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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第二章 おつかい騎竜
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35.不吉な予感

『――とまあ、こんな具合だな』


 マーロウの話が終わる。

 今日はいつもの三竜組(さんにんぐみ)でのスキル検証の日だ。


 マーロウが今回調べたのは、「ホラ吹き奇術師」という過去の人物の逸話らしい。

 どうやら、「時空魔術師」よりもこちらの方が僕のスキルに近いそうだ。


 長老やノルアじいちゃんの伝手を使って各地から情報を集めたみたいだけど――にわかには信じ難い話が含まれている。

 まぁ、ノルアじいちゃんの話だって時々トンデモ話になるぐらいだから、1200年前の話がまともに伝えられているとは思えないけどね。


 ただ。その中の一つに気になるものがあった。


 ――彼は一夜にして砂漠に都市を作り上げた。


 この字面だけだとどんなスキルを用いたのか想像がつかないが――

 マーロウの調査結果によると、()()()()と思われる場所は現存していて――その別名が一夜湖(ひとようみ)の都――というらしい。

 つまり、作ったのは都市ではなく湖で、そこに都市が発展したんじゃないか――ということだ。


 僕は以前ユニィと行った薬草採取の時のことを思い出す。

 あの時、『ポケット』で沼の水を干上がらせた。

 あれと同じことを行えば?

 砂漠で『ポケット』から水を出すことで、一夜にして湖を作ることもできるだろう。


 当然、マーロウもその類似性に気付いていた。


 だからこそ。

 今後はその他の逸話も調査分析してみるとのことだ。


 僕ももう一度その逸話を反芻する。


 ――彼は魔界を旅しその力を得た。

 ――彼は奇術を生業とし世界を旅した。

 ――彼は失われし聖環を懐から取り出してみせた。

 ――彼は一夜にして砂漠に都市を作り上げた。

 ――彼は世界の果てを見た。

 ――彼は最後に全てを失った。


 うん。よくわからないね。

 ――というか最後の方は不吉な予感しかしないんだけど――


『あ!』


 僕は思わず声を上げる。

 マーロウとサギリが僕の方を向く。


 そういえば、この前()()と似たようなことがあったじゃないか。


『聖環って、もしかしてドーナツのことなんじゃ!?』


 今日もサギリの僕を見る目は――冷たい。



 ――――――


『行くわよリーフェ!』


 50mほど離れたところから、サギリの声が届く。


『準備できてるよー』


 僕が返事を返すとすぐに、サギリが尻尾を使って石を投げてきた。

 山なりのその軌跡を僕は目で追う。

 そして――


『ポケット』


 スキルを発動する。

 そしてすぐに反対側に向けてその石を放出する。


 あの日。黒髪お兄さんのナイフが飛んできた時。

 ()()()は僕たちを狙ったものではなかったのだけれど。

 ――後になって思い付いたことがある。


 それが、飛んでくるものを『ポケット』で受け止めることだ。

 任意の場所に発動できる『ポケット』なら、どんな飛び道具も受け止められるんじゃないか――という話だ。


 ちなみに――


『これならどう?』


 サギリが直径10cmほどの石を投げてくる。

 さすがサギリ。容赦ない。


 ――でもね。


『ポケット』


 穴の大きさより大きいその石は、『ポケット』の入口にぶつかると、高い音を立ててその動きを止める。

 このように、大きくて収納できないものでも動きを止めることは可能なのだ。


 『ポケット』を解除すると同時に、その場に石は落下する。


『――はっ!』


 落下する石に気を取られて油断しているところに、サギリの蹴りが入る。

 だけどこれもポケットを間に挟むことで防ぐ。サギリは反動で後ろに飛び退いた後、低い体勢で構え直す。


 ――いやいや。今の当たってたら大ケガだよ!


 僕はサギリを睨む。

 だけど、サギリの目は『何言ってんの? うっかリーフェ』と言っている気がする。

 その証拠に目が険しい。


『危ないじゃないか』


 思わず僕は抗議した。


『ちゃんと防げてるんだから良いじゃない』


『そういう問題じゃないだろ』


 結局いつものパターンだ――と思ったら、後頭部にコツンと当たる感触があった。


『――やっぱり、油断したり意識が他に向いている時が一番危険だな』


 振り向いた先のマーロウの言葉に反論できない。

 ――ちょっと悔しい。

 

 再び前を見ると、サギリが首を縦に振っている。

 ――すごく悔しい。



 『ポケット』の応用に関する検証を終えて三竜(さんにん)で話し合う。

 結論としては訓練すれば防御には使えそうということと――


『蹴りを止められた時は、硬いものを蹴ったというより反発して押し戻されるような感覚だったわ』


 というサギリの感想ぐらいかな?

 確かに以前の検証でも、生物は入った瞬間にはじき出されてたし――大きいものが入口に引っ掛かる場合とは少し違うのかもしれない。

 空中で足場にしたりとか、もっと応用できるかも? 今度試してみよっと。


 ただ、どの使い方にしても走っている最中に使うのは難しいから、使う時はユニィに使ってもらう感じかな。

 多分、この術の使い方としては邪道な使い方なんだろうけど――僕達は魔物や悪い人と戦えるわけじゃないし、使えるものは使っていかないとね!



 ――そもそも、そんな危ないことにならないのが一番なんだけど。


 前回短めだったのは、↓こんなものを書いていたから。


「リーフェのトンデモ物理学」

https://ncode.syosetu.com/n0984hl/


 すみません。

 シリアスに耐えきれなかったんです……

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