表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第一章 芽生え
3/308

3.友誼の儀

「私と契約を結んでください!」


 うーん。

 嫌な予感的中。

 契約って『友誼(ゆうぎ)の儀』のことだよね。多分。

 まぁ、騎乗スキルなんか持っていないだろうし、()()()()()()だろうと思ったけど。


 でも、僕まだ子竜(こども)だよ。そりゃ、ユニィも子供だけど。

 お酒と友誼の儀は成竜(おとな)になってから! って、うちの母竜も言ってたよ?

 まぁ、父竜は子竜(こども)の頃からこっそりお酒を飲んでたらしいけど。

 ――悪い成竜(おとな)の真似しちゃ駄目だからね!


 そんなこと(お酒は二十歳から)を考えていると、こちらの雰囲気の変化に気付いたのか、ユニィの声が必死さを増す。


「急がないといけないんです。母が、母が流行り病に倒れたんです」


 お気楽だった僕の思考が停止する。

 だが、彼女の言葉は止まらない。


「でも、うちの村の薬は、切らしていて」

 徐々に下がるユニィの視線。

 そんなユニィから視線を外せない。


「だからすぐに、薬が、必要――なのに――」

 徐々に詰まる声。

 声――脳裏によぎるのは誰の声?


「薬師が――隣――村にしが――ぐずっ――いなぐ――」

 握った手はその震えを隠せない。

 ――握った手はその震えを隠せない。


「やま――ごぇ――きゃりゅ――なら――」

 ――もういいよ。


 何故かは分からない。でも、必死に言葉を継ぐユニィを見ていると。

 心が。記憶が。揺り動かされる。閉じていたはずの記憶の扉の隙間から漏れ出る。そして――零れ落ちる。

 母竜ではない――亡くした()の顔。

 その顔が浮かんだ瞬間――僕は、ユニィの額に自分の額を押し当てる。


 ――さよなら。まだ見ぬ勇者様と6回進化(オリジン)


『絆よ 原初の名の下に綾なせ リンクスルート』


 たったこれだけ。

 僕でも覚えられる簡単な言葉。

 だけど、その最後の一句を発した瞬間。

 目を開けていられないほどの光が周囲を包む。

 そして、触れている額からお互いの知識が。記憶が。感情が流れ込む。


 ユニィの村の位置。隣村の位置。

 母の笑顔。怒り顔。寂しげな横顔と倒れ伏す姿。幼い妹の泣き顔。

 喜び。悲しみ。焦り。そして大きな恐怖。

 全てがわかるわけでは無いけれど、深い根源で繋がっている感覚。

 これが絆。これが友誼の儀。

 そして――


『ユニィ。僕の()()を呼んで』


 最後の仕上げ。終始驚いたような顔をしていたユニィが。少し思案した後。

 ()()の中のその名を呼ぶ。


「リーフェスト」


 僕の名前を楔として儀式が完結する。

 僕とユニィとの間に繋がった絆が、深く絡まり強くしなやかに固定される感覚。


 高揚した気持ちそのままに。儀式の余韻に浸る僕。

 そんな僕にそれは突然訪れる。


『リトルゼノラプトルに進化しました』

『個体名「リーフェスト」により新たな進化枝が発芽しました』


 ――え?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ