表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
299/308

287.樹上の影

 気を失い。

 倒れ伏すサギリは放置して、頭上を見上げる。


 リーフェが向かったであろう、この事態の元凶――『導き』の理を司る枝。

 この位置からではリーフェの動きは全く見えないんだが――リーフェの奴は上手くやれてるのか?


 両眼に力を込めて集中する――だが。

 枝の根元辺りにちらちらと何かが見えただけ。遠すぎるので細かい所までは良く見えない。

 視線を下ろし、再度周囲を見回す。


 ――あの枝さえ折ってしまえば。


 実のところ。

 あの枝を折った時に何が起こるのか――全てが分かっているわけではない。

 言ってしまえば。今俺達がやろうとしていることは、この世界の理を曲げる行為に他ならないのだ。

 その結果、何か世界を揺るがす重大な事件が起こったとしても不思議ではないし、逆に大したことは何も起こらないのかもしれない――だが。


 少なくとも、確実にこの場に居る奴らは正気を取り戻すだろう。


 瞳を青く染めたままの相棒を見る。

 何だか顔が歪んでいるようだが――伝わってくる感情は喜び一色。


 ――こいつはそのままの方が幸せそうだがな。


 そのまま、再び頭上を見上げる。

 やはりここからでは――


『ほんと。あのバカ。あんなところで尻尾振り回して何やってるのかしら』


 ――おいおい。

 サギリ、お前もう目を覚ましたのか?

 いや――それよりも。


『お前。()()が見えるのか?』


『何言ってるの、当り前じゃない。マーロウ――貴方。本ばっかり読んでるから、目が悪くなったんじゃないのかしら?』


 そうか――アレが見えるのか。

 それならもう少し詳しい状況が分かるかもな。


『――――そんな事よりも、リーフェよリーフェ。あのバカ何やってるのよ』


 ――そうだな。

 こいつにはどこまで話すかな。



 ――――――


 頭が――痛い。


 酷い頭痛に目を覚ます。

 最悪の気分。

 そうね。こんな時は――と自分の周りに目をやる。


 だけど――

 どこにも()()姿()が見えない。


 ――まったく。一体あいつどこに行ったのよ。


 見つからないその姿にイライラが増しながらも。

 なおも周囲を見回し続けて――判断力の鈍っていた私も、ようやく異常に気付いた。

 そう。ユニィもマーロウもその他の三にんも。

 頭上の――大きな樹を見たまま動かないという事に。


 ――あの樹に何か?


 そう思って。目を凝らしていて。

 そこに動く影に気付いた。


 あれは――そうね。あんなところに居たのね。

 でも――一体何をしているのかしら?


 先程から、何度も何度も尻尾を振り下ろしている影に。

 ここからでも分かる金色の瞳に。

 言いようもない異様な雰囲気を感じる。

 もしかして――この場の皆の様子がおかしいのは、あのバカのせいなのかもしれないわね。


 そんなことを考えながら、影の動きを目で追っていて――

 視界の端の別の動きに意識を戻した。


 慌てて動いた()()を目で追うと――先程まで頭上を見上げていたはずのマーロウだった。

 ――私と同じように辺りを見回した後、頭上の――リーフェの居るあたりを眺めている。


『ほんと。あのバカ。あんなところで尻尾振り回して何やってるのかしら』


 もしかしたら。

 マーロウなら何か知っているかもしれない。

 そう思って聞いてみたのだけれど――


『お前。()()が見えるのか?』


 帰って来た返答は――思っていたものとは少し違うものだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ