたりしたけれども――ラズ兄ちゃんからの情報(隣はお菓子屋)を頼りに、僕達は何とか薬師ギルドまでたどり着いていた。


 でも――


「誰もいないね」


 まだ12時どころか11時よりも前。

 まだ閉まるには早い時間だけど――


 そう思っていると、カウンターの奥。扉の向こうからパタパタと近づく足音が聞こえた。

 扉の前で足音が止まり、一呼吸置いたタイミングで扉が開く。

 そこから出てきたのは、赤みがかった茶色の髪の人族の女の人だった。


「お待たせしました。ようこそ薬師ギルドへ。本日のご用件は――何でしょうか?」


 声を掛けながら出てきた赤髪お姉さんが、僕達を見て一瞬だけ言い淀んだけど――どうかしたのかな?


「クオルツ村のカロンさんから、こちらを預かってきました。それとこれを」


 ユニィがカロンさんから預かってきた小包と紙片――委任状をカウンターに置く。

 それを見た赤髪お姉さんが再び尋ねてきた。

 その頭は少し傾けられていて、ツノうさおばさんが良くやるみたいに眉の間をうねうねさせている。

 ――これは「はてな」のポーズかな?


「これは――委任状ですか? 他に――ギルドカードは持っていませんか?」


「いえ。私は薬師ではありませんので――」


 慌てて否定するユニィ。

 だけど赤髪お姉さんの言いたかった事は違っていたみたい。


「薬師ではなくて、運送――運送ギルド(ポーターズギルド)の方ですよ」


 ん? なにそれ?

 僕は思わずユニィを見るけど、ユニィにもわからないみたい。

 目が追い詰められた野ネズミみたいにキョロキョロしている。


 ――それじゃあここは――僕の出番だね。


『運送ギルドって何?』


 僕の言葉は聞こえないと思うので、言葉と同時にさっきの赤髪お姉さんみたいに頭を傾けた。

 さらに、少し『それっておいしいの?』というニュアンスを加えるために、唾を飲み込んでみた。


 ――我ながら完璧だね。



「……」


「運送ギルドって何でしょうか?」



 ユニィがフォローしてくれた。

 完璧だと思ったんだけれど――人族の感情表現は難しい。


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