34.なりたいものなれるもの
今回はユニィ視点です。
いつもよりも短めです。
『おやすみなさい』
私は『ポケット』を使ってリーフェにおやすみのメッセージを送る。
そして、日課の計算のお勉強を始める。
以前は本当に寝る前にメッセージを送っていたんだけれど――リーフェって夜はかなり早く寝ちゃうみたい。
いつもおやすみのメッセージを朝に読んでることが分かったから――最近は早めに送ることにしている。
どちらにしろ、リーフェからはめったに返事が来ないんだけどね。
――あの薬草採取の日から3週間が過ぎた。
あの日から今日まで色々あって、あっという間の3週間だったと思う。
まず驚いたのは、カロンさんの所に私達宛の報奨金が届いていたこと。
マルクさんが「クオルツ村の薬師」――ってのを覚えていて、密猟者捕縛の報奨金の一部を送ってくれていた。
全部で銀貨5枚――って、カロンさんに返済する額と同じだったんだけど、流石に全部貰うわけにはいかないから。
半分は薬草が取れなかった分としてカロンさんに渡して、残りの半分だけ――薬の代金の一部に充てさせて貰った。
カロンさんは「真面目ねぇ」と笑っていたし、リーフェは少し涙目になっていたけど。
そこは譲れないと思ったから。ごめんねリーフェ。
でも、これで今までのお手伝い分と合わせて、ずいぶん返せたかな?
計算して確かめてみる。
――うーん。残り18回分――かな? まだちょっと計算には自信がない。
次は――カロンさんから教えてもらったんだけど、ネザレ湿原でネザツレ草が取れなくなった理由が分かったみたい。何だかネザレ湿原には魔物が沢山いて、その魔物が悪さしてたんだって。
だから今、ネザレ湿原ではその魔物退治が行われているみたい。
――魔物。ちょっと背筋が寒くなる。あの時、その魔物がすぐ傍に居たってことだよね。
出会わなくて本当に良かった。
あとは――そうだ。
あの時リーフェが使った『ポケット』だけど、いつもより大きな穴が開いていた――と思う。
リーフェも『僕も成長したんだよ!』とか言ってたけど――
帰ってきてから使ってみたら、いつもと同じ大きさだった。
なんでだろう?
他にも細かいことはあったんだけど。
――うん。考え事をしていたら少し眠くなっちゃった。
私は机からベッドへと移動する。
ベッドに寝ころびながら。
私はその事について考える。
――あと1年弱。
私が成人して独り立ちする日。しなければいけない日。
――12歳の誕生日まで、既に1年を切っている。
そろそろなりたい職業を決めないといけない。
まずは見習いから始めるんだけど――私はまだ決めることができない。
リーフェと出会う前は、漠然と村で農家のお手伝いをするのかな――ぐらいしか考えていなかった。
でも今は――
「冒険者かぁ」
私は呟く。
ネザレ湿原でマルクさんに話を聞いたとき。
今まで冒険者は強い人がなるんだと思ってたけど、そうじゃない在り方もあることに気付いた。
今まで考えてもみなかった冒険者。
もちろん、向き不向きでいえば向かない職業だとは思うけど。
なりたいもの。
なれるもの。
――この1年はそれを探していこうと思う。
目を瞑る。
ふ――と。
リーフェの言葉が聞こえてきた気がする。
『――待っててね。進化の枝葉の先の先――』
――あーあ。あんな風に無邪気に目指せるものがあったら良いのにな。
次回から第4エピソードです。
次のエピソードはもう少し肩の力を抜けるエピソードになる……はずです。




